朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル耕地整理法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
大藏大臣 伯爵 松方正義
內務大臣 侯爵 西鄕從道
司法大臣 淸浦奎吾
農商務大臣 曾禰荒助
法律第八十二號
耕地整理法
第一章 總則
第一條 本法ニ於テ耕地整理ト稱スルハ耕地ノ利用ヲ增進スル目的ヲ以テ其ノ所有者共同シテ土地ノ交換若ハ分合、區劃形狀ノ變更及道路、畦畔若ハ溝渠ノ變更廢置ヲ行フヲ謂フ
第二條 第五條、第九條、第十條、第十二條乃至第十六條、第二十六條、第三十條乃至第三十二條及第五十一條ノ規定ハ一人ニシテ其ノ所有地ノ整理ヲ施行スル場合ニ之ヲ準用ス
第三條 耕地ニシテ特別ノ價値用途アル土地及耕地ニアラサル土地ハ其ノ所有者ノ同意アルニアラサレハ之ヲ整理地區ニ編入スルコトヲ得ス
前項ノ土地ニシテ其ノ所有者ノ同意ナキトキト雖整理ノ施行ニ必要ナルトキハ其ノ全部又ハ一部ヲ整理地區ニ編入スルコトヲ得但シ府縣、郡、市町村其ノ他公共團體ノ公用ニ供スル土地、宅地、名勝地、舊蹟地、古墳墓地、墳墓地、社寺境內地、鐵道用地及軌道用地ハ此ノ限ニ在ラス
第四條 建物アル宅地又ハ鐵道用地ハ其ノ建物ノ所有者及登記ヲ爲シタル第三權利者ノ同意アルニアラサレハ之ヲ整理地區ニ編入スルコトヲ得ス
第五條 御料地、國有地又ハ官ノ用ニ供スル土地ハ主務官廳ノ認許アルニアラサレハ之ヲ整理地區ニ編入スルコトヲ得ス
第六條 整理施行ヲ發起セントスル者又ハ整理委員ハ市町村長ノ證明ヲ得テ整理地區ヲ管轄スル登記所、土地臺帳所管廳又ハ市役所、町村役場ニ對シ無償ニテ整理ニ必要ナル簿書ノ閱覽又ハ謄寫ヲ求ムルコトヲ得
第七條 參加土地所有者ハ整理施行中其ノ土地ヲ利用スルコト能ハサルモ補償ノ請求ヲ爲スコトヲ得ス但シ整理施行ノ爲溝渠、堤塘又ハ道路ノ敷地ニ充テタル土地ニ付テハ規約ヲ以テ補償ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第八條 整理施行ノ爲必要アルトキハ整理地區內ノ工作物、木石等ヲ移轉シ又ハ破毀スルコトヲ得但シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スヘシ
第九條 整理地區ニ編入シタル土地ヲ讓受ケタル者ハ整理ニ關シテ其ノ讓渡人ノ有スル一切ノ權利義務ヲ承繼ス
第十條 整理施行ノ爲國有ニ屬スル溝渠、堤塘、道路等ノ全部又ハ一部ヲ廢止シタル場合ニ於テ其ノ不用ニ歸シタル土地ハ無償ニテ之ヲ參加土地所有者ニ交付ス
整理地區內ニ開設シタル溝渠、堤塘、道路等ニシテ前項ノ規定ニ依リテ廢止シタルモノニ代ルヘキモノハ無償ニテ之ヲ國有地ニ編入ス
第十一條 參加土地所有者ニハ從前ノ土地ノ地目、面積、等位等ヲ標準トシ換地ヲ交付スヘシ但シ地目、面積、等位等ヲ以テ相殺ヲ爲スコト能ハサル場合ニ於テ從前ノ土地ト換地トノ價額ノ差ハ金錢ヲ以テ之ヲ淸算ス
數筆ノ土地ヲ分合シテ換地ヲ交付スル場合ニ於テハ其ノ換地ハ各筆每ニ之ヲ割當ツヘシ
第十二條 整理地區ニ市町村以上ニ涉ル場合ニ於テ換地トシテ交付スル一筆ノ土地ハ二市町村以上ニ涉ルコトヲ得ス
第十三條 整理施行中土地ノ區劃形狀ノ變更及道路、畦畔若ハ溝渠等ノ變更廢置ハ地目變換又ハ開墾ト看做サス
第十四條 整理地區ニ編入シタル土地ノ地租ハ其ノ地區ノ全部ニ付土地臺帳ノ整理ヲ完了スルマテ從前ノ地域、地目、地價ニ依リテ之ヲ徵收ス
第十五條 整理ヲ施行シタル土地ノ地價ハ明治三十年法律第三十九號ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム
第十六條 整理施行ヲ爲シタル爲土地又ハ建物ニ付登記又ハ登錄ヲ爲ストキハ登錄稅ヲ免除ス
第十七條 本法ニ於テ參加土地所有者ト稱スルハ整理地區內ニ於テ第五條ノ土地ニアラサル土地ヲ所有スル者ヲ謂フ
第十八條 整理地區ノ屬スル市町村及其ノ鄰接市町村ニ住所ヲ有セサル參加土地所有者ハ其ノ市町村內ニ住所ヲ有スル者ニ委任シテ整理施行ニ關スル一切ノ行爲ヲ代理セシムルコトヲ得
