(営業税法中改正法律)
法令番号: 法律第二十號
公布年月日: 大正3年3月31日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル營業稅法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月三十日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
大藏大臣 男爵 高橋是淸
法律第二十號
營業稅法中左ノ通改正ス
第二條中「千圓」ヲ「二千圓」ニ改メ第二項第二號ヲ左ノ如ク改ム
二 一定ノ製造場ヲ設ケス物品ヲ製造シテ販賣スル者
第三條中「五百圓」ヲ「千圓」ニ改ム
第四條中「使役」ヲ「使用」ニ、「五百圓」ヲ「千圓」ニ、「二人」ヲ「三人」ニ改ム
第五條ノ一中「雇人二人」ヲ「從業者三人」ニ改ム
第五條ノ二中「及輕便鐵道法」ヲ「、輕便鐵道法又ハ軌道條例」ニ改ム
第七條中「職工雇人ヲ通シテ二人」ヲ「從業者三人」ニ、「千圓」ヲ「二千圓」ニ改ム
第八條中「五十圓」ヲ「百圓」ニ改ム
第九條及第十條ノ一中「雇人三人」ヲ「從業者四人」ニ改ム
第十條ノ二中「百圓」ヲ「二百圓」ニ改ム
第十二條 營業稅ハ左ノ課稅標準及稅率ニ依リ每年之ヲ賦課ス
業名
課稅標準
稅率
物品販賣業
賣上金額
卸賣{
甲 萬分ノ八
乙 萬分ノ十一
小賣{
甲 萬分ノ二十
乙 萬分ノ三十
建物賃貸價格
從業者
千分ノ七十
一人每ニ金二圓
銀行業
保險業
資本金額
建物賃貸價格
從業者
千分ノ四、五
千分ノ七十
一人每ニ金二圓
金錢貸付業
物品貸付業
運轉資本金額
建物賃貸價格
從業者
千分ノ六
千分ノ七十
一人每ニ金二圓
製造業
印刷業
出版業
寫眞業
資本金額
建物賃貸價格
從業者
從業者ノ內職工勞役者
千分ノ三
千分ノ七十
一人每ニ金二圓
一人每ニ金五十錢
運送業、運河業、棧橋業、船舶碇繫場業、貨物陸揚業
資本金額
從業者
從業者ノ內職工勞役者
千分ノ五
一人每ニ金二圓
一人每ニ金五十錢
倉庫業
建物賃貸價格
從業者
從業者ノ內職工勞役者
千分ノ八十
一人每ニ金二圓
一人每ニ金五十錢
鐵道業
收入金額
從業者
從業者ノ內職工勞役者
千分ノ二十
一人每ニ金二圓
一人每ニ金五十錢
請負業
請負金額
從業者
從業者ノ內職工勞役者
千分ノ四
一人每ニ金二圓
一人每ニ金五十錢
席貸業
建物賃貸價格
從業者
千分ノ百十五
一人每ニ金二圓
料理店業
建物賃貸價格
從業者
千分ノ百二十
一人每ニ金二圓
旅人宿業
建物賃貸價格
從業者
千分ノ七十五
一人每ニ金二圓
周旋業、代理業、仲立業、問屋業、信託業
報償金額
從業者
千分ノ三十
一人每ニ金二圓
物品販賣業中米、麥、豆、石油、肥料、鹽、煙草、薪炭ヲ販賣スル者ノ賣上金額ニハ卸賣、小賣共ニ甲ノ稅率ヲ適用シ繭、白絹絲、白絹布、棉花、綿、白綿絲、白綿布、白麻絲、白麻布、紙、麥稈眞田、麻眞田、經木眞田、花莚、砂糖、麥粉、燐寸、銅鋼鐵地ヲ販賣スル者ノ賣上金額ニハ卸賣ニ在リテハ甲、小賣ニ在リテハ乙ノ稅率ヲ適用シ其ノ他ノ物品ヲ販賣スル者ノ賣上金額ニハ卸賣、小賣共ニ乙ノ稅率ヲ適用ス
第十三條 納稅義務アル營業者ハ每年一月三十一日迄ニ營業名及課稅標準ヲ詳記シ政府ニ申吿スヘシ第二十一條ノ期間內ニ在ル營業者及他ノ法令ニ依リ營業稅ノ免除ヲ受クル營業者ニ付テモ亦同シ
新ニ開業シタル者ハ其ノ際前項ノ申吿ヲ爲スヘシ
第十三條ノ二 納稅義務アル營業者廢業シタルトキハ其ノ際政府ニ申吿スヘシ
第十五條第二項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ內國ト外國トニ涉リ店舖其ノ他ノ營業場數箇所アルモノニシテ資本ヲ區分セサルモノハ內國ニ於ケル課稅標準ヲ見積リ主タル店舖其ノ他ノ營業場內國ニ在ルトキハ合算シテ之ヲ課シ內國ニ在ラサルトキハ各別ニ之ヲ課ス
