朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル淸涼飮料稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十五年三月二十七日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
大藏大臣 濱口雄幸
法律第十六號
淸涼飮料稅法
第一條 本法ニ於テ淸涼飮料ト稱スルハ炭酸瓦斯ヲ含有スル飮料ヲ謂フ但シ全重量ノ萬分ノ五以下ノ炭酸瓦斯ヲ含有スルモノ及全容量ノ百分ノ一以上ノ純酒精ヲ含有スルモノハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ於テ純酒精ト稱スルハ攝氏十五度ノ時ニ於テ〇・七九四七ノ比重ヲ有スル酒精ヲ謂フ
第二條 淸涼飮料ニハ左ノ區分ニ依リ淸涼飮料稅ヲ課ス
第一種 玉ラムネ壜詰ノモノ 一石ニ付 七圓
第二種 其ノ他ノ壜詰ノモノ 一石ニ付 十圓
第三種 壜詰以外ノモノ 炭酸瓦斯使用量一瓩ニ付 三圓
第三條 淸涼飮料ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所每ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ其ノ製造ヲ廢止セムトスルトキハ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
天然ニ湧出スル淸涼飮料ヲ容器ニ充塡スルコトハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ第二種ノ淸涼飮料ノ製造ト看做ス天然ニ湧出スル淸涼飮料ヲ原料トシテ第三種ノ淸涼飮料ヲ製造スルコト亦同シ
第四條 淸涼飮料稅ハ第一種及第二種ノ淸涼飮料ニ付テハ製造場外ニ移出セラレタル石數ニ應シ、第三種ノ淸涼飮料ニ付テハ製造場外ニ移出セラレタル淸涼飮料ニ使用セラレタル炭酸瓦斯ノ量ニ應シ淸涼飮料製造者ヨリ之ヲ徵收ス
第五條 淸涼飮料ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ之ヲ製造場外ニ移出セラレタルモノト看做ス
一 製造場內ニ於テ飮用セラレタルトキ
二 製造場內ニ現存スルモノ公賣セラレタルトキ
三 製造免許取消ノ場合ニ於テ製造場內ニ現存スルトキ
第六條 淸涼飮料製造者ハ每月其ノ製造場外ニ移出シタル淸涼飮料ニ付第二條ノ區分每ニ其ノ石數又ハ炭酸瓦斯使用量ヲ記載シタル申告書ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スヘシ但シ前條第二號又ハ第三號ノ場合ニ於テハ直ニ之ヲ提出スヘシ
申告書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申告ヲ不相當ト認メタルトキハ政府ハ課稅標準額ヲ決定ス
第七條 淸涼飮料稅ハ每月分ヲ翌月末日迄ニ納付スヘシ但シ第五條第二號又ハ第三號ノ場合ニ於テハ直ニ之ヲ納付スヘシ
第八條 淸涼飮料製造者カ外國ニ輸出スル目的ヲ以テ製造場外ニ移出スル淸涼飮料ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ淸涼飮料稅ヲ免除ス
前項ノ淸涼飮料ニシテ製造場外ニ移出セラレタル後六月以內ニ外國ニ輸出セラレタルコトノ證明ナキモノニ付テハ直ニ其ノ淸涼飮料稅ヲ徵收ス但シ天災其ノ他已ムコトヲ得サル事由ニ因リ亡失シタルモノニ付政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九條 前條第一項ノ淸涼飮料ハ之ヲ內地ニ於テ消費シ又ハ內地ニ於テ消費スル目的ヲ以テ讓渡スルコトヲ得ス但シ已ムコトヲ得サル事由ニ因リ政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ承認ヲ受ケタルトキハ直ニ其ノ淸涼飮料稅ヲ納付スヘシ
第十條 政府ハ淸涼飮料稅ニ付必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ納稅ノ保證トシテ淸涼飮料製造者ニ對シ擔保ヲ提供セシムルコトヲ得
第十一條 淸涼飮料ノ製造者又ハ販賣者ハ淸涼飮料ノ製造出入ニ關スル事實ヲ詳細明瞭ニ帳簿ニ記載スヘシ
淸涼飮料ノ製造者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ淸涼飮料ノ製造ニ關シ必要ナル事項ヲ政府ニ申告スヘシ
第十二條 收稅官吏ハ淸涼飮料ノ製造者又ハ販賣者ノ所持ニ係ル淸涼飮料、其ノ製造出入ニ關スル一切ノ帳簿書類及淸涼飮料ノ製造又ハ販賣上必要ナル建築物、器具、器械、原料其ノ他ノ物件ヲ檢査シ又ハ監督上必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第十三條 製造免許ヲ受ケスシテ淸涼飮料ヲ製造シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處シ直ニ其ノ淸涼飮料稅ヲ徵收ス
前項ノ淸涼飮料竝其ノ容器、器具及器械ハ之ヲ沒收ス
第十四條 淸涼飮料ノ製造者第六條ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ又ハ詐リタルトキハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ヲ以テ淸涼飮料稅ヲ逋脫シ又ハ逋脫ヲ圖リタル者ハ其ノ淸涼飮料稅五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ淸涼飮料稅ヲ徵收ス但シ罰金額カ二十圓ニ滿タサルトキハ之ヲ二十圓トス
