天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法
法令番号: 法律第136号
公布年月日: 昭和30年8月5日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

自然災害により農林水産業が度々甚大な被害を受け、経営維持に支障をきたしている現状に対し、これまで災害の都度、特別立法で経営・事業資金の融通を図ってきた。しかし災害が頻発する中、国会休会中は立法措置が遅れ、被害農林漁業者の経営回復が遅延する問題があった。そこで、災害発生の都度の立法に代わる恒久的な基本立法として、農林水産系統金融機関等が資金融通を行う際に、国と地方公共団体が利子補給及び損失補償を行い、円滑かつ低利な資金融通を実現することを目的として本法案を提案するものである。

参照した発言:
第22回国会 衆議院 農林水産委員会 第37号

審議経過

第22回国会

参議院
(昭和30年7月7日)
衆議院
(昭和30年7月8日)
参議院
(昭和30年7月12日)
衆議院
(昭和30年7月15日)
(昭和30年7月18日)
(昭和30年7月20日)
(昭和30年7月21日)
(昭和30年7月22日)
参議院
(昭和30年7月27日)
(昭和30年7月29日)
(昭和30年7月30日)
衆議院
(昭和30年7月25日)
天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十年八月五日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百三十六号
天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法
(目的)
第一条 この法律は、暴風雨、豪雨、地震、暴風浪、高潮、降雪、降霜、低温又は降ひよう等の天災によつて損失を受けた農林漁業者及び農林漁業者の組織する団体に対し、農林漁業の経営等に必要な資金の融通を円滑にする措置を講じて、その経営の安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「被害農業者」とは、農業をおもな業務とする者であつて、天災(当該天災による被害が著しくかつその国民経済に及ぼす影響が大であると認めて政令で指定するものに限る。以下この項において同じ。)によるその農作物又は繭の減収量がその者の平年における収穫量の百分の三十以上であり、かつ、天災による農作物及び繭の減収による損失額がその者の平年における農業による総収入額の百分の十以上である旨の市町村長(全部事務組合又は役場事務組合のある地では、組合管理者。以下同じ。)の認定を受けたものをいい、「被害林業者」とは、林業をおもな業務とする者であつて、天災によりその生産する薪炭(薪炭原木を含む。)、木材、林業用種苗その他の林産物が流失した等のためその者の林業による平年における総収入額の百分の十以上の損失を被つた旨又はその所有する炭がま、しいたけほだ木、わさび育成施設若しくは樹苗育成施設が流失し、損壊した等のため著しい被害を被つた旨の市町村長の認定を受けたものをいい、「被害漁業者」とは、漁業をおもな業務とする者であつて、天災によりその生産する魚類、貝類若しくは海そう類が流失した等のため著しい被害を被つた旨又はその所有する漁船、漁具が沈没し、流失し、滅失し、損壊した等のため著しい被害を被つた旨の市町村長の認定を受けたものをいう。
2 この法律において「被害組合」とは、農業協同組合、農業協同組合連合会、森林組合、森林組合連合会又は水産業協同組合であつて天災(当該天災による被害が特に著しいと認めて政令で指定するものに限る。以下第五項において同じ。)によりその所有し又は管理する施設、在庫品等につき著しい被害を受けたものをいう。
3 この法律において「経営資金」とは、農業協同組合、森林組合、漁業脇同組合(以下「組合」と総称する。)又は金融機関が被害農業者、被害林業者又は被害漁業者(以下「被害農林漁業者」と総称する。)に対し、種苗、肥料、飼料、薬剤、農機具(政令で定めるものに限る。)、薪炭原木、しいたけほだ木、漁具(政令で定めるものに限る。)、稚魚、稚貝、餌料、漁業用燃油等の購入資金、炭がまの構築資金その他農林漁業経営に必要な資金として政令で定める期間内に貸し付ける資金で次の各号に該当するものをいう。
一 市町村長が認定する損失額を基準として政令で定めるところにより算出される額又は十五万円(北海道にあつては二十万円、漁具の購入資金として貸し付けられる場合は一千万円)の範囲内で政令で定める額のどちらか低い額(牛又は馬を所有する被害農業者に貸し付けられる場合は、その額に更に三万円を加えた額)の範囲内のものであること。
二 償還期限が、五年の範囲内において政令で定める期限以内のものであること。
三 利率が、政令で指定する地域における被害農林漁業者に貸し付けられる場合は年三分五厘以内、開拓者に貸し付けられる場合は年五分五厘以内、その他の場合は年六分五厘以内のものであること。
4 既に経営資金の貸付を受けている者がその償還期限内に再び被害農林漁業者に該当することとなつた場合におけるその経営資金については、その償還期限を政令で定めるところにより二年をこえない範囲内で延長する旨の貸付条件の変更があつたときも、前項第二号の規定にかかわらず、これを経営資金とみなす。
5 この法律において「事業資金」とは、農業協同組合連合会、森林組合連合会、漁業協同組合連合会(以下「連合会」と総称する。)又は金融機関が、被害組合に対し、天災により被害を受けたために必要となつた事業運営資金として五百万円(連合会に貸し付けられる場合は一千万円)の範囲内において、償還期限三年以内及び利率年六分五厘以内の条件で政令で定める期間内に貸し付けるものをいう。
(国庫補助)
第三条 政府は、都道府県に対し、予算の範囲内で、次の各号に掲げる経費の全部又は一部を補助する。
一 都道府県が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が貸し付けた経営資金(農業協同組合又は漁業協同組合が農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会又は農林中央金庫その他の金融機関から借り入れた資金をもつて貸し付けたものを除く。以下第三号、第五号及び第七号において同じ。)につき利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
二 都道府県が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該連合会又は当該金融機関に対し利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
三 市町村が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が貸し付けた経営資金につき利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
四 市町村が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該連合会又は当該金融機関に対し利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
五 都道府県が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が経営資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
六 都道府県が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該連合会又は当該金融機関に対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
