日本貿易振興会法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十三年四月二十六日
内閣総理大臣 岸信介
法律第九十五号
日本貿易振興会法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員等(第八条―第二十条)
第三章
業務(第二十一条―第二十二条)
第四章
財務及び会計(第二十三条―第三十一条)
第五章
監督(第三十二条・第三十三条)
第六章
雑則(第三十四条)
第七章
罰則(第三十五条―第三十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本貿易振興会は、わが国の貿易の振興に関する事業を総合的かつ効率的に実施することを目的とする。
(法人格)
第二条 日本貿易振興会(以下「振興会」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 振興会は、主たる事務所を東京都に置く。
2 振興会は、通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第四条 振興会の資本金は、二十億円とし、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律(昭和三十三年法律第  号)第十条第四号の規定により、同法第十一条第一項第四号に掲げる基金に充てるものとして、政府がその全額を出資するものとする。
2 前項に規定する基金については、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律の定めるところによる。
(登記)
第五条 振興会は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 振興会でない者は、日本貿易振興会という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、振興会に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第八条 振興会に、役員として、理事長一人、副理事長一人、理事六人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第九条 理事長は、振興会を代表し、その業務を総理する。
2 副理事長は、振興会を代表し、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して振興会の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 理事は、理事長の定めるところにより、理事長及び副理事長を補佐して振興会の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長及び副理事長が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、振興会の業務を監査する。
(役員の任命)
第十条 理事長、副理事長及び監事は、通商産業大臣が任命する。
2 理事は、理事長が通商産業大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第十一条 理事長、副理事長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 国会議員、国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて、非常勤のものを除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員は、役員となることができない。
(役員の解任)
第十三条 通商産業大臣は、理事長、副理事長又は監事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 理事長は、理事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
第十四条 通商産業大臣は、理事長、副理事長若しくは監事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長、副理事長若しくは監事に職務上の義務違反その他理事長、副理事長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、通商産業大臣の認可を受けて、これを解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第十五条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、通商産業大臣が役員としての職務の執行に支障がないものと認めて許可したときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十六条 振興会と理事長又は副理事長との利益が相反する事項については、理事長又は副理事長は、代表権を有しない。この場合は、監事が振興会を代表する。
(代理人の選任)
第十七条 理事長は、振興会の理事又は職員のうちから、振興会の主たる事務所又は従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(運営審議会)
第十八条 振興会に、運営審議会を置く。
2 運営審議会は、理事長の諮問に応じ、振興会の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 運営審議会は、前項の事項に関し、理事長に意見を述べることができる。
4 運営審議会は、委員十二人以内で組織する。
5 委員は、貿易に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
6 委員の任期は、二年とする。
7 委員は、再任されることができる。
(役員等の秘密保持義務)
第十九条 振興会の役員若しくは職員若しくは運営審議会の委員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(役員及び職員の地位)
第二十条 振興会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務の範囲)
第二十一条 振興会は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 貿易に関する調査をし、及びその成果を普及すること。(意匠に関するものを含む。)
二 わが国の産業及び商品の紹介及び宣伝を行うこと。
三 貿易取引のあつせんを行うこと。
四 貿易に関する出版物の刊行及び頒布を行うこと。
五 博覧会、見本市その他これらに準ずるものを開催し、若しくはこれらに参加し、又はその開催若しくは参加のあつせんを行うこと。
六 貿易の振興に関する業務であつて、行政庁から委託を受けたもの
七 前各号の業務に附帯する業務
八 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務
2 振興会は、前項第八号に掲げる業務を行おうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(業務の方法)
第二十二条 振興会は、業務開始の際、業務の方法を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務の方法で定めるべき事項は、通商産業省令で定める。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十三条 振興会の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る。
(事業計画、資金計画及び収支予算)
第二十四条 振興会は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(貸借対照表、損益計算書及び決算報告書)
