朕南洋群島裁判事務取扱令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十二年一月二十六日
內閣總理大臣 男爵 加藤友三郞
勅令第二十六號
南洋群島裁判事務取扱令
第一章 總則
第一條 民事刑事及非訟事件ニ關スル事項ハ本令其ノ他ノ法令ニ特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外左ノ法令ニ依ル
一法例
一民法
一民法施行法
一明治三十五年法律第五十號
一明治三十七年法律第十七號
一明治三十二年法律第四十號
一明治三十三年法律第五十一號
一明治三十三年勅令第百四十四號
一明治三十二年法律第五十號
一明治三十三年法律第十三號
一明治三十三年勅令第四百九號
一遺失物法
一商法
一商法施行法
一破產法
一和議法
一明治三十三年法律第十七號
一明治三十二年勅令第二百七十一號
一供託法
一工場抵當法
一刑法
一刑法施行法
一爆發物取締罰則
一通貨及證券模造取締法
一明治二十二年法律第三十四號
一明治三十八年法律第六十六號
一大正四年法律第十八號
一印紙犯罪處罰法
一民事訴訟法
一民事訴訟費用法
一人事訴訟手續法
一競賣法
一刑事訴訟法
一刑事訴訟費用法
一刑事交涉法
一外國裁判所ノ囑託ニ因ル共助法
一逃亡犯罪人引渡條例
一外國艦船乘組員ノ逮捕留置ニ關スル援助法
一不動產登記法
一非訟事件手續法
第二條 島民ノ外ニ關係者ナキ民事ニ關スル事項ニ付テハ慣例ニ依ル但シ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル場合ハ之ノ限ニ在ラス
第三條 土地ニ關スル權利ニ付テハ當分ノ內從前ノ慣例ニ依ル
土地ニ關スル權利ニ付テハ當分ノ內登記ヲ爲サス
第四條 第一條ノ法令中主務大臣又ハ地方長官ノ職務ハ民事訴訟法第百五十二條及逃亡犯罪人引渡條例ニ規定スル外務大臣ノ職務ヲ除クノ外南洋廳長官、大審院長ノ職務ハ南洋廳高等法院長、檢事總長又ハ檢事長ノ職務ハ南洋廳高等法院檢事、地方裁判所長ノ職務ハ南洋廳地方法院長、地方裁判所檢事又ハ區裁判所檢事ノ職務ハ南洋廳地方法院檢事、市町村長ノ職務ハ南洋廳支廳長、市町村吏員ノ職務ハ南洋廳支廳所屬官吏之ヲ行ヒ大審院トアルハ南洋廳高等法院、裁判所トアルハ南洋廳法院、供託局トアルハ南洋廳地方法院、警察官署市役所區役所又ハ市町村役場トアルハ南洋廳支廳トス
第五條 第一條ノ法令ノ適用ニ付テハ府縣ハ南洋群島ニ、市町村ハ南洋廳支廳ノ管轄區域ニ該當ス
第六條 第一條ノ法令ニ規定スル登記ヲ爲スヘキ期間ハ之ヲ二倍トス
第七條 第一條ノ法令ニ依リ官報ニ揭載シテ爲スヘキ公告又ハ公示ハ南洋廳公報ニ揭載シテ之ヲ爲スコトヲ得
第八條 第一條ノ法令及裁判所構成法ニ依リ大審院ノ管轄ニ屬スル事項ハ南洋廳高等法院、地方裁判所又ハ區裁判所ノ管轄ニ屬スル事項ハ南洋廳地方法院之ヲ管轄ス但シ人事訴訟手續法第五十五條第一項及第六十六條第一項ノ訴ハ南洋廳高等法院之ヲ管轄ス
第九條 民事及刑事ノ訴訟其ノ他ノ裁判事務ニ關シテハ南洋廳長官ノ定ムル所ニ從ヒ手數料ヲ納付スヘシ
第二章 訴訟手續
第一節 通則
第十條 開廷、法院ノ用語竝裁判ノ評議及言渡ニ關シテハ裁判所構成法第百四條乃至第百二十四條ノ規定ニ、法律上ノ共助ニ關シテハ同法第百三十一條乃至第百三十三條ノ規定ニ依ル但シ同法中區裁判所トアルハ南洋廳地方法院トス
第十一條 忌避及囘避ニ關スル規定ハ之ヲ適用セス
第十二條 法院又ハ裁判長カ職權ヲ以テ辯護士ヲ訴訟承繼人、訴訟代理人又ハ辯護人ニ選定シ又ハ選任スヘキ場合ニ於テハ辯護士ニ非サル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第十三條 法院ノ設置ナキ地ニ在リテハ急速ヲ要スル場合ニ限リ訴狀其ノ他ノ訴訟書類ヲ南洋廳支廳ニ提出シタルトキハ之ヲ法院ニ提出シタルト同一ノ效力ヲ生ス
第十四條 島民ノミニ關スル訴訟ニ付テハ本令ノ規定ニ拘ラス法院ノ認ムル便宜ノ訴訟手續ニ依ルコトヲ得
第二節 民事訴訟手續
第十五條 民事訴訟手續ハ高等法院ニ於テハ民事訴訟法中控訴裁判所ニ關スル規定ニ依リ地方法院ニ於テハ同法中地方裁判所及區裁判所ニ關スル規定ニ依ル
第十六條 當事者ハ法院ノ許可ヲ得テ訴訟能力者ヲ以テ代理人ト爲スコトヲ得
前項ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第十七條 費用額確定ノ申請アリタル場合ニ於テ未タ判決ノ送達ナク且判決正本ノ作成ヲ遲延セシムル虞ナキトキハ費用額確定ノ決定ヲ判決及其ノ正本ニ附記スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ費用額ノ決定ニ付正本ノ作成及送達ノ手續ヲ爲サス申請人及相手方ニ確定シタル額ヲ通知シ且相手方ニ費用計算書ノ謄本ヲ送付スヘシ但シ費用額確定申請ノ一部ヲ採用セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
當事者カ判決言渡前ニ費用計算書ヲ差出シタルトキハ費用額確定ノ申請ヲ爲スコトヲ要セス此ノ場合ニ於テハ職權ヲ以テ費用計算書ノ謄本ヲ作成シ之ヲ相手方ニ送付スヘシ
第十八條 假住所ニ於テスル送達ハ之ヲ受クヘキ人ニ出會ハサルトキハ成長シタル假住所ノ主人、其ノ同居ノ親族又ハ雇人ニ之ヲ爲スコトヲ得
第十九條 法院書記其ノ所屬廳內又ハ開廷ノ場所ニ於テ送達ヲ受クヘキ者ニ書類ヲ交付シ受取證ヲ徵シタルトキハ送達アリタルト同一ノ效力ヲ生ス
第二十條 民事訴訟法第百四十五條第二項ノ規定ニ依リ市町村長ニ書類ヲ預置クヘキ場合ニ於テハ送達ヲ爲スヘキ地ニ在ル官署ノ長ニ之ヲ預置クコトヲ得
第二十一條 公示送達ハ法院職權ヲ以テ之ヲ命スルコトヲ得
法院ハ民事訴訟法第百五十七條第三項ニ規定シタル書類ノ抄本ヲ南洋廳公報ニ揭載スヘキコトヲ命スルコトヲ得
第二十二條 期日ノ變更又ハ期間ノ伸長ハ當事者合意ノ場合ニ於テモ顯著ナル理由アルニ非サレハ之ヲ許サス
第二十三條 法院ハ其ノ所在地ニ住居セサル當事者ノ爲民事訴訟法ノ規定ニ依ラス法律上ノ期間ヲ相當ニ伸長スルコトヲ得但シ不變期間ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十四條 訴訟關係人カ期日ニ出頭スヘキ旨ヲ記載シタル書面ヲ差出シタルトキハ期日呼出アリタルト同一ノ效力ヲ生ス
第二十五條 合意ニ因ル訴訟手續ノ休止ハ顯著ナル理由アルトキニ限リ申立ニ因リ之ヲ許ス其ノ申立ハ書面ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ申立ニ付テハ民事訴訟法第百七十一條第二項及第四項ノ規定ヲ準用ス
