航路標識法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年五月二十四日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第九十九号
航路標識法
(この法律の目的及び用語の定義)
第一條 この法律は、航路標識を整備し、その合理的且つ能率的な運営を図ることによつて船舶交通の安全を確保し、あわせて船舶の運航能率の増進を図ることを目的とする。
2 この法律において「航路標識」とは、燈光、形象、彩色、音響、電波等の手段により港、湾、海峽その他の日本國の沿岸水域を航行する船舶の指標とするための燈台、燈標、立標、浮標、霧信号所、無線方位信号所その他の施設をいう。
(航路標識の設置及び管理)
第二條 航路標識の設置及び管理は、海上保安廳が行う。但し、海上保安廳以外の者においても、その者が行う事業又は事務の用に供するため、省令の定めるところにより海上保安廳長官の許可を受けて、その者の費用で、航路標識を設置し、又は管理することができる。
第三條 前條但書の規定により許可を受けて設置した航路標識の所有者又は管理者は、当該航路標識の機能に支障が生じないように努めなければならない。
2 海上保安廳以外の者が設置した航路標識がその所有者又は管理者の責に帰すべき事由又は通常予想すべき事由によつて、その機能に支障をきたし、船舶交通の安全に障害を生じたときは、海上保安廳長官は、当該所有者又は管理者に対し、その障害の除去のために必要な措置をすべきことを命ずることができる。
第四條 前條第二項に規定する場合の外、船舶交通の安全を図るため必要があると認めるときは、海上保安廳長官は、海上保安廳以外の者が設置した航路標識の所有者又は管理者に対し、当該航路標識の改善、移轉、撤去その他必要な措置をすべきことを命ずることができる。
2 船舶交通の安全を図るために特に必要があると認めるときは、海上保安廳長官は、省令の定めるところにより、海上保安廳以外の者が設置し、又は管理する航路標識を直接に管理し、又は收用することができる。
(航路標識の現状の変更)
第五條 海上保安廳以外の者が設置した航路標識の管理者が、その航路標識を廃止し、その位置を変更し、その他その現状を変更しようとするときは、省令の定めるところにより、海上保安廳長官の許可を受けなければならない。
2 前項の管理者は、その管理している航路標識の現状に変更があつたときは、省令の定めるところにより、直ちに、その旨を海上保安廳長官に報告しなければならない。
(航路標識の告示)
第六條 海上保安廳長官は、航路標識が新たに設置されたとき、又は航路標識の廃止、位置の変更その他その現状に変更があつたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
(事故発見者の報告義務)
第七條 航路標識に事故のあることを発見した者は、直ちに、その旨を海上保安廳又はもよりの海上保安廳の事務所に通報しなければならない。
(燈火等の制限)
第八條 何人も、みだりに航路標識と誤認される虞がある燈火を使用し、又は音響を発してはならない。
2 海上保安官は、前項に規定する行爲をし、又はしようとしている者に対し、当該燈火又は音響の消滅その他航路標識と誤認されないようにするため必要な措置をすべきことを命ずることができる。
(工事等の制限)
第九條 航路標識の機能の障害となる虞のある建築物の建設、沈沒物の引揚その他の工事又は作業をする者は、その障害を防ぐため必要な措置をしなければならない。
2 海上保安廳長官は、前項に規定する工事又は作業についてその権原を有する者に対し、航路標識の機能の障害を防ぐため必要な措置をすべきことを命ずることができる。
(植物についての制限)
第十條 何人も、航路標識の附近に、当該航路標識の視認を妨げる虞のある植物を植えてはならない。
2 海上保安廳長官は、前項の規定に違反して植えられた植物についてその権原を有する者に対し、当該植物の航路標識の障害となる部分の除去、移植その他必要な措置をすべきことを命ずることができる。植物が成長して航路標識の視認を妨げるに至つたときも同樣である。
3 航路標識を設置したときに現にあつた植物が当該航路標識の視認を妨げ、又は妨げるようになつたときは、海上保安廳長官は、その権原を有する者に対し、障害となる部分の除去、移植その他必要な措置をすべきことを命ずることができる。
(船舶についての制限)
第十一條 船舶(はしけ、いかだその他の船舶に類似する工作物を含む。以下同じ。)は、みだりに航路標識に損傷を及ぼす虞のあるほどこれに接近して航行させてはならない。
2 船舶は、航路標識にけい留させてはならない。
3 船舶は、航路標識の視認を妨げ、又は航路標識に接触する虞のある場所に停泊又は停留させてはならない。
(汚損行爲の禁止)
第十二條 何人も、航路標識をよごし、又は損傷を及ぼす虞のある行爲をしてはならない。
(損失補償)
第十三條 第四條第一項若しくは第二項又は第十條第三項の規定によつて生じた損失に対しては、左に定めるところにより補償をするものとする。