參加土地所有者前項ノ代理人ヲ定メタルトキハ發起人又ハ整理委員ニ其ノ氏名住所ヲ通知スヘシ
代理人ハ二人以上ノ參加土地所有者ヲ代理スルコトヲ得ス
第十九條 發起人又ハ整理委員ハ第二十二條第二十六條第四十條及第四十八條ノ認可アリタルトキハ其ノ旨ヲ公吿シ且之ヲ第四條ニ依ル建物所有者及土地又ハ建物ニ付登記ヲ爲シタル第三權利者ニ通知スヘシ第三十條乃至第三十二條ノ命令アリタルトキ亦同シ
第二章 發起及監督
第二十條 整理施行ヲ發起スルニハ左ノ條件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 整理地區內ニ於ケル土地所有者ノ三分ノ二以上ノ同意アルコト
二 整理地區內ニ於テ同意者ノ所有スル土地ノ面積整理地區ノ總面積ノ三分ノ二以上ナルコト
三 整理地區內ニ於テ同意者ノ所有スル土地ノ地價額整理地區ノ地價總額ノ三分ノ二以上ナルコト
前項ノ條件ヲ具備シタルトキハ發起人ハ整理施行ヲ發起スル旨ヲ市町村長ニ屆出ヘシ
第二十一條 發起人ハ發起ノ爲必要アルトキハ市町村長ノ認許ヲ得テ他人ノ土地ニ立入ルコトヲ得但シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スヘシ
第二十二條 發起人ハ設計書及規約ヲ作リ地方長官ヲ經由シテ之ヲ農商務大臣ニ差出シ發起ノ認可ヲ申請スヘシ
第二十三條 設計書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 整理ニ因リテ得ヘキ利益
二 整理施行ノ方法及順序
三 整理地區及之ニ鄰接スル土地ノ現形圖
四 整理豫定圖
五 工事ノ著手及竣成ノ時期
六 整理費用及夫役ノ豫算
第二十四條 規約ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 整理總會ノ招集及會議ノ方法
二 整理委員ノ員數、職務及職務執行方法
三 處務ニ關スル規定
四 補償金評定ノ標準
五 發起及整理ノ費用竝夫役ノ賦課徵收方法
六 整理中土地使用ノ方法
七 換地割當及增步地處分ノ方法
第二十五條 發起ノ認可アリタルトキハ發起人ハ遲滯ナク創業總會ヲ招集シテ設計書及規約ノ議定ヲ求ムヘシ
第二十六條 創業總會ニ於テ設計書及規約ヲ議定シタルトキハ發起人ハ地方長官ヲ經由シテ農商務大臣ニ之ヲ差出シ整理施行ノ認可ヲ申請スヘシ
第二十七條 整理施行ノ認可アリタルトキハ發起人ハ遲滯ナク創業總會ヲ招集スヘシ此ノ總會ニ於テハ參加土地所有者整理委員ヲ互選ス
第二十八條 參加土地所有者ハ整理施行ノ認可ニ對シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス但シ第三條第一項ノ規定ニ違反シ又ハ同條第二項ノ規定ニ依リ整理地區ニ編入シタル土地ノ所有者ハ認可公吿ノ日ヨリ三十日以內ニ農商務大臣ニ訴願ヲ爲スコトヲ得
訴願ノ裁決前ニ於テハ整理工事ニ著手スルコトヲ得ス
第二十九條 整理施行ノ認可アリタルトキト雖第三條第二項ノ規定ニ依リ整理地區ニ編入シタル土地アルトキハ認可公吿ノ日ヨリ三十日ヲ經過スルニアラサレハ整理工事ニ著手スルコトヲ得ス
第三十條 農商務大臣必要ト認ムルトキハ設計書又ハ規約ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第三十一條 設計書ニ定メタル工事著手ノ期限後十二箇月以內ニ工事ニ著手セサルトキハ農商務大臣ハ整理施行ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第三十二條 農商務大臣必要ト認ムルトキハ一時整理工事ノ停止ヲ命スルコトヲ得
第三章 總會
第三十三條 總會ハ參加土地所有者ヲ以テ之ヲ組織ス
第三十四條 總會ヲ招集スルニハ會日ヨリ五日前ニ各參加土地所有者ニ通知ヲ發スヘシ
前項ノ通知ニハ總會ノ目的及ヒ總會ニ於テ決議スヘキ事項ヲ記載スヘシ
參加土地所有者ハ前二項ノ手續ニ反シテ爲シタル決議ニ對シ異議ヲ述フルコトヲ得但シ其ノ決議ノ日ヨリ三十日ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十五條 總會ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除ク外整理委員之ヲ招集ス