第二十五条 振興会は、毎事業年度経過後五月以内に、貸借対照表、損益計算書及び決算報告書を作成し、監事の意見を附して、通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十六条 振興会は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 振興会は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金の認可)
第二十七条 振興会は、借入金をしようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(余裕金の運用)
第二十八条 振興会は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債の保有
二 資金運用部への預託
三 銀行への預金又は郵便貯金
四 信託会社又は信託業務を行う銀行への金銭信託
(財産の処分等の制限)
第二十九条 振興会は、通商産業省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十条 振興会は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(通商産業省令への委任)
第三十一条 この法律及びこれに基く命令に規定するもののほか、振興会の財務及び会計に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十二条 振興会は、通商産業大臣が監督する。
2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、振興会に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十三条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、振興会に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、振興会の事務所その他の事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(大蔵大臣との協議)
第三十四条 通商産業大臣は、次の場合には、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十四条、第二十七条又は第二十九条の認可をしようとするとき。
二 第二十五条又は第三十条の承認をしようとするとき。
三 第二十二条第二項、第二十九条又は第三十一条の通商産業省令を定めようとするとき。
第七章 罰則
第三十五条 第十九条の規定に違反して、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第三十六条 第三十三条第一項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その違反行為をした振興会の役員又は職員を五万円以下の罰金に処する。
第三十七条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした振興会の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。
一 この法律により通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十一条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第二十八条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十二条第二項の命令に違反したとき。
第三十八条 第六条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(振興会の設立)
第二条 通商産業大臣は、第十条第一項の例により、振興会の理事長、副理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長、副理事長又は監事となるべき者は、振興会の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長、副理事長又は監事に任命されたものとする。
第三条 通商産業大臣は、設立委員を命じて、振興会の設立に関する事務を処理させる。
第四条 設立委員は、設立の準備を完了したときは、遅滞なく、政府に対し、出資金の払込の請求をしなければならない。
2 設立委員は、出資金の払込があつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。
第五条 附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条の引継を受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第六条 振興会は、設立の登記をすることによつて成立する。
(財団法人海外貿易振興会からの引継)
第七条 昭和二十六年二月二十八日に設立された財団法人海外貿易振興会(以下この条において「財団法人海外貿易振興会」という。)は、振興会の成立の時において解散し、その一切の権利及び義務は、その時において振興会が承継する。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
2 振興会は、前項の規定により財団法人海外貿易振興会の権利及び義務を承継した場合において、その資産の価額から負債の価額を控除した残額に相当する金額は、資本準備金として積み立てなければならない。
3 附則第五条の規定により設立の登記がなされたときは、登記官吏は、職権で、財団法人海外貿易振興会の解散の登記をし、その登記用紙を閉鎖しなければならない。
(経過規定)
第八条 この法律の施行の際現に日本貿易振興会という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第六条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第九条 振興会の最初の事業年度は、第二十三条の規定にかかわらず、その設立の日に始まり、昭和三十四年三月三十一日に終るものとする。
第十条 振興会の最初の事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第二十四条中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「振興会の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の改正)
第十一条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「社会福祉事業振興会」の下に「、日本貿易振興会」を、「社会福祉事業振興会法」の下に「、日本貿易振興会法」を加える。
(印紙税法の改正)
第十二条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号ノ三の次に次の一号を加える。
六ノ三ノ二 日本貿易振興会ノ発スル証書、帳簿
(所得税法の改正)
第十三条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「私立学校振興会」の下に「、日本貿易振興会」を加える。
(法人税法の改正)
第十四条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号中「社会福祉事業振興会」の下に「、日本貿易振興会」を加える。
(地方税法の改正)
第十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「社会福祉事業振興会」の下に「、日本貿易振興会」を加える。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 唐澤俊樹
