朕市街地建築物法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年九月二十九日
內閣總理大臣 原敬
內務大臣 床次竹二郞
勅令第四百三十八號
市街地建築物法施行令
第一條 建築物左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ住居地域內ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
一 常時十五人以上ノ職工ヲ使用スル工場、常時使用スル原動機馬力數ノ合計二ヲ超過スル工場又ハ汽罐ヲ使用スル工場但シ行政官廳住居ノ安寧ヲ害スル虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上已ムヲ得スト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 五臺以上ノ自動車ヲ常時收容スル車庫
三 劇場、活動寫眞館、寄席又ハ觀物場
四 待合又ハ貸座敷
五 倉庫業ヲ營ム倉庫
六 火葬場
七 屠場
八 塵埃燒却場
九 前各號ニ揭クルモノヲ除クノ外行政官廳住居ノ安寧ヲ害スル虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スルモノ
第二條 建築物左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ商業地域內ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
一 常時五十人以上ノ職工ヲ使用スル工場又ハ常時使用スル原動機馬力數ノ合計十ヲ超過スル工場但シ日刊新聞印刷所及行政官廳商業ノ利便ヲ害スル虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上已ムヲ得スト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 前條第六號乃至第八號ニ該當スルモノ
三 前各號ニ揭クルモノヲ除クノ外行政官廳商業ノ利便ヲ害スル虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スルモノ
第三條 建築物左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ工業地域內ニ非サレハ之ヲ建築スルコトヲ得ス
一 常時百人以上ノ職工ヲ使用スル工場又ハ常時使用スル原動機馬力數ノ合計三十ヲ超過スル工場但シ第一條第一號但書又ハ前條第一號但書ニ該當スルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 左ニ揭クル事業ヲ營ム工場但シ行政官廳衞生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞ナシト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
イ 銃砲火藥類取締法ノ火藥類ノ製造
ロ 鹽素酸鹽類、過鹽素酸鹽類、「ピクリン」酸、「ピクリン」酸鹽類、黃燐、赤燐、硫化燐、「カリウム」、「ナトリウム」、「マグネシウム」、過酸化水素、過酸化「カリウム」、過酸化「ナトリウム」、過酸化「バリウム」、硫化炭素、「エーテル」、「コロヂウム」、「アルコホール」、木精、「アセトン」、「ベンゾール」、「キシロール」、「トルオール」、「テレピン」油、硝化纖維素、「セルロイド」、石油類其ノ他之ニ類スル引火性又ハ發火性物品ノ製造