合意ニ因ル休止ノ場合ニ於テ六月內ニ口頭辯論ノ期日指定ノ申立ヲ爲ササルトキハ本訴及反訴ヲ取下ケタルモノト看做ス其ノ申立ヲ爲シタルトキト雖期日前重ネテ休止ヲ爲シ其ノ期間前後ヲ通算シテ六月ヲ超ユルトキ亦同シ
第二十六條 口頭辯論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要セス
第二十七條 訴ハ何時ニテモ之ヲ取下クルコトヲ得但シ反訴アリタルトキハ被告ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第二十八條 訴ノ取下アリタルトキハ反訴ハ其ノ效力ヲ失フ但シ被告カ反訴ヲ繼續セシムル意思ヲ表示シテ取下ニ同意シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十九條 反訴ハ其ノ目的カ本訴ノ目的又ハ防禦ノ方法ト法律上牽連スルニ非サレハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
第三十條 當事者カ重大ナル過失ニ因リ又ハ訴訟ノ完結ヲ遲延セシムル意思ヲ以テ時期ニ後レテ提出シタル攻擊又ハ防禦ノ方法カ訴訟ノ完結ヲ遲延セシムヘキモノナルトキハ法院ハ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
前項ノ規定ハ證據方法及證據抗辯ノ提出ニ付之ヲ準用ス
第三十一條 闕席判決ヲ爲ストキハ其ノ判決ニ對シ故障ノ申立ヲ爲シ得ヘキコト及其ノ期間ヲ主文ニ附記スヘシ附記ナキトキハ其ノ通知アル迄故障期間ノ進行ヲ停止ス
第三十二條 判決ニ於テ作爲ノ履行ヲ命スル場合ニ於テハ原告ノ申立ニ因リ一定ノ期間內ニ履行ヲ爲ササルトキハ賠償金ヲ支拂フヘキ旨ヲ言渡スコトヲ得
第三十三條 判決ハ職權ヲ以テ之ヲ送達ス
判決ノ送達ハ其ノ正本ヲ交付シテ之ヲ爲ス
第三十四條 再渡ノ闕席判決ニ對シテハ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三十五條 證據調ノ申請及其ノ決定ハ口頭辯論前ト雖之ヲ爲スコトヲ得
第三十六條 證據決定中一部ノ證據調ニ依リ結果ヲ得タルトキハ他ノ證據調ヲ省略スル決定ヲ爲スコトヲ得
第三十七條 受命判事又ハ受託判事ハ檢證ノ場合ニ於テ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ法院ノ決定ヲ俟タス檢證事項ニ關シ證人ヲ訊問シ又ハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第三十八條 證人ノ呼出狀ニハ訊問事項ヲ表示スルコトヲ要セス
第三十九條 證人及鑑定人ハ之ヲ忌避スルコトヲ得ス
第四十條 證人、鑑定人又ハ通事僞證ノ罪ヲ犯シタルモノト思料シタルトキハ法院ハ直ニ裁判ヲ爲スコトヲ得
第四十一條 當事者ノ提出シタル許スヘキ證據ヲ調ヘタル結果ニ因リ證スキ事實ノ眞否ニ付法院カ心證ヲ得ルニ足ラサルトキハ職權ヲ以テ證人訊問ヲ爲スコトヲ得
第四十二條 職權ヲ以テ爲ス證據調ノ費用ハ國庫ニ於テ之ヲ立替フルコトヲ得
職權ヲ以テ爲シタル證據調ノ費用ノ全部又ハ一部ハ之ヲ國庫ノ負擔ト爲スコトヲ得
第四十三條 職權ヲ以テ爲シタル證據調ノ費用ヲ當事者ノ負擔ニ歸セシムヘキ場合ニ於テハ法院ハ判決ヲ以テ其ノ負擔者及金額ヲ定ムヘシ訴又ハ上訴ノ取下アリタルトキハ決定ヲ以テ其ノ裁判ヲ爲スヘシ
前項ノ決定ニ對シテハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得
第一項ノ規定ハ職權ヲ以テ爲シタル證據調ノ費用ヲ國庫ノ負擔ト爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第四十四條 支拂命令ハ職權ヲ以テ之ヲ債務者ニ送達ス
第四十五條 督促手續ニ關スル規定ハ債務者カ島民ナル場合ニハ當分ノ內之ヲ適用セス
第四十六條 判決言渡ノ際當事者雙方在廷シタル場合ニ於テ其ノ言渡後當事者雙方カ控訴ノ抛棄ヲ爲シタルトキハ控訴期間內ト雖其ノ判決確定ス此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ調書ニ記載スヘシ
第四十七條 民事訴訟法第四百二十二條ノ場合ニ於テ當事者合意ノ申立アルトキハ高等法院ハ直ニ本案ノ辯論及裁判ヲ爲スコトヲ得
第四十八條 控訴ノ提起ハ控訴狀ヲ原判決ヲ爲シタル法院ニ差出シテ之ヲ爲ス
控訴ノ提起アリタルトキハ書記ハ遲滯ナク訴訟記錄ト共ニ控訴狀ヲ高等法院ニ發送スヘシ
第四十九條 民事訴訟法第五編ノ規定ハ之ヲ適用セス
第五十條 民事訴訟法第五百二條各號ノ場合ニ於テハ法院ハ職權ヲ以テ假執行ノ宣言ヲ爲スコトヲ得
第五十一條 第十七條ノ規定ニ從ヒ判決ニ附記シタル費用額確定決定ニ依ル强制執行ハ執行力アル當該判決正本ニ基キ之ヲ爲ス
第五十二條 執達吏ノ職務ヲ行フ者必要ト認ムルトキハ利害關係人ノ申立ナシト雖競買人ニ對シ民事訴訟法第六百六十四條ノ保證ヲ立ツヘキコトヲ命スルコトヲ得
第五十三條 法院ノ設置ナキ地ニ在ル不動產ノ强制競賣ニ付テハ法院ハ開始決定ノ送達ヲ爲シタル後不動產ノ所在地ヲ管轄スル南洋廳支廳ニ執行記錄ヲ送付シテ其ノ後ノ手續ヲ囑託スルコトヲ得但シ競賣手續ヲ取消ス裁判及配當異議ノ訴ニ對スル裁判ハ此ノ限ニ在ラス
第五十四條 前條ノ囑託アリタル場合ニ於テハ執行法院及配當法院ノ事務ハ後六條ノ規定ニ依ルノ外通常ノ手續ニ從ヒ南洋廳支廳長之ヲ行フ
第五十五條 南洋廳支廳長ハ民事訴訟法第六百五十三條及第六百五十六條ノ規定ニ依リ競賣手續ヲ取消スヘキモノト認メタルトキハ執行記錄ヲ法院ニ返還スヘシ南洋廳支廳ニ配當異議ノ訴狀ノ提出アリタルトキ亦同シ
第五十六條 競賣、競落、代金支拂及配當ノ期日ハ南洋廳支廳ニ於テ之ヲ開ク
第五十七條 競賣期日ノ公告ハ南洋廳支廳ノ揭示場及適當ノ場所ニ、其ノ他ノ公告ハ南洋廳支廳ノ揭示場ニ揭示シテ之ヲ爲ス
第五十八條 民事訴訟法第六百六十八條ニ規定スル調書、金錢又ハ有價證券ハ之ヲ南洋廳支廳長ニ渡スヘシ
第五十九條 民事訴訟法第六百八十條ノ抗告ニ付テハ囑託ヲ爲シタル法院ヲ以テ抗告法院トス
第六十條 執行手續ヲ完結シタルトキハ南洋廳支廳長ハ執行記錄ヲ法院ニ返還スヘシ
第六十一條 前八條ノ規定ハ不動產ノ任意競賣ニ之ヲ準用ス
第三節 刑事訴訟手續
第六十二條 刑事訴訟手續ハ高等法院ニ於テハ刑事訴訟法中控訴裁判所ニ關スル規定ニ依リ地方法院ニ於テハ同法中地方裁判所及區裁判所ニ關スル規定ニ依ル
