朕會計規則等戰時特例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年四月二十四日
內閣總理大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
勅令第四百五十一號
會計規則等戰時特例
第一條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ必要アルトキハ支出濟ト爲リタル歲出ノ返納金又ハ恩給法第五十九條ノ規定ニ依リ國庫ニ納付スベキ金額ヲ歲入ニ組入ルル場合ニ於テ當該支出官以外ノ支出官ヲシテ之ガ歲入徵收官トシテ徵收ノ手續ヲ爲サシムルコトヲ得
第二條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ會計法第十七條ノ規定ニ依リ陸軍又ハ海軍ノ官衙ニ於ケル經費ニ付主任ノ官吏ヲシテ現金支拂ヲ爲サシムル爲其ノ資金ヲ當該官吏ニ前渡スルコトヲ得
會計規則第五十八條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ資金ヲ前渡スル場合ニ之ヲ準用ス
第三條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ會計法第二十一條ノ規定ニ依リ陸軍省又ハ海軍省所管ノ左ニ揭グル經費ニ付前金拂ヲ爲スコトヲ得
一 外國ニ於テ支拂フ通信料
二 勞力ノ供給ヲ請負フ者ニ支拂フベキ經費
三 試驗、硏究又ハ調査ノ受託者ニ對シ支拂フベキ經費
四 工業所有權ノ代價
五 漁業權ニ對スル補償金
六 物件又ハ工業所有權ノ借料
七 傭船料
八 特別ノ任務ヲ以テ行動スル者ニ支給スル俸給其ノ他ノ給與
第四條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ會計法第二十一條ノ規定ニ依リ陸軍省又ハ海軍省所管ノ左ニ揭グル經費ニ付槪算拂ヲ爲スコトヲ得
一 前條第一號乃至第五號ニ揭グルモノ
二 軍艦、兵器及彈藥ノ代價
三 物件又ハ工業所有權ノ借料及借入物件ノ滅失又ハ之ニ準ズベキ毀損ニ因リテ生ジタル損害ニ對スル賠償金
四 運賃及傭船料
第五條 會計法戰時特例第一條ノ規定ニ依リ陸軍省又ハ海軍省所管ノ經費ニ付前金拂又ハ槪算拂ヲ爲スコトヲ得ルハ左ニ揭グルモノノ代價トス
一 軍艦、兵器及彈藥ノ材料及原料
二 軍艦以外ノ船舶竝ニ其ノ材料及原料
三 鐵道用車輛、軌條及枕木竝ニ其ノ材料及原料
四 作業用器具機械竝ニ其ノ材料及原料
五 被服竝ニ其ノ材料及原料
六 糧秣竝ニ其ノ材料及原料
七 衞生材料及獸醫材料竝ニ其ノ材料及原料
八 廳中用以外ノ燃料及潤滑油
九 陣中用品竝ニ其ノ材料及原料
十 艦營需品、港用品及衣糧器具
十一 土木建築其ノ他ノ工事竝ニ其ノ材料及原料
十二 土地、建物及工作物
第六條 會計法戰時特例第一條ノ規定ニ依リ陸軍省及海軍省以外ノ各省所管ノ經費ニ付前金拂又ハ槪算拂ヲ爲スコトヲ得ルハ左ニ揭グルモノノ代價トス但シ所管大臣豫メ大藏大臣ト協議スルコトヲ要ス
一 戰鬪行爲ニ因ル災害ヲ應急復舊スル爲ニ必要ナル物件及土木建築其ノ他ノ工事竝ニ其ノ材料
二 軍事ト密接ナル關係アル土木建築其ノ他ノ工事及其ノ材料
三 重要資源開發ノ爲必要ナル土木建築其ノ他ノ工事及其ノ材料
四 軍事ト密接ナル關係アル事業ノ用ニ供スル爲必要ナル物品及其ノ材料
第七條 陸軍大臣又ハ海軍大臣會計法戰時特例第一條ノ規定ニ依リ手形ノ保證ヲ爲スコトヲ得ルハ第四條第二號若ハ第五條第一號乃至第十一號ニ揭グル物件ノ買入、製造、修理若ハ加工、第五條第十一號ノ工事又ハ運送ニ付爲シタル契約ノ相手方ガ當該契約ノ履行ニ要スル資金ヲ調達スル爲振出シタル自己宛ノ爲替手形ニシテ引受濟ノモノナルコトヲ要ス但シ政府ガ其ノ滿期ノ日ニ於テ手形金額ニ相當スル金額ヲ當該契約ノ代價ノ全部又ハ一部トシテ支拂フコトヲ得ベキ場合ニ限ル
