準備預金制度に関する法律
法令番号: 法律第135号
公布年月日: 昭和32年5月27日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

金融機関の通貨調節手段として、既存の公定歩合政策・公開市場操作に加え、新たに準備預金制度を創設し、金融制度の整備を図るものである。金融制度調査会の答申を踏まえ、対象金融機関に預金の一定割合(最高10%)を日本銀行に預け入れさせ、この割合を変更することで通貨量を調節する。対象は当面、銀行法による銀行、長期信用銀行、外国為替銀行とし、預金は総預金を対象とする。預金・預け金の算定は1ヶ月間の日々平均残高で行い、法定準備預金額に不足する場合は、不足額に対し日銀商業手形割引歩合に日歩1銭を加えた金額を納付させる。

参照した発言:
第26回国会 参議院 大蔵委員会 第27号

審議経過

第26回国会

参議院
(昭和32年4月5日)
(昭和32年4月11日)
衆議院
(昭和32年4月23日)
(昭和32年4月26日)
参議院
(昭和32年5月7日)
衆議院
(昭和32年5月14日)
(昭和32年5月15日)
(昭和32年5月16日)
(昭和32年5月16日)
参議院
(昭和32年5月17日)
(昭和32年5月18日)
(昭和32年5月18日)
衆議院
(昭和32年5月19日)
参議院
(昭和32年5月19日)
準備預金制度に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十二年五月二十七日
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 石井光次郎
法律第百三十五号
準備預金制度に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、通貨調節手段としての準備預金制度を確立し、わが国の金融制度の整備を図るとともに、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「指定金融機関」とは、銀行(銀行法(昭和二年法律第二十一号)第二条の規定による免許を受けた銀行をいう。)並びに長期信用銀行(長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)に規定する長期信用銀行をいう。)、外国為替銀行(外国為替銀行法(昭和二十九年法律第六十七号)に規定する外国為替銀行をいう。)、相互銀行、信用金庫、信用金庫連合会、農林中央金庫及び商工組合中央金庫のうち政令で定めるものをいう。
2 この法律において「法定準備預金額」とは、指定金融機関がこの法律の規定により保有しなければならない日本銀行に対する預け金の最低額をいう。
3 この法律において「準備率」とは、指定金融機関の預金(外貨預金その他の政令で定める預金を除き、貯金及び定期積金を含む。以下同じ。)の額に対する当該指定金融機関の法定準備預金額の比率をいう。
4 この法律において「定期性預金」とは、払戻について期限の定がある預金で政令で定めるもの及び定期積金をいう。
(日本銀行預け金の保有義務)
第三条 指定金融機関は、日本銀行が次条の規定により準備率を定めた場合には、第七条第一項に規定する方法で計算した法定準備預金額以上の金額を、日本銀行に対する預け金として保有しなければならない。
(準備率の設定、変更又は廃止)
第四条 日本銀行は、通貨の調節を図るため必要があると認める場合には、準備率を設定し、変更し、又は廃止することができる。
2 前項の準備率は、百分の十をこえることができない。
3 日本銀行は、第一項の規定により準備率を設定し、変更し、又は廃止しようとするときは、大蔵大臣の認可を受けなければならない。
第五条 日本銀行は、前条の規定により準備率を設定し、変更し、又は廃止する場合には、定期性預金及びその他の預金の別又は政令で定める指定金融機関別に設定し、変更し、又は廃止することができる。
(公告)
第六条 第四条の規定による準備率の設定、変更又は廃止は、日本銀行の公告によつて行う。
(法定準備預金額等の計算方法)
第七条 指定金融機関の法定準備預金額は、当該指定金融機関のその月中の毎日(当日が休日のときは前日。以下次項において同じ。)の終業時の預金の残高にそれぞれその日における準備率を乗じて得た金額の合計額を、その月の日数で除して計算する。この場合において、その月のうちに準備率が定められていない日があるときは、その日については、準備率を零として計算するものとする。
2 指定金融機関の第三条に規定する日本銀行に対する預け金の額は、その月の政令で定める日から起算して一月間の毎日の終業時における当該指定金融機関に係る日本銀行の預り金(政令で定めるものを除く。)の残高の合計額を、当該期間の日数で除して計算する。
(預け金の額が不足する場合の措置)
第八条 前条第二項の規定により計算した指定金融機関の日本銀行に対する預け金の額が同条第一項の規定により計算した当該指定金融機関の法定準備預金額に達しない場合には、当該指定金融機関は、その不足額について、当該法定準備預金額の計算の基礎となつた月の日数に応じ、その月の末日における日本銀行の商業手形についての割引歩合に日歩一銭を加えた歩合により計算した金額を、政令で定めるところにより、日本銀行に納付しなければならない。
2 日本銀行は、前項の規定により納付された金額を、政令で定めるところにより、政府に納付しなければならない。
3 第一項の規定により日本銀行に納付された金額又は前項の規定により日本銀行が納付した金額は、日本銀行の法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)による所得の計算上、それぞれ益金又は損金に算入しない。
(報告書の提出)
第九条 指定金融機関は、政令で定めるところにより、その預金又は日本銀行に対する預け金の状況に関する報告書を日本銀行に提出しなければならない。
(政令への委任)
第十条 この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 日本銀行法(昭和十七年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
第十三条ノ三第六号を次のように改める。
六 準備預金制度に関する法律第四条ノ規定ニ依ル準備率ノ設定、変更又ハ廃止
3 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。
第四条中第五十八号を第五十九号とし、第三十八号から第五十七号までを一号ずつ繰り下げ、第三十七号の次に次の一号を加える。
三十八 準備預金制度の運用を監督すること。
第十二条第一項中第十四号を第十五号とし、第十一号から第十三号までを一号ずつ繰り下げ、第十号の次に次の一号を加える。
十一 日本銀行の行う準備率の設定、変更又は廃止を認可すること。
第十五条第二項中「第五十三号及び第五十四号」を「第五十四号及び第五十五号」に改める。
第十六条第二項中「第五十五号から第五十七号」を「第五十六号から第五十八号」に改める。
第二十九条中「第四十一号」を「第四十二号」に改める。
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 石井光次郎