第六十三條 法院ハ被告人カ其ノ法院ノ管轄區域內ニ在ラサルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ被告人ノ所在地ヲ管轄スル同等ノ法院ニ移送スルコトヲ得
第六十四條 官吏公吏ノ作ルヘキ書類ニシテ刑事訴訟法第二十條、第二十一條其ノ他同法規定ノ形式ニ瑕疵アルモノニ付テハ當該吏員ヲシテ之ヲ補正セシメ有效ナラシムルコトヲ得
前項ノ補正ヲ爲シタルトキハ其ノ年月日、場所及補正事項ヲ附記シテ署名捺印スヘシ
第六十五條 檢事ノ職務ヲ行フ者ハ現行犯ニ非スト雖犯罪搜査ノ結果被告事件急速ノ處分ヲ要スルモノト思料シタルトキハ公訴ノ提起前ニ限リ勾引狀ヲ發シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ發セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ禁錮以上ノ刑ニ該ルモノト思料シタルトキハ檢事ノ職務ヲ行フ者ハ勾留狀ヲ發シ檢證、搜索、差押ヲ爲シ證人ヲ訊問シ若ハ鑑定ヲ命シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ爲サシムルコトヲ得但シ宣誓ヲ爲サシメ又ハ罰金若ハ科料及費用賠償ノ言渡ヲ爲スコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ被告人ヲ勾留シタル後二十日以內ニ起訴セサルトキハ之ヲ釋放スヘシ
第六十六條 檢事ノ職務ヲ行フ者犯罪ノ搜査ヲ終リ有罪ト思料シタルトキハ公判ヲ請求スルニ依リテ公訴ヲ提起スヘシ
豫審ハ之ヲ行ハス
第六十七條 刑事訴訟法ニ依リ市町村長ノ立會ヲ要スル場合ニ於テハ相當ノ者二人以上ノ立會アルヲ以テ足ル
第六十八條 法院ハ法院所在地外ニ於テ證據蒐集ヲ爲スヘキ場合ニ於テ司法警察官ニ檢證、搜索若ハ差押ノ處分ヲ爲サシメ又ハ證人ヲ訊問シ若ハ鑑定ヲ命セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ司法警察官ハ罰金若ハ科料及費用賠償ノ言渡ヲ爲シ又ハ宣誓ヲ爲サシムルコトヲ得ス
第六十九條 法院ハ公判期日外ト雖檢證、搜索、差押ヲ爲シ證人ヲ訊問シ又ハ鑑定ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ檢事ノ職務ヲ行フ者其ノ他訴訟關係人ノ立會ヲ要セス
第七十條 受命判事又ハ受託判事ハ臨檢ヲ爲シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ法院ノ決定ヲ俟タス搜索、差押ヲ爲シ被告人若ハ證人ヲ訊問シ又ハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第七十一條 被告人、證人若ハ鑑定人ヨリ期日ニ出頭スヘキ旨ノ書面ヲ差出シ又ハ出頭シタル被告人、證人若ハ鑑定人ニ對シ口頭ヲ以テ次囘ノ出頭ヲ命シタルトキハ呼出狀ヲ送達シタルト同一ノ效力ヲ生ス口頭ヲ以テ出頭ヲ命シタル場合ニ於テハ其ノ旨ヲ公判始末書ニ記載スヘシ
第七十二條 刑事訴訟法第二百三十七條及第二百六十四條第三項ノ規定ハ之ヲ適用セス但シ法院ハ被告人又ハ被告事件ノ模樣ニ因リ職權ヲ以テ辯護人ヲ附スルコトヲ得
第七十三條 一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ三百圓以下ノ罰金ヲ言渡シタル第一審ノ判決ニ付テハ證據ニ關スル理由ヲ省略スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ控訴ノ申立アリタルトキハ判決ヲ爲シタル法院ハ理由書ヲ作成シテ之ヲ控訴法院ニ送付スヘシ
第七十四條 辯論終結ノ後ハ被告人出頭セスト雖對席トシテ判決ヲ言渡スヘシ
第七十五條 罰金以下ノ刑ニ該ルヘキ被告人呼出狀ヲ受取リ、期日ニ出頭スヘキ旨ノ書面ヲ差出シ又ハ口頭ニテ出頭ヲ命セラレタルモ本人又ハ代人出頭セサル爲闕席判決ヲ受ケタルトキハ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
第七十六條 前二條ノ場合ニ於テハ判決書ニ控訴期間ヲ記載シ職權ヲ以テ其ノ正本ヲ送達スヘシ
控訴期間ハ判決正本ノ送達アリタル日ヨリ之ヲ起算ス控訴期間ノ記載ナキトキハ更ニ其ノ通知アル迄控訴期間ノ經過ヲ停止ス
第七十七條 控訴ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
控訴抛棄ノ申立ハ原判決ヲ爲シタル法院ニ之ヲ爲スヘシ
第七十八條 控訴ハ檢事モ亦之ヲ取下クルコトヲ得
控訴取下ノ申立ハ控訴法院ニ之ヲ爲スヘシ訴訟記錄ヲ控訴法院又ハ控訴法院檢事ニ送付スル前控訴ノ取下ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ申立書ヲ原判決ヲ爲シタル法院ニ差出スコトヲ得
第七十九條 控訴ノ抛棄及取下ハ書面ヲ以テ之ヲ爲スヘシ但シ公判廷ニ於テハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ申立ヲ公判始末書ニ記載スヘシ
第八十條 控訴ノ抛棄又ハ取下ヲ爲シタル者ハ其ノ事件ニ付更ニ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
第八十一條 辯護人ハ被告人ノ同意ヲ得スシテ控訴ヲ爲スコトヲ得ス
第八十二條 刑事訴訟法第二百六十九條ノ場合ヲ除クノ外訴訟手續法令ニ違反シタルコトアリト雖判決ニ影響ヲ及ホササルトキハ之ヲ以テ控訴ノ理由ト爲スコトヲ得ス
第八十三條 再審ノ訴及非常上告ニ關シテハ高等法院ヲ以テ管轄法院トス
高等法院ハ再審ノ訴ニ付其ノ原由アルコトヲ認メタルトキハ原判決ヲ破毀シ直ニ其ノ事件ノ公訴及私訴ニ付判決ヲ爲スヘシ
第八十四條 差押物件ノ還付ヲ受クヘキ者ノ所在不明ナル爲又ハ其ノ他ノ事由ニ因リ其ノ物件ヲ還付スルコト能ハサル場合ニ於テハ檢事ハ其ノ旨ヲ公告スヘシ
公告ヲ爲シタル時ヨリ六月內ニ還付ノ請求ナキトキハ其ノ物件ハ國庫ニ歸屬ス
前項ノ期間內ト雖價値ナキ物件ハ之ヲ廢棄シ保管ニ不便ナル物件ハ之ヲ公賣シテ其ノ代金ヲ保管スルコトヲ得
第八十五條 檢事ハ私訴ノ審判ニ立會ハサルコトヲ得
第三章 民事爭議調停
第八十六條 法院所在地ニ非サル地ノ南洋廳支廳長ハ當事者ノ申立ニ因リ其ノ管轄區域內ニ於ケル民事爭議ニ付調停及其ノ執行ヲ爲スコトヲ得
第八十七條 民事爭議調停ノ申立ハ被申立人ノ居住地ヲ管轄スル南洋廳支廳長ニ之ヲ爲スヘシ但シ不動產ニ關スル爭議ニ付テハ其ノ所在地ヲ管轄スル南洋廳支廳長ニ之ヲ爲スヘシ
第八十八條 調停ノ申立ハ相手方ヲ表示シ且爭議ノ實情ヲ明ニシテ之ヲ爲スコトヲ要ス