第十六條中「資本金」ヲ「資本金、運轉資本金」ニ、「資本金額」ヲ「資本金額及運轉資本金額」ニ改メ第一項第三號ヲ左ノ如ク改ム
三 從業者ハ前年中各月ニ於ケル最多數ノ平均ニ依ル但シ一人未滿ノ端數ヲ生シタルトキハ一人トス
第十七條 製造業ノ資本金額カ前年ノ資本金額ニ對シ五分ノ一以上增加シタルトキハ其ノ增加額ハ二年間之ヲ課稅標準ヨリ控除ス但シ二年繼續シテ資本金額ヲ增加シタル場合ニ於テ前前年ノ資本金額ニ對シ五分ノ一以上增加シタルトキハ其ノ年ニ限リ前前年ニ對スル增加額ヲ控除ス
第十八條 課稅標準ト爲スヘキ建物賃貸價格ハ貸主カ公課、修繕費其ノ他土地又ハ建物ノ維持ニ必要ナル經費ヲ負擔スル條件ヲ以テ店舖其ノ他營業用ノ土地建物ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸主ノ收得スヘキ金額ノ前年中ノ平均額ニ依リ之ヲ算定ス
同一區域內ニ在ル土地建物ト雖直接又ハ間接ニ營業ニ使用セサルモノハ賃貸價格ニ計算セス
第十九條但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ營業者ヲ除クノ外十五歲未滿ノ者及營業者ノ家族ヲ除ク
第二十條中「其ノ年五月、十一月」ヲ「第一期ハ其ノ年六月一日ヨリ三十日限第二期ハ其ノ年十一月一日ヨリ三十日限」ニ改ム
第二十六條 課稅標準ハ營業稅調査委員會ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
調査委員會閉會後納稅義務アルコトヲ申出テタルトキハ政府其ノ課稅標準ヲ決定ス
第二十六條ノ二 稅務署長ハ每年納稅義務者又ハ納稅義務アリト認ムル者ノ課稅標準ヲ調査シ其ノ調査書ヲ營業稅調査委員會ニ送付スヘシ
第二十六條ノ三 各稅務署所轄內ニ營業稅調査委員會ヲ置ク但シ稅務署所轄內ニ在ル市又ハ北海道、沖繩縣ノ區ニ付テハ命令ヲ以テ特ニ調査委員會ヲ置クコトヲ得
調査委員ノ定數ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム但シ定數ノ增減ハ改選期ニ於テスルノ外之ヲ爲スコトヲ得ス
第二十六條ノ四 調査委員ハ調査委員選擧人之ヲ選擧ス
第二十六條ノ五 調査委員ノ選擧區域ハ調査委員會ヲ置クヘキ區域ニ依リ調査委員選擧人ノ選擧區域ハ市町村及北海道、沖繩縣ノ區ノ區域ニ依ル但シ東京市、京都市及大阪市ニ在リテハ區ノ區域ニ依ル
第二十六條ノ六 選擧區域內ニ於テ營業シ前年營業稅ヲ納メタル者ニシテ第十三條ノ申吿ヲ爲シタル者ハ調査委員選擧人ヲ選擧シ又ハ調査委員、補闕員若ハ調査委員選擧人ニ選擧セラルルコトヲ得但シ左ニ記載シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 無能力者
二 身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨濟ヲ了ヘサル者及家資分散又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
三 國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ經サル者
四 六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレ復權ヲ得サル者
五 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
六 第三十四條ノ二ノ規定ニ依リ處罰セラレタル後五年ヲ經サル者
營業繼續ノ場合ニ於テハ前ノ營業者ノ爲シタル納稅又ハ申吿ハ命令ノ定ムル所ニ依リ後ノ營業者ノ納稅又ハ申吿ト看做ス
營業者カ法人ナル場合ニ於テハ代表者ヲ定メ政府ニ申吿スヘシ
