朕は帝國議会の協賛を経た土地台帳法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
大藏大臣 石橋湛山
法律第三十号
土地台帳法目次
第一章
総則
第二章
賃貸價格の調査及び決定
第三章
土地の異動
第一節
第一種地及び第二種地の轉換
第二節
分筆及び合筆
第三節
地目変換
第四章
審査、訴願及び訴訟
第五章
雜則
第六章
罰則
土地台帳法
第一章 総則
第一條 この法律の施行地にある土地については、その状況を明確に把握し、地租の課税標準たる土地の賃貸價格の均衡適正を図るため、この法律の定めるところにより、土地台帳に必要な事項の登録を行う。
第二條 土地は、これを第一種地及び第二種地とする。
第三條 第一種地は、第二項に規定する土地以外の土地をいう。
第二種地は、左に掲げる土地をいう。但し、第二号乃至第六号に掲げる土地で有料借地たるものを除く。
一 都道府縣又は市町村の所有する土地
二 國、都道府縣、市町村その他命令で定める公共團体において公用又は公共の用に供する土地
三 墳墓地
四 公衆用道路、鉄道用地、軌道用地、運河用地
五 用惡水路、溜池、堤塘、井溝
六 保安林
七 その他命令で定めるもの
第四條 土地には、一筆ごとに地番を附し、その地目、地積及び賃貸價格を定める。但し、第二種地については、賃貸價格は、これを定めない。
第五條 政府は、土地台帳を備え、左の事項を登録する。
一 土地の所在
二 地番
三 地目
四 地積
五 賃貸價格
六 所有者の住所及び氏名又は名称
七 質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地についてはその質権者又は地上権者住所及び氏名又は名称
この法律を定めるものの外、土地台帳に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六條 地番は、市町村、大字、字又はこれらに準ずべき地域を以て地番区域とし、その区域ごとに起番して、これを定める。
第七條 第一種地の地目は、田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雜種地に区別して、これを定める。
第二種地の地目は、第三條第二項第三号乃至第六号の土地にあつては、各ゝその区別により、その他の土地にあつては、その現況により適当に区別して、これを定める。
第八條 地積は、左の各号の規定により、これを定める。
一 宅地及び鉱泉地の地積は、平方メートルを單位としてこれを定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、これを切り捨てる。
二 宅地及び鉱泉地以外の土地の地積は、アールを單位としてこれを定め、一アールの百分の一未満の端数は、これを切り捨てる。但し、一筆の地積が一アールの百分の一未満のものについては、一アールの一万分の一未満の端数は、これを切り捨てる。
第九條 賃貸價格は、貸主が公租公課、修繕費その他土地の維持に必要な経費を負担する條件でこれを賃貸する場合において貸主の收得すべき一年分の金額により、これを定める。
第十條 土地の異動があつた場合においては、地番、地目、地積及び賃貸價格は土地所有者の申告により、申告がないとき若しくは申告を不相当と認めるとき又は申告を要しないときは、政府の調査により、政府がこれを定める。
第二章 賃貸價格の調査及び決定
第十一條 賃貸價格は、十年ごとに、一般にこれを改定する。
第十二條 賃貸價格を一般に定める場合においては、その賃貸價格は、これを定める年の前前年四月一日現在の賃貸價格の定のある土地につき、各地目ごとに土地の状況が類似する区域を一区域とし、その区域内において標準となるべき賃貸價格によつて、これを定める。
前項の標準となるべき賃貸價格の算定に関する事項は、命令でこれを定める。
第十三條 前條第一項の区域及びその区域内において標準となるべき賃貸價格は、土地賃貸價格調査委員会に諮問して、政府がこれを定める。
土地賃貸價格調査委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十四條 政府は、前條第一項の規定により第十二條第一項の区域及びその区域内において標準となるべき賃貸價格を定めたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
