自動車抵当法
法令番号: 法律第187号
公布年月日: 昭和26年6月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

自動車運送事業の発展と自動車輸送の振興のため、老朽車から新車への更新による車両保安度向上と、そのための金融円滑化が急務である。現行の金融取引では自動車担保は所有権留保か譲渡担保しかなく、法的に不備で取引の安全性を損なっている。この問題を解決するため、道路運送車両法による車両検査・登録制度と連携した動産抵当制度を導入する。登録自動車を抵当権の対象とし、自動車登録原簿に抵当権の得喪変更を登録することで対抗力を付与する制度を確立し、金融の円滑化を図る。

参照した発言:
第10回国会 衆議院 運輸委員会 第19号

審議経過

第10回国会

衆議院
(昭和26年3月31日)
参議院
(昭和26年3月31日)
(昭和26年5月10日)
衆議院
(昭和26年5月15日)
参議院
衆議院
(昭和26年5月19日)
(昭和26年5月21日)
(昭和26年5月24日)
参議院
(昭和26年5月24日)
(昭和26年5月25日)
衆議院
(昭和26年5月26日)
(昭和26年5月26日)
参議院
(昭和26年5月26日)
(昭和26年5月28日)
衆議院
(昭和26年6月5日)
参議院
(昭和26年6月6日)
自動車抵当法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十七号
自動車抵当法
(この法律の目的)
第一條 この法律は、自動車に関する動産信用の増進により、自動車運送事業の健全な発達及び自動車による輸送の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二條 この法律で「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)による登録を受けた自動車で軽自動車及び二輪の小型自動車以外のものをいう。
(抵当権の目的)
第三條 自動車は、抵当権の目的とすることができる。
(抵当権の内容)
第四條 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移さないで債務の担保に供した自動車(以下「抵当自動車」という。)につき、他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受けることができる。
(対抗要件)
第五條 自動車の抵当権の得喪及び変更は、道路運送車両法に規定する自動車登録原簿に登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の登録に関する事項は、政令で定める。
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第六條 抵当権は、抵当自動車に附加して一体となつている物に及ぶ。但し、設定行為に別段の定がある場合及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四條の規定により他の債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
(不可分性)
第七條 抵当権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、抵当自動車の全部につき、その権利を行使することができる。
(物上代位)
第八條 抵当権は、抵当自動車の譲渡、貸付、滅失又はき損によつて抵当権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、これを行使することができる。
この場合においては、その拂渡又は引渡前に差押をしなければならない。
(物上保証人の求償権)
第九條 他人の債務を担保するため抵当権を設定した者がその債務を弁済し、又は抵当権の実行によつて抵当自動車の所有権を失つたときは、民法に規定する保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
(抵当権の順位)
第十條 数個の債権を担保するため同一の自動車につき抵当権を設定したときは、その抵当権の順位は、登録の前後による。
(先取特権との順位)
第十一條 同一の自動車について抵当権及び先取特権が競合する場合には、抵当権は、民法第三百三十條第一項に規定する第一順位の先取特権と同順位とする。
(担保される利息等)
第十二條 抵当権者が利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となつた最後の二年分についてのみその抵当権を行使することができる。
2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によつて生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合においてその最後の二年分についても適用する。但し、利息その他の定期金と通算して二年分をこえることができない。
(代価弁済)
第十三條 抵当自動車を譲り受けた第三者が抵当権者の請求に応じてその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
(第三取得者の費用償還請求権)
第十四條 抵当自動車を取得した第三者が抵当自動車につき必要費又は有益費を出したときは、民法第百九十六條の区別に従い、抵当自動車の代価をもつて最も先にその償還を受けることができる。
(一般財産からの弁済)
第十五條 抵当権者は、抵当自動車の代価で弁済を受けない債権の部分についてのみ他の財産から弁済を受けることができる。
2 前項の規定は、抵当自動車の代価に先だつて他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。
3 前項の場合において、抵当権者に第一項の規定による弁済を受けさせるため、他の債権者は、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。
(抵当権者に対する通知)
第十六條 陸運局長は、抵当自動車について道路運送車両法によるまつ消登録をしたときは、遅滞なく、抵当権者に通知しなければならない。同法第十六條の規定による申請を受理したときも同様である。
(抵当権の実行)
第十七條 抵当権者は、前條後段の通知を受けたときは、その自動車に対して、直ちに、その権利を実行することができる。
2 前項の規定により抵当権を実行しようとするときは、抵当権者は、前條後段の通知を受けた日から三箇月以内に、その手続をしなければならない。
3 陸運局長は、前項の規定により抵当権の実行の手続をすることができる期間内及び抵当権の実行の終るまでの期間内は、第一項の自動車についてまつ消登録をすることができない。