ハ 硫黃、沃度、「ブローム」、四鹽化炭素、鹽化硫黃、鹽酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素、醋酸、無水醋酸、石炭酸、安息香酸、苛性加里、苛性曹達、「アムモニア」水、炭酸加里、炭酸曹達、「クロール」石灰、次硝酸蒼鉛、「チアン」化合物、砒素化合物、「バリウム」化合物、水銀化合物、鉛化合物、銅化合物、亞硫酸鹽類、「フォルマリン」、「クロロホルム」、「イヒチオール」、「ズルフォナール」、「グリセリン」、「アンチフェブリン」、「アスピリン」、「クレオソート」、「グアヤコール」等其ノ製造ニ際シ有臭又ハ有害ノ瓦斯又ハ廢液ヲ生スル物品ノ製造
ニ 水銀ヲ用井ル計器ノ製造
ホ 燐寸ノ製造
ヘ 金屬ノ熔融又ハ精煉
ト 乾燥油又ハ溶劑ヲ用井ル擬革紙布又ハ防水紙布ノ製造
チ 肥料ノ製造
リ 動物質原料ノ化製
ヌ 製革又ハ毛皮ノ精製
ル 骨、角又ハ貝殼ノ乾燥硏磨
ヲ 製油又ハ製蠟
ワ 染料、顏料又ハ塗料ノ製造
カ 煉瓦又ハ坩堝ノ製造
ヨ 「アスファルト」ノ製造
タ 「セメント」、石膏、石灰、煅製石灰、炭化石灰又ハ石灰窒素ノ製造
レ 古綿又ハ襤褸類ノ精製
ソ 礦石類、黑鉛、硝子、煉瓦、陶磁器等ノ粉碎
ツ 石炭瓦斯又ハ壓縮瓦斯ノ製造
ネ 「コークス」ノ製造
ナ 石炭「タール」、木「タール」、石油蒸餾產物又ハ其ノ殘渣ヲ原料トスル製造
ラ 石鹼ノ製造
ム 製紙
ウ 溶劑ヲ用井ル護謨製品ノ製造
井 鋼釘又ハ鋼球ノ製造
ノ 汽罐ノ製造
オ 金屬ノ壓延又ハ伸線
ク 炭素製品ノ製造
三 前號ニ揭クルモノヲ除クノ外行政官廳衞生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スル事業ヲ營ム工場
四 第二號イ、ロ、ホ、リ及レノ物品ノ貯藏又ハ處理ニ供スルモノ但シ行政官廳衞生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞ナシト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
五 前號ニ揭クルモノヲ除クノ外行政官廳衞生上有害ノ又ハ保安上危險ノ虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スル物品ノ貯藏又ハ處理ニ供スルモノ
第四條 建築物ノ高ハ住居地域內ニ於テハ六十五尺ヲ、住居地域外ニ於テハ百尺ヲ超過スルコトヲ得ス但シ建築物ノ周圍ニ廣濶ナル公園、廣場、道路其ノ他ノ空地アル場合ニ於テ行政官廳交通上、衞生上及保安上支障ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラス
第五條 煉瓦造建築物及石造建築物ハ高六十五尺軒高五十尺ヲ、木造建築物ハ高五十尺軒高三十八尺階數三ヲ、木骨煉瓦造建築物及木骨石造建築物ハ高三十六尺軒高二十六尺ヲ超過スルコトヲ得ス
前項ノ石造ニハ人造石造及「コンクリート」造ヲ、木造ニハ土藏造ヲ包含ス
第一項ノ木骨煉瓦造建築物トハ厚三寸以上ノ煉瓦積ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ塡充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂ヒ木骨石造建築物トハ厚三寸以上ノ石、人造石又ハ「コンクリート」ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ塡充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂フ
一建築物ニシテ外壁二種以上ノ構造ヨリ成ルモノニ付テハ第一項ノ規定ノ適用ニ關シ制限ノ最嚴ナルモノニ依ル
第一項ノ階數ニハ屋階及地階ヲ包含セス
第六條 前二條ニ規定スル建築物ノ高トハ地盤面ヨリ建築物ノ最高部迄ノ高ヲ謂フ