第八十九條 調停ノ申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得
口頭ノ申立アリタル場合ニ於テハ南洋廳支廳長又ハ其ノ命スル官吏申立調書ヲ作ルコトヲ要ス
第九十條 調停ノ申立アリタルトキハ南洋廳支廳長ハ期日ヲ定メ當事者ヲ呼出スヘシ此ノ場合ニ於テハ調停ノ結果ニ付利害關係ヲ有スル者ヲ參加セシムルコトヲ得
第九十一條 調停ノ申立人指定ノ期日ニ正當ノ理由ナクシテ出頭セサルトキハ申立ヲ取下ケタルモノト看做ス
被申立人期日ニ出頭セサルトキハ更ニ期日ヲ定メテ之ヲ呼出スヘシ新期日ニ尙出頭セサル場合ト雖調停ノ成立スル見込アルトキハ南洋廳支廳長ハ更ニ期日ヲ定メテ之ヲ呼出スコトヲ得
第九十二條 南洋廳支廳長ハ申立人カ義務ノ囘避其ノ他不當ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ爲シタリト認ムルトキハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第九十三條 調停ノ申立アリタル場合ニ於テ被申立人他ノ支廳ノ管內ニ轉居シタルトキハ申立人ノ申立ニ因リ事件ヲ其ノ管轄支廳ニ移送スルコトヲ得
第九十四條 調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟カ繫屬スルトキハ調停ノ終了ニ至ル迄訴訟手續ヲ中止ス
第九十五條 南洋廳支廳長ハ調停前調停ノ爲必要ト認ムル處分ヲ命スルコトヲ得
第九十六條 南洋廳支廳長ハ當事者ノ申請ニ因リ必要ト認ムルトキハ參考人ヲ喚問シ實地ニ臨檢シ又ハ相當技術者ニ鑑定ヲ命スルコトヲ得
前項ノ申請ヲ爲ス者ニハ之ニ要スル費用ヲ豫納セシムルコトヲ得
第九十七條 參考人及鑑定人ハ旅費、日當及止宿料ヲ請求スルコトヲ得
第九十八條 調停成立セサルトキ又ハ調停ノ成立スル見込ナシト認ムルトキハ支廳長ハ其ノ旨ヲ宣言シテ事件ヲ終了ス
第九十九條 調停成立シタルトキハ調停調書ヲ作成シ左ノ事項ヲ明確ニスヘシ
一 當事者及代理人ノ氏名、職業及住居
二 當事者ノ申述ノ要旨
三 成立シタル調停條項
第百條 調停調書ノ原本ニハ年月日ヲ記載シ當事者ヲシテ署名捺印セシメ支廳長署名捺印シ且廳印ヲ押捺スヘシ
第百一條 當事者ハ手數料ヲ納付シテ調停調書ノ正本又ハ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
第百二條 調停ノ執行ニ付テハ民事訴訟法第五百五十九條第四號ニ揭ケタル債務名義ニ因ル强制執行ニ關スル規定ヲ準用ス
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ裁判所又ハ裁判長ニ屬スル職務ハ南洋廳支廳長、裁判所書記ニ屬スル職務ハ支廳長ノ命スル官吏之ヲ行フ但シ强制執行ニ對シ訴ヲ以テ權利又ハ異議ヲ主張スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第百三條 南洋廳支廳長ハ成立シタル調停條項ニ關スル犯罪行爲ニ付公訴ノ提起アリタルトキハ其ノ事件ノ完結スル迄調停ノ執行ヲ停止スヘシ
第百四條 南洋廳支廳長ハ調停ノ執行ヲ他ノ支廳長ニ囑託スルコトヲ得
第百五條 調停ノ成立シタル爭議ト同一事件ニ付テハ訴訟ヲ提起スルコトヲ得ス
第百六條 書類ノ送達ニ付テハ訴訟書類ノ送達ニ關スル規定ヲ準用ス
第百七條 高等法院長ハ爭議調停事務ヲ監視シ其ノ書類ヲ檢閱シ注意ヲ與フルコトヲ得
第百八條 調停ノ申立ヲ爲スニハ手數料ヲ納付スルコトヲ要ス
第百九條 調停費用ハ當事者ノ負擔トス其ノ調停費用及各當事者ノ負擔ノ割合ハ調停ヲ爲ス者ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム
第百十條 第九十七條ノ旅費、日當及止宿料竝第百一條及第百八條ノ手數料ノ額ハ南洋廳長官之ヲ定ム
第四章 登記及供託
第百十一條 法院ノ設置ナキ地ニ於テハ供託ノ事務ハ南洋廳支廳長之ヲ取扱フコトヲ得
第百十二條 法院及登記又ハ供託ノ事務ヲ取扱フ南洋廳支廳長ハ所屬官吏ヲシテ登記又ハ供託ノ事務ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第百十三條 登記ノ申請ヲ爲ス者ハ南洋廳長官ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ納付スヘシ
第五章 公證
第百十四條 民事ニ關スル公正證書ノ作成及私署證書ノ認證ハ當事者ノ申請ニ因リ地方法院ノ判事、法院ノ設置ナキ地ニ於テハ南洋廳支廳長之ヲ取扱フ
第百十五條 本章ノ規定ニ依リ作成シタル公正證書ニシテ民事訴訟法第五百五十九條第五號但書ノ作成要件ヲ具備シタルモノハ同號ノ債務名義ニ因ル强制執行ニ關スル規定ニ準シ强制執行ヲ爲スコトヲ得但シ僞造ノ公訴提起アリタルトキハ其ノ執行ヲ停止スヘシ民事訴訟ニ關シ僞造ノ申立アリタルトキハ其ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
民事訴訟ニ關シ僞造ノ申立アリタル場合ニ於テハ民事訴訟法第五百條ノ規定ニ依ル
第百十六條 公正證書ノ作成ニ關シテハ公證人法第四章ノ規定ニ、私署證書ノ認證ニ關シテハ同法第五章ノ規定ニ依ル但シ同法中地方裁判所長ノ職務ハ高等法院長之ヲ行ヒ市區町村長ノ職務ハ南洋廳支廳長之ヲ行フ
第百十七條 公證官吏ノ職務執行ニ關シ不服アル者ハ高等法院ニ抗告スルコトヲ得
前項ノ抗告アリタルトキハ公證官吏ハ其ノ事件ノ處分ヲ停止スヘシ
抗告ニ關シテハ民事訴訟法ニ依ル
第百十八條 公正證書作成費用及作成ノ爲出張シタル公證官吏ノ旅費日當ハ申請人ノ負擔トス其ノ額ハ南洋廳長官之ヲ定ム
第百十九條 公正證書ノ原本、其ノ附屬書類及法令ニ依リ公證官吏ノ調製シタル帳簿ハ事變ヲ避クル爲ニスル場合又ハ法院ノ命令若ハ囑託アル場合ニ非サレハ之ヲ他ニ持出スコトヲ得ス
第百二十條 公證官吏事故アルトキハ法院書記又ハ南洋廳支廳所屬官吏ヲシテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第百二十一條 法令中公證人ノ職務ニ屬スルモノハ公證官吏之ヲ行フ
第六章 執達
第百二十二條 法令中執達吏ノ職務ニ屬スルモノハ地方法院書記、法院ノ設置ナキ地ニ在リテハ南洋廳支廳所屬官吏之ヲ行フ
地方法院長又ハ南洋廳支廳長ハ巡査其ノ他適當ト認ムル者ヲシテ臨時前項ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得