市町村長は、前項の通知を受けたときは、二十日間関係者の縱覽に供しなければならない。縱覽期間は、予めこれを公示しなければならない。
第十五條 賃貸價格を一般に定める年の前前年四月二日以後賃貸價格を一般に定めるまでの間において異動があつた土地については、一般に定める賃貸價格は、第十二條及び第十三條第一項の規定にかかわらず、第十七條又は第三十條の例に準じ、政府の調査により、政府がこれを定める。
第十六條 この法律に定めるものの外、一般の賃貸價格の改定に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十七條 第十一條の規定により一般に賃貸價格を定める場合及び第三十條の規定により賃貸價格を定める場合を除く外、賃貸價格を設定し又は修正する必要があるときは、類地の賃貸價格に比準し、その土地の品位及び状況に應じて、これを定める。
第三章 土地の異動
第一節 第一種地及び第二種地の轉換
第十八條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたとき又は第二種地が第一種地となつたときは、土地所有者は、一箇月以内に、これを政府に申告しなければならない。
第十九條 第一種地が第二種地となつたときは、土地所有者は、その旨を政府に申告しなければならない。但し、これに関し予め他の法令に基き政府の許可を受け若しくは申告をなしたもの又は官公署において公示したものについては、この限りでない。
第二十條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、当該地番区域内における最終の地番を追い、順次にその地番を定める。但し、特別の事情があるときは、適宜の地番を定めることができる。
第二十一條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、直ちにその地目を設定する。
第二種地が第一種地となり又は第一種地が第二種地となつたときは、直ちにその地目を修正する。
第二十二條 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、直ちにこれを測量して、その地積を定める。
第二種地が第一種地となつたときは、直ちにその地積を改測する。但し、政府において、その地積に異動がないと認めるときは、これを省略することができる。
第二十三條 あらたに土地台帳に登録すべき土地が第一種地に該当するとき又は第二種地が第一種地となつたときは、直ちにその賃貸價格を設定する。
第二十四條 第一種地が第二種地となつたときは、命令の定めるところにより、当該土地の土地台帳に登録された賃貸價格を抹消する。
第二節 分筆及び合筆
第二十五條 この法律において分筆とは、一筆の土地を数筆の土地とすることをいい、合筆とは、数筆の土地を一筆の土地とすることをいう。
第二十六條 分筆又は合筆をしようとするときは、土地所有者は、これを政府に申告しなければならない。
第二十七條 一筆の一部が左の各号の一に該当するに至つたときは、前條の申告がない場合においても、政府は、その土地を分筆する。
一 別地目となるとき
二 第一種地が第二種地となり又は第二種地が第一種地となるとき
三 所有者を異にするとき
四 質権又は百年より長い存続期間の定のある地上権の目的となるとき
五 地番区域を異にするとき
第二十八條 分筆した土地については、分筆前の地番に符号を附して、各筆の地番を定める。
合筆した土地については、合筆前の地番中の首位のものを以て、その地番とする。
特別の事情があるときは、前二項の規定にかかわらず、適宜の地番を定めることができる。
第二十九條 分筆をしたときは、測量して各筆の地積を定める。
合筆をしたときは、合筆前の各筆の地積を合算したものを以て、その地積とする。
第三十條 分筆をしたときは、各筆の品位及び状況に應じ、分筆前の賃貸價格を配分して、その賃貸價格を定める。
合筆をしたときは、合筆前の各筆の賃貸價格を合算したものを以て、その賃貸價格とする。
第三節 地目変換
第三十一條 この法律において地目変換とは、第一種地の各地目を変更することをいう。
第三十二條 地目変換をなしたときは、土地所有者は、一箇月以内に、これを政府に申告しなければならない。
第三十三條 地目変換をなしたときは、直ちにその地目及び賃貸價格を修正する。
第三十四條 政府は、地目変換に因り賃貸價格を修正する場合において必要があると認めるときは、その地積を改測する。