一 補償の額は、第四條第一項の場合にあつては当該航路標識の改善、移轉、撤去その他の措置をするのに通常要すべき費用、同條第二項の規定により航路標識を收用する場合にあつては当該航路標識を建設するとすれば通常要すべき費用から当該航路標識の減價部分に相当する額を控除した額、第十條第三項の場合にあつては植物の障害となる部分の除去、移植その他の措置をするのに通常要すべき費用及び時價によつて算定した当該植物についての損失額に相当する金額とする。
二 補償を受けようとする者は、海上保安廳長官に、補償を受けたいと思う金額を記載した申請書を提出しなければならない。
三 海上保安廳長官は、前号の申請があつたときは、遅滯なく、補償すべき金額を決定しなければならない。この場合において海上保安廳長官は、当該申請人に対しあらかじめ期日及び場所を通知してその申立を聞かなければならない。
四 前号の決定について不服のある者は、運輸大臣に訴願をすることができる。
五 前号の規定は、損失を受けた者が裁判所に訴を提起することを妨げるものではない。
(聽問)
第十四條 海上保安廳長官又は海上保安官は、第八條第二項、第九條第二項及び第十條第二項若しくは第三項の命令をしようとするときは、緊急やむを得ない場合を除いて、関係人に対しあらかじめ期日及び場所を通知して聽問をしなければならない。当該関係人は、聽問の場所において意見を述べることができる。
(訴願)
第十五條 第八條第二項、第九條第二項及び第十條第二項若しくは第三項の規定による命令に不服のある者は、運輸大臣に訴願することができる。この場合において運輸大臣は、相当と認めるときは、海上保安廳長官又は海上保安官の命令を取り消すことができる。
(罰則)
第十六條 第十一條の規定に違反した者は、一万円以下の罰金に処する。
第十七條 左の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。
一 第八條第二項、第九條第二項又は第十條第二項若しくは第三項の規定による命令に違反した者
二 第十二條の規定に違反した者
附 則
1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。
2 航路標識條例(明治二十一年勅令第六十七号)は、廃止する。
3 航路標識條例第一條又は第二條第一項の規定により設置された航路標識であつて、この法律施行の際、現に海上保安廳以外の者が管理するものは、第二條の規定により海上保安廳長官の許可を受けて設置し、及び管理するものとみなす。
4 航路標識條例の廃止前にした行爲に対する罰則の適用については、なお從前の例による。
運輸大臣 大屋晋三
内閣総理大臣 吉田茂
航路標識法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年五月二十四日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第九十九号
航路標識法
(この法律の目的及び用語の定義)
第一条 この法律は、航路標識を整備し、その合理的且つ能率的な運営を図ることによつて船舶交通の安全を確保し、あわせて船舶の運航能率の増進を図ることを目的とする。
2 この法律において「航路標識」とは、灯光、形象、彩色、音響、電波等の手段により港、湾、海峡その他の日本国の沿岸水域を航行する船舶の指標とするための灯台、灯標、立標、浮標、霧信号所、無線方位信号所その他の施設をいう。
(航路標識の設置及び管理)
第二条 航路標識の設置及び管理は、海上保安庁が行う。但し、海上保安庁以外の者においても、その者が行う事業又は事務の用に供するため、省令の定めるところにより海上保安庁長官の許可を受けて、その者の費用で、航路標識を設置し、又は管理することができる。
第三条 前条但書の規定により許可を受けて設置した航路標識の所有者又は管理者は、当該航路標識の機能に支障が生じないように努めなければならない。
2 海上保安庁以外の者が設置した航路標識がその所有者又は管理者の責に帰すべき事由又は通常予想すべき事由によつて、その機能に支障をきたし、船舶交通の安全に障害を生じたときは、海上保安庁長官は、当該所有者又は管理者に対し、その障害の除去のために必要な措置をすべきことを命ずることができる。
第四条 前条第二項に規定する場合の外、船舶交通の安全を図るため必要があると認めるときは、海上保安庁長官は、海上保安庁以外の者が設置した航路標識の所有者又は管理者に対し、当該航路標識の改善、移転、撤去その他必要な措置をすべきことを命ずることができる。
2 船舶交通の安全を図るために特に必要があると認めるときは、海上保安庁長官は、省令の定めるところにより、海上保安庁以外の者が設置し、又は管理する航路標識を直接に管理し、又は収用することができる。
(航路標識の現状の変更)
第五条 海上保安庁以外の者が設置した航路標識の管理者が、その航路標識を廃止し、その位置を変更し、その他その現状を変更しようとするときは、省令の定めるところにより、海上保安庁長官の許可を受けなければならない。
2 前項の管理者は、その管理している航路標識の現状に変更があつたときは、省令の定めるところにより、直ちに、その旨を海上保安庁長官に報告しなければならない。
(航路標識の告示)