第三十六條 參加土地所有者ノ五分ノ一以上ニ當ル者又ハ整理地區ノ總面積若ハ地價總額ノ五分ノ一以上ニ當ル參加土地所有者ハ會議ノ目的及其ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ總會ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ發起人又ハ整理委員ハ十四日以內ニ總會ヲ招集スヘシ
第三十七條 各參加土地所有者ハ一箇ノ議決權ヲ有ス
前項ノ規定ハ規約ヲ以テ一人ニ付二箇以上ノ議決權ヲ有セシムルコトヲ妨ケス但シ其ノ議決權ハ議決權總數ノ五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第三十八條 整理地區ニ編入シタル土地數人ノ共有ニ屬スルトキハ其ノ共有者ハ參加土地所有者ノ權利ヲ行フヘキ者一人ヲ定ムヘシ
第三十九條 農商務大臣ノ命令ニ依ラスシテ設計書若ハ規約ヲ變更シ又ハ整理施行ヲ停止若ハ廢止セントスルトキハ總會ノ決議ヲ經ヘシ
前項ニ依リ整理施行ノ停止若ハ廢止ノ決議ヲ爲ストキハ同時ニ其ノ停止中若ハ廢止後ノ處分方法ヲ決議スヘシ
第四十條 前條ノ決議アリタルトキハ整理委員ハ地方長官ヲ經由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十一條 創業總會ノ決議竝第三十九條、第四十七條及第五十三條ノ決議ヲ爲スニハ第二十條第一項ノ條件ヲ具備スルヲ要ス
第四章 整理委員
第四十二條 整理委員三人以上ナルトキハ委員長一人ヲ互選スヘシ
委員長ハ整理委員ヲ代表ス
第四十三條 整理委員ハ規約ニ定メタル職務ヲ執行スルニ付參加土地所有者ヲ代表ス
第四十四條 整理委員ハ設計書及規約ノ定ムル所ニ依リ整理施行ノ責ニ任ス
第四十五條 整理委員ハ設計書、規約及總會ノ決議錄ヲ備ヘ置クヘシ
參加土地所有者及第三權利者ハ前項ノ書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第四十六條 農商務大臣ハ何時ニテモ整理委員ヲシテ整理事業ニ關スル報吿ヲ爲サシムルコトヲ得
第四十七條 整理工事完了シタルトキハ整理委員ハ第十一條ノ處分及增步地ノ處分ニ關シ整理總會ノ決議ヲ經ヘシ
第四十八條 前條ノ決議アリタルトキハ整理委員ハ地方長官ヲ經由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十九條 所有權ニ關スル訴訟ノ目的タル土地ヲ整理地區ニ編入シ又ハ整理地區ニ編入シタル土地其ノ所有權ニ關スル訴訟ノ目的ト爲リタル場合ニ於テ其ノ土地ノ所有者第十一條ノ規定ニ依リ補償トシテ金錢ヲ受取ルヘキトキハ整理委員ハ當事者ノ請求ニ因リ其ノ金額ヲ供託スヘシ
第五十條 整理施行ノ爲土地又ハ建物ニ付登記又ハ登錄ヲ爲ス場合ニ於テハ整理委員ハ參加土地所有者ニ代リテ其ノ手續ヲ爲スヘシ
第五十一條 整理事業完了シタルトキハ整理委員ハ事業報吿書及收支決算書ヲ作リ整理總會ノ承認ヲ求ムヘシ
整理總會前項ノ承認ヲ爲シタルトキハ整理委員ハ遲滯ナク地方長官ヲ經由シテ前項ノ書類ヲ農商務大臣ニ差出スヘシ
第五十二條 整理委員其ノ職務ヲ終リタルトキハ整理ニ關スル一切ノ書類ヲ市町村長ニ引渡スヘシ
前項ノ書類ノ保存期間ハ農商務大臣之ヲ定ム
第五十三條 整理委員ノ選任及解任ハ總會ノ決議ニ依ル
第五十四條 農商務大臣必要ト認ムルトキハ整理委員ノ改選ヲ命スルコトヲ得
第五十五條 整理委員ハ總會ノ決議ヲ經テ特別ノ學術技藝アル者ヲ協議員ト爲スコトヲ得
協議員ハ總會ニ出席シテ意見ヲ述フルコトヲ得
第五章 第三權利者
第五十六條 第三權利者ハ整理ノ施行ニ對シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス
第五十七條 換地ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除ク外從前ノ土地ニ關スル物權又ハ債權ノ目的タルモノトス