大蔵大臣 一萬田尚登
通商産業大臣 前尾繁三郎
日本貿易振興会法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十三年四月二十六日
内閣総理大臣 岸信介
法律第九十五号
日本貿易振興会法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員等(第八条―第二十条)
第三章
業務(第二十一条―第二十二条)
第四章
財務及び会計(第二十三条―第三十一条)
第五章
監督(第三十二条・第三十三条)
第六章
雑則(第三十四条)
第七章
罰則(第三十五条―第三十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本貿易振興会は、わが国の貿易の振興に関する事業を総合的かつ効率的に実施することを目的とする。
(法人格)
第二条 日本貿易振興会(以下「振興会」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 振興会は、主たる事務所を東京都に置く。
2 振興会は、通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第四条 振興会の資本金は、二十億円とし、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律(昭和三十三年法律第  号)第十条第四号の規定により、同法第十一条第一項第四号に掲げる基金に充てるものとして、政府がその全額を出資するものとする。
2 前項に規定する基金については、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律の定めるところによる。
(登記)
第五条 振興会は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 振興会でない者は、日本貿易振興会という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、振興会に準用する。
第二章 役員等
(役員)
第八条 振興会に、役員として、理事長一人、副理事長一人、理事六人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第九条 理事長は、振興会を代表し、その業務を総理する。
2 副理事長は、振興会を代表し、理事長の定めるところにより、理事長を補佐して振興会の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 理事は、理事長の定めるところにより、理事長及び副理事長を補佐して振興会の業務を掌理し、理事長及び副理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長及び副理事長が欠員のときはその職務を行う。
4 監事は、振興会の業務を監査する。
(役員の任命)
第十条 理事長、副理事長及び監事は、通商産業大臣が任命する。
2 理事は、理事長が通商産業大臣の認可を受けて任命する。
(役員の任期)
第十一条 理事長、副理事長及び理事の任期は、四年とし、監事の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 国会議員、国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であつて、非常勤のものを除く。)、地方公共団体の議会の議員又は地方公共団体の長若しくは常勤の職員は、役員となることができない。
(役員の解任)
第十三条 通商産業大臣は、理事長、副理事長又は監事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
2 理事長は、理事が前条の規定により役員となることができない者に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。
第十四条 通商産業大臣は、理事長、副理事長若しくは監事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事長、副理事長若しくは監事に職務上の義務違反その他理事長、副理事長若しくは監事たるに適しない非行があると認めるときは、これを解任することができる。
2 理事長は、理事が心身の故障のため職務を執行することができないと認めるとき、又は理事に職務上の義務違反その他理事たるに適しない非行があると認めるときは、通商産業大臣の認可を受けて、これを解任することができる。
(役員の兼職禁止)
第十五条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、通商産業大臣が役員としての職務の執行に支障がないものと認めて許可したときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十六条 振興会と理事長又は副理事長との利益が相反する事項については、理事長又は副理事長は、代表権を有しない。この場合は、監事が振興会を代表する。
(代理人の選任)
第十七条 理事長は、振興会の理事又は職員のうちから、振興会の主たる事務所又は従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(運営審議会)
第十八条 振興会に、運営審議会を置く。
2 運営審議会は、理事長の諮問に応じ、振興会の業務の運営に関する重要事項を調査審議する。
3 運営審議会は、前項の事項に関し、理事長に意見を述べることができる。
4 運営審議会は、委員十二人以内で組織する。
5 委員は、貿易に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。
6 委員の任期は、二年とする。
7 委員は、再任されることができる。
(役員等の秘密保持義務)
第十九条 振興会の役員若しくは職員若しくは運営審議会の委員又はこれらの職にあつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(役員及び職員の地位)
第二十条 振興会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 業務
(業務の範囲)
第二十一条 振興会は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 貿易に関する調査をし、及びその成果を普及すること。(意匠に関するものを含む。)
二 わが国の産業及び商品の紹介及び宣伝を行うこと。
三 貿易取引のあつせんを行うこと。
四 貿易に関する出版物の刊行及び頒布を行うこと。
五 博覧会、見本市その他これらに準ずるものを開催し、若しくはこれらに参加し、又はその開催若しくは参加のあつせんを行うこと。
六 貿易の振興に関する業務であつて、行政庁から委託を受けたもの
七 前各号の業務に附帯する業務
八 前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務
2 振興会は、前項第八号に掲げる業務を行おうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(業務の方法)
第二十二条 振興会は、業務開始の際、業務の方法を定め、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務の方法で定めるべき事項は、通商産業省令で定める。
第四章 財務及び会計
(事業年度)
第二十三条 振興会の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る。
(事業計画、資金計画及び収支予算)
第二十四条 振興会は、毎事業年度開始前に、その事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算を作成し、通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(貸借対照表、損益計算書及び決算報告書)