調査委員ニ當選シタル者又ハ第一項但書ニ該當スル者ハ法人ノ代表者タルコトヲ得ス
第二十六條ノ七 調査委員選擧人ノ定數ハ其ノ選擧區域內ニ於ケル前年營業稅ヲ納メタル者ニシテ第十三條ノ申吿ヲ爲シタル者十人ニ付一人トス但シ申吿者二百人以上ナルトキハ二十人ニ止メ申吿者十人未滿ナルトキハ一人トス
第二十六條ノ八 調査委員選擧人ノ選擧事務ハ市區町村長又ハ戶長之ヲ執行シ調査委員ノ選擧事務ハ稅務署長之ヲ執行ス
第二十六條ノ九 稅務署長ハ調査委員選擧人ノ選擧期日ヲ定メ之ヲ市區町村長又ハ戶長ニ通知スヘシ
市區町村長又ハ戶長ハ前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ少クトモ選擧期日七日前其ノ旨ヲ公示スヘシ
第二十六條ノ十 選擧ハ記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル但シ選擧區域ヲ異ニシ各別ニ營業稅ヲ納ムルトキハ選擧區域每ニ一人トシテ計算ス
選擧人ハ自ラ投票所ニ至リ被選擧人一人ノ氏名ヲ記載シテ投票スヘシ但シ前項但書ノ場合ニ於テハ代人ヲシテ投票セシムルコトヲ得
第二十六條ノ十一 選擧ハ投票ノ多數ヲ得タル者ヲ以テ當選トス投票ノ數同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條ノ十二 調査委員選擧人ノ選擧終了シタルトキハ市區町村長又ハ戶長ハ當選人ノ氏名ヲ公示スヘシ
第二十六條ノ十三 稅務署長ハ選擧期日ヲ定メ少クトモ七日以前ニ公示シ調査委員及之ト同數ノ補闕員ノ選擧ヲ行ハシムヘシ
前項ノ選擧ニ關シテハ第二十六條ノ十及第二十六條ノ十一ノ規定ヲ準用ス但シ投票ニ記載スヘキ被選擧人ノ數ハ調査委員又ハ補闕員ノ定數ノ二分ノ一トシ一人未滿ノ端數ヲ生シタルトキハ一人トシテ計算ス
第二十六條ノ十四 調査委員及補闕員ノ選擧終了シタルトキハ稅務署長ハ當選人ノ氏名ヲ公示スヘシ
第二十六條ノ十五 一人ニシテ數選擧區ニ於テ調査委員又ハ補闕員ニ當選シタルトキハ當選シタル者ノ選擇スル所ニ依ル
第二十六條ノ十六 調査委員又ハ補闕員ニ選ハレタル者ハ正當ノ事故ナクシテ之ヲ辭スルコトヲ得ス
第二十六條ノ十七 調査委員及補闕員ノ任期ハ選擧ノ日ノ屬スル月ヨリ四年トス但シ其ノ選擧區域ニ變更ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ任期ハ終了スルモノトス
第二十六條ノ十八 調査委員及補闕員ノ改選ハ前任者ノ任期終了ノ月ノ翌月ニ於テ之ヲ行フ
第二十六條ノ十九 調査委員ニ闕員ヲ生シタルトキハ投票ノ最多數ヲ得タル補闕員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ數同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條ノ二十 補闕員ヨリ調査委員ト爲リタル者ノ任期ハ前任者ノ殘任期間トス
選擧區域ノ變更ニ依リ新ニ選擧セラレタル調査委員及補闕員ノ任期ハ選擧區域變更前ニ於ケル調査委員及補闕員ノ選擧ノ日ノ屬スル月ヨリ四年ヲ以テ終了ス
第二十六條ノ二十一 調査委員又ハ補闕員ニ選擧セラレタル者第二十六條ノ六第一項但書各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキ又ハ其ノ選擧區域內ニ於テ納稅義務ヲ有セサルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第二十六條ノ二十二 調査委員會ノ開會日數ハ三十日以內トシ地方ノ情況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條ノ二十三 調査委員會ハ稅務署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第二十六條ノ二十四 調査委員會ハ每年開會ノ始ニ於テ調査委員中ヨリ會長ヲ選擧スヘシ