第六条 海上保安庁長官は、航路標識が新たに設置されたとき、又は航路標識の廃止、位置の変更その他その現状に変更があつたときは、直ちに、その旨を告示しなければならない。
(事故発見者の報告義務)
第七条 航路標識に事故のあることを発見した者は、直ちに、その旨を海上保安庁又はもよりの海上保安庁の事務所に通報しなければならない。
(灯火等の制限)
第八条 何人も、みだりに航路標識と誤認される虞がある灯火を使用し、又は音響を発してはならない。
2 海上保安官は、前項に規定する行為をし、又はしようとしている者に対し、当該灯火又は音響の消滅その他航路標識と誤認されないようにするため必要な措置をすべきことを命ずることができる。
(工事等の制限)
第九条 航路標識の機能の障害となる虞のある建築物の建設、沈没物の引揚その他の工事又は作業をする者は、その障害を防ぐため必要な措置をしなければならない。
2 海上保安庁長官は、前項に規定する工事又は作業についてその権原を有する者に対し、航路標識の機能の障害を防ぐため必要な措置をすべきことを命ずることができる。
(植物についての制限)
第十条 何人も、航路標識の附近に、当該航路標識の視認を妨げる虞のある植物を植えてはならない。
2 海上保安庁長官は、前項の規定に違反して植えられた植物についてその権原を有する者に対し、当該植物の航路標識の障害となる部分の除去、移植その他必要な措置をすべきことを命ずることができる。植物が成長して航路標識の視認を妨げるに至つたときも同様である。
3 航路標識を設置したときに現にあつた植物が当該航路標識の視認を妨げ、又は妨げるようになつたときは、海上保安庁長官は、その権原を有する者に対し、障害となる部分の除去、移植その他必要な措置をすべきことを命ずることができる。
(船舶についての制限)
第十一条 船舶(はしけ、いかだその他の船舶に類似する工作物を含む。以下同じ。)は、みだりに航路標識に損傷を及ぼす虞のあるほどこれに接近して航行させてはならない。
2 船舶は、航路標識にけい留させてはならない。
3 船舶は、航路標識の視認を妨げ、又は航路標識に接触する虞のある場所に停泊又は停留させてはならない。
(汚損行為の禁止)
第十二条 何人も、航路標識をよごし、又は損傷を及ぼす虞のある行為をしてはならない。
(損失補償)
第十三条 第四条第一項若しくは第二項又は第十条第三項の規定によつて生じた損失に対しては、左に定めるところにより補償をするものとする。
一 補償の額は、第四条第一項の場合にあつては当該航路標識の改善、移転、撤去その他の措置をするのに通常要すべき費用、同条第二項の規定により航路標識を収用する場合にあつては当該航路標識を建設するとすれば通常要すべき費用から当該航路標識の減価部分に相当する額を控除した額、第十条第三項の場合にあつては植物の障害となる部分の除去、移植その他の措置をするのに通常要すべき費用及び時価によつて算定した当該植物についての損失額に相当する金額とする。
二 補償を受けようとする者は、海上保安庁長官に、補償を受けたいと思う金額を記載した申請書を提出しなければならない。
三 海上保安庁長官は、前号の申請があつたときは、遅滞なく、補償すべき金額を決定しなければならない。この場合において海上保安庁長官は、当該申請人に対しあらかじめ期日及び場所を通知してその申立を聞かなければならない。
四 前号の決定について不服のある者は、運輸大臣に訴願をすることができる。
五 前号の規定は、損失を受けた者が裁判所に訴を提起することを妨げるものではない。
(聴問)
第十四条 海上保安庁長官又は海上保安官は、第八条第二項、第九条第二項及び第十条第二項若しくは第三項の命令をしようとするときは、緊急やむを得ない場合を除いて、関係人に対しあらかじめ期日及び場所を通知して聴問をしなければならない。当該関係人は、聴問の場所において意見を述べることができる。
(訴願)
第十五条 第八条第二項、第九条第二項及び第十条第二項若しくは第三項の規定による命令に不服のある者は、運輸大臣に訴願することができる。この場合において運輸大臣は、相当と認めるときは、海上保安庁長官又は海上保安官の命令を取り消すことができる。
(罰則)
第十六条 第十一条の規定に違反した者は、一万円以下の罰金に処する。
第十七条 左の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。
一 第八条第二項、第九条第二項又は第十条第二項若しくは第三項の規定による命令に違反した者
二 第十二条の規定に違反した者
附 則
1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。
2 航路標識条例(明治二十一年勅令第六十七号)は、廃止する。
3 航路標識条例第一条又は第二条第一項の規定により設置された航路標識であつて、この法律施行の際、現に海上保安庁以外の者が管理するものは、第二条の規定により海上保安庁長官の許可を受けて設置し、及び管理するものとみなす。
4 航路標識条例の廃止前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
運輸大臣 大屋晋三
内閣総理大臣 吉田茂