第八條 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ前條ニ規定スル契約ノ代價ノ支拂ヲ爲スベキ支出官又ハ出納官吏ヲシテ手形ノ保證ヲ爲サシムベシ
第九條 支出官又ハ出納官吏ハ保證ニ因ル手形上ノ債務ノ存續中ニ於テハ當該契約ノ代價ヨリ當該手形ノ金額ヲ控除シタル殘額ヲ超エテ當該契約ノ代價ノ支拂ヲ爲スコトヲ得ズ但シ其ノ支拂金ガ當該手形ノ支拂ニ充テラルル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ會計法第十九條ノ規定ニ依リ戰地(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ニ於ケル事變地ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ在ル出納官吏ヲシテ作戰行動上ノ必要ニ基キ緊急已ムヲ得ザル經費ノ支拂ヲ爲サシムル爲其ノ保管ニ係ル歲入金又ハ歲入歲出外現金ヲ繰替使用セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル現金ノ繰替使用ニ關スル手續ハ陸軍大臣又ハ海軍大臣大藏大臣ト協議シテ之ヲ定ム
第十一條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ支出濟ト爲リタル歲出ノ返納金ヲ其ノ支拂ヒタル經費ノ定額ニ戾入ルル場合ニ於テ他ノ支出官ヲシテ當該支出官ノ事務ヲ代理セシムルコトヲ得
第十二條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ五萬圓(戰地ニ在リテハ十萬圓)ヲ超エザル指名競爭契約又ハ隨意契約ヲ爲ス場合ニ限リ會計規則第八十七條ノ規定ニ拘ラズ請書其ノ他必要ナル書類ヲ徵シ同令第八十五條ニ規定スル契約書ノ作成ヲ省略スルコトヲ得
第十三條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ一萬圓ヲ超エザル工事、製造其ノ他ノ請負契約又ハ物件ノ買入ニ付テハ會計規則第九十二條第一項又ハ第九十四條ニ規定スル調書ノ作成ヲ省略スルコトヲ得
第十四條 各省大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ他ノ法令ニ定ムルモノノ外左ニ揭グル場合ニ於テハ隨意契約ニ依ルコトヲ得
一 陸軍ノ官衙、軍隊、學校及病院竝ニ海軍ノ官衙、部隊、學校、病院及艦船ニ於テ必要ナル物件ノ買入ヲ爲シ又ハ製造、修理若ハ加工ヲ爲サシムルトキ
二 土木建築其ノ他ノ工事ヲ請負ハシムルトキ
三 法令ニ依リ現ニ配給ノ統制ヲ爲シ居ル物品ノ買入又ハ賣拂ヲ爲ストキ
四 價格等統制令第七條ノ規定ニ依ル價格ノ額ノ指定アル物品ノ買入若ハ賣拂ヲ爲シ、同條ノ規定ニ依ル賃貸料ノ額ノ指定アル物品ノ貸付若ハ借入ヲ爲シ又ハ同條ノ規定ニ依ル加工賃ノ額ノ指定アル物品ノ加工ニ付契約ヲ爲ストキ
五 政府ノ需要スル物品ノ製造、修理、加工又ハ納入ニ使用セシムル爲之ニ必要ナル物品ノ賣拂ヲ爲ストキ
前項第二號ノ場合ニ於テハ所管大臣豫メ大藏大臣ト協議スルコトヲ要ス
前項ノ協議ヲ遂ゲタルトキハ大藏大臣直ニ之ヲ會計檢査院ニ通知スベシ
第十五條 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ戰時ニ際シ作戰上已ムヲ得ザル場合ニ限リ戰地ニ在ル出納官吏ノ帳簿金櫃ノ定時ノ檢査ハ會計規則第百三十六條第一項ノ規定ニ拘ラズ三月三十一日以外ノ日ニ於テ之ヲ爲サシムルコトヲ得
第十六條 戰時ニ際シ出納官吏交替シタル場合ニ於テ會計規則第百四十五條ノ規定ニ依リ難キトキハ後任出納官吏ハ前任出納官吏ノ執行シタル出納ノ計算ヲ自己ノ執行シタル出納ノ計算ニ併セ出納計算書ヲ調製シ同令第百四十條乃至第百四十三條ノ手續ヲ爲スベシ此ノ場合ニ於テハ出納計算書ニ各出納官吏ノ在職期間ヲ記載スベシ