前條第一項ノ軒高トハ地盤面ヨリ建築物ノ外壁上端迄ノ高、外壁上端ニ扶欄、扶壁又ハ軒蛇腹アルトキハ其ノ最高部迄ノ高、出軒ノ場合ニハ軒桁上端迄ノ高ヲ謂フ但シ切妻ノ部分ハ軒高ニ之ヲ算入セス
前二項ノ地盤面ニ高低アルトキハ行政官廳其ノ地盤面ヲ認定ス
第七條 建築物各部分ノ高ハ其ノ部分ヨリ建築物ノ敷地ノ前面道路ノ對側境界線迄ノ水平距離ノ一倍四分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス且其ノ前面道路幅員ノ一倍四分ノ一ニ二十五尺ヲ加ヘタルモノヲ限度トス但シ住居地域外ニ在ル建築物ニ付テハ一倍四分ノ一ヲ一倍二分ノ一トス
前項ノ高トハ前面道路ノ中央ヨリノ高ヲ謂フ
第八條 建築物ノ敷地カ幅員同シカラサル二以上ノ道路ニ接スル場合ニ於テ一ノ道路ノ境界線迄ノ水平距離カ其ノ道路幅員ノ一倍二分ノ一以內ニシテ且八十尺以內ノ區域ノ內ニ在ル建築物各部分ノ高ニ付テハ前條ノ規定ノ適用ニ關シ其ノ道路ヲ前面道路ト看做ス
前項ノ規定ニ依ル前面道路二以上アル場合ニ於テ其ノ幅員同シカラサルトキハ幅員小ナル前面道路ハ幅員最大ナル前面道路ト同一ノ幅員ヲ有スルモノト看做ス
第一項ノ場合ニ於テ同項ニ規定スル區域ノ外ニ在ル建築物各部分ニ付テハ幅員最大ナル道路ヲ前面道路ト看做ス
第九條 道路境界線カ建築線ト一致セサル場合ニ於テハ道路境界線又ハ道路幅員ニ關スル前二條ノ規定ノ適用ニ關シ建築線ヲ其ノ道路境界線ト看做ス
第十條 建築物ノ敷地左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ前三條ノ規定ニ拘ラス行政官廳別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
一 公園、廣場、河、海ノ類ニ接スルトキ
二 前面道路ノ對側ニ公園、廣場、河、海ノ類アルトキ
三 其ノ地盤面ト前面道路ノ路面トノ高低ノ差著シキトキ
四 高低ノ差著シキ二以上ノ道路ニ接スルトキ
五 道路ノ終端ニ位スルトキ
第十一條 行政官廳ハ命令ヲ以テ特ニ道路ヲ指定シ之ニ面スル建築物ノ高ノ最低限度ヲ定ムルコトヲ得
第十二條 煙突、棟飾、避雷針、旗竿、風見竿等建築物ノ屋上ニ突出スルモノノ高ハ建築物ノ高ニ之ヲ算入セス
裝飾塔、物見塔、屋窻、昇降機塔、水槽等建築物ノ屋上突出部ノ高ハ行政官廳命令ノ定ムル所ニ依リ建築物ノ高ニ之ヲ算入セサルコトヲ得
第十三條 本令中高ニ關スル規定ハ煙突、物見塔、扛重機、水槽、氣槽、無線電信用電柱ノ類及工業用建築物ニシテ行政官廳其ノ用途ニ依リ已ムヲ得スト認メ許可シタルモノニ付之ヲ適用セス
本令中高ニ關スル規定ハ社寺建築物ニシテ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルモノニ付之ヲ適用セス
第十四條 建築物ノ建築面積ハ建築物ノ敷地ノ面積ニ對シ住居地域內ニ於テハ十分ノ六、商業地域內ニ於テハ十分ノ八、住居地域及商業地域外ニ於テハ十分ノ七ヲ超過スルコトヲ得ス但シ商業地域內ニ於テ行政官廳特ニ指定シタル角地其ノ他ノ地區ニ於ケル建築物ノ第一階及地階ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
主トシテ住居ノ用ニ供スル建築物ハ住居地域外ニ在ルモノト雖前項ノ規定ノ適用ニ關シ住居地域內ニ在ルモノト看做ス
第十五條 前條第一項ノ建築面積トハ建築物ノ水平斷面ニ於ケル外壁ノ又ハ之ニ代ルヘキ柱ノ中心線內面積中最大ナルモノヲ謂フ但シ地階ニシテ其ノ外壁ノ高地盤面上六尺以下ノモノノ部分ノ面積ハ之ヲ建築面積ト看做サス
軒、庇、桔出緣ノ類カ前項ノ中心線ヨリ突出スルコト三尺ヲ超ユル場合ニ於テハ其ノ外端ヨリ三尺ヲ後退スル線ヲ以テ前項ノ中心線ト看做ス