第十六條 淸涼飮料ノ製造者又ハ販賣者淸涼飮料ノ製造出入ニ關スル帳簿書類若ハ原料ヲ隱匿シ又ハ帳簿ノ記載若ハ第十一條ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ若ハ詐リタルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十七條 收稅官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ケ若ハ忌避シタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十八條 淸涼飮料ノ製造者又ハ販賣者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ製造者又ハ販賣者ヲ處罰ス
第十九條 第十條ノ規定ニ依ル擔保ヲ提供セサル者、第十四條若ハ第十五條ノ規定ニ依リテ處罰若ハ處分セラレタル者又ハ三年以上引續キ淸涼飮料ヲ製造セサル者ニ對シテハ政府ハ淸涼飮料製造ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十條 本法ヲ施行セサル地ニ於テ製造シタル淸涼飮料ハ本法ト同一ノ稅率ヲ有スル法規ヲ其ノ地ニ於テ施行スル迄ハ之ヲ本法施行地ニ移入スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ違反シテ淸涼飮料ヲ移入シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處シ直ニ其ノ石數ニ應シ第二條第二種ノ稅率ニ依リ算出シタル淸涼飮料稅ヲ徵收ス
前項ノ淸涼飮料及其ノ容器ハ何人ノ所有ニ屬スルヲ問ハス之ヲ沒收ス
第二十一條 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ例ヲ用ヒス但シ第十七條ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十二條 第十一條、第十二條、第十六條乃至第十八條及第二十一條ノ規定ハ販賣ノ目的ヲ以テ炭酸瓦斯ヲ製造スル者又ハ炭酸瓦斯ヲ販賣スル者ニ付之ヲ準用ス
第二十三條 自己又ハ其ノ家族ノ用ニ供スル淸涼飮料ノミヲ製造スル者ニハ本法ヲ適用セス
附 則
本法ハ大正十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ヨリ引續キ淸涼飮料ヲ製造スル者本法施行後一月以內ニ其ノ旨政府ニ申告スルトキハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ依リ製造免許ヲ受ケタルモノト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル清涼飲料税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十五年三月二十七日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
大蔵大臣 浜口雄幸
法律第十六号
清涼飲料税法
第一条 本法ニ於テ清涼飲料ト称スルハ炭酸瓦斯ヲ含有スル飲料ヲ謂フ但シ全重量ノ万分ノ五以下ノ炭酸瓦斯ヲ含有スルモノ及全容量ノ百分ノ一以上ノ純酒精ヲ含有スルモノハ此ノ限ニ在ラス
前項ニ於テ純酒精ト称スルハ摂氏十五度ノ時ニ於テ〇・七九四七ノ比重ヲ有スル酒精ヲ謂フ
第二条 清涼飲料ニハ左ノ区分ニ依リ清涼飲料税ヲ課ス
第一種 玉ラムネ壜詰ノモノ 一石ニ付 七円
第二種 其ノ他ノ壜詰ノモノ 一石ニ付 十円
第三種 壜詰以外ノモノ 炭酸瓦斯使用量一瓩ニ付 三円
第三条 清涼飲料ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所毎ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ其ノ製造ヲ廃止セムトスルトキハ免許ノ取消ヲ求ムヘシ
天然ニ湧出スル清涼飲料ヲ容器ニ充填スルコトハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ第二種ノ清涼飲料ノ製造ト看做ス天然ニ湧出スル清涼飲料ヲ原料トシテ第三種ノ清涼飲料ヲ製造スルコト亦同シ
第四条 清涼飲料税ハ第一種及第二種ノ清涼飲料ニ付テハ製造場外ニ移出セラレタル石数ニ応シ、第三種ノ清涼飲料ニ付テハ製造場外ニ移出セラレタル清涼飲料ニ使用セラレタル炭酸瓦斯ノ量ニ応シ清涼飲料製造者ヨリ之ヲ徴収ス
第五条 清涼飲料ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ之ヲ製造場外ニ移出セラレタルモノト看做ス
一 製造場内ニ於テ飲用セラレタルトキ
二 製造場内ニ現存スルモノ公売セラレタルトキ
三 製造免許取消ノ場合ニ於テ製造場内ニ現存スルトキ
第六条 清涼飲料製造者ハ毎月其ノ製造場外ニ移出シタル清涼飲料ニ付第二条ノ区分毎ニ其ノ石数又ハ炭酸瓦斯使用量ヲ記載シタル申告書ヲ翌月十日迄ニ政府ニ提出スヘシ但シ前条第二号又ハ第三号ノ場合ニ於テハ直ニ之ヲ提出スヘシ