第二十六條ノ二十五 調査委員會ハ定數ノ過半數ニ當ル委員出席スルニ非サレハ決議スルコトヲ得ス
議事ハ出席員ノ多數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ會長ノ決スル所ニ依ル
第二十六條ノ二十六 調査委員ハ自己又ハ其ノ代表スル法人ノ營業ニ關スル議事ニ與ルコトヲ得ス
第二十六條ノ二十七 五月三十一日迄ニ調査委員會成立セサルトキハ政府其ノ課稅標準ヲ決定ス調査委員會開會ノ日ヨリ第二十六條ノ二十二ノ期間以內ニ又ハ五月三十一日迄ニ調査結了セサルトキハ課稅標準調査未濟ノモノニ限リ政府其ノ課稅標準ヲ決定ス
第二十六條ノ二十八 政府ハ調査委員會ノ決議ヲ不當ト認ムルトキハ之ヲ再調査ニ付ス仍其ノ決議ヲ不當ト認ムルトキ又ハ再調査ニ付シタル日ヨリ七日以內ニ調査結了セサルトキハ政府ニ於テ課稅標準ヲ決定ス
第二十六條ノ二十九 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査委員會ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十六條ノ三十 調査委員ニハ手當及旅費ヲ支給ス
第二十六條ノ三十一 政府ニ於テ課稅標準ヲ決定シタルトキハ之ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
第二十七條 納稅義務者政府ノ通知シタル課稅標準ニ對シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ申出審査ヲ求ムルコトヲ得但シ此ノ場合ニ於テ政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セス
第二十八條ノ一 前條ノ請求アリタルトキハ審査委員會ヲ開キ其ノ決議ニ依リ政府之ヲ決定ス
第二十六條ノ二十八ノ規定ハ之ヲ審査委員會ノ決議ニ準用ス
第二十八條ノ二 各稅務監督局所轄內ニ營業稅審査委員會ヲ置ク
審査委員會ハ收稅官吏三人調査委員四人ヲ以テ組織ス
收稅官吏ヲ以テスヘキ審査員ハ大藏大臣之ヲ命シ調査委員ヲ以テスヘキ審査員ハ稅務監督局所轄內ノ調査委員之ヲ選擧ス
審査委員ノ選擧及審査委員會ノ會議ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六條ノ十七、第二十六條ノ十八及第二十六條ノ二十ノ規定ハ審査委員ニ之ヲ準用ス
第二十九條中「資本金額」ヲ「資本金額、運轉資本金額」ニ、「以上ヲ」ヲ「未滿ニ」ニ、「從業者ノ人員屆出人員二分ノ一以下」ヲ「從業者各月ニ於ケル最多數ノ平均人員前年中各月ニ於ケル最多數ノ平均人員二分ノ一未滿」ニ改ム
第三十條中「翌年一月迄」ヲ削ル
第三十一條中「資本金額」ヲ「資本金額、運轉資本金額」ニ、「從業者ノ人員其ノ最多數ノトキニ於テ屆出」ヲ「從業者各月ニ於ケル最多數ノ平均人員前年中各月ニ於ケル最多數ノ平均」ニ改ム
第三十三條中「尋問」ヲ「質問」ニ改ム
第三十四條中「屆出」ヲ「申吿」ニ改メ「其ノ脫稅シタル者ハ脫稅金額三倍ノ罰金又ハ科料ニ處ス」ヲ削ル
第三十四條ノ二 營業稅ヲ逋脫シタル者ハ脫稅金額三倍ノ罰金又ハ科料ニ處ス但シ自首スル者ハ其ノ稅金ヲ追徵シ其ノ罪ヲ問ハス
第三十四條ノ三 營業稅ノ調査又ハ審査ニ參與シタル者其ノ調査又ハ審査ニ關スル事項ヲ他ニ漏洩シタルトキハ三十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
前項ノ規定ニ依リ處罰セラレタル者ハ其ノ職ヲ失フ
第三十五條 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ例ヲ用井ス