前條第一項ノ建築物ノ敷地ノ面積トハ建築物ノ敷地ノ水平斷面ノ面積中最大ナルモノヲ謂フ
第十六條 第七條、第八條、第十條、第十四條、前條及第十七條ノ建築物ノ敷地トハ一構ノ建築物ニ屬スル一團ノ土地ヲ謂フ
第十七條 市街地建築物法第十八條第二項ノ規定ニ依リ損失ヲ補償スヘキ場合ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ限ル
一 地域ノ又ハ工業地域內特別地區ノ指定又ハ變更ニ基キ建築物ノ使用禁止又ハ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
二 美觀地區ノ指定又ハ變更ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
三 建築線ノ指定又ハ變更ニ基キ建築物ノ主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
四 建築線ニ面スル建築物ノ壁面ノ位置ノ指定ニ基キ建築物主要構造部ノ變更又ハ除却ヲ命シタル場合
五 建築物ノ高又ハ建築物ノ敷地內ニ存セシムヘキ空地ニ關スル規定ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
第十八條 市街地建築物法第十八條第二項ノ規定ニ依リ補償スヘキ損失ハ通常生スヘキ損失ニ限ル
第十九條 前二條ノ規定ニ依ル損失補償ノ請求ハ市街地建築物法第十八條第一項ノ措置ヲ命セラレタル者之ヲ命セラレタル日ヨリ起算シ三月內ニ之ヲ爲スコトヲ得
第二十條 市街地建築物法第十八條第二項ノ公共團體トハ同法第二十三條ノ規定ニ依ル同法適用區域ノ屬スル市區町村トス
第二十一條 補償義務ノ有無及補償ノ金額ハ補償審查會之ヲ裁定ス
第二十二條 補償審查會ハ第二十條ニ規定スル市街地建築物法第十八條第二項ノ公共團體每ニ之ヲ置ク
補償審查會ハ會長一人及委員十二人ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十三條 會長ハ地方長官ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ左ニ揭クル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 關係各廳高等官 四人
二 前條第一項ノ公共團體ノ吏員 二人
三 前號ノ公共團體ノ議會ノ議員 四人
四 學識經驗アル者 二人
前項第一號、第二號及第四號ノ委員ハ主務大臣之ヲ命シ第三號ノ委員ハ其ノ議會ニ於テ之ヲ選擧ス
第二十四條 補償審查會ニ關シテハ土地收用法第二十七條乃至第三十一條、第三十七條、第三十九條、第四十條第一項第二項、第四十二條乃至第四十五條、第六十九條、第七十二條及第八十三條ノ規定ヲ準用ス
第二十二條第一項ノ公共團體ノ二以上ニ亙ル建築物ニ關シテハ關係補償審查會合同シテ會議ヲ開クヘシ
第二十五條 市街地建築物法第十八條ノ規定ハ建築工事中ノ建築物及建築工事ニ著手セサルモ設計アル建築物ニ之ヲ準用ス
第二十六條 行政官廳ハ建築工事中ノ建築物又ハ建築工事ニ著手セサルモ設計アル建築物ニシテ其ノ建築竣成ノ後ニ於テ市街地建築物法第十八條第一項ノ規定ニ依ル措置ヲ命スル必要ナシト認ムルモノニ付テハ其ノ建築ヲ許可スルコトヲ得
第二十七條 市街地建築物法ハ古社寺保存法又ハ史蹟名勝天然紀念物保存法ノ適用又ハ準用ヲ受クル建築物ニ付之ヲ適用セス
第二十八條 鳥居、形像、紀念門、紀念塔其ノ他ノ建築物ニシテ道路ヲ占用シテ施設スルモノニ對シテハ市街地建築物法第八條、第九條及第十一條ノ規定ヲ適用セス
第二十九條 博覽會建築物、觀覽場、飾門、飾塔、足代及棧橋ノ類ニシテ假設的ノモノニ對シテハ市街地建築物法第二條乃至第六條、第九條及第十一條ノ規定ヲ適用セサルコトヲ得