第四章 審査、訴願及び訴訟
第三十五條 自己の所有する土地について適用されるべき第十三條第一項の規定により定められた賃貸價格につき異議のある者は、第十四條第二項の縱覽期間満了の日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
第三十六條 政府は、前條の請求があつたときは、これを決定し、当該請求人に通知しなければならない。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第三十七條 前條第一項の決定に対し不服のある者は、訴願をなし又は裁判所に出訴することができる。
第三十五條に規定する事件に関しては、訴願又は訴訟は、前條第一項の決定を経た後でなければこれをなすことができない。
第五章 雜則
第三十八條 政府は、土地台帳に登録すべき事項につき異動があつたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
第三十九條 政府は、土地の異動に因り地番、地目、地積又は賃貸價格を土地台帳に登録したとき又は登録を変更したときは、土地所在の市町村を経由し、土地所有者(質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地については、当該質権者又は地上権者)に通知しなければならない。
第四十條 第十八條又は第三十二條の規定により申告をなすべき場合において、第十八條又は第三十二條に定める申告期限内に土地所有者の変更があつたときは、旧所有者がなすべき申告で所有者の変更があつた時にまだなしていなかつたものは、所有者の変更があつた日から一箇月以内に、新所有者からこれをなさなければならない。
第四十一條 この法律により土地所有者からなすべき申告は、質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地については、土地台帳に登録された質権者又は地上権者から、これをなさなければならない。
第四十二條 当該官吏は、調査上必要があるときは、土地の檢査をなし又は土地の所有者、質権者又は地上権者その他利害関係人に対して、質問をなすことができる。
第四十三條 町村組合で町村の事務の全部又は役場事務を共同処理するものは、この法律の適用については、これを一町村、その組合管理者は、これを町村長とみなす。
東京都の区の存する区域又は市制第六條若しくは第八十二條第一項の規定により指定された市においては、この法律中市に関する規定は区に、市長に関する規定は区長に、これを適用する。
町村制を施行しない地においては、この法律中町村に関する規定は町村に準ずるものに、町村長に関する規定は町村長に準ずるものに、これを適用する。
第四十四條 この法律は、國有地には、これを適用しない。
第六章 罰則
第四十五條 第四十二條の規定による土地の檢査を拒み、妨げ又は忌避した者は、これを五百円以下の罰金に処する。
第四十六條 賃貸價格の調査若しくは審査の事務に從事し又は土地賃貸價格調査委員会の議事に参加した者がその調査、審査又は議事に関し知り得た祕密を漏らしたときは、これを五千円以下の罰金に処する。
第四十七條 第十八條、第三十二條又は第四十條の規定により申告をなすべき義務のある者がその申告をしないときは、これを二百円以下の過料に処する。
附 則
第一條 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二條 地租法による土地台帳は、これをこの法律による土地台帳とみなす。
第三條 この法律施行前の土地の異動で、この法律施行の際まだ地租法による賃貸價格の設定又は修正その他の処分の確定していなかつたものについては、この法律中にこれらに関する地租法の規定に相当する規定があるときは、その法律を適用する。
第四條 地租法による申告で、この法律中にこれに関する地租法の規定に相当する規定があるときは、これをこの法律による申告とみなす。
この法律施行前になした地租法による開墾の成功又は地類変換の申告は、これをこの法律による地目変換の申告とみなす。
第五條 地積は、第八條の規定にかかわらず、当分の間、左の各号の規定により、これを定める。
一 宅地及び鉱泉地の地積は、六尺平方を坪、坪の十分の一を合、合の十分の一を勺として、これを定め、勺未満の端数は、これを切り捨てる。
