第一條 主務大臣ハ本法ヲ適用スル區域內ニ住居地域、商業地域又ハ工業地域ヲ指定スルコトヲ得
第二條 建築物ニシテ住居ノ安寧ヲ害スル虞アル用途ニ供スルモノハ住居地域內ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
第三條 建築物ニシテ商業ノ利便ヲ害スル虞アル用途ニ供スルモノハ商業地域內ニ之ヲ建築スルコトヲ得ス
第四條 工場、倉庫其ノ他之ニ準スヘキ建築物ニシテ規模大ナルモノ又ハ衞生上有害若ハ保安上危險ノ虞アル用途ニ供スルモノハ工業地域內ニ非サレハ之ヲ建築スルコトヲ得ス
主務大臣必要ト認ムルトキハ前項ノ建築物ニシテ著シク衞生上有害又ハ保安上危險ノ虞アル用途ニ供スルモノニ付テハ工業地域內ニ於テ其ノ建築ニ付特別地區ヲ指定スルコトヲ得
第五條 前三條ニ規定スル建築物ノ種類ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條 前四條ノ規定ノ適用ニ付テハ新ニ建築物ノ用途ヲ定メ又ハ建築物ヲ他ノ用途ニ供スルトキハ其ノ用途ニ供スル建築物ヲ建築スルモノト看做ス
第七條 道路敷地ノ境界線ヲ以テ建築線トス但シ特別ノ事由アルトキハ行政官廳ハ別ニ建築線ヲ指定スルコトヲ得
第八條 建築物ノ敷地ハ建築線ニ接セシムルコトヲ要ス但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九條 建築物ハ建築線ヨリ突出セシムルコトヲ得ス但シ建築線カ道路幅ノ境界線ヨリ後退シテ指定セラレタルモノナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ建築物ノ前面突出部又ハ基礎ハ道路幅ノ境界線ヲ超エサル範圍內ニ於テ建築線ヨリ之ヲ突出セシムルコトヲ得
第十條 行政官廳ハ市街ノ體裁上必要ト認ムルトキハ建築線ニ面シテ建築スル建築物ノ壁面ノ位置ヲ指定スルコトヲ得
第十一條 建築物ヲ建築スル場合ニ於ケル其ノ高又ハ其ノ敷地內ニ存セシムヘキ空地ニ關シテハ地方ノ狀況、地域及地區ノ種別、土地ノ情態、建築物ノ構造、前面道路ノ幅員等ヲ參酌シ勅令ヲ以テ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十二條 主務大臣ハ建築物ノ構造、設備又ハ敷地ニ關シ衞生上又ハ保安上必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十三條 主務大臣ハ火災豫防上必要ト認ムルトキハ防火地區ヲ指定シ其ノ地區內ニ於ケル防火設備又ハ建築物ノ防火構造ニ關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
防火地區內ニ於テハ建物ノ部分ヲ爲ス防火壁ハ土地ノ疆界線ニ接シ之ヲ設クルコトヲ得
第十四條 主務大臣ハ學校、集會場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場其ノ他命令ヲ以テ指定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地ニ關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十五條 主務大臣ハ美觀地區ヲ指定シ其ノ地區內ニ於ケル建築物ノ構造、設備又ハ敷地ニ關シ美觀上必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十六條 主務大臣ハ建築物ノ工事執行ニ關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得
第十七條 行政官廳ハ建築物左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ其ノ除却、改築、修繕、使用禁止、使用停止其ノ他ノ必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
三 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シテ建築物ヲ建築シタルトキ
第十八條 本法適用區域ノ設定若ハ變更、地域若ハ地區ノ指定若ハ變更其ノ他ノ場合ニ於テ從來存在スル建築物カ其ノ後新ニ建築セラレタリトセハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反スヘキモノナルトキハ行政官廳ハ相當ノ期間ヲ指定シ其ノ建築物ニ付前條ニ揭クル必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル措置ヲ命スルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ建築物所在地ノ公共團體ヲシテ損失ヲ補償セシム
前項ノ規定ニ依リ補償ヲ受クヘキ者補償金額ニ付不服アルトキハ其ノ金額決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
第十九條 建築主、建築工事請負人、建築工事管理者又ハ建築物ノ所有者若ハ占有者本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ二千圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第二十條 前條ノ規定ハ前條ニ揭クル者未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者其ノ營業ニ關シ前條ニ規定スル違反ヲ爲シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前條ニ揭クル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者其ノ營業ニ關シ前條ニ規定スル違反ヲ爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
前條ニ揭クル者法人ナルトキハ明治三十三年法律第五十二號ヲ準用ス
第二十一條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政官廳ノ爲シタル處分ニ不服アル者ハ訴願スルコトヲ得
本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ於テハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第二十二條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政官廳ノ爲シタル違法處分ニ因リ權利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二十三條 本法適用ノ區域ハ勅令ヲ以テ指定スル市、區其ノ他ノ市街地トス
特別ノ必要アル場合ニ於テハ勅令ヲ以テ其ノ定ムル所ニ依リ前項ノ市街地ノ外ニ亙リ本法適用ノ區域ヲ定ムルコトヲ得
第二十四條 本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ建築工事中ノ建築物、建築工事ニ著手セサルモ設計アル建築物又ハ建築物ニ非サル工作物ニ之ヲ準用スルコトヲ得
第二十五條 本法ノ全部又ハ一部ノ適用ヲ必要トセサル建築物ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條 本法ニ於テ道路ト稱スルハ幅員九尺以上ノモノヲ謂フ
道路ノ新設又ハ變更ノ計畫アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ計畫ノ道路ハ之ヲ道路ト看做ス