朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル營業稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年三月二十七日
內閣總理大臣臨時代理 樞密院議長 伯爵 黑田淸隆
大藏大臣 子爵 渡邊國武
法律第三十三號
營業稅法
第一條 左ニ揭クル營業ヲ爲ス者ニハ營業稅ヲ課ス
一 物品販賣業
一 銀行業
一 保險業
一 金錢貸付業
一 物品貸付業
一 製造業
一 運送業
一 倉庫業
一 運河業
一 棧橋業
一 船渠業
一 船舶碇繫場業
一 貨物陸揚場業
一 土木請負業
一 勞力請負業
一 印刷業
一 寫眞業
一 席貸業
一 旅人宿業
一 料理店業
一 公ナル周旋業
一 代辨業
一 仲立業
一 仲買業
第二條 營業稅ヲ課スヘキ物品販賣業ハ一定ノ店舖其ノ他ノ營業場ヲ設ケ物品ノ卸賣又ハ小賣ヲ爲ス者ヲ謂フ
左ノ諸業ハ前項ニ該當セサルモ仍物品販賣業ト見做ス
一 一定ノ製造場ナク職工ヲ使役スルコトナク原料ヲ供給シ工錢ヲ支拂ヒ物品ヲ製造セシメテ販賣スル者
二 一定ノ製造場ヲ設ケス店頭ニ於テ物品ヲ製造シ主トシテ小賣ヲ爲ス者
三 牧場ニ非サル場所ニ於テ飼料ヲ購求シ家畜又ハ家禽ヲ飼養シ之ヲ賣リ又ハ鷄卵、牛乳等其ノ產物ヲ販賣スル者
四 魚介類ヲ養殖シテ之ヲ販賣スル者
五 動植物其ノ他普通ニ物品ト稱セサルモノヲ販賣スル者
一箇年ノ賣上金額千圓未滿ノ者ニハ營業稅ヲ課セス
第四條ノ營業者其ノ製造場區域內ニ於テ製造品ヲ販賣シ及別ニ營業場ヲ設ケ其ノ製造品ノ卸賣營業ヲ爲スモ物品販賣業トセス
第三條 營業稅ヲ課スヘキ金錢貸付業及物品貸付業ハ一定ノ店舖其ノ他ノ營業場ヲ設ケ貸付ノ業ヲ營ム者ヲ謂フ普通ニ物品ト稱セサルモノノ貸付ヲ爲スモ亦同シ
資本金額五百圓未滿ノ者ニハ營業稅ヲ課セス
第四條 營業稅ヲ課スヘキ製造業ハ一定ノ製造場ヲ設ケ職工勞役者ヲ使役シテ物品ヲ製造シ又ハ物品製造ノ一部ヲ助成スル者ヲ謂フ
瓦斯電氣ノ供給ヲ爲ス者及器物、器械ノ修理ヲ爲シ又ハ穀物ヲ精白搗碎シ又ハ染物、洗濯ヲ爲ス者ハ前項製造業ト見做ス
資本金額五百圓未滿ノ者又ハ職工勞役者ヲ通シテ二人以上ヲ使用セサル者ニハ營業稅ヲ課セス
第五條 運賃又ハ手數料ヲ受ケテ旅客貨物ノ運送ヲ爲シ又ハ其ノ取扱ヲ爲ス者ヲ運送業トシテ營業稅ヲ課ス但シ雇人二人以上ヲ使用セサル者ニハ營業稅ヲ課セス
第六條 倉庫ヲ備ヘテ貨物ヲ預リ倉敷料其ノ他ノ名義ヲ以テ報酬ヲ受クル者ヲ倉庫業トシテ營業稅ヲ課ス
第七條 印刷業、寫眞業ニシテ職工雇人ヲ通シテ二人以上ヲ使用セサル者及土木請負業、勞力請負業ニシテ請負金額一箇年千圓未滿ノ者ニハ營業稅ヲ課セス
第八條 貸料又ハ其ノ他ノ名義ヲ以テ報酬ヲ受ケ客室又ハ集會場ヲ貸ス者ヲ席貸業トシテ營業稅ヲ課ス但シ建物賃貸價格五十圓未滿ノ者ニハ營業稅ヲ課セス
第九條 營業稅ヲ課スヘキ旅人宿業ハ飮食物ヲ供スルト否トニ拘ラス旅客ヲ宿泊セシメ又ハ人ヲ寄宿セシメ雇人三人以上ヲ使用スル者トス但シ木錢宿ニハ營業稅ヲ課セス
第十條 營業稅ヲ課スヘキ料理店業ハ雇人三人以上ヲ使用シ客室ヲ設ケテ飮食物ヲ販賣スル者トス
第十一條 左ニ揭クル營業ニハ營業稅ヲ課セス
一 政府ヨリ發行スル印紙、切手類ノ賣捌
