証人等の被害についての給付に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十三年四月三十日
内閣総理大臣 岸信介
法律第百九号
証人等の被害についての給付に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、刑事事件の証人若しくは参考人又はその近親者が証人又は参考人の供述又は出頭に関して他人からその身体又は生命に害を加えられた場合に国において療養その他の給付を行うこととすることにより、証人又は参考人の供述及び出頭を確保し、もつて刑罰法令の適正かつ迅速な適用実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「証人」とは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による証人をいい、共同被告人の一人が供述する場合において、その供述が他の共同被告人に関する事項を含むものであるときは、その共同被告人は、同法の規定による証人とみなす。
2 この法律で「参考人」とは、他人の刑事事件(刑事被告事件及び被疑事件をいい、勾留又は保釈に関する裁判の手続を含むものとする。以下同じ。)について検察官、検察事務官又は司法警察職員(鉄道公安職員を含むものとし、以下「捜査機関」という。)に対し自己の実験した事実を供述する者及び他人の刑事事件について裁判所又は裁判官に対し自己の実験した事実を供述する者であつて証人以外のものをいう。
(給付の要件)
第三条 証人又は参考人が刑事事件に関し裁判所、裁判官又は捜査機関に対し供述(参考人にあつては、書面による供述を含む。以下同じ。)をし、又は供述の目的で出頭し、若しくは出頭しようとしたことにより、当該証人若しくは参考人又はこれらの者の配偶者(婚姻の届出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、直系血族若しくは同居の親族(以下「証人」等という。)が、他人からその身体又は生命に害を加えられたときは、国は、この法律に定めるところにより、被害者その他の者に対する給付を行う。
(給付をしないことができる場合)
第四条 次の各号の一に該当するときは、前条に規定する給付の全部又は一部をしないことができる。
一 証人若しくは参考人又は被害者と加害者との間に親族関係(事実上の婚姻関係を含む。以下同じ。)があるとき。
二 証人等が加害行為を誘発したとき、その他当該被害につき、証人等にも、その責に帰すべき行為があつたとき。
三 証人又は参考人が、加害行為の原因となつた供述において、当該刑事事件に関する重要な事項について虚偽の陳述をしたとき。
(給付の種類)
第五条 第三条の規定による給付の種類は、次のとおりとする。
一 療養給付(被害者が負傷し又は疾病にかかつた場合における必要な療養又は当該療養に要する費用の給付)
二 障害給付(被害者が負傷し又は疾病にかかりなおつた場合において、なお存する身体障害に対する給付)
三 遺族給付(被害者が死亡した場合において、その遺族であつて、証人等の範囲に属し、かつ、加害者との間に親族関係がないものに対して行う給付)
四 葬祭給付(被害者が死亡した場合において、証人等の範囲に属し、かつ、加害者との間に親族関係がない者で、その葬祭を行うものに対して行う給付)
五 打切給付(被害者が療養給付開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合における給付)
2 前項に掲げる給付のほか、被害者が負傷し又は疾病にかかり、そのため従前得ていた業務上の収入を得ることができない場合において、他に収入のみちがない等特に必要があるときは、休業給付を行うことができる。
(給付の範囲、金額、支給方法等)
第六条 前条の給付の範囲、金額及び支給方法、遺族給付を受けるべき遺族の範囲及び順位その他給付に関し必要な事項は、警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律(昭和二十七年法律第二百四十五号)による災害給付に関するこれらの事項を参酌して政令で定める。
(他の法令による給付との関係)
第七条 他の法令の規定により、この法律による給付に相当する給付が行われたときは、当該給付の支給原因たる事実と同一の事実については、当該給付の限度において、この法律による給付を行わない。
(損害賠償との関係)
第八条 この法律による給付を受けるべき者が給付の原因である損害につき賠償の責任を有する者から損害の賠償を受けたときは、その価額の限度において、この法律による給付を行わない。
2 国は、この法律による給付を行つたときは、その価額の限度において、給付を受けた者が給付の原因である損害につき賠償の責任を有する者に対して有する権利を取得する。
(権利の裁定)
第九条 この法律による給付を受ける権利は、これを受けようとする者の請求に基いて、法務大臣が裁定する。
2 前項の請求は、当該給付の支給原因たる事実が生じた日から起算して二年以内に限り、行うことができる。
(権利の保護)
第十条 この法律による給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
(非課税)
第十一条 この法律により支給を受けた金品を標準として、租税その他の公課を課することができない。
2 この法律による給付に関する書類には、印紙税を課さない。
(権限の委任)
第十二条 法務大臣は、政令の定めるところにより、この法律又はこの法律に基く政令の規定による権限を所部の職員に委任することができる。
附 則
この法律は、公布の日から起算して九十日を経過した日から施行し、この法律の施行後における証人又は参考人の供述又は出頭に係る被害について適用する。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 唐澤俊樹
大蔵大臣 一萬田尚登