第三十條 市街地建築物法第二十六條第一項ノ道路ノ新設又ハ變更ノ計畫アル場合ニ於テ行政廳其ノ計畫ヲ告示シタルトキハ其ノ計畫ノ道路ハ之ヲ道路ト看做ス
附 則
本令ハ市街地建築物法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕市街地建築物法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正九年九月二十九日
内閣総理大臣 原敬
内務大臣 床次竹二郎
勅令第四百三十八号
市街地建築物法施行令
第一条 建築物左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ住居地域内ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
一 常時十五人以上ノ職工ヲ使用スル工場、常時使用スル原動機馬力数ノ合計二ヲ超過スル工場又ハ汽缶ヲ使用スル工場但シ行政官庁住居ノ安寧ヲ害スル虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上已ムヲ得スト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 五台以上ノ自動車ヲ常時収容スル車庫
三 劇場、活動写真館、寄席又ハ観物場
四 待合又ハ貸座敷
五 倉庫業ヲ営ム倉庫
六 火葬場
七 屠場
八 塵埃焼却場
九 前各号ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官庁住居ノ安寧ヲ害スル虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スルモノ
第二条 建築物左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ商業地域内ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
一 常時五十人以上ノ職工ヲ使用スル工場又ハ常時使用スル原動機馬力数ノ合計十ヲ超過スル工場但シ日刊新聞印刷所及行政官庁商業ノ利便ヲ害スル虞ナシト認ムルモノ又ハ公益上已ムヲ得スト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 前条第六号乃至第八号ニ該当スルモノ
三 前各号ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官庁商業ノ利便ヲ害スル虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スルモノ
第三条 建築物左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ工業地域内ニ非サレハ之ヲ建築スルコトヲ得ス
一 常時百人以上ノ職工ヲ使用スル工場又ハ常時使用スル原動機馬力数ノ合計三十ヲ超過スル工場但シ第一条第一号但書又ハ前条第一号但書ニ該当スルモノハ此ノ限ニ在ラス
二 左ニ掲クル事業ヲ営ム工場但シ行政官庁衛生上有害ノ又ハ保安上危険ノ虞ナシト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
イ 銃砲火薬類取締法ノ火薬類ノ製造
ロ 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、「ピクリン」酸、「ピクリン」酸塩類、黄燐、赤燐、硫化燐、「カリウム」、「ナトリウム」、「マグネシウム」、過酸化水素、過酸化「カリウム」、過酸化「ナトリウム」、過酸化「バリウム」、硫化炭素、「エーテル」、「コロヂウム」、「アルコホール」、木精、「アセトン」、「ベンゾール」、「キシロール」、「トルオール」、「テレピン」油、硝化繊維素、「セルロイド」、石油類其ノ他之ニ類スル引火性又ハ発火性物品ノ製造