二 自己ノ採掘又ハ採取シタル鑛物ノ販賣
三 度量衡ノ製作、修覆、販賣
第十二條 營業稅ハ左ノ課稅標準及稅率ニ依リ每年之ヲ賦課ス
業名 課稅標準 稅率
物品販賣業
賣上金額 卸賣ハ万分ノ五小賣ハ万分ノ十五
建物賃貸價格 千分ノ四十
從業者 一人每ニ金一圓
銀行業、保險業、金錢貸付業、物品貸付業
資本金額 千分ノ二
建物賃貸價格 千分ノ四十
從業者 一人每ニ金一圓
倉庫業
資本金額 千分ノ二
建物賃貸價格 千分ノ二十
從業者 一人每ニ金一圓
製造業、印刷業、寫眞業
資本金額 千分ノ一半
建物賃貸價格 千分ノ四十
從業者 一人每ニ金一圓
從業者ノ內職工勞役者 一人每ニ金三十錢
運送業、運河業、棧橋業、船渠業、船舶碇繫場業、貨物陸揚場業
資本金額 千分ノ二半
從業者 一人每ニ金一圓
土木請負業、勞力請負業
請負金額 千分ノ二
從業者 一人每ニ金一圓
席貸業、料理店業
建物賃貸價格 千分ノ六十
從業者 一人每ニ金一圓
旅人宿業
建物賃貸價格 千分ノ四十
從業者 一人每ニ金一圓
公ナル周旋業、代辨業、仲立業、仲買業
報償金額 百圓每ニ金一圓
從業者 一人每ニ金一圓
第十三條 此ノ稅法ニ依リ納稅義務ヲ有スル營業者ハ每年一月三十一日迄ニ業名及課稅標準ヲ詳記シ政府ニ屆出ヘシ但シ新ニ開業シタル者ハ其ノ際本條ノ屆出ヲ爲スヘシ
營業者廢業シタルトキハ其ノ際政府ニ屆出ヘシ
第十四條 同一人ニシテ數種ノ營業ヲ爲ストキハ第十二條ノ課稅標準ニ依リ各別ニ營業稅ヲ課ス但シ課稅標準トナルヘキモノヲ共通シテ使用スルトキハ其ノ一ニ就テ計算ス其ノ稅率異ナルトキハ重キニ從フ
第十五條 物品販賣業、土木請負業、勞力請負業、席貸業、旅人宿業、料理店業、公ナル周旋業、代辨業、仲立業、仲買業ハ各店舖其ノ他ノ營業場每ニ營業稅ヲ課ス
前項ニ揭ケサル營業ニシテ店舖其ノ他ノ營業場數箇所アルトキ其ノ資本ヲ區分シタルモノハ各別ニ營業稅ヲ課ス其ノ資本ヲ區分セサルモノハ合算シテ之ヲ課ス
第十六條 第十三條ニ依リ屆出ヘキ課稅標準ハ左ノ區別ニ從ヒ之ヲ計算ス但シ新ニ開業シタル者ハ豫算ヲ以テ之ヲ定ム
一 賣上金、請負金及報償金ハ前年中ノ總額ニ依ル但シ前年中ニ開業シタルモノハ豫算ニ依ル
二 資本金及建物賃貸價格ハ前年中ノ平均額ニ依ル
三 從業者ハ前年ニ於ケル最多數ノトキニ依ル
資本金額ノ算定方法ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十七條 營業者ノ申吿シタル資本金額ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ハ其ノ營業ノ收入金額ヲ調査シ相當ノ營業費ヲ控除シ其ノ殘額ノ二十倍ヲ以テ資本金額ヲ算定スルコトヲ得
第十八條 建物賃貸價格ハ店舖其ノ他營業用ノ土地、家屋ノ借料ニ相當スルモノトス但シ住居ニ供スルモノ其ノ他直接ニ營業ニ使用セサルモノアルモ同一區域內ニアリテ自己ノ所用ニ係ルモノハ營業用トシテ計算ス
借家ノ場合ニ於テハ何等ノ名義ヲ用ウルニ拘ラス土地、建物ノ貸借上借主ヨリ貸主ニ支拂フモノヲ以テ建物賃貸價格ヲ計算ス
借家ニ非サル場合ニ於テハ近傍借家ノ借料ニ照準シテ建物賃貸價格ヲ定ム近傍ニ照準スヘキ借家ナキトキハ其ノ土地、家屋ノ時價ヲ各別ニ算定シ土地ハ其ノ百分ノ五、家屋ハ百分ノ十ヲ以テ其ノ賃貸價格ヲ定ム無償ノ借家ニ付テモ亦同シ