第二十五条 振興会は、毎事業年度経過後五月以内に、貸借対照表、損益計算書及び決算報告書を作成し、監事の意見を附して、通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十六条 振興会は、毎事業年度、経営上利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 振興会は、毎事業年度、経営上損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金の認可)
第二十七条 振興会は、借入金をしようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(余裕金の運用)
第二十八条 振興会は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債の保有
二 資金運用部への預託
三 銀行への預金又は郵便貯金
四 信託会社又は信託業務を行う銀行への金銭信託
(財産の処分等の制限)
第二十九条 振興会は、通商産業省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十条 振興会は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(通商産業省令への委任)
第三十一条 この法律及びこれに基く命令に規定するもののほか、振興会の財務及び会計に関し必要な事項は、通商産業省令で定める。
第五章 監督
(監督)
第三十二条 振興会は、通商産業大臣が監督する。
2 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、振興会に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十三条 通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、振興会に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、振興会の事務所その他の事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第六章 雑則
(大蔵大臣との協議)
第三十四条 通商産業大臣は、次の場合には、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十四条、第二十七条又は第二十九条の認可をしようとするとき。
二 第二十五条又は第三十条の承認をしようとするとき。
三 第二十二条第二項、第二十九条又は第三十一条の通商産業省令を定めようとするとき。
第七章 罰則
第三十五条 第十九条の規定に違反して、その職務に関して知得した秘密を漏らし、又は盗用した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第三十六条 第三十三条第一項の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合においては、その違反行為をした振興会の役員又は職員を五万円以下の罰金に処する。
第三十七条 次の各号の一に該当する場合においては、その違反行為をした振興会の役員又は職員を三万円以下の過料に処する。
一 この法律により通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の政令に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十一条第一項に規定する業務以外の業務を行つたとき。
四 第二十八条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十二条第二項の命令に違反したとき。
第三十八条 第六条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(振興会の設立)
第二条 通商産業大臣は、第十条第一項の例により、振興会の理事長、副理事長又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された理事長、副理事長又は監事となるべき者は、振興会の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ理事長、副理事長又は監事に任命されたものとする。
第三条 通商産業大臣は、設立委員を命じて、振興会の設立に関する事務を処理させる。
第四条 設立委員は、設立の準備を完了したときは、遅滞なく、政府に対し、出資金の払込の請求をしなければならない。
2 設立委員は、出資金の払込があつた日において、その事務を附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。
第五条 附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条の引継を受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第六条 振興会は、設立の登記をすることによつて成立する。
(財団法人海外貿易振興会からの引継)
第七条 昭和二十六年二月二十八日に設立された財団法人海外貿易振興会(以下この条において「財団法人海外貿易振興会」という。)は、振興会の成立の時において解散し、その一切の権利及び義務は、その時において振興会が承継する。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
2 振興会は、前項の規定により財団法人海外貿易振興会の権利及び義務を承継した場合において、その資産の価額から負債の価額を控除した残額に相当する金額は、資本準備金として積み立てなければならない。
3 附則第五条の規定により設立の登記がなされたときは、登記官吏は、職権で、財団法人海外貿易振興会の解散の登記をし、その登記用紙を閉鎖しなければならない。
(経過規定)
第八条 この法律の施行の際現に日本貿易振興会という名称を使用している者は、この法律の施行後六月以内にその名称を変更しなければならない。
2 第六条の規定は、前項に規定する期間内は、同項に規定する者には、適用しない。
第九条 振興会の最初の事業年度は、第二十三条の規定にかかわらず、その設立の日に始まり、昭和三十四年三月三十一日に終るものとする。
第十条 振興会の最初の事業年度の事業計画、資金計画及び収支予算については、第二十四条中「毎事業年度開始前に」とあるのは、「振興会の成立後遅滞なく」とする。
(登録税法の改正)
第十一条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条第七号中「社会福祉事業振興会」の下に「、日本貿易振興会」を、「社会福祉事業振興会法」の下に「、日本貿易振興会法」を加える。
(印紙税法の改正)
第十二条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第五条第六号ノ三の次に次の一号を加える。
六ノ三ノ二 日本貿易振興会ノ発スル証書、帳簿
(所得税法の改正)
第十三条 所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項第十号中「私立学校振興会」の下に「、日本貿易振興会」を加える。
(法人税法の改正)
第十四条 法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第三号中「社会福祉事業振興会」の下に「、日本貿易振興会」を加える。
(地方税法の改正)
第十五条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の四第一項第三号中「社会福祉事業振興会」の下に「、日本貿易振興会」を加える。
内閣総理大臣 岸信介
法務大臣 唐沢俊樹
大蔵大臣 一万田尚登
通商産業大臣 前尾繁三郎