附 則
本法ハ大正四年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル営業税法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月三十日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
大蔵大臣 男爵 高橋是清
法律第二十号
営業税法中左ノ通改正ス
第二条中「千円」ヲ「二千円」ニ改メ第二項第二号ヲ左ノ如ク改ム
二 一定ノ製造場ヲ設ケス物品ヲ製造シテ販売スル者
第三条中「五百円」ヲ「千円」ニ改ム
第四条中「使役」ヲ「使用」ニ、「五百円」ヲ「千円」ニ、「二人」ヲ「三人」ニ改ム
第五条ノ一中「雇人二人」ヲ「従業者三人」ニ改ム
第五条ノ二中「及軽便鉄道法」ヲ「、軽便鉄道法又ハ軌道条例」ニ改ム
第七条中「職工雇人ヲ通シテ二人」ヲ「従業者三人」ニ、「千円」ヲ「二千円」ニ改ム
第八条中「五十円」ヲ「百円」ニ改ム
第九条及第十条ノ一中「雇人三人」ヲ「従業者四人」ニ改ム
第十条ノ二中「百円」ヲ「二百円」ニ改ム
第十二条 営業税ハ左ノ課税標準及税率ニ依リ毎年之ヲ賦課ス
業名
課税標準
税率
物品販売業
売上金額
卸売{
甲 万分ノ八
乙 万分ノ十一
小売{
甲 万分ノ二十
乙 万分ノ三十
建物賃貸価格
従業者
千分ノ七十
一人毎ニ金二円
銀行業
保険業
資本金額
建物賃貸価格
従業者
千分ノ四、五
千分ノ七十
一人毎ニ金二円
金銭貸付業
物品貸付業
運転資本金額
建物賃貸価格
従業者
千分ノ六
千分ノ七十
一人毎ニ金二円
製造業
印刷業
出版業
写真業
資本金額
建物賃貸価格
従業者
従業者ノ内職工労役者
千分ノ三
千分ノ七十
一人毎ニ金二円
一人毎ニ金五十銭
運送業、運河業、桟橋業、船舶碇繋場業、貨物陸揚業
資本金額
従業者
従業者ノ内職工労役者
千分ノ五
一人毎ニ金二円
一人毎ニ金五十銭
倉庫業
建物賃貸価格
従業者
従業者ノ内職工労役者
千分ノ八十
一人毎ニ金二円
一人毎ニ金五十銭
鉄道業
収入金額
従業者
従業者ノ内職工労役者
千分ノ二十
一人毎ニ金二円
一人毎ニ金五十銭
請負業
請負金額
従業者
従業者ノ内職工労役者
千分ノ四
一人毎ニ金二円
一人毎ニ金五十銭
席貸業
建物賃貸価格
従業者
千分ノ百十五
一人毎ニ金二円
料理店業
建物賃貸価格
従業者
千分ノ百二十
一人毎ニ金二円
旅人宿業
建物賃貸価格
従業者
千分ノ七十五
一人毎ニ金二円
周旋業、代理業、仲立業、問屋業、信託業
報償金額
従業者
千分ノ三十
一人毎ニ金二円
物品販売業中米、麦、豆、石油、肥料、塩、煙草、薪炭ヲ販売スル者ノ売上金額ニハ卸売、小売共ニ甲ノ税率ヲ適用シ繭、白絹糸、白絹布、棉花、綿、白綿糸、白綿布、白麻糸、白麻布、紙、麦稈真田、麻真田、経木真田、花莚、砂糖、麦粉、燐寸、銅鋼鉄地ヲ販売スル者ノ売上金額ニハ卸売ニ在リテハ甲、小売ニ在リテハ乙ノ税率ヲ適用シ其ノ他ノ物品ヲ販売スル者ノ売上金額ニハ卸売、小売共ニ乙ノ税率ヲ適用ス
第十三条 納税義務アル営業者ハ毎年一月三十一日迄ニ営業名及課税標準ヲ詳記シ政府ニ申告スヘシ第二十一条ノ期間内ニ在ル営業者及他ノ法令ニ依リ営業税ノ免除ヲ受クル営業者ニ付テモ亦同シ
新ニ開業シタル者ハ其ノ際前項ノ申告ヲ為スヘシ
第十三条ノ二 納税義務アル営業者廃業シタルトキハ其ノ際政府ニ申告スヘシ
第十五条第二項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ内国ト外国トニ渉リ店舗其ノ他ノ営業場数箇所アルモノニシテ資本ヲ区分セサルモノハ内国ニ於ケル課税標準ヲ見積リ主タル店舗其ノ他ノ営業場内国ニ在ルトキハ合算シテ之ヲ課シ内国ニ在ラサルトキハ各別ニ之ヲ課ス