營業者ノ申吿シタル賃貸價格ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ハ前項ノ算定方法ニ依リ其ノ賃貸價格ヲ定ムルコトヲ得
第十九條 名義ノ何タルヲ問ハス總テ營業ニ從事スル者ハ從業者トシテ之ヲ計算ス但シ營業者ノ家族ヲ除ク
第二十條 營業稅ハ年額ヲ二分シ其ノ年五月、十一月ヲ以テ納期トス但シ廢業スルトキ未納ノ稅金ハ卽納トス
第二十一條 新ニ營業ヲ開始スル者ハ開業ノ翌年ヨリ其ノ營業稅ヲ徵收ス
左ニ揭クル營業ヲ開始スル者ハ開業ノ翌年ヨリ尙三箇年間其ノ營業稅ヲ徵收セス但シ此ノ稅法施行以前ヨリ營業スル者ニシテ其ノ開業ノ翌年ヨリ三箇年ニ滿タサルトキハ本項ニ準據スルコトヲ得
銀行業、保險業、倉庫業、製造業、印刷業、運送業、運河業、棧橋業、船渠業、船舶碇繫場業
第二十二條 同一ノ場所ニ於テ六箇月以內ニ前ノ營業者ト同一ノ營業ヲ開始スル者ハ其ノ月ヨリ營業稅ヲ徵收ス
第二十三條 營業ヲ繼續シ又ハ營業繼續ト認ムヘキ事實アルトキハ納期ニ於テ現ニ營業スル者ヨリ營業稅ヲ徵收ス
第二十四條 營業者廢業スルトキハ其ノ廢業ノ月迄營業稅ヲ徵收ス但シ他ニ其ノ營業ヲ繼續スル者アルトキハ前條ニ依ル
第二十五條 第二十二條及第二十三條ノ場合ニ於テ前ノ營業者第二十一條ノ期間內ニアルトキハ其ノ期間ハ後ノ營業者ニ及フモノトス
第二十六條 政府ニ於テ營業者ノ申吿ヲ不相當ト認メ資本金額又ハ建物賃貸價格ヲ算定シタルトキハ之ヲ營業者ニ通知スヘシ
第二十七條 前條ノ算定ニ對シ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ申立テ再審査ヲ求ムルコトヲ得但シ此ノ場合ニ於テ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セス
第二十八條 第十八條第三項ノ建物賃貸價格算定ニ付異議ノ申立アリタルトキハ評價人ヲ定メ之ヲ評價セシム評價一致セサルトキハ其ノ平均ヲ以テ之ヲ定ム
評價人ハ四人トシ二人ハ政府ヨリ之ヲ命シ二人ハ土地建物所在市町村長之ヲ選定ス但シ費用ハ本人ノ負擔トス
前項市町村長ノ職務ハ特別市制ヲ施行スル市ニ於テハ區長、市制町村制ヲ施行セサル地方ニ於テハ戶長、沖繩縣ニ於テハ役所長之ヲ行フ
第二十九條 左ノ場合ニ於テハ營業者ハ政府ニ其ノ由ヲ申立ツルコトヲ得
一 課稅ノ標準タル資本金額、賣上金額、請負金額、報償金額又ハ建物賃貸價格半額以上ヲ減シタルトキ
二 課稅ノ標準タル從業者ノ人員屆出人員二分ノ一以下ニ減シタルトキ
第三十條 政府ハ前條ノ申出ニ由リ營業者ノ狀況ニ照シ營業稅ヲ減額スルノ必要アリト認ムルトキハ翌年一月迄稅金ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
第三十一條 政府ハ第二十九條ノ申出ニ對シ翌年一月ニ於テ課稅標準ヲ査覈シ左ノ場合ニ該當スルモノアルトキハ稅金ヲ減額スルコトヲ得
一 課稅ノ標準タル賣上金額、請負金額、報償金額ハ前々年中ノ總額資本金額、建物賃貸價格ハ前前年中ノ平均額ノ半額ニ達セサルトキ
二 課稅ノ標準タル從業者ノ人員其ノ最多數ノトキニ於テ屆出人員ノ二分ノ一ニ達セサルトキ