二 宅地及び鉱泉地以外の土地の地積は、六尺平方を歩、三十歩を畝、十畝を段、十段を町として、これを定め、歩未満の端数は、これを切り捨てる。但し、一筆の地積が一歩未満のものについては、歩の十分の一を合、合の十分の一を勺として、これを定め、勺未満の端数は、これを切り捨てる。
第六條 この法律は、伊豆七島の土地に関しては、当分の間、これを適用しない。
第七條 地租法により賃貸價格を定むべき旨の定のある土地で、この法律により賃貸價格を定むべき旨の定のないこととなつたものについては、土地所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
第八條 地租法により賃貸價格を定むべき旨の定のない土地(免租年期を許可された土地を除く。)で、この法律により賃貸價格を定むべき旨の定のあることとなつたものについては、当該土地の所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
前項の規定に該当する土地については、政府は、その土地の現況により地目の修正、地積の改測又は賃貸價格の設定を行う。
第九條 地租法第十九條の規定による開拓減租年期、同法第二十條の規定による埋立免租年期、同法第三十六條の規定による開墾減租年期、同法第四十六條の規定による地目変換減租年期又は同法第五十五條の規定による荒地免租年期の許可を受けた土地でこの法律施行の際まだ期間の満了していないものについては、当該土地の所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
前項の規定に該当する土地については政府は、その土地の現況により、地目の修正、地積の改測又は賃貸價格の設定若しくは修正を行う。
第十條 前條の規定は、この法律施行の際現に地租法及び耕地整理法以外の法律により一定の期間賃貸價格について特別の取扱を受けている土地(一定の期間地租を免ぜられたことに因り賃貸價格について特別の取扱を受けている土地を含む。)その他これに準ずる土地で命令で定めるものについて、これを準用する。
第十一條 土地の第一回の一般の賃貸價格の改定は、昭和二十五年一月一日において、これを行う。
第十二條 この法律に定めるものを除く外、この法律の施行に関して必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三條 日本國憲法施行の日までは、この法律中「政令」とあるのは「勅令」、「裁判所」とあるのは「行政裁判所」と読み替えるものとする。
朕は帝国議会の協賛を経た土地台帳法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 石橋湛山
法律第三十号
土地台帳法目次
第一章
総則
第二章
賃貸価格の調査及び決定
第三章
土地の異動
第一節
第一種地及び第二種地の転換
第二節
分筆及び合筆
第三節
地目変換
第四章
審査、訴願及び訴訟
第五章
雑則
第六章
罰則
土地台帳法
第一章 総則
第一条 この法律の施行地にある土地については、その状況を明確に把握し、地租の課税標準たる土地の賃貸価格の均衡適正を図るため、この法律の定めるところにより、土地台帳に必要な事項の登録を行う。
第二条 土地は、これを第一種地及び第二種地とする。
第三条 第一種地は、第二項に規定する土地以外の土地をいう。
第二種地は、左に掲げる土地をいう。但し、第二号乃至第六号に掲げる土地で有料借地たるものを除く。
一 都道府県又は市町村の所有する土地
二 国、都道府県、市町村その他命令で定める公共団体において公用又は公共の用に供する土地
三 墳墓地
四 公衆用道路、鉄道用地、軌道用地、運河用地
五 用悪水路、溜池、堤塘、井溝
六 保安林
七 その他命令で定めるもの
第四条 土地には、一筆ごとに地番を附し、その地目、地積及び賃貸価格を定める。但し、第二種地については、賃貸価格は、これを定めない。
第五条 政府は、土地台帳を備え、左の事項を登録する。
一 土地の所在
二 地番
三 地目
四 地積
五 賃貸価格
六 所有者の住所及び氏名又は名称
七 質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地についてはその質権者又は地上権者住所及び氏名又は名称
この法律を定めるものの外、土地台帳に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第六条 地番は、市町村、大字、字又はこれらに準ずべき地域を以て地番区域とし、その区域ごとに起番して、これを定める。