第十六条中「資本金」ヲ「資本金、運転資本金」ニ、「資本金額」ヲ「資本金額及運転資本金額」ニ改メ第一項第三号ヲ左ノ如ク改ム
三 従業者ハ前年中各月ニ於ケル最多数ノ平均ニ依ル但シ一人未満ノ端数ヲ生シタルトキハ一人トス
第十七条 製造業ノ資本金額カ前年ノ資本金額ニ対シ五分ノ一以上増加シタルトキハ其ノ増加額ハ二年間之ヲ課税標準ヨリ控除ス但シ二年継続シテ資本金額ヲ増加シタル場合ニ於テ前前年ノ資本金額ニ対シ五分ノ一以上増加シタルトキハ其ノ年ニ限リ前前年ニ対スル増加額ヲ控除ス
第十八条 課税標準ト為スヘキ建物賃貸価格ハ貸主カ公課、修繕費其ノ他土地又ハ建物ノ維持ニ必要ナル経費ヲ負担スル条件ヲ以テ店舗其ノ他営業用ノ土地建物ヲ賃貸スル場合ニ於テ貸主ノ収得スヘキ金額ノ前年中ノ平均額ニ依リ之ヲ算定ス
同一区域内ニ在ル土地建物ト雖直接又ハ間接ニ営業ニ使用セサルモノハ賃貸価格ニ計算セス
第十九条但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ営業者ヲ除クノ外十五歳未満ノ者及営業者ノ家族ヲ除ク
第二十条中「其ノ年五月、十一月」ヲ「第一期ハ其ノ年六月一日ヨリ三十日限第二期ハ其ノ年十一月一日ヨリ三十日限」ニ改ム
第二十六条 課税標準ハ営業税調査委員会ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
調査委員会閉会後納税義務アルコトヲ申出テタルトキハ政府其ノ課税標準ヲ決定ス
第二十六条ノ二 税務署長ハ毎年納税義務者又ハ納税義務アリト認ムル者ノ課税標準ヲ調査シ其ノ調査書ヲ営業税調査委員会ニ送付スヘシ
第二十六条ノ三 各税務署所轄内ニ営業税調査委員会ヲ置ク但シ税務署所轄内ニ在ル市又ハ北海道、沖縄県ノ区ニ付テハ命令ヲ以テ特ニ調査委員会ヲ置クコトヲ得
調査委員ノ定数ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム但シ定数ノ増減ハ改選期ニ於テスルノ外之ヲ為スコトヲ得ス
第二十六条ノ四 調査委員ハ調査委員選挙人之ヲ選挙ス
第二十六条ノ五 調査委員ノ選挙区域ハ調査委員会ヲ置クヘキ区域ニ依リ調査委員選挙人ノ選挙区域ハ市町村及北海道、沖縄県ノ区ノ区域ニ依ル但シ東京市、京都市及大阪市ニ在リテハ区ノ区域ニ依ル
第二十六条ノ六 選挙区域内ニ於テ営業シ前年営業税ヲ納メタル者ニシテ第十三条ノ申告ヲ為シタル者ハ調査委員選挙人ヲ選挙シ又ハ調査委員、補闕員若ハ調査委員選挙人ニ選挙セラルルコトヲ得但シ左ニ記載シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 無能力者
二 身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁済ヲ了ヘサル者及家資分散又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復権ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
三 国税滞納処分ヲ受ケタル後一年ヲ経サル者
四 六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ又ハ旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレ復権ヲ得サル者
五 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
六 第三十四条ノ二ノ規定ニ依リ処罰セラレタル後五年ヲ経サル者
営業継続ノ場合ニ於テハ前ノ営業者ノ為シタル納税又ハ申告ハ命令ノ定ムル所ニ依リ後ノ営業者ノ納税又ハ申告ト看做ス