整理施行ハ從前ノ土地ニ關スル登記ノ順位ニ影響ヲ及ホサス
第五十八條 整理地區ニ編入シタル土地ニシテ先取特權、質權又ハ抵當權ノ目的タル場合ニ於テ其ノ所有者第十一條ノ規定ニ依リ補償トシテ金錢ヲ受取ルヘキトキハ整理委員ハ其ノ金額ヲ供託スヘシ
先取特權者、質權者又ハ抵當權者ハ前項ノ規定ニ依リテ供託シタル金錢ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第五十九條 賃借地整理地區ニ編入セラレタル場合ニ於テ整理施行ノ爲賃借ヲ爲シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得但シ第四十八條ノ認可ノ公吿アリタル日ヨリ三十日ヲ經過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ各當事者ハ相手方ニ對シ解除ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
第六十條 賃借地整理地區ニ編入セラレタル場合ニ於テ整理施行ノ爲其ノ土地ヲ利用スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ賃貸人ニ對シ借賃ノ減額又ハ前拂シタル借賃ノ相當ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得
第六十一條 整理地區ニ編入シタル土地ニ地上權者又ハ永小作權者アル場合ニ於テ整理施行ノ爲其ノ權利ヲ設定シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ地上權者又ハ永小作權者ハ其ノ權利ヲ抛棄スルコトヲ得
民法第二百六十八條第一項但書ノ規定ハ地上權者前項ノ規定ニ依リテ其ノ權利ヲ抛棄シタル場合ニ之ヲ適用セス
第五十九條第一項但書ノ規定ハ地上權又ハ永小作權ノ抛棄ニ之ヲ準用ス
第六十二條 第六十條ノ規定ハ地上權及永小作權ニ之ヲ準用ス
第六十三條 整理地區ニ編入シタル土地ノ上ニ存スル地役權ハ整理施行ノ後仍其ノ土地ノ上ニ存ス
地役權者カ整理施行ノ爲其ノ權利ヲ行使スル利益ヲ受クルコトヲ要セサルニ至リタルトキハ其ノ地役權ハ消滅ス
整理施行ノ爲從前ト同一ノ利益ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル地役權者ハ其ノ利益ヲ保存スル範圍內ニ於テ地役權ノ設定ヲ要求スルコトヲ得
第六章 費用
第六十四條 費用及夫役ハ規約ノ定ムル所ニ依リ參加土地所有者之ヲ負擔ス
第六十五條 參加土地所有者費用ヲ完納セサルトキハ市町村長ハ整理委員ノ請求ニ因リ市町村稅徵收ノ方法ニ準シテ之ヲ徵收ス
參加土地所有者夫役ヲ供給セサルトキハ整理委員ハ金額ニ算出シテ之ヲ徵收ス此ノ徵收ニ付テ亦前項ノ規定ニ依ル
第七章 罰則
第六十六條 發起人又ハ整理委員左ノ各號ニ該當スル場合ニ於テハ二圓以上五十圓以下ノ過料ニ處ス
一 第十九條ノ規定ニ違反シテ公吿又ハ通知ヲ爲スコトヲ怠リタルトキ
二 第二十八條第一項又ハ第二十九條ノ規定ニ違反シテ整理工事ニ著手シタルトキ
三 第三十六條第二項ノ規定ニ違反シテ總會ヲ招集セサルトキ
四 第三十九條及第四十條ノ手續ニ依ラスシテ整理施行ヲ停止シ又ハ廢止シタルトキ
第六十七條 前條ニ定メタル過料ニ付テハ非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ヲ準用ス
第六十八條 整理施行ノ爲設ケタル標石又ハ標杭ヲ移轉シ又ハ毀壞シタル場合ニ於テ刑法第四百二十條ニ該當セサル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
第八章 附則
第六十九條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十條 整理地區ニ編入シタル土地ノ登記ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第七十一條 北海道、沖繩縣及市制、町村制ヲ施行セサル島嶼ノ耕地整理ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル耕地整理法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