4 競落を許す決定が確定したときは、第一項の自動車について道路運送車両法第十六條の規定による申請がなかつたものとみなす。
(時効による消滅)
第十八條 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によつて消滅しない。
第十九條 債務者又は抵当権設定者以外の者が抵当自動車につき取得時効に必要な條件を具備した占有をしたときは、抵当権は、これによつて消滅する。
(質権設定の禁止)
第二十條 自動車は、質権の目的とすることができない。
附 則
この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。
法務総裁 大橋武夫
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂
自動車抵当法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十七号
自動車抵当法
(この法律の目的)
第一条 この法律は、自動車に関する動産信用の増進により、自動車運送事業の健全な発達及び自動車による輸送の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)による登録を受けた自動車で軽自動車及び二輪の小型自動車以外のものをいう。
(抵当権の目的)
第三条 自動車は、抵当権の目的とすることができる。
(抵当権の内容)
第四条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移さないで債務の担保に供した自動車(以下「抵当自動車」という。)につき、他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受けることができる。
(対抗要件)
第五条 自動車の抵当権の得喪及び変更は、道路運送車両法に規定する自動車登録原簿に登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の登録に関する事項は、政令で定める。
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第六条 抵当権は、抵当自動車に附加して一体となつている物に及ぶ。但し、設定行為に別段の定がある場合及び民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条の規定により他の債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
(不可分性)
第七条 抵当権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、抵当自動車の全部につき、その権利を行使することができる。
(物上代位)
第八条 抵当権は、抵当自動車の譲渡、貸付、滅失又はき損によつて抵当権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、これを行使することができる。
この場合においては、その払渡又は引渡前に差押をしなければならない。
(物上保証人の求償権)
第九条 他人の債務を担保するため抵当権を設定した者がその債務を弁済し、又は抵当権の実行によつて抵当自動車の所有権を失つたときは、民法に規定する保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
(抵当権の順位)
第十条 数個の債権を担保するため同一の自動車につき抵当権を設定したときは、その抵当権の順位は、登録の前後による。
(先取特権との順位)
第十一条 同一の自動車について抵当権及び先取特権が競合する場合には、抵当権は、民法第三百三十条第一項に規定する第一順位の先取特権と同順位とする。
(担保される利息等)
第十二条 抵当権者が利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となつた最後の二年分についてのみその抵当権を行使することができる。
2 前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によつて生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合においてその最後の二年分についても適用する。但し、利息その他の定期金と通算して二年分をこえることができない。
(代価弁済)
第十三条 抵当自動車を譲り受けた第三者が抵当権者の請求に応じてその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
(第三取得者の費用償還請求権)
第十四条 抵当自動車を取得した第三者が抵当自動車につき必要費又は有益費を出したときは、民法第百九十六条の区別に従い、抵当自動車の代価をもつて最も先にその償還を受けることができる。
(一般財産からの弁済)
第十五条 抵当権者は、抵当自動車の代価で弁済を受けない債権の部分についてのみ他の財産から弁済を受けることができる。
2 前項の規定は、抵当自動車の代価に先だつて他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。
3 前項の場合において、抵当権者に第一項の規定による弁済を受けさせるため、他の債権者は、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。
(抵当権者に対する通知)
第十六条 陸運局長は、抵当自動車について道路運送車両法によるまつ消登録をしたときは、遅滞なく、抵当権者に通知しなければならない。同法第十六条の規定による申請を受理したときも同様である。
(抵当権の実行)
第十七条 抵当権者は、前条後段の通知を受けたときは、その自動車に対して、直ちに、その権利を実行することができる。
2 前項の規定により抵当権を実行しようとするときは、抵当権者は、前条後段の通知を受けた日から三箇月以内に、その手続をしなければならない。
3 陸運局長は、前項の規定により抵当権の実行の手続をすることができる期間内及び抵当権の実行の終るまでの期間内は、第一項の自動車についてまつ消登録をすることができない。
4 競落を許す決定が確定したときは、第一項の自動車について道路運送車両法第十六条の規定による申請がなかつたものとみなす。
(時効による消滅)
第十八条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によつて消滅しない。
第十九条 債務者又は抵当権設定者以外の者が抵当自動車につき取得時効に必要な条件を具備した占有をしたときは、抵当権は、これによつて消滅する。
(質権設定の禁止)
第二十条 自動車は、質権の目的とすることができない。
附 則
この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。
法務総裁 大橋武夫
運輸大臣 山崎猛
内閣総理大臣 吉田茂