第七条 第一種地の地目は、田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雑種地に区別して、これを定める。
第二種地の地目は、第三条第二項第三号乃至第六号の土地にあつては、各ゝその区別により、その他の土地にあつては、その現況により適当に区別して、これを定める。
第八条 地積は、左の各号の規定により、これを定める。
一 宅地及び鉱泉地の地積は、平方メートルを単位としてこれを定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、これを切り捨てる。
二 宅地及び鉱泉地以外の土地の地積は、アールを単位としてこれを定め、一アールの百分の一未満の端数は、これを切り捨てる。但し、一筆の地積が一アールの百分の一未満のものについては、一アールの一万分の一未満の端数は、これを切り捨てる。
第九条 賃貸価格は、貸主が公租公課、修繕費その他土地の維持に必要な経費を負担する条件でこれを賃貸する場合において貸主の収得すべき一年分の金額により、これを定める。
第十条 土地の異動があつた場合においては、地番、地目、地積及び賃貸価格は土地所有者の申告により、申告がないとき若しくは申告を不相当と認めるとき又は申告を要しないときは、政府の調査により、政府がこれを定める。
第二章 賃貸価格の調査及び決定
第十一条 賃貸価格は、十年ごとに、一般にこれを改定する。
第十二条 賃貸価格を一般に定める場合においては、その賃貸価格は、これを定める年の前前年四月一日現在の賃貸価格の定のある土地につき、各地目ごとに土地の状況が類似する区域を一区域とし、その区域内において標準となるべき賃貸価格によつて、これを定める。
前項の標準となるべき賃貸価格の算定に関する事項は、命令でこれを定める。
第十三条 前条第一項の区域及びその区域内において標準となるべき賃貸価格は、土地賃貸価格調査委員会に諮問して、政府がこれを定める。
土地賃貸価格調査委員会に関する規程は、政令でこれを定める。
第十四条 政府は、前条第一項の規定により第十二条第一項の区域及びその区域内において標準となるべき賃貸価格を定めたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
市町村長は、前項の通知を受けたときは、二十日間関係者の縦覧に供しなければならない。縦覧期間は、予めこれを公示しなければならない。
第十五条 賃貸価格を一般に定める年の前前年四月二日以後賃貸価格を一般に定めるまでの間において異動があつた土地については、一般に定める賃貸価格は、第十二条及び第十三条第一項の規定にかかわらず、第十七条又は第三十条の例に準じ、政府の調査により、政府がこれを定める。
第十六条 この法律に定めるものの外、一般の賃貸価格の改定に関し必要な事項は、命令でこれを定める。
第十七条 第十一条の規定により一般に賃貸価格を定める場合及び第三十条の規定により賃貸価格を定める場合を除く外、賃貸価格を設定し又は修正する必要があるときは、類地の賃貸価格に比準し、その土地の品位及び状況に応じて、これを定める。
第三章 土地の異動
第一節 第一種地及び第二種地の転換
第十八条 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたとき又は第二種地が第一種地となつたときは、土地所有者は、一箇月以内に、これを政府に申告しなければならない。
第十九条 第一種地が第二種地となつたときは、土地所有者は、その旨を政府に申告しなければならない。但し、これに関し予め他の法令に基き政府の許可を受け若しくは申告をなしたもの又は官公署において公示したものについては、この限りでない。
第二十条 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、当該地番区域内における最終の地番を追い、順次にその地番を定める。但し、特別の事情があるときは、適宜の地番を定めることができる。
第二十一条 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、直ちにその地目を設定する。
第二種地が第一種地となり又は第一種地が第二種地となつたときは、直ちにその地目を修正する。
第二十二条 あらたに土地台帳に登録すべき土地を生じたときは、直ちにこれを測量して、その地積を定める。