課稅標準ノ課稅最低限以下ニ減シタル場合ニ於テモ仍其ノ割合ヲ以テ稅金ヲ徵收ス
第三十二條 第一條ニ揭クル營業者ハ貨物ノ仕入、賣上、受入、貸付、迴送、從業者ノ人員及營業ニ關スル金錢ノ出納ヲ明ニスル爲帳簿ヲ備ヘ營業上一切ノ事實ヲ記載スヘシ
第三十三條 收稅官吏ハ營業ニ關スル帳簿、物件ヲ檢査シ又ハ營業者ニ尋問スルコトヲ得
第三十四條 第十三條ノ屆出ヲ爲サス若ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シ又ハ故意ヲ以テ第三十二條ノ帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者ハ一圓以上一圓九十五錢以下ノ科料ニ處ス其ノ脫稅シタル者ハ脫稅金額三倍ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第三十五條 此ノ稅法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪、減輕、再犯加重、數罪俱發ノ例ヲ用井ス
第三十六條 府縣ハ此ノ稅法ニ依リ納稅義務ヲ有スル營業者ノ營業ニ對シ本稅十分ノ二以內ノ附加稅ヲ課スルコトヲ得此ノ附加稅ノ外府縣稅又ハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ス
附 則
第三十七條 此ノ稅法ハ明治三十年一月一日ヨリ施行ス
第三十八條 明治二十九年度ニ屬スル府縣稅又ハ地方稅ハ第三十六條ノ規定ニ依ルノ限ニ在ラス
明治二十九年度ニ屬スル府縣稅又ハ地方稅ノ賦課ヲ受ケタル業體ニ對スル此ノ稅法ノ營業稅ハ明治三十年ニ限リ年額四分ノ三ヲ徵收ス
第三十九條 第二十條五月ノ納期ハ明治三十年ニ限リ七月トス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル営業税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年三月二十七日
内閣総理大臣臨時代理 枢密院議長 伯爵 黒田清隆
大蔵大臣 子爵 渡辺国武
法律第三十三号
営業税法
第一条 左ニ掲クル営業ヲ為ス者ニハ営業税ヲ課ス
一 物品販売業
一 銀行業
一 保険業
一 金銭貸付業
一 物品貸付業
一 製造業
一 運送業
一 倉庫業
一 運河業
一 桟橋業
一 船渠業
一 船舶碇繋場業
一 貨物陸揚場業
一 土木請負業
一 労力請負業
一 印刷業
一 写真業
一 席貸業
一 旅人宿業
一 料理店業
一 公ナル周旋業
一 代弁業
一 仲立業
一 仲買業
第二条 営業税ヲ課スヘキ物品販売業ハ一定ノ店舗其ノ他ノ営業場ヲ設ケ物品ノ卸売又ハ小売ヲ為ス者ヲ謂フ
左ノ諸業ハ前項ニ該当セサルモ仍物品販売業ト見做ス
一 一定ノ製造場ナク職工ヲ使役スルコトナク原料ヲ供給シ工銭ヲ支払ヒ物品ヲ製造セシメテ販売スル者
二 一定ノ製造場ヲ設ケス店頭ニ於テ物品ヲ製造シ主トシテ小売ヲ為ス者
三 牧場ニ非サル場所ニ於テ飼料ヲ購求シ家畜又ハ家禽ヲ飼養シ之ヲ売リ又ハ鶏卵、牛乳等其ノ産物ヲ販売スル者
四 魚介類ヲ養殖シテ之ヲ販売スル者
五 動植物其ノ他普通ニ物品ト称セサルモノヲ販売スル者