ハ 硫黄、沃度、「ブローム」、四塩化炭素、塩化硫黄、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素、醋酸、無水醋酸、石炭酸、安息香酸、苛性加里、苛性曹達、「アムモニア」水、炭酸加里、炭酸曹達、「クロール」石灰、次硝酸蒼鉛、「チアン」化合物、砒素化合物、「バリウム」化合物、水銀化合物、鉛化合物、銅化合物、亜硫酸塩類、「フォルマリン」、「クロロホルム」、「イヒチオール」、「ズルフォナール」、「グリセリン」、「アンチフェブリン」、「アスピリン」、「クレオソート」、「グアヤコール」等其ノ製造ニ際シ有臭又ハ有害ノ瓦斯又ハ廃液ヲ生スル物品ノ製造
ニ 水銀ヲ用井ル計器ノ製造
ホ 燐寸ノ製造
ヘ 金属ノ熔融又ハ精煉
ト 乾燥油又ハ溶剤ヲ用井ル擬革紙布又ハ防水紙布ノ製造
チ 肥料ノ製造
リ 動物質原料ノ化製
ヌ 製革又ハ毛皮ノ精製
ル 骨、角又ハ貝殻ノ乾燥研磨
ヲ 製油又ハ製蠟
ワ 染料、顔料又ハ塗料ノ製造
カ 煉瓦又ハ坩堝ノ製造
ヨ 「アスファルト」ノ製造
タ 「セメント」、石膏、石灰、煅製石灰、炭化石灰又ハ石灰窒素ノ製造
レ 古綿又ハ襤褸類ノ精製
ソ 礦石類、黒鉛、硝子、煉瓦、陶磁器等ノ粉砕
ツ 石炭瓦斯又ハ圧縮瓦斯ノ製造
ネ 「コークス」ノ製造
ナ 石炭「タール」、木「タール」、石油蒸餾産物又ハ其ノ残渣ヲ原料トスル製造
ラ 石鹼ノ製造
ム 製紙
ウ 溶剤ヲ用井ル護謨製品ノ製造
井 鋼釘又ハ鋼球ノ製造
ノ 汽缶ノ製造
オ 金属ノ圧延又ハ伸線
ク 炭素製品ノ製造
三 前号ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官庁衛生上有害ノ又ハ保安上危険ノ虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スル事業ヲ営ム工場
四 第二号イ、ロ、ホ、リ及レノ物品ノ貯蔵又ハ処理ニ供スルモノ但シ行政官庁衛生上有害ノ又ハ保安上危険ノ虞ナシト認ムルモノハ此ノ限ニ在ラス
五 前号ニ掲クルモノヲ除クノ外行政官庁衛生上有害ノ又ハ保安上危険ノ虞アリト認メ命令ヲ以テ指定スル物品ノ貯蔵又ハ処理ニ供スルモノ
第四条 建築物ノ高ハ住居地域内ニ於テハ六十五尺ヲ、住居地域外ニ於テハ百尺ヲ超過スルコトヲ得ス但シ建築物ノ周囲ニ広濶ナル公園、広場、道路其ノ他ノ空地アル場合ニ於テ行政官庁交通上、衛生上及保安上支障ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラス
第五条 煉瓦造建築物及石造建築物ハ高六十五尺軒高五十尺ヲ、木造建築物ハ高五十尺軒高三十八尺階数三ヲ、木骨煉瓦造建築物及木骨石造建築物ハ高三十六尺軒高二十六尺ヲ超過スルコトヲ得ス
前項ノ石造ニハ人造石造及「コンクリート」造ヲ、木造ニハ土蔵造ヲ包含ス
第一項ノ木骨煉瓦造建築物トハ厚三寸以上ノ煉瓦積ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ填充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂ヒ木骨石造建築物トハ厚三寸以上ノ石、人造石又ハ「コンクリート」ヲ以テ木骨ヲ被覆又ハ填充シテ外壁ヲ構成スルモノヲ謂フ
一建築物ニシテ外壁二種以上ノ構造ヨリ成ルモノニ付テハ第一項ノ規定ノ適用ニ関シ制限ノ最厳ナルモノニ依ル
第一項ノ階数ニハ屋階及地階ヲ包含セス
第六条 前二条ニ規定スル建築物ノ高トハ地盤面ヨリ建築物ノ最高部迄ノ高ヲ謂フ