第百二十三條 執達吏ノ職務ヲ行フ法院書記又ハ南洋廳支廳所屬官吏ハ書類ノ送達ニ限リ所屬廳ノ吏員ヲシテ臨時其ノ事務ヲ代理セシムルコトヲ得
第百二十四條 前二條ノ規定ニ依リ執達吏ノ職務ヲ行フ者ハ證票ヲ携帶スヘシ
第百二十五條 執達ノ手數料及旅費ニ關シテハ南洋廳長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ大正十二年三月一日ヨリ之ヲ施行ス
南洋群島刑事民事裁判令ハ之ヲ廢止ス
本令施行前爲シタル手續其ノ他ノ行爲ニシテ本令中之ニ該當スル規定アルモノハ之ヲ本令ニ依リテ爲シタルモノト看做ス
本令施行ノ際現ニ繫屬中ノ民事刑事ノ事件ニ關シテハ仍從前ノ例ニ依リ之ヲ完結ス
金錢又ハ有價證券ニ非サル物品ノ供託ニ付テハ南洋廳長官ハ當分ノ內適當ト認ムル者ヲ指定シ倉庫業者又ハ銀行ニ代フルコトヲ得
朕南洋群島裁判事務取扱令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十二年一月二十六日
内閣総理大臣 男爵 加藤友三郎
勅令第二十六号
南洋群島裁判事務取扱令
第一章 総則
第一条 民事刑事及非訟事件ニ関スル事項ハ本令其ノ他ノ法令ニ特別ノ規定アル場合ヲ除クノ外左ノ法令ニ依ル
一法例
一民法
一民法施行法
一明治三十五年法律第五十号
一明治三十七年法律第十七号
一明治三十二年法律第四十号
一明治三十三年法律第五十一号
一明治三十三年勅令第百四十四号
一明治三十二年法律第五十号
一明治三十三年法律第十三号
一明治三十三年勅令第四百九号
一遺失物法
一商法
一商法施行法
一破産法
一和議法
一明治三十三年法律第十七号
一明治三十二年勅令第二百七十一号
一供託法
一工場抵当法
一刑法
一刑法施行法
一爆発物取締罰則
一通貨及証券模造取締法
一明治二十二年法律第三十四号
一明治三十八年法律第六十六号
一大正四年法律第十八号
一印紙犯罪処罰法
一民事訴訟法
一民事訴訟費用法
一人事訴訟手続法
一競売法
一刑事訴訟法
一刑事訴訟費用法
一刑事交渉法
一外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法
一逃亡犯罪人引渡条例
一外国艦船乗組員ノ逮捕留置ニ関スル援助法
一不動産登記法
一非訟事件手続法
第二条 島民ノ外ニ関係者ナキ民事ニ関スル事項ニ付テハ慣例ニ依ル但シ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル場合ハ之ノ限ニ在ラス
第三条 土地ニ関スル権利ニ付テハ当分ノ内従前ノ慣例ニ依ル
土地ニ関スル権利ニ付テハ当分ノ内登記ヲ為サス
第四条 第一条ノ法令中主務大臣又ハ地方長官ノ職務ハ民事訴訟法第百五十二条及逃亡犯罪人引渡条例ニ規定スル外務大臣ノ職務ヲ除クノ外南洋庁長官、大審院長ノ職務ハ南洋庁高等法院長、検事総長又ハ検事長ノ職務ハ南洋庁高等法院検事、地方裁判所長ノ職務ハ南洋庁地方法院長、地方裁判所検事又ハ区裁判所検事ノ職務ハ南洋庁地方法院検事、市町村長ノ職務ハ南洋庁支庁長、市町村吏員ノ職務ハ南洋庁支庁所属官吏之ヲ行ヒ大審院トアルハ南洋庁高等法院、裁判所トアルハ南洋庁法院、供託局トアルハ南洋庁地方法院、警察官署市役所区役所又ハ市町村役場トアルハ南洋庁支庁トス
第五条 第一条ノ法令ノ適用ニ付テハ府県ハ南洋群島ニ、市町村ハ南洋庁支庁ノ管轄区域ニ該当ス
第六条 第一条ノ法令ニ規定スル登記ヲ為スヘキ期間ハ之ヲ二倍トス
第七条 第一条ノ法令ニ依リ官報ニ掲載シテ為スヘキ公告又ハ公示ハ南洋庁公報ニ掲載シテ之ヲ為スコトヲ得
第八条 第一条ノ法令及裁判所構成法ニ依リ大審院ノ管轄ニ属スル事項ハ南洋庁高等法院、地方裁判所又ハ区裁判所ノ管轄ニ属スル事項ハ南洋庁地方法院之ヲ管轄ス但シ人事訴訟手続法第五十五条第一項及第六十六条第一項ノ訴ハ南洋庁高等法院之ヲ管轄ス
第九条 民事及刑事ノ訴訟其ノ他ノ裁判事務ニ関シテハ南洋庁長官ノ定ムル所ニ従ヒ手数料ヲ納付スヘシ
第二章 訴訟手続
第一節 通則
第十条 開廷、法院ノ用語並裁判ノ評議及言渡ニ関シテハ裁判所構成法第百四条乃至第百二十四条ノ規定ニ、法律上ノ共助ニ関シテハ同法第百三十一条乃至第百三十三条ノ規定ニ依ル但シ同法中区裁判所トアルハ南洋庁地方法院トス
第十一条 忌避及回避ニ関スル規定ハ之ヲ適用セス
第十二条 法院又ハ裁判長カ職権ヲ以テ弁護士ヲ訴訟承継人、訴訟代理人又ハ弁護人ニ選定シ又ハ選任スヘキ場合ニ於テハ弁護士ニ非サル者ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
第十三条 法院ノ設置ナキ地ニ在リテハ急速ヲ要スル場合ニ限リ訴状其ノ他ノ訴訟書類ヲ南洋庁支庁ニ提出シタルトキハ之ヲ法院ニ提出シタルト同一ノ効力ヲ生ス
第十四条 島民ノミニ関スル訴訟ニ付テハ本令ノ規定ニ拘ラス法院ノ認ムル便宜ノ訴訟手続ニ依ルコトヲ得
第二節 民事訴訟手続
第十五条 民事訴訟手続ハ高等法院ニ於テハ民事訴訟法中控訴裁判所ニ関スル規定ニ依リ地方法院ニ於テハ同法中地方裁判所及区裁判所ニ関スル規定ニ依ル
第十六条 当事者ハ法院ノ許可ヲ得テ訴訟能力者ヲ以テ代理人ト為スコトヲ得
前項ノ許可ハ何時ニテモ之ヲ取消スコトヲ得
第十七条 費用額確定ノ申請アリタル場合ニ於テ未タ判決ノ送達ナク且判決正本ノ作成ヲ遅延セシムル虞ナキトキハ費用額確定ノ決定ヲ判決及其ノ正本ニ附記スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ費用額ノ決定ニ付正本ノ作成及送達ノ手続ヲ為サス申請人及相手方ニ確定シタル額ヲ通知シ且相手方ニ費用計算書ノ謄本ヲ送付スヘシ但シ費用額確定申請ノ一部ヲ採用セサルトキハ此ノ限ニ在ラス
当事者カ判決言渡前ニ費用計算書ヲ差出シタルトキハ費用額確定ノ申請ヲ為スコトヲ要セス此ノ場合ニ於テハ職権ヲ以テ費用計算書ノ謄本ヲ作成シ之ヲ相手方ニ送付スヘシ
第十八条 仮住所ニ於テスル送達ハ之ヲ受クヘキ人ニ出会ハサルトキハ成長シタル仮住所ノ主人、其ノ同居ノ親族又ハ雇人ニ之ヲ為スコトヲ得
第十九条 法院書記其ノ所属庁内又ハ開廷ノ場所ニ於テ送達ヲ受クヘキ者ニ書類ヲ交付シ受取証ヲ徴シタルトキハ送達アリタルト同一ノ効力ヲ生ス
第二十条 民事訴訟法第百四十五条第二項ノ規定ニ依リ市町村長ニ書類ヲ預置クヘキ場合ニ於テハ送達ヲ為スヘキ地ニ在ル官署ノ長ニ之ヲ預置クコトヲ得
第二十一条 公示送達ハ法院職権ヲ以テ之ヲ命スルコトヲ得
法院ハ民事訴訟法第百五十七条第三項ニ規定シタル書類ノ抄本ヲ南洋庁公報ニ掲載スヘキコトヲ命スルコトヲ得
第二十二条 期日ノ変更又ハ期間ノ伸長ハ当事者合意ノ場合ニ於テモ顕著ナル理由アルニ非サレハ之ヲ許サス