第二種地が第一種地となつたときは、直ちにその地積を改測する。但し、政府において、その地積に異動がないと認めるときは、これを省略することができる。
第二十三条 あらたに土地台帳に登録すべき土地が第一種地に該当するとき又は第二種地が第一種地となつたときは、直ちにその賃貸価格を設定する。
第二十四条 第一種地が第二種地となつたときは、命令の定めるところにより、当該土地の土地台帳に登録された賃貸価格を抹消する。
第二節 分筆及び合筆
第二十五条 この法律において分筆とは、一筆の土地を数筆の土地とすることをいい、合筆とは、数筆の土地を一筆の土地とすることをいう。
第二十六条 分筆又は合筆をしようとするときは、土地所有者は、これを政府に申告しなければならない。
第二十七条 一筆の一部が左の各号の一に該当するに至つたときは、前条の申告がない場合においても、政府は、その土地を分筆する。
一 別地目となるとき
二 第一種地が第二種地となり又は第二種地が第一種地となるとき
三 所有者を異にするとき
四 質権又は百年より長い存続期間の定のある地上権の目的となるとき
五 地番区域を異にするとき
第二十八条 分筆した土地については、分筆前の地番に符号を附して、各筆の地番を定める。
合筆した土地については、合筆前の地番中の首位のものを以て、その地番とする。
特別の事情があるときは、前二項の規定にかかわらず、適宜の地番を定めることができる。
第二十九条 分筆をしたときは、測量して各筆の地積を定める。
合筆をしたときは、合筆前の各筆の地積を合算したものを以て、その地積とする。
第三十条 分筆をしたときは、各筆の品位及び状況に応じ、分筆前の賃貸価格を配分して、その賃貸価格を定める。
合筆をしたときは、合筆前の各筆の賃貸価格を合算したものを以て、その賃貸価格とする。
第三節 地目変換
第三十一条 この法律において地目変換とは、第一種地の各地目を変更することをいう。
第三十二条 地目変換をなしたときは、土地所有者は、一箇月以内に、これを政府に申告しなければならない。
第三十三条 地目変換をなしたときは、直ちにその地目及び賃貸価格を修正する。
第三十四条 政府は、地目変換に因り賃貸価格を修正する場合において必要があると認めるときは、その地積を改測する。
第四章 審査、訴願及び訴訟
第三十五条 自己の所有する土地について適用されるべき第十三条第一項の規定により定められた賃貸価格につき異議のある者は、第十四条第二項の縦覧期間満了の日から一箇月以内に、不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。
第三十六条 政府は、前条の請求があつたときは、これを決定し、当該請求人に通知しなければならない。
前項の場合において必要な事項は、政令でこれを定める。
第三十七条 前条第一項の決定に対し不服のある者は、訴願をなし又は裁判所に出訴することができる。
第三十五条に規定する事件に関しては、訴願又は訴訟は、前条第一項の決定を経た後でなければこれをなすことができない。
第五章 雑則
第三十八条 政府は、土地台帳に登録すべき事項につき異動があつたときは、これを市町村長に通知しなければならない。
第三十九条 政府は、土地の異動に因り地番、地目、地積又は賃貸価格を土地台帳に登録したとき又は登録を変更したときは、土地所在の市町村を経由し、土地所有者(質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地については、当該質権者又は地上権者)に通知しなければならない。
第四十条 第十八条又は第三十二条の規定により申告をなすべき場合において、第十八条又は第三十二条に定める申告期限内に土地所有者の変更があつたときは、旧所有者がなすべき申告で所有者の変更があつた時にまだなしていなかつたものは、所有者の変更があつた日から一箇月以内に、新所有者からこれをなさなければならない。
第四十一条 この法律により土地所有者からなすべき申告は、質権又は百年より長い存続期間の定がある地上権の目的たる土地については、土地台帳に登録された質権者又は地上権者から、これをなさなければならない。
第四十二条 当該官吏は、調査上必要があるときは、土地の検査をなし又は土地の所有者、質権者又は地上権者その他利害関係人に対して、質問をなすことができる。
第四十三条 町村組合で町村の事務の全部又は役場事務を共同処理するものは、この法律の適用については、これを一町村、その組合管理者は、これを町村長とみなす。