営業者カ法人ナル場合ニ於テハ代表者ヲ定メ政府ニ申告スヘシ
調査委員ニ当選シタル者又ハ第一項但書ニ該当スル者ハ法人ノ代表者タルコトヲ得ス
第二十六条ノ七 調査委員選挙人ノ定数ハ其ノ選挙区域内ニ於ケル前年営業税ヲ納メタル者ニシテ第十三条ノ申告ヲ為シタル者十人ニ付一人トス但シ申告者二百人以上ナルトキハ二十人ニ止メ申告者十人未満ナルトキハ一人トス
第二十六条ノ八 調査委員選挙人ノ選挙事務ハ市区町村長又ハ戸長之ヲ執行シ調査委員ノ選挙事務ハ税務署長之ヲ執行ス
第二十六条ノ九 税務署長ハ調査委員選挙人ノ選挙期日ヲ定メ之ヲ市区町村長又ハ戸長ニ通知スヘシ
市区町村長又ハ戸長ハ前項ノ通知ヲ受ケタルトキハ少クトモ選挙期日七日前其ノ旨ヲ公示スヘシ
第二十六条ノ十 選挙ハ記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル但シ選挙区域ヲ異ニシ各別ニ営業税ヲ納ムルトキハ選挙区域毎ニ一人トシテ計算ス
選挙人ハ自ラ投票所ニ至リ被選挙人一人ノ氏名ヲ記載シテ投票スヘシ但シ前項但書ノ場合ニ於テハ代人ヲシテ投票セシムルコトヲ得
第二十六条ノ十一 選挙ハ投票ノ多数ヲ得タル者ヲ以テ当選トス投票ノ数同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条ノ十二 調査委員選挙人ノ選挙終了シタルトキハ市区町村長又ハ戸長ハ当選人ノ氏名ヲ公示スヘシ
第二十六条ノ十三 税務署長ハ選挙期日ヲ定メ少クトモ七日以前ニ公示シ調査委員及之ト同数ノ補闕員ノ選挙ヲ行ハシムヘシ
前項ノ選挙ニ関シテハ第二十六条ノ十及第二十六条ノ十一ノ規定ヲ準用ス但シ投票ニ記載スヘキ被選挙人ノ数ハ調査委員又ハ補闕員ノ定数ノ二分ノ一トシ一人未満ノ端数ヲ生シタルトキハ一人トシテ計算ス
第二十六条ノ十四 調査委員及補闕員ノ選挙終了シタルトキハ税務署長ハ当選人ノ氏名ヲ公示スヘシ
第二十六条ノ十五 一人ニシテ数選挙区ニ於テ調査委員又ハ補闕員ニ当選シタルトキハ当選シタル者ノ選択スル所ニ依ル
第二十六条ノ十六 調査委員又ハ補闕員ニ選ハレタル者ハ正当ノ事故ナクシテ之ヲ辞スルコトヲ得ス
第二十六条ノ十七 調査委員及補闕員ノ任期ハ選挙ノ日ノ属スル月ヨリ四年トス但シ其ノ選挙区域ニ変更ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ任期ハ終了スルモノトス
第二十六条ノ十八 調査委員及補闕員ノ改選ハ前任者ノ任期終了ノ月ノ翌月ニ於テ之ヲ行フ
第二十六条ノ十九 調査委員ニ闕員ヲ生シタルトキハ投票ノ最多数ヲ得タル補闕員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ数同シキトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条ノ二十 補闕員ヨリ調査委員ト為リタル者ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
選挙区域ノ変更ニ依リ新ニ選挙セラレタル調査委員及補闕員ノ任期ハ選挙区域変更前ニ於ケル調査委員及補闕員ノ選挙ノ日ノ属スル月ヨリ四年ヲ以テ終了ス
第二十六条ノ二十一 調査委員又ハ補闕員ニ選挙セラレタル者第二十六条ノ六第一項但書各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキ又ハ其ノ選挙区域内ニ於テ納税義務ヲ有セサルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第二十六条ノ二十二 調査委員会ノ開会日数ハ三十日以内トシ地方ノ情況ニ依リ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条ノ二十三 調査委員会ハ税務署長ノ通知ニ依リ之ヲ開ク