一箇年ノ売上金額千円未満ノ者ニハ営業税ヲ課セス
第四条ノ営業者其ノ製造場区域内ニ於テ製造品ヲ販売シ及別ニ営業場ヲ設ケ其ノ製造品ノ卸売営業ヲ為スモ物品販売業トセス
第三条 営業税ヲ課スヘキ金銭貸付業及物品貸付業ハ一定ノ店舗其ノ他ノ営業場ヲ設ケ貸付ノ業ヲ営ム者ヲ謂フ普通ニ物品ト称セサルモノノ貸付ヲ為スモ亦同シ
資本金額五百円未満ノ者ニハ営業税ヲ課セス
第四条 営業税ヲ課スヘキ製造業ハ一定ノ製造場ヲ設ケ職工労役者ヲ使役シテ物品ヲ製造シ又ハ物品製造ノ一部ヲ助成スル者ヲ謂フ
瓦斯電気ノ供給ヲ為ス者及器物、器械ノ修理ヲ為シ又ハ穀物ヲ精白搗砕シ又ハ染物、洗濯ヲ為ス者ハ前項製造業ト見做ス
資本金額五百円未満ノ者又ハ職工労役者ヲ通シテ二人以上ヲ使用セサル者ニハ営業税ヲ課セス
第五条 運賃又ハ手数料ヲ受ケテ旅客貨物ノ運送ヲ為シ又ハ其ノ取扱ヲ為ス者ヲ運送業トシテ営業税ヲ課ス但シ雇人二人以上ヲ使用セサル者ニハ営業税ヲ課セス
第六条 倉庫ヲ備ヘテ貨物ヲ預リ倉敷料其ノ他ノ名義ヲ以テ報酬ヲ受クル者ヲ倉庫業トシテ営業税ヲ課ス
第七条 印刷業、写真業ニシテ職工雇人ヲ通シテ二人以上ヲ使用セサル者及土木請負業、労力請負業ニシテ請負金額一箇年千円未満ノ者ニハ営業税ヲ課セス
第八条 貸料又ハ其ノ他ノ名義ヲ以テ報酬ヲ受ケ客室又ハ集会場ヲ貸ス者ヲ席貸業トシテ営業税ヲ課ス但シ建物賃貸価格五十円未満ノ者ニハ営業税ヲ課セス
第九条 営業税ヲ課スヘキ旅人宿業ハ飲食物ヲ供スルト否トニ拘ラス旅客ヲ宿泊セシメ又ハ人ヲ寄宿セシメ雇人三人以上ヲ使用スル者トス但シ木銭宿ニハ営業税ヲ課セス
第十条 営業税ヲ課スヘキ料理店業ハ雇人三人以上ヲ使用シ客室ヲ設ケテ飲食物ヲ販売スル者トス
第十一条 左ニ掲クル営業ニハ営業税ヲ課セス
一 政府ヨリ発行スル印紙、切手類ノ売捌
二 自己ノ採掘又ハ採取シタル鉱物ノ販売
三 度量衡ノ製作、修覆、販売
第十二条 営業税ハ左ノ課税標準及税率ニ依リ毎年之ヲ賦課ス
業名 課税標準 税率
物品販売業
売上金額 卸売ハ万分ノ五小売ハ万分ノ十五
建物賃貸価格 千分ノ四十
従業者 一人毎ニ金一円
銀行業、保険業、金銭貸付業、物品貸付業
資本金額 千分ノ二
建物賃貸価格 千分ノ四十
従業者 一人毎ニ金一円
倉庫業
資本金額 千分ノ二
建物賃貸価格 千分ノ二十
従業者 一人毎ニ金一円
製造業、印刷業、写真業
資本金額 千分ノ一半
建物賃貸価格 千分ノ四十
従業者 一人毎ニ金一円
従業者ノ内職工労役者 一人毎ニ金三十銭
運送業、運河業、桟橋業、船渠業、船舶碇繋場業、貨物陸揚場業
資本金額 千分ノ二半
従業者 一人毎ニ金一円
土木請負業、労力請負業
請負金額 千分ノ二
従業者 一人毎ニ金一円
席貸業、料理店業
建物賃貸価格 千分ノ六十
従業者 一人毎ニ金一円
旅人宿業
建物賃貸価格 千分ノ四十
従業者 一人毎ニ金一円
公ナル周旋業、代弁業、仲立業、仲買業
報償金額 百円毎ニ金一円
従業者 一人毎ニ金一円
第十三条 此ノ税法ニ依リ納税義務ヲ有スル営業者ハ毎年一月三十一日迄ニ業名及課税標準ヲ詳記シ政府ニ届出ヘシ但シ新ニ開業シタル者ハ其ノ際本条ノ届出ヲ為スヘシ
営業者廃業シタルトキハ其ノ際政府ニ届出ヘシ