前条第一項ノ軒高トハ地盤面ヨリ建築物ノ外壁上端迄ノ高、外壁上端ニ扶欄、扶壁又ハ軒蛇腹アルトキハ其ノ最高部迄ノ高、出軒ノ場合ニハ軒桁上端迄ノ高ヲ謂フ但シ切妻ノ部分ハ軒高ニ之ヲ算入セス
前二項ノ地盤面ニ高低アルトキハ行政官庁其ノ地盤面ヲ認定ス
第七条 建築物各部分ノ高ハ其ノ部分ヨリ建築物ノ敷地ノ前面道路ノ対側境界線迄ノ水平距離ノ一倍四分ノ一ヲ超過スルコトヲ得ス且其ノ前面道路幅員ノ一倍四分ノ一ニ二十五尺ヲ加ヘタルモノヲ限度トス但シ住居地域外ニ在ル建築物ニ付テハ一倍四分ノ一ヲ一倍二分ノ一トス
前項ノ高トハ前面道路ノ中央ヨリノ高ヲ謂フ
第八条 建築物ノ敷地カ幅員同シカラサル二以上ノ道路ニ接スル場合ニ於テ一ノ道路ノ境界線迄ノ水平距離カ其ノ道路幅員ノ一倍二分ノ一以内ニシテ且八十尺以内ノ区域ノ内ニ在ル建築物各部分ノ高ニ付テハ前条ノ規定ノ適用ニ関シ其ノ道路ヲ前面道路ト看做ス
前項ノ規定ニ依ル前面道路二以上アル場合ニ於テ其ノ幅員同シカラサルトキハ幅員小ナル前面道路ハ幅員最大ナル前面道路ト同一ノ幅員ヲ有スルモノト看做ス
第一項ノ場合ニ於テ同項ニ規定スル区域ノ外ニ在ル建築物各部分ニ付テハ幅員最大ナル道路ヲ前面道路ト看做ス
第九条 道路境界線カ建築線ト一致セサル場合ニ於テハ道路境界線又ハ道路幅員ニ関スル前二条ノ規定ノ適用ニ関シ建築線ヲ其ノ道路境界線ト看做ス
第十条 建築物ノ敷地左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ前三条ノ規定ニ拘ラス行政官庁別段ノ定ヲ為スコトヲ得
一 公園、広場、河、海ノ類ニ接スルトキ
二 前面道路ノ対側ニ公園、広場、河、海ノ類アルトキ
三 其ノ地盤面ト前面道路ノ路面トノ高低ノ差著シキトキ
四 高低ノ差著シキ二以上ノ道路ニ接スルトキ
五 道路ノ終端ニ位スルトキ
第十一条 行政官庁ハ命令ヲ以テ特ニ道路ヲ指定シ之ニ面スル建築物ノ高ノ最低限度ヲ定ムルコトヲ得
第十二条 煙突、棟飾、避雷針、旗竿、風見竿等建築物ノ屋上ニ突出スルモノノ高ハ建築物ノ高ニ之ヲ算入セス
装飾塔、物見塔、屋窻、昇降機塔、水槽等建築物ノ屋上突出部ノ高ハ行政官庁命令ノ定ムル所ニ依リ建築物ノ高ニ之ヲ算入セサルコトヲ得
第十三条 本令中高ニ関スル規定ハ煙突、物見塔、扛重機、水槽、気槽、無線電信用電柱ノ類及工業用建築物ニシテ行政官庁其ノ用途ニ依リ已ムヲ得スト認メ許可シタルモノニ付之ヲ適用セス
本令中高ニ関スル規定ハ社寺建築物ニシテ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルモノニ付之ヲ適用セス
第十四条 建築物ノ建築面積ハ建築物ノ敷地ノ面積ニ対シ住居地域内ニ於テハ十分ノ六、商業地域内ニ於テハ十分ノ八、住居地域及商業地域外ニ於テハ十分ノ七ヲ超過スルコトヲ得ス但シ商業地域内ニ於テ行政官庁特ニ指定シタル角地其ノ他ノ地区ニ於ケル建築物ノ第一階及地階ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
主トシテ住居ノ用ニ供スル建築物ハ住居地域外ニ在ルモノト雖前項ノ規定ノ適用ニ関シ住居地域内ニ在ルモノト看做ス
第十五条 前条第一項ノ建築面積トハ建築物ノ水平断面ニ於ケル外壁ノ又ハ之ニ代ルヘキ柱ノ中心線内面積中最大ナルモノヲ謂フ但シ地階ニシテ其ノ外壁ノ高地盤面上六尺以下ノモノノ部分ノ面積ハ之ヲ建築面積ト看做サス
軒、庇、桔出縁ノ類カ前項ノ中心線ヨリ突出スルコト三尺ヲ超ユル場合ニ於テハ其ノ外端ヨリ三尺ヲ後退スル線ヲ以テ前項ノ中心線ト看做ス
前条第一項ノ建築物ノ敷地ノ面積トハ建築物ノ敷地ノ水平断面ノ面積中最大ナルモノヲ謂フ
第十六条 第七条、第八条、第十条、第十四条、前条及第十七条ノ建築物ノ敷地トハ一構ノ建築物ニ属スル一団ノ土地ヲ謂フ