申告書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申告ヲ不相当ト認メタルトキハ政府ハ課税標準額ヲ決定ス
第七条 清涼飲料税ハ毎月分ヲ翌月末日迄ニ納付スヘシ但シ第五条第二号又ハ第三号ノ場合ニ於テハ直ニ之ヲ納付スヘシ
第八条 清涼飲料製造者カ外国ニ輸出スル目的ヲ以テ製造場外ニ移出スル清涼飲料ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ清涼飲料税ヲ免除ス
前項ノ清涼飲料ニシテ製造場外ニ移出セラレタル後六月以内ニ外国ニ輸出セラレタルコトノ証明ナキモノニ付テハ直ニ其ノ清涼飲料税ヲ徴収ス但シ天災其ノ他已ムコトヲ得サル事由ニ因リ亡失シタルモノニ付政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九条 前条第一項ノ清涼飲料ハ之ヲ内地ニ於テ消費シ又ハ内地ニ於テ消費スル目的ヲ以テ譲渡スルコトヲ得ス但シ已ムコトヲ得サル事由ニ因リ政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ承認ヲ受ケタルトキハ直ニ其ノ清涼飲料税ヲ納付スヘシ
第十条 政府ハ清涼飲料税ニ付必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ納税ノ保証トシテ清涼飲料製造者ニ対シ担保ヲ提供セシムルコトヲ得
第十一条 清涼飲料ノ製造者又ハ販売者ハ清涼飲料ノ製造出入ニ関スル事実ヲ詳細明瞭ニ帳簿ニ記載スヘシ
清涼飲料ノ製造者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ清涼飲料ノ製造ニ関シ必要ナル事項ヲ政府ニ申告スヘシ
第十二条 収税官吏ハ清涼飲料ノ製造者又ハ販売者ノ所持ニ係ル清涼飲料、其ノ製造出入ニ関スル一切ノ帳簿書類及清涼飲料ノ製造又ハ販売上必要ナル建築物、器具、器械、原料其ノ他ノ物件ヲ検査シ又ハ監督上必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第十三条 製造免許ヲ受ケスシテ清涼飲料ヲ製造シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処シ直ニ其ノ清涼飲料税ヲ徴収ス
前項ノ清涼飲料並其ノ容器、器具及器械ハ之ヲ没収ス
第十四条 清涼飲料ノ製造者第六条ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ又ハ詐リタルトキハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 詐偽其ノ他不正ノ行為ヲ以テ清涼飲料税ヲ逋脱シ又ハ逋脱ヲ図リタル者ハ其ノ清涼飲料税五倍ニ相当スル罰金ニ処シ直ニ其ノ清涼飲料税ヲ徴収ス但シ罰金額カ二十円ニ満タサルトキハ之ヲ二十円トス
第十六条 清涼飲料ノ製造者又ハ販売者清涼飲料ノ製造出入ニ関スル帳簿書類若ハ原料ヲ隠匿シ又ハ帳簿ノ記載若ハ第十一条ノ規定ニ依ル申告ヲ怠リ若ハ詐リタルトキハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十七条 収税官吏ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サス若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ケ若ハ忌避シタル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十八条 清涼飲料ノ製造者又ハ販売者ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ製造者又ハ販売者ヲ処罰ス
第十九条 第十条ノ規定ニ依ル担保ヲ提供セサル者、第十四条若ハ第十五条ノ規定ニ依リテ処罰若ハ処分セラレタル者又ハ三年以上引続キ清涼飲料ヲ製造セサル者ニ対シテハ政府ハ清涼飲料製造ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第二十条 本法ヲ施行セサル地ニ於テ製造シタル清涼飲料ハ本法ト同一ノ税率ヲ有スル法規ヲ其ノ地ニ於テ施行スル迄ハ之ヲ本法施行地ニ移入スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ違反シテ清涼飲料ヲ移入シタル者ハ千円以下ノ罰金ニ処シ直ニ其ノ石数ニ応シ第二条第二種ノ税率ニ依リ算出シタル清涼飲料税ヲ徴収ス
前項ノ清涼飲料及其ノ容器ハ何人ノ所有ニ属スルヲ問ハス之ヲ没収ス
第二十一条 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ例ヲ用ヒス但シ第十七条ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十二条 第十一条、第十二条、第十六条乃至第十八条及第二十一条ノ規定ハ販売ノ目的ヲ以テ炭酸瓦斯ヲ製造スル者又ハ炭酸瓦斯ヲ販売スル者ニ付之ヲ準用ス
第二十三条 自己又ハ其ノ家族ノ用ニ供スル清涼飲料ノミヲ製造スル者ニハ本法ヲ適用セス
附 則
本法ハ大正十五年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ヨリ引続キ清涼飲料ヲ製造スル者本法施行後一月以内ニ其ノ旨政府ニ申告スルトキハ本法施行ノ日ヨリ本法ニ依リ製造免許ヲ受ケタルモノト看做ス