七 市町村が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が経営資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償するのに要する経費の五分の四以内を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
八 市町村が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、経営資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該連合会又は当該金融機関に対し補償するのに要する経費の五分の四以内を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
九 都道府県が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が貸し付けた事業資金につき利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
十 市町村が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が貸し付けた事業資金につき利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
十一 都道府県が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が事業資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
十二 市町村が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が事業資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償するのに要する経費の四分の三以内を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
2 前項第五号から第八号まで、第十一号及び第十二号の契約には、次の各号に掲げる事項を含まなければならない。
一 当該契約の当事者である農業協同組合、農業協同組合連合会、森林組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会又は農林中央金庫その他の金融機関(以下「融資機関」と総称する。)は、当該契約により損失補償を受けた後も、善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。
二 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これで当該融資について損失補償を受けない損失をうめ、なお残額があるときは、当該契約により都道府県又は市町村から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県又は当該市町村に納付しなければならないこと。
3 第一項第五号から第八号まで、第十一号及び第十二号の損失は、融資元本の償還期限到来後政令で定める期間を経過してなお元本又は利子(政令で定める遅延利子を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合におけるその回収されなかつた金額とする。
第四条 前条第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合における当該補助に係る同項各号に掲げる資金の総額は、それぞれの天災ごとに政令で定める額を限度とする。
2 前条第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金は、同項第一号から第四号まで、第九号及び第十号の経費については当該利子補給額の二分の一に相当する額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額のどちらか低い額の範囲内とし、同項第五号から第八号まで、第十一号及び第十二号の経費については、当該損失補償額の二分の一に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額の百分の二十五に相当する額のどちらか低い額の範囲内とする。ただし、同項第一号から第四号までの経費につき、経営資金の貸付の利率が第二条第三項第三号の規定により年五分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額の二分の一又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年三分の割合で計算した額のどちらか低い額の範囲内とし、年三分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額から当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額を控除した額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年五分五厘の割合で計算した額のどちらか低い額の範囲内とする。
(政府への納付金)
第五条 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、融資機関から同条第二項第二号の契約事項による納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
2 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、当該都道府県から補助金の交付を受けた市町村が融資機関から同条第二項第二号の契約事項によつて納付金を受けたときは、その全部又は一部を当該市町村が都道府県から補助を受けた割合に応じて当該市町村から納付させ、その納付金の全部又は一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
(補助金の打切又は返還)
第六条 政府は、都道府県若しくはその補助を受けた市町村がこの法律若しくはこの法律に基く命令に違反したとき、又は都道府県若しくは市町村と第三条第一項第五号から第八号まで、第十一号及び第十二号の契約を結んだ融資機関が同条第二項各号の契約事項に違反したときは、当該都道府県に対し交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又は既に交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
(報告及び検査)
第七条 農林大臣は、経営資金又は事業資金の貸付が適正に行われているかどうかを知るために必要があると認めるときは、当該資金を貸し付けた組合、連合会若しくは金融機関から報告を徴し、又はその職員をして組合、連合会若しくは金融機関の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
附 則
この法律は、公布の日から施行し、昭和三十年四月一日以降発生した天災に関し適用する。ただし、昭和三十年四月一日から同年五月三十一日までの間に発生した天災に関しては、昭和三十年四月及び五月の凍霜害、水害等の被害農家に対する資金の融通に関する特別措置法(昭和三十年法律第四十五号)の規定による資金の融通を受けない者について、この法律の規定を適用する。
大蔵大臣 一万田尚登
農林大臣 河野一郎
内閣総理大臣 鳩山一郎