第十四条 同一人ニシテ数種ノ営業ヲ為ストキハ第十二条ノ課税標準ニ依リ各別ニ営業税ヲ課ス但シ課税標準トナルヘキモノヲ共通シテ使用スルトキハ其ノ一ニ就テ計算ス其ノ税率異ナルトキハ重キニ従フ
第十五条 物品販売業、土木請負業、労力請負業、席貸業、旅人宿業、料理店業、公ナル周旋業、代弁業、仲立業、仲買業ハ各店舗其ノ他ノ営業場毎ニ営業税ヲ課ス
前項ニ掲ケサル営業ニシテ店舗其ノ他ノ営業場数箇所アルトキ其ノ資本ヲ区分シタルモノハ各別ニ営業税ヲ課ス其ノ資本ヲ区分セサルモノハ合算シテ之ヲ課ス
第十六条 第十三条ニ依リ届出ヘキ課税標準ハ左ノ区別ニ従ヒ之ヲ計算ス但シ新ニ開業シタル者ハ予算ヲ以テ之ヲ定ム
一 売上金、請負金及報償金ハ前年中ノ総額ニ依ル但シ前年中ニ開業シタルモノハ予算ニ依ル
二 資本金及建物賃貸価格ハ前年中ノ平均額ニ依ル
三 従業者ハ前年ニ於ケル最多数ノトキニ依ル
資本金額ノ算定方法ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十七条 営業者ノ申告シタル資本金額ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ハ其ノ営業ノ収入金額ヲ調査シ相当ノ営業費ヲ控除シ其ノ残額ノ二十倍ヲ以テ資本金額ヲ算定スルコトヲ得
第十八条 建物賃貸価格ハ店舗其ノ他営業用ノ土地、家屋ノ借料ニ相当スルモノトス但シ住居ニ供スルモノ其ノ他直接ニ営業ニ使用セサルモノアルモ同一区域内ニアリテ自己ノ所用ニ係ルモノハ営業用トシテ計算ス
借家ノ場合ニ於テハ何等ノ名義ヲ用ウルニ拘ラス土地、建物ノ貸借上借主ヨリ貸主ニ支払フモノヲ以テ建物賃貸価格ヲ計算ス
借家ニ非サル場合ニ於テハ近傍借家ノ借料ニ照準シテ建物賃貸価格ヲ定ム近傍ニ照準スヘキ借家ナキトキハ其ノ土地、家屋ノ時価ヲ各別ニ算定シ土地ハ其ノ百分ノ五、家屋ハ百分ノ十ヲ以テ其ノ賃貸価格ヲ定ム無償ノ借家ニ付テモ亦同シ
営業者ノ申告シタル賃貸価格ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ハ前項ノ算定方法ニ依リ其ノ賃貸価格ヲ定ムルコトヲ得
第十九条 名義ノ何タルヲ問ハス総テ営業ニ従事スル者ハ従業者トシテ之ヲ計算ス但シ営業者ノ家族ヲ除ク
第二十条 営業税ハ年額ヲ二分シ其ノ年五月、十一月ヲ以テ納期トス但シ廃業スルトキ未納ノ税金ハ即納トス
第二十一条 新ニ営業ヲ開始スル者ハ開業ノ翌年ヨリ其ノ営業税ヲ徴収ス
左ニ掲クル営業ヲ開始スル者ハ開業ノ翌年ヨリ尚三箇年間其ノ営業税ヲ徴収セス但シ此ノ税法施行以前ヨリ営業スル者ニシテ其ノ開業ノ翌年ヨリ三箇年ニ満タサルトキハ本項ニ準拠スルコトヲ得
銀行業、保険業、倉庫業、製造業、印刷業、運送業、運河業、桟橋業、船渠業、船舶碇繋場業
第二十二条 同一ノ場所ニ於テ六箇月以内ニ前ノ営業者ト同一ノ営業ヲ開始スル者ハ其ノ月ヨリ営業税ヲ徴収ス
第二十三条 営業ヲ継続シ又ハ営業継続ト認ムヘキ事実アルトキハ納期ニ於テ現ニ営業スル者ヨリ営業税ヲ徴収ス
第二十四条 営業者廃業スルトキハ其ノ廃業ノ月迄営業税ヲ徴収ス但シ他ニ其ノ営業ヲ継続スル者アルトキハ前条ニ依ル
第二十五条 第二十二条及第二十三条ノ場合ニ於テ前ノ営業者第二十一条ノ期間内ニアルトキハ其ノ期間ハ後ノ営業者ニ及フモノトス