大蔵大臣 伯爵 松方正義
内務大臣 侯爵 西郷従道
司法大臣 清浦奎吾
農商務大臣 曽祢荒助
法律第八十二号
耕地整理法
第一章 総則
第一条 本法ニ於テ耕地整理ト称スルハ耕地ノ利用ヲ増進スル目的ヲ以テ其ノ所有者共同シテ土地ノ交換若ハ分合、区画形状ノ変更及道路、畦畔若ハ溝渠ノ変更廃置ヲ行フヲ謂フ
第二条 第五条、第九条、第十条、第十二条乃至第十六条、第二十六条、第三十条乃至第三十二条及第五十一条ノ規定ハ一人ニシテ其ノ所有地ノ整理ヲ施行スル場合ニ之ヲ準用ス
第三条 耕地ニシテ特別ノ価値用途アル土地及耕地ニアラサル土地ハ其ノ所有者ノ同意アルニアラサレハ之ヲ整理地区ニ編入スルコトヲ得ス
前項ノ土地ニシテ其ノ所有者ノ同意ナキトキト雖整理ノ施行ニ必要ナルトキハ其ノ全部又ハ一部ヲ整理地区ニ編入スルコトヲ得但シ府県、郡、市町村其ノ他公共団体ノ公用ニ供スル土地、宅地、名勝地、旧蹟地、古墳墓地、墳墓地、社寺境内地、鉄道用地及軌道用地ハ此ノ限ニ在ラス
第四条 建物アル宅地又ハ鉄道用地ハ其ノ建物ノ所有者及登記ヲ為シタル第三権利者ノ同意アルニアラサレハ之ヲ整理地区ニ編入スルコトヲ得ス
第五条 御料地、国有地又ハ官ノ用ニ供スル土地ハ主務官庁ノ認許アルニアラサレハ之ヲ整理地区ニ編入スルコトヲ得ス
第六条 整理施行ヲ発起セントスル者又ハ整理委員ハ市町村長ノ証明ヲ得テ整理地区ヲ管轄スル登記所、土地台帳所管庁又ハ市役所、町村役場ニ対シ無償ニテ整理ニ必要ナル簿書ノ閲覧又ハ謄写ヲ求ムルコトヲ得
第七条 参加土地所有者ハ整理施行中其ノ土地ヲ利用スルコト能ハサルモ補償ノ請求ヲ為スコトヲ得ス但シ整理施行ノ為溝渠、堤塘又ハ道路ノ敷地ニ充テタル土地ニ付テハ規約ヲ以テ補償ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第八条 整理施行ノ為必要アルトキハ整理地区内ノ工作物、木石等ヲ移転シ又ハ破毀スルコトヲ得但シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スヘシ
第九条 整理地区ニ編入シタル土地ヲ譲受ケタル者ハ整理ニ関シテ其ノ譲渡人ノ有スル一切ノ権利義務ヲ承継ス
第十条 整理施行ノ為国有ニ属スル溝渠、堤塘、道路等ノ全部又ハ一部ヲ廃止シタル場合ニ於テ其ノ不用ニ帰シタル土地ハ無償ニテ之ヲ参加土地所有者ニ交付ス
整理地区内ニ開設シタル溝渠、堤塘、道路等ニシテ前項ノ規定ニ依リテ廃止シタルモノニ代ルヘキモノハ無償ニテ之ヲ国有地ニ編入ス
第十一条 参加土地所有者ニハ従前ノ土地ノ地目、面積、等位等ヲ標準トシ換地ヲ交付スヘシ但シ地目、面積、等位等ヲ以テ相殺ヲ為スコト能ハサル場合ニ於テ従前ノ土地ト換地トノ価額ノ差ハ金銭ヲ以テ之ヲ清算ス
数筆ノ土地ヲ分合シテ換地ヲ交付スル場合ニ於テハ其ノ換地ハ各筆毎ニ之ヲ割当ツヘシ
第十二条 整理地区ニ市町村以上ニ渉ル場合ニ於テ換地トシテ交付スル一筆ノ土地ハ二市町村以上ニ渉ルコトヲ得ス
第十三条 整理施行中土地ノ区画形状ノ変更及道路、畦畔若ハ溝渠等ノ変更廃置ハ地目変換又ハ開墾ト看做サス
第十四条 整理地区ニ編入シタル土地ノ地租ハ其ノ地区ノ全部ニ付土地台帳ノ整理ヲ完了スルマテ従前ノ地域、地目、地価ニ依リテ之ヲ徴収ス
第十五条 整理ヲ施行シタル土地ノ地価ハ明治三十年法律第三十九号ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム
第十六条 整理施行ヲ為シタル為土地又ハ建物ニ付登記又ハ登録ヲ為ストキハ登録税ヲ免除ス
第十七条 本法ニ於テ参加土地所有者ト称スルハ整理地区内ニ於テ第五条ノ土地ニアラサル土地ヲ所有スル者ヲ謂フ
第十八条 整理地区ノ属スル市町村及其ノ隣接市町村ニ住所ヲ有セサル参加土地所有者ハ其ノ市町村内ニ住所ヲ有スル者ニ委任シテ整理施行ニ関スル一切ノ行為ヲ代理セシムルコトヲ得