第二十三条 法院ハ其ノ所在地ニ住居セサル当事者ノ為民事訴訟法ノ規定ニ依ラス法律上ノ期間ヲ相当ニ伸長スルコトヲ得但シ不変期間ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第二十四条 訴訟関係人カ期日ニ出頭スヘキ旨ヲ記載シタル書面ヲ差出シタルトキハ期日呼出アリタルト同一ノ効力ヲ生ス
第二十五条 合意ニ因ル訴訟手続ノ休止ハ顕著ナル理由アルトキニ限リ申立ニ因リ之ヲ許ス其ノ申立ハ書面ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ申立ニ付テハ民事訴訟法第百七十一条第二項及第四項ノ規定ヲ準用ス
合意ニ因ル休止ノ場合ニ於テ六月内ニ口頭弁論ノ期日指定ノ申立ヲ為ササルトキハ本訴及反訴ヲ取下ケタルモノト看做ス其ノ申立ヲ為シタルトキト雖期日前重ネテ休止ヲ為シ其ノ期間前後ヲ通算シテ六月ヲ超ユルトキ亦同シ
第二十六条 口頭弁論ハ書面ヲ以テ之ヲ準備スルコトヲ要セス
第二十七条 訴ハ何時ニテモ之ヲ取下クルコトヲ得但シ反訴アリタルトキハ被告ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第二十八条 訴ノ取下アリタルトキハ反訴ハ其ノ効力ヲ失フ但シ被告カ反訴ヲ継続セシムル意思ヲ表示シテ取下ニ同意シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十九条 反訴ハ其ノ目的カ本訴ノ目的又ハ防禦ノ方法ト法律上牽連スルニ非サレハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
第三十条 当事者カ重大ナル過失ニ因リ又ハ訴訟ノ完結ヲ遅延セシムル意思ヲ以テ時期ニ後レテ提出シタル攻撃又ハ防禦ノ方法カ訴訟ノ完結ヲ遅延セシムヘキモノナルトキハ法院ハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ之ヲ却下スルコトヲ得
前項ノ規定ハ証拠方法及証拠抗弁ノ提出ニ付之ヲ準用ス
第三十一条 闕席判決ヲ為ストキハ其ノ判決ニ対シ故障ノ申立ヲ為シ得ヘキコト及其ノ期間ヲ主文ニ附記スヘシ附記ナキトキハ其ノ通知アル迄故障期間ノ進行ヲ停止ス
第三十二条 判決ニ於テ作為ノ履行ヲ命スル場合ニ於テハ原告ノ申立ニ因リ一定ノ期間内ニ履行ヲ為ササルトキハ賠償金ヲ支払フヘキ旨ヲ言渡スコトヲ得
第三十三条 判決ハ職権ヲ以テ之ヲ送達ス
判決ノ送達ハ其ノ正本ヲ交付シテ之ヲ為ス
第三十四条 再渡ノ闕席判決ニ対シテハ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
第三十五条 証拠調ノ申請及其ノ決定ハ口頭弁論前ト雖之ヲ為スコトヲ得
第三十六条 証拠決定中一部ノ証拠調ニ依リ結果ヲ得タルトキハ他ノ証拠調ヲ省略スル決定ヲ為スコトヲ得
第三十七条 受命判事又ハ受託判事ハ検証ノ場合ニ於テ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ法院ノ決定ヲ俟タス検証事項ニ関シ証人ヲ訊問シ又ハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第三十八条 証人ノ呼出状ニハ訊問事項ヲ表示スルコトヲ要セス
第三十九条 証人及鑑定人ハ之ヲ忌避スルコトヲ得ス
第四十条 証人、鑑定人又ハ通事偽証ノ罪ヲ犯シタルモノト思料シタルトキハ法院ハ直ニ裁判ヲ為スコトヲ得
第四十一条 当事者ノ提出シタル許スヘキ証拠ヲ調ヘタル結果ニ因リ証スキ事実ノ真否ニ付法院カ心証ヲ得ルニ足ラサルトキハ職権ヲ以テ証人訊問ヲ為スコトヲ得
第四十二条 職権ヲ以テ為ス証拠調ノ費用ハ国庫ニ於テ之ヲ立替フルコトヲ得
職権ヲ以テ為シタル証拠調ノ費用ノ全部又ハ一部ハ之ヲ国庫ノ負担ト為スコトヲ得
第四十三条 職権ヲ以テ為シタル証拠調ノ費用ヲ当事者ノ負担ニ帰セシムヘキ場合ニ於テハ法院ハ判決ヲ以テ其ノ負担者及金額ヲ定ムヘシ訴又ハ上訴ノ取下アリタルトキハ決定ヲ以テ其ノ裁判ヲ為スヘシ
前項ノ決定ニ対シテハ即時抗告ヲ為スコトヲ得
第一項ノ規定ハ職権ヲ以テ為シタル証拠調ノ費用ヲ国庫ノ負担ト為ス場合ニ之ヲ準用ス
第四十四条 支払命令ハ職権ヲ以テ之ヲ債務者ニ送達ス
第四十五条 督促手続ニ関スル規定ハ債務者カ島民ナル場合ニハ当分ノ内之ヲ適用セス
第四十六条 判決言渡ノ際当事者双方在廷シタル場合ニ於テ其ノ言渡後当事者双方カ控訴ノ抛棄ヲ為シタルトキハ控訴期間内ト雖其ノ判決確定ス此ノ場合ニ於テハ其ノ旨ヲ調書ニ記載スヘシ
第四十七条 民事訴訟法第四百二十二条ノ場合ニ於テ当事者合意ノ申立アルトキハ高等法院ハ直ニ本案ノ弁論及裁判ヲ為スコトヲ得
第四十八条 控訴ノ提起ハ控訴状ヲ原判決ヲ為シタル法院ニ差出シテ之ヲ為ス
控訴ノ提起アリタルトキハ書記ハ遅滞ナク訴訟記録ト共ニ控訴状ヲ高等法院ニ発送スヘシ
第四十九条 民事訴訟法第五編ノ規定ハ之ヲ適用セス
第五十条 民事訴訟法第五百二条各号ノ場合ニ於テハ法院ハ職権ヲ以テ仮執行ノ宣言ヲ為スコトヲ得
第五十一条 第十七条ノ規定ニ従ヒ判決ニ附記シタル費用額確定決定ニ依ル強制執行ハ執行力アル当該判決正本ニ基キ之ヲ為ス
第五十二条 執達吏ノ職務ヲ行フ者必要ト認ムルトキハ利害関係人ノ申立ナシト雖競買人ニ対シ民事訴訟法第六百六十四条ノ保証ヲ立ツヘキコトヲ命スルコトヲ得
第五十三条 法院ノ設置ナキ地ニ在ル不動産ノ強制競売ニ付テハ法院ハ開始決定ノ送達ヲ為シタル後不動産ノ所在地ヲ管轄スル南洋庁支庁ニ執行記録ヲ送付シテ其ノ後ノ手続ヲ嘱託スルコトヲ得但シ競売手続ヲ取消ス裁判及配当異議ノ訴ニ対スル裁判ハ此ノ限ニ在ラス
第五十四条 前条ノ嘱託アリタル場合ニ於テハ執行法院及配当法院ノ事務ハ後六条ノ規定ニ依ルノ外通常ノ手続ニ従ヒ南洋庁支庁長之ヲ行フ
第五十五条 南洋庁支庁長ハ民事訴訟法第六百五十三条及第六百五十六条ノ規定ニ依リ競売手続ヲ取消スヘキモノト認メタルトキハ執行記録ヲ法院ニ返還スヘシ南洋庁支庁ニ配当異議ノ訴状ノ提出アリタルトキ亦同シ
第五十六条 競売、競落、代金支払及配当ノ期日ハ南洋庁支庁ニ於テ之ヲ開ク
第五十七条 競売期日ノ公告ハ南洋庁支庁ノ掲示場及適当ノ場所ニ、其ノ他ノ公告ハ南洋庁支庁ノ掲示場ニ掲示シテ之ヲ為ス
第五十八条 民事訴訟法第六百六十八条ニ規定スル調書、金銭又ハ有価証券ハ之ヲ南洋庁支庁長ニ渡スヘシ
第五十九条 民事訴訟法第六百八十条ノ抗告ニ付テハ嘱託ヲ為シタル法院ヲ以テ抗告法院トス
第六十条 執行手続ヲ完結シタルトキハ南洋庁支庁長ハ執行記録ヲ法院ニ返還スヘシ