前項ノ規定ニ依リ調製シタル出納計算書ノ內前任出納官吏ノ執行シタル出納ノ計算ニ相當スル部分ハ前任出納官吏ノ自ラ調製シタルモノト看做シ會計檢査院ニ於テ檢査判決ヲ爲スベシ
第十七條 戰時ニ際シ物品會計官吏交替シタル場合ニ於テ物品會計規則第十五條第二項本文ノ規定ニ依リ難キトキハ後任官吏ハ前任官吏ノ執行シタル出納ノ計算ヲ自己ノ執行シタル出納ノ計算ニ併セ物品出納計算書ヲ調製シ同條第一項ノ手續ヲ爲スベシ此ノ場合ニ於テハ物品出納計算書ニ各官吏ノ在職期間ヲ記載スベシ
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ其ノ指定スル帳簿ヲ以テ會計規則及各特別會計規則ニ規定スル帳簿ニ代フルコトヲ得
陸軍大臣又ハ海軍大臣前項ノ規定ニ依リ帳簿ヲ指定セントスルトキハ豫メ大藏大臣ト協議スルコトヲ要ス
第十九條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ必要アルトキハ其ノ管理ニ屬スル國有ノ不動產、動產又ハ工業所有權ニシテ軍需品ノ製造、修理又ハ加工ニ必要ナルモノヲ當該事業主ニ對シ無償ニテ使用セシムルコトヲ得
第二十條 陸軍大臣又ハ海軍大臣戰時ニ際シ戰地ニ於テ軍事上必要ナル物品ヲ買入ノ方法ニ依リ取得スルコト困難ナル場合ニ於テハ交換ノ方法ニ依ルコトヲ得
第二十一條 前條ノ規定ニ依リ交換ヲ爲サントスル場合ニ於テハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ノ指定スル交換價格ニ依ルベシ但シ陸軍大臣又ハ海軍大臣必要アリト認ムルトキハ他ノ官吏ニ交換價格ノ指定ヲ委任スルコトヲ得
前項ノ交換價格ハ交換ニ依リ取得セントスル物品ニ在リテハ現地ニ於ケル市價ヲ參酌シ、物品ヲ取得スル爲之ト交換スル物品ニ在リテハ原價ニ附屬諸費及損減步合ヲ加ヘ現地ニ於ケル市價ヲ參酌シテ之ヲ定ムベシ
附 則
本令ハ昭和十七年四月二十八日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廢止ス
昭和十二年勅令第五百八十四號
昭和十三年勅令第百六十二號
朕会計規則等戦時特例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十七年四月二十四日
内閣総理大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
勅令第四百五十一号
会計規則等戦時特例
第一条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ必要アルトキハ支出済ト為リタル歳出ノ返納金又ハ恩給法第五十九条ノ規定ニ依リ国庫ニ納付スベキ金額ヲ歳入ニ組入ルル場合ニ於テ当該支出官以外ノ支出官ヲシテ之ガ歳入徴収官トシテ徴収ノ手続ヲ為サシムルコトヲ得
第二条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ会計法第十七条ノ規定ニ依リ陸軍又ハ海軍ノ官衙ニ於ケル経費ニ付主任ノ官吏ヲシテ現金支払ヲ為サシムル為其ノ資金ヲ当該官吏ニ前渡スルコトヲ得
会計規則第五十八条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ資金ヲ前渡スル場合ニ之ヲ準用ス
第三条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ会計法第二十一条ノ規定ニ依リ陸軍省又ハ海軍省所管ノ左ニ掲グル経費ニ付前金払ヲ為スコトヲ得
一 外国ニ於テ支払フ通信料
二 労力ノ供給ヲ請負フ者ニ支払フベキ経費
三 試験、研究又ハ調査ノ受託者ニ対シ支払フベキ経費
四 工業所有権ノ代価
五 漁業権ニ対スル補償金
六 物件又ハ工業所有権ノ借料
七 傭船料
八 特別ノ任務ヲ以テ行動スル者ニ支給スル俸給其ノ他ノ給与
第四条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ会計法第二十一条ノ規定ニ依リ陸軍省又ハ海軍省所管ノ左ニ掲グル経費ニ付概算払ヲ為スコトヲ得