第二十六条 政府ニ於テ営業者ノ申告ヲ不相当ト認メ資本金額又ハ建物賃貸価格ヲ算定シタルトキハ之ヲ営業者ニ通知スヘシ
第二十七条 前条ノ算定ニ対シ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ申立テ再審査ヲ求ムルコトヲ得但シ此ノ場合ニ於テ政府ハ税金ノ徴収ヲ猶予セス
第二十八条 第十八条第三項ノ建物賃貸価格算定ニ付異議ノ申立アリタルトキハ評価人ヲ定メ之ヲ評価セシム評価一致セサルトキハ其ノ平均ヲ以テ之ヲ定ム
評価人ハ四人トシ二人ハ政府ヨリ之ヲ命シ二人ハ土地建物所在市町村長之ヲ選定ス但シ費用ハ本人ノ負担トス
前項市町村長ノ職務ハ特別市制ヲ施行スル市ニ於テハ区長、市制町村制ヲ施行セサル地方ニ於テハ戸長、沖縄県ニ於テハ役所長之ヲ行フ
第二十九条 左ノ場合ニ於テハ営業者ハ政府ニ其ノ由ヲ申立ツルコトヲ得
一 課税ノ標準タル資本金額、売上金額、請負金額、報償金額又ハ建物賃貸価格半額以上ヲ減シタルトキ
二 課税ノ標準タル従業者ノ人員届出人員二分ノ一以下ニ減シタルトキ
第三十条 政府ハ前条ノ申出ニ由リ営業者ノ状況ニ照シ営業税ヲ減額スルノ必要アリト認ムルトキハ翌年一月迄税金ノ徴収ヲ猶予スルコトヲ得
第三十一条 政府ハ第二十九条ノ申出ニ対シ翌年一月ニ於テ課税標準ヲ査覈シ左ノ場合ニ該当スルモノアルトキハ税金ヲ減額スルコトヲ得
一 課税ノ標準タル売上金額、請負金額、報償金額ハ前々年中ノ総額資本金額、建物賃貸価格ハ前前年中ノ平均額ノ半額ニ達セサルトキ
二 課税ノ標準タル従業者ノ人員其ノ最多数ノトキニ於テ届出人員ノ二分ノ一ニ達セサルトキ
課税標準ノ課税最低限以下ニ減シタル場合ニ於テモ仍其ノ割合ヲ以テ税金ヲ徴収ス
第三十二条 第一条ニ掲クル営業者ハ貨物ノ仕入、売上、受入、貸付、迴送、従業者ノ人員及営業ニ関スル金銭ノ出納ヲ明ニスル為帳簿ヲ備ヘ営業上一切ノ事実ヲ記載スヘシ
第三十三条 収税官吏ハ営業ニ関スル帳簿、物件ヲ検査シ又ハ営業者ニ尋問スルコトヲ得
第三十四条 第十三条ノ届出ヲ為サス若ハ虚偽ノ届出ヲ為シ又ハ故意ヲ以テ第三十二条ノ帳簿ノ記載ヲ怠リ若ハ虚偽ノ記載ヲ為シタル者ハ一円以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス其ノ脱税シタル者ハ脱税金額三倍ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第三十五条 此ノ税法ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ不論罪、減軽、再犯加重、数罪俱発ノ例ヲ用井ス
第三十六条 府県ハ此ノ税法ニ依リ納税義務ヲ有スル営業者ノ営業ニ対シ本税十分ノ二以内ノ附加税ヲ課スルコトヲ得此ノ附加税ノ外府県税又ハ地方税ヲ課スルコトヲ得ス
附 則
第三十七条 此ノ税法ハ明治三十年一月一日ヨリ施行ス
第三十八条 明治二十九年度ニ属スル府県税又ハ地方税ハ第三十六条ノ規定ニ依ルノ限ニ在ラス
明治二十九年度ニ属スル府県税又ハ地方税ノ賦課ヲ受ケタル業体ニ対スル此ノ税法ノ営業税ハ明治三十年ニ限リ年額四分ノ三ヲ徴収ス
第三十九条 第二十条五月ノ納期ハ明治三十年ニ限リ七月トス