第六十一条 前八条ノ規定ハ不動産ノ任意競売ニ之ヲ準用ス
第三節 刑事訴訟手続
第六十二条 刑事訴訟手続ハ高等法院ニ於テハ刑事訴訟法中控訴裁判所ニ関スル規定ニ依リ地方法院ニ於テハ同法中地方裁判所及区裁判所ニ関スル規定ニ依ル
第六十三条 法院ハ被告人カ其ノ法院ノ管轄区域内ニ在ラサルトキハ決定ヲ以テ事件ヲ被告人ノ所在地ヲ管轄スル同等ノ法院ニ移送スルコトヲ得
第六十四条 官吏公吏ノ作ルヘキ書類ニシテ刑事訴訟法第二十条、第二十一条其ノ他同法規定ノ形式ニ瑕疵アルモノニ付テハ当該吏員ヲシテ之ヲ補正セシメ有効ナラシムルコトヲ得
前項ノ補正ヲ為シタルトキハ其ノ年月日、場所及補正事項ヲ附記シテ署名捺印スヘシ
第六十五条 検事ノ職務ヲ行フ者ハ現行犯ニ非スト雖犯罪捜査ノ結果被告事件急速ノ処分ヲ要スルモノト思料シタルトキハ公訴ノ提起前ニ限リ勾引状ヲ発シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ発セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ禁錮以上ノ刑ニ該ルモノト思料シタルトキハ検事ノ職務ヲ行フ者ハ勾留状ヲ発シ検証、捜索、差押ヲ為シ証人ヲ訊問シ若ハ鑑定ヲ命シ又ハ司法警察官ヲシテ之ヲ為サシムルコトヲ得但シ宣誓ヲ為サシメ又ハ罰金若ハ科料及費用賠償ノ言渡ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ被告人ヲ勾留シタル後二十日以内ニ起訴セサルトキハ之ヲ釈放スヘシ
第六十六条 検事ノ職務ヲ行フ者犯罪ノ捜査ヲ終リ有罪ト思料シタルトキハ公判ヲ請求スルニ依リテ公訴ヲ提起スヘシ
予審ハ之ヲ行ハス
第六十七条 刑事訴訟法ニ依リ市町村長ノ立会ヲ要スル場合ニ於テハ相当ノ者二人以上ノ立会アルヲ以テ足ル
第六十八条 法院ハ法院所在地外ニ於テ証拠蒐集ヲ為スヘキ場合ニ於テ司法警察官ニ検証、捜索若ハ差押ノ処分ヲ為サシメ又ハ証人ヲ訊問シ若ハ鑑定ヲ命セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ司法警察官ハ罰金若ハ科料及費用賠償ノ言渡ヲ為シ又ハ宣誓ヲ為サシムルコトヲ得ス
第六十九条 法院ハ公判期日外ト雖検証、捜索、差押ヲ為シ証人ヲ訊問シ又ハ鑑定ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ検事ノ職務ヲ行フ者其ノ他訴訟関係人ノ立会ヲ要セス
第七十条 受命判事又ハ受託判事ハ臨検ヲ為シタル場合ニ於テ必要アリト認ムルトキハ法院ノ決定ヲ俟タス捜索、差押ヲ為シ被告人若ハ証人ヲ訊問シ又ハ鑑定ヲ命スルコトヲ得
第七十一条 被告人、証人若ハ鑑定人ヨリ期日ニ出頭スヘキ旨ノ書面ヲ差出シ又ハ出頭シタル被告人、証人若ハ鑑定人ニ対シ口頭ヲ以テ次回ノ出頭ヲ命シタルトキハ呼出状ヲ送達シタルト同一ノ効力ヲ生ス口頭ヲ以テ出頭ヲ命シタル場合ニ於テハ其ノ旨ヲ公判始末書ニ記載スヘシ
第七十二条 刑事訴訟法第二百三十七条及第二百六十四条第三項ノ規定ハ之ヲ適用セス但シ法院ハ被告人又ハ被告事件ノ模様ニ因リ職権ヲ以テ弁護人ヲ附スルコトヲ得
第七十三条 一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ三百円以下ノ罰金ヲ言渡シタル第一審ノ判決ニ付テハ証拠ニ関スル理由ヲ省略スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ控訴ノ申立アリタルトキハ判決ヲ為シタル法院ハ理由書ヲ作成シテ之ヲ控訴法院ニ送付スヘシ
第七十四条 弁論終結ノ後ハ被告人出頭セスト雖対席トシテ判決ヲ言渡スヘシ
第七十五条 罰金以下ノ刑ニ該ルヘキ被告人呼出状ヲ受取リ、期日ニ出頭スヘキ旨ノ書面ヲ差出シ又ハ口頭ニテ出頭ヲ命セラレタルモ本人又ハ代人出頭セサル為闕席判決ヲ受ケタルトキハ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
第七十六条 前二条ノ場合ニ於テハ判決書ニ控訴期間ヲ記載シ職権ヲ以テ其ノ正本ヲ送達スヘシ
控訴期間ハ判決正本ノ送達アリタル日ヨリ之ヲ起算ス控訴期間ノ記載ナキトキハ更ニ其ノ通知アル迄控訴期間ノ経過ヲ停止ス
第七十七条 控訴ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
控訴抛棄ノ申立ハ原判決ヲ為シタル法院ニ之ヲ為スヘシ
第七十八条 控訴ハ検事モ亦之ヲ取下クルコトヲ得
控訴取下ノ申立ハ控訴法院ニ之ヲ為スヘシ訴訟記録ヲ控訴法院又ハ控訴法院検事ニ送付スル前控訴ノ取下ヲ為ス場合ニ於テハ其ノ申立書ヲ原判決ヲ為シタル法院ニ差出スコトヲ得
第七十九条 控訴ノ抛棄及取下ハ書面ヲ以テ之ヲ為スヘシ但シ公判廷ニ於テハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ申立ヲ公判始末書ニ記載スヘシ
第八十条 控訴ノ抛棄又ハ取下ヲ為シタル者ハ其ノ事件ニ付更ニ控訴ヲ為スコトヲ得ス
第八十一条 弁護人ハ被告人ノ同意ヲ得スシテ控訴ヲ為スコトヲ得ス
第八十二条 刑事訴訟法第二百六十九条ノ場合ヲ除クノ外訴訟手続法令ニ違反シタルコトアリト雖判決ニ影響ヲ及ホササルトキハ之ヲ以テ控訴ノ理由ト為スコトヲ得ス
第八十三条 再審ノ訴及非常上告ニ関シテハ高等法院ヲ以テ管轄法院トス
高等法院ハ再審ノ訴ニ付其ノ原由アルコトヲ認メタルトキハ原判決ヲ破毀シ直ニ其ノ事件ノ公訴及私訴ニ付判決ヲ為スヘシ
第八十四条 差押物件ノ還付ヲ受クヘキ者ノ所在不明ナル為又ハ其ノ他ノ事由ニ因リ其ノ物件ヲ還付スルコト能ハサル場合ニ於テハ検事ハ其ノ旨ヲ公告スヘシ
公告ヲ為シタル時ヨリ六月内ニ還付ノ請求ナキトキハ其ノ物件ハ国庫ニ帰属ス
前項ノ期間内ト雖価値ナキ物件ハ之ヲ廃棄シ保管ニ不便ナル物件ハ之ヲ公売シテ其ノ代金ヲ保管スルコトヲ得
第八十五条 検事ハ私訴ノ審判ニ立会ハサルコトヲ得
第三章 民事争議調停
第八十六条 法院所在地ニ非サル地ノ南洋庁支庁長ハ当事者ノ申立ニ因リ其ノ管轄区域内ニ於ケル民事争議ニ付調停及其ノ執行ヲ為スコトヲ得
第八十七条 民事争議調停ノ申立ハ被申立人ノ居住地ヲ管轄スル南洋庁支庁長ニ之ヲ為スヘシ但シ不動産ニ関スル争議ニ付テハ其ノ所在地ヲ管轄スル南洋庁支庁長ニ之ヲ為スヘシ
第八十八条 調停ノ申立ハ相手方ヲ表示シ且争議ノ実情ヲ明ニシテ之ヲ為スコトヲ要ス
第八十九条 調停ノ申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得
口頭ノ申立アリタル場合ニ於テハ南洋庁支庁長又ハ其ノ命スル官吏申立調書ヲ作ルコトヲ要ス