一 前条第一号乃至第五号ニ掲グルモノ
二 軍艦、兵器及弾薬ノ代価
三 物件又ハ工業所有権ノ借料及借入物件ノ滅失又ハ之ニ準ズベキ毀損ニ因リテ生ジタル損害ニ対スル賠償金
四 運賃及傭船料
第五条 会計法戦時特例第一条ノ規定ニ依リ陸軍省又ハ海軍省所管ノ経費ニ付前金払又ハ概算払ヲ為スコトヲ得ルハ左ニ掲グルモノノ代価トス
一 軍艦、兵器及弾薬ノ材料及原料
二 軍艦以外ノ船舶並ニ其ノ材料及原料
三 鉄道用車輛、軌条及枕木並ニ其ノ材料及原料
四 作業用器具機械並ニ其ノ材料及原料
五 被服並ニ其ノ材料及原料
六 糧秣並ニ其ノ材料及原料
七 衛生材料及獣医材料並ニ其ノ材料及原料
八 庁中用以外ノ燃料及潤滑油
九 陣中用品並ニ其ノ材料及原料
十 艦営需品、港用品及衣糧器具
十一 土木建築其ノ他ノ工事並ニ其ノ材料及原料
十二 土地、建物及工作物
第六条 会計法戦時特例第一条ノ規定ニ依リ陸軍省及海軍省以外ノ各省所管ノ経費ニ付前金払又ハ概算払ヲ為スコトヲ得ルハ左ニ掲グルモノノ代価トス但シ所管大臣予メ大蔵大臣ト協議スルコトヲ要ス
一 戦闘行為ニ因ル災害ヲ応急復旧スル為ニ必要ナル物件及土木建築其ノ他ノ工事並ニ其ノ材料
二 軍事ト密接ナル関係アル土木建築其ノ他ノ工事及其ノ材料
三 重要資源開発ノ為必要ナル土木建築其ノ他ノ工事及其ノ材料
四 軍事ト密接ナル関係アル事業ノ用ニ供スル為必要ナル物品及其ノ材料
第七条 陸軍大臣又ハ海軍大臣会計法戦時特例第一条ノ規定ニ依リ手形ノ保証ヲ為スコトヲ得ルハ第四条第二号若ハ第五条第一号乃至第十一号ニ掲グル物件ノ買入、製造、修理若ハ加工、第五条第十一号ノ工事又ハ運送ニ付為シタル契約ノ相手方ガ当該契約ノ履行ニ要スル資金ヲ調達スル為振出シタル自己宛ノ為替手形ニシテ引受済ノモノナルコトヲ要ス但シ政府ガ其ノ満期ノ日ニ於テ手形金額ニ相当スル金額ヲ当該契約ノ代価ノ全部又ハ一部トシテ支払フコトヲ得ベキ場合ニ限ル
第八条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ前条ニ規定スル契約ノ代価ノ支払ヲ為スベキ支出官又ハ出納官吏ヲシテ手形ノ保証ヲ為サシムベシ
第九条 支出官又ハ出納官吏ハ保証ニ因ル手形上ノ債務ノ存続中ニ於テハ当該契約ノ代価ヨリ当該手形ノ金額ヲ控除シタル残額ヲ超エテ当該契約ノ代価ノ支払ヲ為スコトヲ得ズ但シ其ノ支払金ガ当該手形ノ支払ニ充テラルル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ会計法第十九条ノ規定ニ依リ戦地(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ニ於ケル事変地ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ在ル出納官吏ヲシテ作戦行動上ノ必要ニ基キ緊急已ムヲ得ザル経費ノ支払ヲ為サシムル為其ノ保管ニ係ル歳入金又ハ歳入歳出外現金ヲ繰替使用セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル現金ノ繰替使用ニ関スル手続ハ陸軍大臣又ハ海軍大臣大蔵大臣ト協議シテ之ヲ定ム
第十一条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ支出済ト為リタル歳出ノ返納金ヲ其ノ支払ヒタル経費ノ定額ニ戻入ルル場合ニ於テ他ノ支出官ヲシテ当該支出官ノ事務ヲ代理セシムルコトヲ得
第十二条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ五万円(戦地ニ在リテハ十万円)ヲ超エザル指名競争契約又ハ随意契約ヲ為ス場合ニ限リ会計規則第八十七条ノ規定ニ拘ラズ請書其ノ他必要ナル書類ヲ徴シ同令第八十五条ニ規定スル契約書ノ作成ヲ省略スルコトヲ得