証人等の被害についての給付に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十三年四月三十日
内閣総理大臣 岸信介
法律第百九号
証人等の被害についての給付に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、刑事事件の証人若しくは参考人又はその近親者が証人又は参考人の供述又は出頭に関して他人からその身体又は生命に害を加えられた場合に国において療養その他の給付を行うこととすることにより、証人又は参考人の供述及び出頭を確保し、もつて刑罰法令の適正かつ迅速な適用実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「証人」とは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による証人をいい、共同被告人の一人が供述する場合において、その供述が他の共同被告人に関する事項を含むものであるときは、その共同被告人は、同法の規定による証人とみなす。
2 この法律で「参考人」とは、他人の刑事事件(刑事被告事件及び被疑事件をいい、勾留又は保釈に関する裁判の手続を含むものとする。以下同じ。)について検察官、検察事務官又は司法警察職員(鉄道公安職員を含むものとし、以下「捜査機関」という。)に対し自己の実験した事実を供述する者及び他人の刑事事件について裁判所又は裁判官に対し自己の実験した事実を供述する者であつて証人以外のものをいう。
(給付の要件)
第三条 証人又は参考人が刑事事件に関し裁判所、裁判官又は捜査機関に対し供述(参考人にあつては、書面による供述を含む。以下同じ。)をし、又は供述の目的で出頭し、若しくは出頭しようとしたことにより、当該証人若しくは参考人又はこれらの者の配偶者(婚姻の届出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、直系血族若しくは同居の親族(以下「証人」等という。)が、他人からその身体又は生命に害を加えられたときは、国は、この法律に定めるところにより、被害者その他の者に対する給付を行う。
(給付をしないことができる場合)
第四条 次の各号の一に該当するときは、前条に規定する給付の全部又は一部をしないことができる。
一 証人若しくは参考人又は被害者と加害者との間に親族関係(事実上の婚姻関係を含む。以下同じ。)があるとき。
二 証人等が加害行為を誘発したとき、その他当該被害につき、証人等にも、その責に帰すべき行為があつたとき。
三 証人又は参考人が、加害行為の原因となつた供述において、当該刑事事件に関する重要な事項について虚偽の陳述をしたとき。
(給付の種類)
第五条 第三条の規定による給付の種類は、次のとおりとする。
一 療養給付(被害者が負傷し又は疾病にかかつた場合における必要な療養又は当該療養に要する費用の給付)
二 障害給付(被害者が負傷し又は疾病にかかりなおつた場合において、なお存する身体障害に対する給付)
三 遺族給付(被害者が死亡した場合において、その遺族であつて、証人等の範囲に属し、かつ、加害者との間に親族関係がないものに対して行う給付)
四 葬祭給付(被害者が死亡した場合において、証人等の範囲に属し、かつ、加害者との間に親族関係がない者で、その葬祭を行うものに対して行う給付)
五 打切給付(被害者が療養給付開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合における給付)
2 前項に掲げる給付のほか、被害者が負傷し又は疾病にかかり、そのため従前得ていた業務上の収入を得ることができない場合において、他に収入のみちがない等特に必要があるときは、休業給付を行うことができる。
(給付の範囲、金額、支給方法等)
第六条 前条の給付の範囲、金額及び支給方法、遺族給付を受けるべき遺族の範囲及び順位その他給付に関し必要な事項は、警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律(昭和二十七年法律第二百四十五号)による災害給付に関するこれらの事項を参酌して政令で定める。
(他の法令による給付との関係)
第七条 他の法令の規定により、この法律による給付に相当する給付が行われたときは、当該給付の支給原因たる事実と同一の事実については、当該給付の限度において、この法律による給付を行わない。
(損害賠償との関係)
第八条 この法律による給付を受けるべき者が給付の原因である損害につき賠償の責任を有する者から損害の賠償を受けたときは、その価額の限度において、この法律による給付を行わない。
2 国は、この法律による給付を行つたときは、その価額の限度において、給付を受けた者が給付の原因である損害につき賠償の責任を有する者に対して有する権利を取得する。
(権利の裁定)
第九条 この法律による給付を受ける権利は、これを受けようとする者の請求に基いて、法務大臣が裁定する。
2 前項の請求は、当該給付の支給原因たる事実が生じた日から起算して二年以内に限り、行うことができる。
(権利の保護)
第十条 この法律による給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
(非課税)
第十一条 この法律により支給を受けた金品を標準として、租税その他の公課を課することができない。
2 この法律による給付に関する書類には、印紙税を課さない。
(権限の委任)
第十二条 法務大臣は、政令の定めるところにより、この法律又はこの法律に基く政令の規定による権限を所部の職員に委任することができる。
附 則
この法律は、公布の日から起算して九十日を経過した日から施行し、この法律の施行後における証人又は参考人の供述又は出頭に係る被害について適用する。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 唐沢俊樹
大蔵大臣 一万田尚登