第九十条 調停ノ申立アリタルトキハ南洋庁支庁長ハ期日ヲ定メ当事者ヲ呼出スヘシ此ノ場合ニ於テハ調停ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル者ヲ参加セシムルコトヲ得
第九十一条 調停ノ申立人指定ノ期日ニ正当ノ理由ナクシテ出頭セサルトキハ申立ヲ取下ケタルモノト看做ス
被申立人期日ニ出頭セサルトキハ更ニ期日ヲ定メテ之ヲ呼出スヘシ新期日ニ尚出頭セサル場合ト雖調停ノ成立スル見込アルトキハ南洋庁支庁長ハ更ニ期日ヲ定メテ之ヲ呼出スコトヲ得
第九十二条 南洋庁支庁長ハ申立人カ義務ノ回避其ノ他不当ノ目的ヲ以テ濫ニ調停ノ申立ヲ為シタリト認ムルトキハ其ノ申立ヲ却下スルコトヲ得
第九十三条 調停ノ申立アリタル場合ニ於テ被申立人他ノ支庁ノ管内ニ転居シタルトキハ申立人ノ申立ニ因リ事件ヲ其ノ管轄支庁ニ移送スルコトヲ得
第九十四条 調停ノ申立ヲ受理シタル事件ニ付訴訟カ繋属スルトキハ調停ノ終了ニ至ル迄訴訟手続ヲ中止ス
第九十五条 南洋庁支庁長ハ調停前調停ノ為必要ト認ムル処分ヲ命スルコトヲ得
第九十六条 南洋庁支庁長ハ当事者ノ申請ニ因リ必要ト認ムルトキハ参考人ヲ喚問シ実地ニ臨検シ又ハ相当技術者ニ鑑定ヲ命スルコトヲ得
前項ノ申請ヲ為ス者ニハ之ニ要スル費用ヲ予納セシムルコトヲ得
第九十七条 参考人及鑑定人ハ旅費、日当及止宿料ヲ請求スルコトヲ得
第九十八条 調停成立セサルトキ又ハ調停ノ成立スル見込ナシト認ムルトキハ支庁長ハ其ノ旨ヲ宣言シテ事件ヲ終了ス
第九十九条 調停成立シタルトキハ調停調書ヲ作成シ左ノ事項ヲ明確ニスヘシ
一 当事者及代理人ノ氏名、職業及住居
二 当事者ノ申述ノ要旨
三 成立シタル調停条項
第百条 調停調書ノ原本ニハ年月日ヲ記載シ当事者ヲシテ署名捺印セシメ支庁長署名捺印シ且庁印ヲ押捺スヘシ
第百一条 当事者ハ手数料ヲ納付シテ調停調書ノ正本又ハ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得
第百二条 調停ノ執行ニ付テハ民事訴訟法第五百五十九条第四号ニ掲ケタル債務名義ニ因ル強制執行ニ関スル規定ヲ準用ス
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ裁判所又ハ裁判長ニ属スル職務ハ南洋庁支庁長、裁判所書記ニ属スル職務ハ支庁長ノ命スル官吏之ヲ行フ但シ強制執行ニ対シ訴ヲ以テ権利又ハ異議ヲ主張スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第百三条 南洋庁支庁長ハ成立シタル調停条項ニ関スル犯罪行為ニ付公訴ノ提起アリタルトキハ其ノ事件ノ完結スル迄調停ノ執行ヲ停止スヘシ
第百四条 南洋庁支庁長ハ調停ノ執行ヲ他ノ支庁長ニ嘱託スルコトヲ得
第百五条 調停ノ成立シタル争議ト同一事件ニ付テハ訴訟ヲ提起スルコトヲ得ス
第百六条 書類ノ送達ニ付テハ訴訟書類ノ送達ニ関スル規定ヲ準用ス
第百七条 高等法院長ハ争議調停事務ヲ監視シ其ノ書類ヲ検閲シ注意ヲ与フルコトヲ得
第百八条 調停ノ申立ヲ為スニハ手数料ヲ納付スルコトヲ要ス
第百九条 調停費用ハ当事者ノ負担トス其ノ調停費用及各当事者ノ負担ノ割合ハ調停ヲ為ス者ノ意見ヲ以テ之ヲ定ム
第百十条 第九十七条ノ旅費、日当及止宿料並第百一条及第百八条ノ手数料ノ額ハ南洋庁長官之ヲ定ム
第四章 登記及供託
第百十一条 法院ノ設置ナキ地ニ於テハ供託ノ事務ハ南洋庁支庁長之ヲ取扱フコトヲ得
第百十二条 法院及登記又ハ供託ノ事務ヲ取扱フ南洋庁支庁長ハ所属官吏ヲシテ登記又ハ供託ノ事務ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第百十三条 登記ノ申請ヲ為ス者ハ南洋庁長官ノ定ムル所ニ依リ手数料ヲ納付スヘシ
第五章 公証
第百十四条 民事ニ関スル公正証書ノ作成及私署証書ノ認証ハ当事者ノ申請ニ因リ地方法院ノ判事、法院ノ設置ナキ地ニ於テハ南洋庁支庁長之ヲ取扱フ
第百十五条 本章ノ規定ニ依リ作成シタル公正証書ニシテ民事訴訟法第五百五十九条第五号但書ノ作成要件ヲ具備シタルモノハ同号ノ債務名義ニ因ル強制執行ニ関スル規定ニ準シ強制執行ヲ為スコトヲ得但シ偽造ノ公訴提起アリタルトキハ其ノ執行ヲ停止スヘシ民事訴訟ニ関シ偽造ノ申立アリタルトキハ其ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
民事訴訟ニ関シ偽造ノ申立アリタル場合ニ於テハ民事訴訟法第五百条ノ規定ニ依ル
第百十六条 公正証書ノ作成ニ関シテハ公証人法第四章ノ規定ニ、私署証書ノ認証ニ関シテハ同法第五章ノ規定ニ依ル但シ同法中地方裁判所長ノ職務ハ高等法院長之ヲ行ヒ市区町村長ノ職務ハ南洋庁支庁長之ヲ行フ
第百十七条 公証官吏ノ職務執行ニ関シ不服アル者ハ高等法院ニ抗告スルコトヲ得
前項ノ抗告アリタルトキハ公証官吏ハ其ノ事件ノ処分ヲ停止スヘシ
抗告ニ関シテハ民事訴訟法ニ依ル
第百十八条 公正証書作成費用及作成ノ為出張シタル公証官吏ノ旅費日当ハ申請人ノ負担トス其ノ額ハ南洋庁長官之ヲ定ム
第百十九条 公正証書ノ原本、其ノ附属書類及法令ニ依リ公証官吏ノ調製シタル帳簿ハ事変ヲ避クル為ニスル場合又ハ法院ノ命令若ハ嘱託アル場合ニ非サレハ之ヲ他ニ持出スコトヲ得ス
第百二十条 公証官吏事故アルトキハ法院書記又ハ南洋庁支庁所属官吏ヲシテ其ノ職務ヲ代理セシムルコトヲ得
第百二十一条 法令中公証人ノ職務ニ属スルモノハ公証官吏之ヲ行フ
第六章 執達
第百二十二条 法令中執達吏ノ職務ニ属スルモノハ地方法院書記、法院ノ設置ナキ地ニ在リテハ南洋庁支庁所属官吏之ヲ行フ
地方法院長又ハ南洋庁支庁長ハ巡査其ノ他適当ト認ムル者ヲシテ臨時前項ノ職務ヲ行ハシムルコトヲ得
第百二十三条 執達吏ノ職務ヲ行フ法院書記又ハ南洋庁支庁所属官吏ハ書類ノ送達ニ限リ所属庁ノ吏員ヲシテ臨時其ノ事務ヲ代理セシムルコトヲ得
第百二十四条 前二条ノ規定ニ依リ執達吏ノ職務ヲ行フ者ハ証票ヲ携帯スヘシ
第百二十五条 執達ノ手数料及旅費ニ関シテハ南洋庁長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ大正十二年三月一日ヨリ之ヲ施行ス
南洋群島刑事民事裁判令ハ之ヲ廃止ス
本令施行前為シタル手続其ノ他ノ行為ニシテ本令中之ニ該当スル規定アルモノハ之ヲ本令ニ依リテ為シタルモノト看做ス
本令施行ノ際現ニ繋属中ノ民事刑事ノ事件ニ関シテハ仍従前ノ例ニ依リ之ヲ完結ス
金銭又ハ有価証券ニ非サル物品ノ供託ニ付テハ南洋庁長官ハ当分ノ内適当ト認ムル者ヲ指定シ倉庫業者又ハ銀行ニ代フルコトヲ得