第十七条 市街地建築物法第十八条第二項ノ規定ニ依リ損失ヲ補償スヘキ場合ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ限ル
一 地域ノ又ハ工業地域内特別地区ノ指定又ハ変更ニ基キ建築物ノ使用禁止又ハ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
二 美観地区ノ指定又ハ変更ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
三 建築線ノ指定又ハ変更ニ基キ建築物ノ主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
四 建築線ニ面スル建築物ノ壁面ノ位置ノ指定ニ基キ建築物主要構造部ノ変更又ハ除却ヲ命シタル場合
五 建築物ノ高又ハ建築物ノ敷地内ニ存セシムヘキ空地ニ関スル規定ニ基キ建築物主要構造部ノ除却ヲ命シタル場合
第十八条 市街地建築物法第十八条第二項ノ規定ニ依リ補償スヘキ損失ハ通常生スヘキ損失ニ限ル
第十九条 前二条ノ規定ニ依ル損失補償ノ請求ハ市街地建築物法第十八条第一項ノ措置ヲ命セラレタル者之ヲ命セラレタル日ヨリ起算シ三月内ニ之ヲ為スコトヲ得
第二十条 市街地建築物法第十八条第二項ノ公共団体トハ同法第二十三条ノ規定ニ依ル同法適用区域ノ属スル市区町村トス
第二十一条 補償義務ノ有無及補償ノ金額ハ補償審査会之ヲ裁定ス
第二十二条 補償審査会ハ第二十条ニ規定スル市街地建築物法第十八条第二項ノ公共団体毎ニ之ヲ置ク
補償審査会ハ会長一人及委員十二人ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十三条 会長ハ地方長官ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ左ニ掲クル者ヲ以テ之ニ充ツ
一 関係各庁高等官 四人
二 前条第一項ノ公共団体ノ吏員 二人
三 前号ノ公共団体ノ議会ノ議員 四人
四 学識経験アル者 二人
前項第一号、第二号及第四号ノ委員ハ主務大臣之ヲ命シ第三号ノ委員ハ其ノ議会ニ於テ之ヲ選挙ス
第二十四条 補償審査会ニ関シテハ土地収用法第二十七条乃至第三十一条、第三十七条、第三十九条、第四十条第一項第二項、第四十二条乃至第四十五条、第六十九条、第七十二条及第八十三条ノ規定ヲ準用ス
第二十二条第一項ノ公共団体ノ二以上ニ亘ル建築物ニ関シテハ関係補償審査会合同シテ会議ヲ開クヘシ
第二十五条 市街地建築物法第十八条ノ規定ハ建築工事中ノ建築物及建築工事ニ著手セサルモ設計アル建築物ニ之ヲ準用ス
第二十六条 行政官庁ハ建築工事中ノ建築物又ハ建築工事ニ著手セサルモ設計アル建築物ニシテ其ノ建築竣成ノ後ニ於テ市街地建築物法第十八条第一項ノ規定ニ依ル措置ヲ命スル必要ナシト認ムルモノニ付テハ其ノ建築ヲ許可スルコトヲ得
第二十七条 市街地建築物法ハ古社寺保存法又ハ史蹟名勝天然紀念物保存法ノ適用又ハ準用ヲ受クル建築物ニ付之ヲ適用セス
第二十八条 鳥居、形像、紀念門、紀念塔其ノ他ノ建築物ニシテ道路ヲ占用シテ施設スルモノニ対シテハ市街地建築物法第八条、第九条及第十一条ノ規定ヲ適用セス
第二十九条 博覧会建築物、観覧場、飾門、飾塔、足代及桟橋ノ類ニシテ仮設的ノモノニ対シテハ市街地建築物法第二条乃至第六条、第九条及第十一条ノ規定ヲ適用セサルコトヲ得
第三十条 市街地建築物法第二十六条第一項ノ道路ノ新設又ハ変更ノ計画アル場合ニ於テ行政庁其ノ計画ヲ告示シタルトキハ其ノ計画ノ道路ハ之ヲ道路ト看做ス
附 則
本令ハ市街地建築物法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス