急傾斜地帯農業振興臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年五月七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百三十五号
急傾斜地帯農業振興臨時措置法
(目的)
第一條 この法律は、急傾斜地帯における農業生産の基礎條件をすみやかに且つ総合的に整備して農業生産力を高め、もつて農業経営の安定と農民生活の改善とを図り、あわせて国民経済の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「急傾斜地帯」とは、土地の傾斜度及び土じよう浸しよく度が政令で定める基準以上であつて、且つ、過重な労働を必要とする農地が集団的に存在する地帯をいう。
(急傾斜地帯の指定)
第三條 農林大臣は、急傾斜地帯農業振興対策審議会の議決を経て、急傾斜地帯を含む都道府県の全部又は一部の区域を指定する。
2 農林大臣は、前項の指定をしたときは、その旨を公示しなければならない。
3 第一項の指定に係る都道府県の知事は、農林大臣が急傾斜地帯農業振興対策審議会の議決を経て定める基準に従つて、市町村の全部又は一部の区域を急傾斜地帯として指定する。
4 都道府県知事は、前項の指定をしたときは、その旨を公示するとともに農林大臣に報告しなければならない。
(市町村長の定める農業振興計画)
第四條 前條第三項の指定に係る市町村の長は、当該地帯についての農業振興計画を定め、これを当該都道府県知事に提出するとともにその要旨を公表しなければならない。
2 市町村長は、前項の規定により農業振興計画を定めるには、あらかじめ、公聴会を開いて関係人の意見を聞き、且つ、議会の議決を経なければならない。
(都道府県知事の定める農業振興計画)
第五條 都道府県知事は、前條第一項の農業振興計画を参しやくして急傾斜地帯についての当該都道府県の農業振興計画を定め、これを農林大臣に提出するとともにその要旨を公表しなければならない。
2 都道府県知事が前項の規定により農業振興計画を定める場合には、前條第二項の規定を準用する。
(農林大臣の定める農業振興計画)
第六條 農林大臣は、前條の農業振興計画を参しやくし、急傾斜地帯農業振興対策審議会の議決を経て、急傾斜地帯についての国の農業振興計画を定めなければならない。
2 農林大臣は、前項の規定により農業振興計画を定めたときは、これを当該都道府県知事に通知するとともにその要旨を公表しなければならない。
3 政府は、毎年度、国の財政の許す範囲内において、第一項の農業振興計画を実施するために必要な経費を予算に計上しなければならない。
4 政府は、毎年度、第一項の農業振興計画を実施するために必要な資金の融通又はそのあつ旋につき計画を定め、その要旨を公表しなければならない。
(都道府県知事の定める農業振興計画の変更)
第七條 都道府県知事は、前條第二項の通知を受けたときは、第五條の規定により定めた当該都道府県の農業振興計画を、必要に応じて変更し又は変更しないで当該市町村長に通知するとともに、変更した場合には、その変更の要旨を公表しなければならない。
2 都道府県知事が前項の規定により農業振興計画を変更する場合には、第四條第二項の規定を準用する。
(市町村長の定める農業振興計画の変更)
第八條 市町村長は、前條の通知を受けた場合に必要があると認めるときは、第四條第一項の規定により定めた当該市町村の農業振興計画を変更することができる。この場合には、その変更の要旨を公表しなければならない。
2 市町村長が前項の規定により農業振興計画を変更する場合には、第四條第二項の規定を準用する。
(事情の変更による農業振興計画の変更)
第九條 農林大臣、都道府県知事又は市町村長は、国、当該都道府県又は当該市町村の農業振興計画を定める基礎となつた事情が著しく変更したときは、それぞれ、農業振興計画を定める場合の例により、その定めた農業振興計画を変更することができる。
(農業振興計画の内容)
第十條 農業振興計画は、左に掲げる事項を含むものとする。
一 農地の保全及び改良に関する事項
二 農業用道路の整備その他過重労働の軽減に関する事項
三 農業技術の改良及び農業経営の合理化に関する事項
四 農畜産物の加工、販売その他処理についての共同施設に関する事項
(事業の実施)
第十一條 第四條から第九條までに規定する農業振興計画に基く農業振興事業は、この法律に定めるものの外、当該事業に関する法律(これに基く命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。
(委任事項)
第十二條 第四條から前條までに定めるものを除く外、農業振興計画の決定について必要な事項は、省令で定める。
(全部事務組合及び役場事務組合の特例)
第十三條 この法律中町村又は町村長に関する規定は、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては、組合又は組合の管理者に適用する。
(急傾斜地帯農業振興対策審議会の設置及び権限)
第十四條 この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項その他急傾斜地帯における農業振興に関する重要事項を調査審議するために、農林省に急傾斜地帯農業振興対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、急傾斜地帯における農業振興に関する重要事項につき、関係行政機関の長に対し意見を申し出ることができる。
(審議会の組織等)
第十五條 審議会は、左に掲げる者につき、農林大臣が任命する委員十七人以内で組織する。
一 地方自治庁次長
二 大蔵事務次官
三 農林事務次官
四 経済安定本部副長官
五 都道府県知事 二人
六 都道府県議会議長 二人
七 市町村長 二人
八 市町村議会議長 二人
九 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学の教授 二人
十 農業者の団体を代表する者 三人以内
2 前項第五号から第十号までに掲げる者につき任命された委員の任期は、二年とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。
4 会長は、会務を総理する。
5 審議会は、あらかじめ、委員の中から、会長に事故がある場合に会長の職務を代行する者を定めておかなければならない。
6 専門の事項を調査審議させるために、審議会に、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験を有する者の中から、審議会の推薦に基いて、農林大臣が任命する。
8 委員及び専門委員は、非常勤とする。
9 前各項に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、昭和三十二年三月三十一日限りその効力を失う。
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第三十四條第一項の表中繭糸価格安定審議会の項の次に次の一項を加える。
急傾斜地帯農業振興対策審議会
急傾斜地帯農業振興臨時措置法(昭和二十七年法律第百三十五号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 広川弘禅
経済安定本部総裁 吉田茂
急傾斜地帯農業振興臨時措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年五月七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百三十五号
急傾斜地帯農業振興臨時措置法
(目的)
第一条 この法律は、急傾斜地帯における農業生産の基礎条件をすみやかに且つ総合的に整備して農業生産力を高め、もつて農業経営の安定と農民生活の改善とを図り、あわせて国民経済の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「急傾斜地帯」とは、土地の傾斜度及び土じよう浸しよく度が政令で定める基準以上であつて、且つ、過重な労働を必要とする農地が集団的に存在する地帯をいう。
(急傾斜地帯の指定)
第三条 農林大臣は、急傾斜地帯農業振興対策審議会の議決を経て、急傾斜地帯を含む都道府県の全部又は一部の区域を指定する。
2 農林大臣は、前項の指定をしたときは、その旨を公示しなければならない。
3 第一項の指定に係る都道府県の知事は、農林大臣が急傾斜地帯農業振興対策審議会の議決を経て定める基準に従つて、市町村の全部又は一部の区域を急傾斜地帯として指定する。
4 都道府県知事は、前項の指定をしたときは、その旨を公示するとともに農林大臣に報告しなければならない。
(市町村長の定める農業振興計画)
第四条 前条第三項の指定に係る市町村の長は、当該地帯についての農業振興計画を定め、これを当該都道府県知事に提出するとともにその要旨を公表しなければならない。
2 市町村長は、前項の規定により農業振興計画を定めるには、あらかじめ、公聴会を開いて関係人の意見を聞き、且つ、議会の議決を経なければならない。
(都道府県知事の定める農業振興計画)
第五条 都道府県知事は、前条第一項の農業振興計画を参しやくして急傾斜地帯についての当該都道府県の農業振興計画を定め、これを農林大臣に提出するとともにその要旨を公表しなければならない。
2 都道府県知事が前項の規定により農業振興計画を定める場合には、前条第二項の規定を準用する。
(農林大臣の定める農業振興計画)
第六条 農林大臣は、前条の農業振興計画を参しやくし、急傾斜地帯農業振興対策審議会の議決を経て、急傾斜地帯についての国の農業振興計画を定めなければならない。
2 農林大臣は、前項の規定により農業振興計画を定めたときは、これを当該都道府県知事に通知するとともにその要旨を公表しなければならない。
3 政府は、毎年度、国の財政の許す範囲内において、第一項の農業振興計画を実施するために必要な経費を予算に計上しなければならない。
4 政府は、毎年度、第一項の農業振興計画を実施するために必要な資金の融通又はそのあつ旋につき計画を定め、その要旨を公表しなければならない。
(都道府県知事の定める農業振興計画の変更)
第七条 都道府県知事は、前条第二項の通知を受けたときは、第五条の規定により定めた当該都道府県の農業振興計画を、必要に応じて変更し又は変更しないで当該市町村長に通知するとともに、変更した場合には、その変更の要旨を公表しなければならない。
2 都道府県知事が前項の規定により農業振興計画を変更する場合には、第四条第二項の規定を準用する。
(市町村長の定める農業振興計画の変更)
第八条 市町村長は、前条の通知を受けた場合に必要があると認めるときは、第四条第一項の規定により定めた当該市町村の農業振興計画を変更することができる。この場合には、その変更の要旨を公表しなければならない。
2 市町村長が前項の規定により農業振興計画を変更する場合には、第四条第二項の規定を準用する。
(事情の変更による農業振興計画の変更)
第九条 農林大臣、都道府県知事又は市町村長は、国、当該都道府県又は当該市町村の農業振興計画を定める基礎となつた事情が著しく変更したときは、それぞれ、農業振興計画を定める場合の例により、その定めた農業振興計画を変更することができる。
(農業振興計画の内容)
第十条 農業振興計画は、左に掲げる事項を含むものとする。
一 農地の保全及び改良に関する事項
二 農業用道路の整備その他過重労働の軽減に関する事項
三 農業技術の改良及び農業経営の合理化に関する事項
四 農畜産物の加工、販売その他処理についての共同施設に関する事項
(事業の実施)
第十一条 第四条から第九条までに規定する農業振興計画に基く農業振興事業は、この法律に定めるものの外、当該事業に関する法律(これに基く命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。
(委任事項)
第十二条 第四条から前条までに定めるものを除く外、農業振興計画の決定について必要な事項は、省令で定める。
(全部事務組合及び役場事務組合の特例)
第十三条 この法律中町村又は町村長に関する規定は、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては、組合又は組合の管理者に適用する。
(急傾斜地帯農業振興対策審議会の設置及び権限)
第十四条 この法律の規定によりその権限に属せしめられた事項その他急傾斜地帯における農業振興に関する重要事項を調査審議するために、農林省に急傾斜地帯農業振興対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、急傾斜地帯における農業振興に関する重要事項につき、関係行政機関の長に対し意見を申し出ることができる。
(審議会の組織等)
第十五条 審議会は、左に掲げる者につき、農林大臣が任命する委員十七人以内で組織する。
一 地方自治庁次長
二 大蔵事務次官
三 農林事務次官
四 経済安定本部副長官
五 都道府県知事 二人
六 都道府県議会議長 二人
七 市町村長 二人
八 市町村議会議長 二人
九 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学の教授 二人
十 農業者の団体を代表する者 三人以内
2 前項第五号から第十号までに掲げる者につき任命された委員の任期は、二年とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。
4 会長は、会務を総理する。
5 審議会は、あらかじめ、委員の中から、会長に事故がある場合に会長の職務を代行する者を定めておかなければならない。
6 専門の事項を調査審議させるために、審議会に、専門委員を置くことができる。
7 専門委員は、関係行政機関の職員及び学識経験を有する者の中から、審議会の推薦に基いて、農林大臣が任命する。
8 委員及び専門委員は、非常勤とする。
9 前各項に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、昭和三十二年三月三十一日限りその効力を失う。
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第三十四条第一項の表中繭糸価格安定審議会の項の次に次の一項を加える。
急傾斜地帯農業振興対策審議会
急傾斜地帯農業振興臨時措置法(昭和二十七年法律第百三十五号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 広川弘禅
経済安定本部総裁 吉田茂