参加土地所有者前項ノ代理人ヲ定メタルトキハ発起人又ハ整理委員ニ其ノ氏名住所ヲ通知スヘシ
代理人ハ二人以上ノ参加土地所有者ヲ代理スルコトヲ得ス
第十九条 発起人又ハ整理委員ハ第二十二条第二十六条第四十条及第四十八条ノ認可アリタルトキハ其ノ旨ヲ公告シ且之ヲ第四条ニ依ル建物所有者及土地又ハ建物ニ付登記ヲ為シタル第三権利者ニ通知スヘシ第三十条乃至第三十二条ノ命令アリタルトキ亦同シ
第二章 発起及監督
第二十条 整理施行ヲ発起スルニハ左ノ条件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 整理地区内ニ於ケル土地所有者ノ三分ノ二以上ノ同意アルコト
二 整理地区内ニ於テ同意者ノ所有スル土地ノ面積整理地区ノ総面積ノ三分ノ二以上ナルコト
三 整理地区内ニ於テ同意者ノ所有スル土地ノ地価額整理地区ノ地価総額ノ三分ノ二以上ナルコト
前項ノ条件ヲ具備シタルトキハ発起人ハ整理施行ヲ発起スル旨ヲ市町村長ニ届出ヘシ
第二十一条 発起人ハ発起ノ為必要アルトキハ市町村長ノ認許ヲ得テ他人ノ土地ニ立入ルコトヲ得但シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スヘシ
第二十二条 発起人ハ設計書及規約ヲ作リ地方長官ヲ経由シテ之ヲ農商務大臣ニ差出シ発起ノ認可ヲ申請スヘシ
第二十三条 設計書ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 整理ニ因リテ得ヘキ利益
二 整理施行ノ方法及順序
三 整理地区及之ニ隣接スル土地ノ現形図
四 整理予定図
五 工事ノ著手及竣成ノ時期
六 整理費用及夫役ノ予算
第二十四条 規約ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 整理総会ノ招集及会議ノ方法
二 整理委員ノ員数、職務及職務執行方法
三 処務ニ関スル規定
四 補償金評定ノ標準
五 発起及整理ノ費用並夫役ノ賦課徴収方法
六 整理中土地使用ノ方法
七 換地割当及増歩地処分ノ方法
第二十五条 発起ノ認可アリタルトキハ発起人ハ遅滞ナク創業総会ヲ招集シテ設計書及規約ノ議定ヲ求ムヘシ
第二十六条 創業総会ニ於テ設計書及規約ヲ議定シタルトキハ発起人ハ地方長官ヲ経由シテ農商務大臣ニ之ヲ差出シ整理施行ノ認可ヲ申請スヘシ
第二十七条 整理施行ノ認可アリタルトキハ発起人ハ遅滞ナク創業総会ヲ招集スヘシ此ノ総会ニ於テハ参加土地所有者整理委員ヲ互選ス
第二十八条 参加土地所有者ハ整理施行ノ認可ニ対シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス但シ第三条第一項ノ規定ニ違反シ又ハ同条第二項ノ規定ニ依リ整理地区ニ編入シタル土地ノ所有者ハ認可公告ノ日ヨリ三十日以内ニ農商務大臣ニ訴願ヲ為スコトヲ得
訴願ノ裁決前ニ於テハ整理工事ニ著手スルコトヲ得ス
第二十九条 整理施行ノ認可アリタルトキト雖第三条第二項ノ規定ニ依リ整理地区ニ編入シタル土地アルトキハ認可公告ノ日ヨリ三十日ヲ経過スルニアラサレハ整理工事ニ著手スルコトヲ得ス
第三十条 農商務大臣必要ト認ムルトキハ設計書又ハ規約ノ変更ヲ命スルコトヲ得
第三十一条 設計書ニ定メタル工事著手ノ期限後十二箇月以内ニ工事ニ著手セサルトキハ農商務大臣ハ整理施行ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第三十二条 農商務大臣必要ト認ムルトキハ一時整理工事ノ停止ヲ命スルコトヲ得
第三章 総会
第三十三条 総会ハ参加土地所有者ヲ以テ之ヲ組織ス
第三十四条 総会ヲ招集スルニハ会日ヨリ五日前ニ各参加土地所有者ニ通知ヲ発スヘシ
前項ノ通知ニハ総会ノ目的及ヒ総会ニ於テ決議スヘキ事項ヲ記載スヘシ
参加土地所有者ハ前二項ノ手続ニ反シテ為シタル決議ニ対シ異議ヲ述フルコトヲ得但シ其ノ決議ノ日ヨリ三十日ヲ経過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十五条 総会ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除ク外整理委員之ヲ招集ス