第十三条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ一万円ヲ超エザル工事、製造其ノ他ノ請負契約又ハ物件ノ買入ニ付テハ会計規則第九十二条第一項又ハ第九十四条ニ規定スル調書ノ作成ヲ省略スルコトヲ得
第十四条 各省大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ他ノ法令ニ定ムルモノノ外左ニ掲グル場合ニ於テハ随意契約ニ依ルコトヲ得
一 陸軍ノ官衙、軍隊、学校及病院並ニ海軍ノ官衙、部隊、学校、病院及艦船ニ於テ必要ナル物件ノ買入ヲ為シ又ハ製造、修理若ハ加工ヲ為サシムルトキ
二 土木建築其ノ他ノ工事ヲ請負ハシムルトキ
三 法令ニ依リ現ニ配給ノ統制ヲ為シ居ル物品ノ買入又ハ売払ヲ為ストキ
四 価格等統制令第七条ノ規定ニ依ル価格ノ額ノ指定アル物品ノ買入若ハ売払ヲ為シ、同条ノ規定ニ依ル賃貸料ノ額ノ指定アル物品ノ貸付若ハ借入ヲ為シ又ハ同条ノ規定ニ依ル加工賃ノ額ノ指定アル物品ノ加工ニ付契約ヲ為ストキ
五 政府ノ需要スル物品ノ製造、修理、加工又ハ納入ニ使用セシムル為之ニ必要ナル物品ノ売払ヲ為ストキ
前項第二号ノ場合ニ於テハ所管大臣予メ大蔵大臣ト協議スルコトヲ要ス
前項ノ協議ヲ遂ゲタルトキハ大蔵大臣直ニ之ヲ会計検査院ニ通知スベシ
第十五条 陸軍大臣又ハ海軍大臣ハ戦時ニ際シ作戦上已ムヲ得ザル場合ニ限リ戦地ニ在ル出納官吏ノ帳簿金櫃ノ定時ノ検査ハ会計規則第百三十六条第一項ノ規定ニ拘ラズ三月三十一日以外ノ日ニ於テ之ヲ為サシムルコトヲ得
第十六条 戦時ニ際シ出納官吏交替シタル場合ニ於テ会計規則第百四十五条ノ規定ニ依リ難キトキハ後任出納官吏ハ前任出納官吏ノ執行シタル出納ノ計算ヲ自己ノ執行シタル出納ノ計算ニ併セ出納計算書ヲ調製シ同令第百四十条乃至第百四十三条ノ手続ヲ為スベシ此ノ場合ニ於テハ出納計算書ニ各出納官吏ノ在職期間ヲ記載スベシ
前項ノ規定ニ依リ調製シタル出納計算書ノ内前任出納官吏ノ執行シタル出納ノ計算ニ相当スル部分ハ前任出納官吏ノ自ラ調製シタルモノト看做シ会計検査院ニ於テ検査判決ヲ為スベシ
第十七条 戦時ニ際シ物品会計官吏交替シタル場合ニ於テ物品会計規則第十五条第二項本文ノ規定ニ依リ難キトキハ後任官吏ハ前任官吏ノ執行シタル出納ノ計算ヲ自己ノ執行シタル出納ノ計算ニ併セ物品出納計算書ヲ調製シ同条第一項ノ手続ヲ為スベシ此ノ場合ニ於テハ物品出納計算書ニ各官吏ノ在職期間ヲ記載スベシ
前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ其ノ指定スル帳簿ヲ以テ会計規則及各特別会計規則ニ規定スル帳簿ニ代フルコトヲ得
陸軍大臣又ハ海軍大臣前項ノ規定ニ依リ帳簿ヲ指定セントスルトキハ予メ大蔵大臣ト協議スルコトヲ要ス
第十九条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ必要アルトキハ其ノ管理ニ属スル国有ノ不動産、動産又ハ工業所有権ニシテ軍需品ノ製造、修理又ハ加工ニ必要ナルモノヲ当該事業主ニ対シ無償ニテ使用セシムルコトヲ得
第二十条 陸軍大臣又ハ海軍大臣戦時ニ際シ戦地ニ於テ軍事上必要ナル物品ヲ買入ノ方法ニ依リ取得スルコト困難ナル場合ニ於テハ交換ノ方法ニ依ルコトヲ得
第二十一条 前条ノ規定ニ依リ交換ヲ為サントスル場合ニ於テハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ノ指定スル交換価格ニ依ルベシ但シ陸軍大臣又ハ海軍大臣必要アリト認ムルトキハ他ノ官吏ニ交換価格ノ指定ヲ委任スルコトヲ得
前項ノ交換価格ハ交換ニ依リ取得セントスル物品ニ在リテハ現地ニ於ケル市価ヲ参酌シ、物品ヲ取得スル為之ト交換スル物品ニ在リテハ原価ニ附属諸費及損減歩合ヲ加ヘ現地ニ於ケル市価ヲ参酌シテ之ヲ定ムベシ
附 則
本令ハ昭和十七年四月二十八日ヨリ之ヲ施行ス
左ノ勅令ハ之ヲ廃止ス
昭和十二年勅令第五百八十四号
昭和十三年勅令第百六十二号