東京都の区の存する区域又は市制第六条若しくは第八十二条第一項の規定により指定された市においては、この法律中市に関する規定は区に、市長に関する規定は区長に、これを適用する。
町村制を施行しない地においては、この法律中町村に関する規定は町村に準ずるものに、町村長に関する規定は町村長に準ずるものに、これを適用する。
第四十四条 この法律は、国有地には、これを適用しない。
第六章 罰則
第四十五条 第四十二条の規定による土地の検査を拒み、妨げ又は忌避した者は、これを五百円以下の罰金に処する。
第四十六条 賃貸価格の調査若しくは審査の事務に従事し又は土地賃貸価格調査委員会の議事に参加した者がその調査、審査又は議事に関し知り得た秘密を漏らしたときは、これを五千円以下の罰金に処する。
第四十七条 第十八条、第三十二条又は第四十条の規定により申告をなすべき義務のある者がその申告をしないときは、これを二百円以下の過料に処する。
附 則
第一条 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。
第二条 地租法による土地台帳は、これをこの法律による土地台帳とみなす。
第三条 この法律施行前の土地の異動で、この法律施行の際まだ地租法による賃貸価格の設定又は修正その他の処分の確定していなかつたものについては、この法律中にこれらに関する地租法の規定に相当する規定があるときは、その法律を適用する。
第四条 地租法による申告で、この法律中にこれに関する地租法の規定に相当する規定があるときは、これをこの法律による申告とみなす。
この法律施行前になした地租法による開墾の成功又は地類変換の申告は、これをこの法律による地目変換の申告とみなす。
第五条 地積は、第八条の規定にかかわらず、当分の間、左の各号の規定により、これを定める。
一 宅地及び鉱泉地の地積は、六尺平方を坪、坪の十分の一を合、合の十分の一を勺として、これを定め、勺未満の端数は、これを切り捨てる。
二 宅地及び鉱泉地以外の土地の地積は、六尺平方を歩、三十歩を畝、十畝を段、十段を町として、これを定め、歩未満の端数は、これを切り捨てる。但し、一筆の地積が一歩未満のものについては、歩の十分の一を合、合の十分の一を勺として、これを定め、勺未満の端数は、これを切り捨てる。
第六条 この法律は、伊豆七島の土地に関しては、当分の間、これを適用しない。
第七条 地租法により賃貸価格を定むべき旨の定のある土地で、この法律により賃貸価格を定むべき旨の定のないこととなつたものについては、土地所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
第八条 地租法により賃貸価格を定むべき旨の定のない土地(免租年期を許可された土地を除く。)で、この法律により賃貸価格を定むべき旨の定のあることとなつたものについては、当該土地の所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
前項の規定に該当する土地については、政府は、その土地の現況により地目の修正、地積の改測又は賃貸価格の設定を行う。
第九条 地租法第十九条の規定による開拓減租年期、同法第二十条の規定による埋立免租年期、同法第三十六条の規定による開墾減租年期、同法第四十六条の規定による地目変換減租年期又は同法第五十五条の規定による荒地免租年期の許可を受けた土地でこの法律施行の際まだ期間の満了していないものについては、当該土地の所有者は、命令の定めるところにより、命令で定める事項を、政府に申告しなければならない。
前項の規定に該当する土地については政府は、その土地の現況により、地目の修正、地積の改測又は賃貸価格の設定若しくは修正を行う。
第十条 前条の規定は、この法律施行の際現に地租法及び耕地整理法以外の法律により一定の期間賃貸価格について特別の取扱を受けている土地(一定の期間地租を免ぜられたことに因り賃貸価格について特別の取扱を受けている土地を含む。)その他これに準ずる土地で命令で定めるものについて、これを準用する。
第十一条 土地の第一回の一般の賃貸価格の改定は、昭和二十五年一月一日において、これを行う。
第十二条 この法律に定めるものを除く外、この法律の施行に関して必要な事項は、命令でこれを定める。
第十三条 日本国憲法施行の日までは、この法律中「政令」とあるのは「勅令」、「裁判所」とあるのは「行政裁判所」と読み替えるものとする。