第二十六条ノ二十四 調査委員会ハ毎年開会ノ始ニ於テ調査委員中ヨリ会長ヲ選挙スヘシ
第二十六条ノ二十五 調査委員会ハ定数ノ過半数ニ当ル委員出席スルニ非サレハ決議スルコトヲ得ス
議事ハ出席員ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ会長ノ決スル所ニ依ル
第二十六条ノ二十六 調査委員ハ自己又ハ其ノ代表スル法人ノ営業ニ関スル議事ニ与ルコトヲ得ス
第二十六条ノ二十七 五月三十一日迄ニ調査委員会成立セサルトキハ政府其ノ課税標準ヲ決定ス調査委員会開会ノ日ヨリ第二十六条ノ二十二ノ期間以内ニ又ハ五月三十一日迄ニ調査結了セサルトキハ課税標準調査未済ノモノニ限リ政府其ノ課税標準ヲ決定ス
第二十六条ノ二十八 政府ハ調査委員会ノ決議ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ再調査ニ付ス仍其ノ決議ヲ不当ト認ムルトキ又ハ再調査ニ付シタル日ヨリ七日以内ニ調査結了セサルトキハ政府ニ於テ課税標準ヲ決定ス
第二十六条ノ二十九 税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査委員会ニ出席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
第二十六条ノ三十 調査委員ニハ手当及旅費ヲ支給ス
第二十六条ノ三十一 政府ニ於テ課税標準ヲ決定シタルトキハ之ヲ納税義務者ニ通知スヘシ
第二十七条 納税義務者政府ノ通知シタル課税標準ニ対シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ不服ノ事由ヲ具シ政府ニ申出審査ヲ求ムルコトヲ得但シ此ノ場合ニ於テ政府ハ税金ノ徴収ヲ猶予セス
第二十八条ノ一 前条ノ請求アリタルトキハ審査委員会ヲ開キ其ノ決議ニ依リ政府之ヲ決定ス
第二十六条ノ二十八ノ規定ハ之ヲ審査委員会ノ決議ニ準用ス
第二十八条ノ二 各税務監督局所轄内ニ営業税審査委員会ヲ置ク
審査委員会ハ収税官吏三人調査委員四人ヲ以テ組織ス
収税官吏ヲ以テスヘキ審査員ハ大蔵大臣之ヲ命シ調査委員ヲ以テスヘキ審査員ハ税務監督局所轄内ノ調査委員之ヲ選挙ス
審査委員ノ選挙及審査委員会ノ会議ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条ノ十七、第二十六条ノ十八及第二十六条ノ二十ノ規定ハ審査委員ニ之ヲ準用ス
第二十九条中「資本金額」ヲ「資本金額、運転資本金額」ニ、「以上ヲ」ヲ「未満ニ」ニ、「従業者ノ人員届出人員二分ノ一以下」ヲ「従業者各月ニ於ケル最多数ノ平均人員前年中各月ニ於ケル最多数ノ平均人員二分ノ一未満」ニ改ム
第三十条中「翌年一月迄」ヲ削ル
第三十一条中「資本金額」ヲ「資本金額、運転資本金額」ニ、「従業者ノ人員其ノ最多数ノトキニ於テ届出」ヲ「従業者各月ニ於ケル最多数ノ平均人員前年中各月ニ於ケル最多数ノ平均」ニ改ム
第三十三条中「尋問」ヲ「質問」ニ改ム
第三十四条中「届出」ヲ「申告」ニ改メ「其ノ脱税シタル者ハ脱税金額三倍ノ罰金又ハ科料ニ処ス」ヲ削ル
第三十四条ノ二 営業税ヲ逋脱シタル者ハ脱税金額三倍ノ罰金又ハ科料ニ処ス但シ自首スル者ハ其ノ税金ヲ追徴シ其ノ罪ヲ問ハス
第三十四条ノ三 営業税ノ調査又ハ審査ニ参与シタル者其ノ調査又ハ審査ニ関スル事項ヲ他ニ漏洩シタルトキハ三十円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
前項ノ規定ニ依リ処罰セラレタル者ハ其ノ職ヲ失フ
第三十五条 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ例ヲ用井ス
附 則
本法ハ大正四年一月一日ヨリ之ヲ施行ス