第三十六条 参加土地所有者ノ五分ノ一以上ニ当ル者又ハ整理地区ノ総面積若ハ地価総額ノ五分ノ一以上ニ当ル参加土地所有者ハ会議ノ目的及其ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ総会ノ招集ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ請求アリタルトキハ発起人又ハ整理委員ハ十四日以内ニ総会ヲ招集スヘシ
第三十七条 各参加土地所有者ハ一箇ノ議決権ヲ有ス
前項ノ規定ハ規約ヲ以テ一人ニ付二箇以上ノ議決権ヲ有セシムルコトヲ妨ケス但シ其ノ議決権ハ議決権総数ノ五分ノ一ヲ超ユルコトヲ得ス
第三十八条 整理地区ニ編入シタル土地数人ノ共有ニ属スルトキハ其ノ共有者ハ参加土地所有者ノ権利ヲ行フヘキ者一人ヲ定ムヘシ
第三十九条 農商務大臣ノ命令ニ依ラスシテ設計書若ハ規約ヲ変更シ又ハ整理施行ヲ停止若ハ廃止セントスルトキハ総会ノ決議ヲ経ヘシ
前項ニ依リ整理施行ノ停止若ハ廃止ノ決議ヲ為ストキハ同時ニ其ノ停止中若ハ廃止後ノ処分方法ヲ決議スヘシ
第四十条 前条ノ決議アリタルトキハ整理委員ハ地方長官ヲ経由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十一条 創業総会ノ決議並第三十九条、第四十七条及第五十三条ノ決議ヲ為スニハ第二十条第一項ノ条件ヲ具備スルヲ要ス
第四章 整理委員
第四十二条 整理委員三人以上ナルトキハ委員長一人ヲ互選スヘシ
委員長ハ整理委員ヲ代表ス
第四十三条 整理委員ハ規約ニ定メタル職務ヲ執行スルニ付参加土地所有者ヲ代表ス
第四十四条 整理委員ハ設計書及規約ノ定ムル所ニ依リ整理施行ノ責ニ任ス
第四十五条 整理委員ハ設計書、規約及総会ノ決議録ヲ備ヘ置クヘシ
参加土地所有者及第三権利者ハ前項ノ書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第四十六条 農商務大臣ハ何時ニテモ整理委員ヲシテ整理事業ニ関スル報告ヲ為サシムルコトヲ得
第四十七条 整理工事完了シタルトキハ整理委員ハ第十一条ノ処分及増歩地ノ処分ニ関シ整理総会ノ決議ヲ経ヘシ
第四十八条 前条ノ決議アリタルトキハ整理委員ハ地方長官ヲ経由シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第四十九条 所有権ニ関スル訴訟ノ目的タル土地ヲ整理地区ニ編入シ又ハ整理地区ニ編入シタル土地其ノ所有権ニ関スル訴訟ノ目的ト為リタル場合ニ於テ其ノ土地ノ所有者第十一条ノ規定ニ依リ補償トシテ金銭ヲ受取ルヘキトキハ整理委員ハ当事者ノ請求ニ因リ其ノ金額ヲ供託スヘシ
第五十条 整理施行ノ為土地又ハ建物ニ付登記又ハ登録ヲ為ス場合ニ於テハ整理委員ハ参加土地所有者ニ代リテ其ノ手続ヲ為スヘシ
第五十一条 整理事業完了シタルトキハ整理委員ハ事業報告書及収支決算書ヲ作リ整理総会ノ承認ヲ求ムヘシ
整理総会前項ノ承認ヲ為シタルトキハ整理委員ハ遅滞ナク地方長官ヲ経由シテ前項ノ書類ヲ農商務大臣ニ差出スヘシ
第五十二条 整理委員其ノ職務ヲ終リタルトキハ整理ニ関スル一切ノ書類ヲ市町村長ニ引渡スヘシ
前項ノ書類ノ保存期間ハ農商務大臣之ヲ定ム
第五十三条 整理委員ノ選任及解任ハ総会ノ決議ニ依ル
第五十四条 農商務大臣必要ト認ムルトキハ整理委員ノ改選ヲ命スルコトヲ得
第五十五条 整理委員ハ総会ノ決議ヲ経テ特別ノ学術技芸アル者ヲ協議員ト為スコトヲ得
協議員ハ総会ニ出席シテ意見ヲ述フルコトヲ得
第五章 第三権利者
第五十六条 第三権利者ハ整理ノ施行ニ対シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス
第五十七条 換地ハ本法ニ別段ノ規定アル場合ヲ除ク外従前ノ土地ニ関スル物権又ハ債権ノ目的タルモノトス
整理施行ハ従前ノ土地ニ関スル登記ノ順位ニ影響ヲ及ホサス
第五十八条 整理地区ニ編入シタル土地ニシテ先取特権、質権又ハ抵当権ノ目的タル場合ニ於テ其ノ所有者第十一条ノ規定ニ依リ補償トシテ金銭ヲ受取ルヘキトキハ整理委員ハ其ノ金額ヲ供託スヘシ
先取特権者、質権者又ハ抵当権者ハ前項ノ規定ニ依リテ供託シタル金銭ニ対シテモ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第五十九条 賃借地整理地区ニ編入セラレタル場合ニ於テ整理施行ノ為賃借ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但シ第四十八条ノ認可ノ公告アリタル日ヨリ三十日ヲ経過シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ場合ニ於テ各当事者ハ相手方ニ対シ解除ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
第六十条 賃借地整理地区ニ編入セラレタル場合ニ於テ整理施行ノ為其ノ土地ヲ利用スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ賃貸人ニ対シ借賃ノ減額又ハ前払シタル借賃ノ相当ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得
第六十一条 整理地区ニ編入シタル土地ニ地上権者又ハ永小作権者アル場合ニ於テ整理施行ノ為其ノ権利ヲ設定シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ地上権者又ハ永小作権者ハ其ノ権利ヲ抛棄スルコトヲ得
民法第二百六十八条第一項但書ノ規定ハ地上権者前項ノ規定ニ依リテ其ノ権利ヲ抛棄シタル場合ニ之ヲ適用セス
第五十九条第一項但書ノ規定ハ地上権又ハ永小作権ノ抛棄ニ之ヲ準用ス
第六十二条 第六十条ノ規定ハ地上権及永小作権ニ之ヲ準用ス
第六十三条 整理地区ニ編入シタル土地ノ上ニ存スル地役権ハ整理施行ノ後仍其ノ土地ノ上ニ存ス
地役権者カ整理施行ノ為其ノ権利ヲ行使スル利益ヲ受クルコトヲ要セサルニ至リタルトキハ其ノ地役権ハ消滅ス
整理施行ノ為従前ト同一ノ利益ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル地役権者ハ其ノ利益ヲ保存スル範囲内ニ於テ地役権ノ設定ヲ要求スルコトヲ得
第六章 費用
第六十四条 費用及夫役ハ規約ノ定ムル所ニ依リ参加土地所有者之ヲ負担ス
第六十五条 参加土地所有者費用ヲ完納セサルトキハ市町村長ハ整理委員ノ請求ニ因リ市町村税徴収ノ方法ニ準シテ之ヲ徴収ス
参加土地所有者夫役ヲ供給セサルトキハ整理委員ハ金額ニ算出シテ之ヲ徴収ス此ノ徴収ニ付テ亦前項ノ規定ニ依ル
第七章 罰則
第六十六条 発起人又ハ整理委員左ノ各号ニ該当スル場合ニ於テハ二円以上五十円以下ノ過料ニ処ス
一 第十九条ノ規定ニ違反シテ公告又ハ通知ヲ為スコトヲ怠リタルトキ
二 第二十八条第一項又ハ第二十九条ノ規定ニ違反シテ整理工事ニ著手シタルトキ
三 第三十六条第二項ノ規定ニ違反シテ総会ヲ招集セサルトキ
四 第三十九条及第四十条ノ手続ニ依ラスシテ整理施行ヲ停止シ又ハ廃止シタルトキ
第六十七条 前条ニ定メタル過料ニ付テハ非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ヲ準用ス
第六十八条 整理施行ノ為設ケタル標石又ハ標杭ヲ移転シ又ハ毀壊シタル場合ニ於テ刑法第四百二十条ニ該当セサル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス
第八章 附則
第六十九条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十条 整理地区ニ編入シタル土地ノ登記ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第七十一条 北海道、沖縄県及市制、町村制ヲ施行セサル島嶼ノ耕地整理ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ設クルコトヲ得