朕海軍戰時給與規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十七年八月二日
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
勅令第百三十六號
海軍戰時給與規則
第一條 戰時若クハ事變ニ際シ軍人軍屬ノ給與ハ本規則ニ依ル但本規則中明文ナキモノハ總テ現行ノ諸條規ヲ適用ス
第二條 軍人軍屬ニシテ戰地若クハ臨戰合圍地境ニ在ル者又ハ派遣セラルヽ者ニハ左ノ區別ニ依リ增俸ヲ給ス
一 准士官以上及候補生ニハ俸給上級職務心得加給俸ヲ加算ス五分ノ二
二 下士卒ニハ俸給上級職務心得加給俸ヲ加算ス四分ノ二
三 文官ニハ俸給五分ノ二
四 雇員傭人ニハ給料四分ノ二
在外國公使館附海軍武官ニ在テハ其ノ本俸ヲ本條ノ俸給トス
第三條 戰地派遣軍人軍屬ノ增俸ハ其ノ出發ノ日ヨリ、既ニ派遣中ノ者ノ增俸ハ戒嚴布吿若クハ宣吿又ハ開戰ノ日ヨリ各任務ヲ了ヘ歸著ノ日マテ之ヲ給ス
第四條 臨戰合圍地境ニ在ル軍人軍屬ノ增俸ハ戒嚴布吿若クハ宣吿又ハ開戰ノ日ヨリ戒嚴解止又ハ平定ノ日マテ之ヲ給ス
臨戰合圍地境ニ派遣スル軍人軍屬ノ增俸ハ其ノ出發ノ日ヨリ戒嚴解止若クハ平定ノ日又ハ任務ヲ了ヘ本勤務地ニ歸著ノ日マテ之ヲ給ス
第五條 戰地若クハ臨戰合圍地境ニ一時往復スル軍人軍屬ニハ其ノ出發ノ日ヨリ歸著ノ日マテ增俸ヲ給ス
第六條 戰備完成ノ各部、各隊及艦船艇ノ軍人軍屬ニハ戰地若クハ臨戰合圍地境ニ發航ノ前日又ハ戒嚴布吿若クハ宣吿又ハ開戰ノ前日マテ第二條增俸ノ半額ヲ增給ス
第七條 軍人軍屬ニシテ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ戰地若クハ臨戰合圍地境ニ在テ治療ヲ受クル間ハ俸給及增俸ノ全額ヲ給ス
第八條 軍人軍屬ニシテ擅ニ職務ヲ離レ若クハ他方ニ赴キ歸著ノ期ニ後レタルトキ又ハ收禁、拘留、處刑、處罰若クハ被吿事件ノ爲メ護送中ハ其ノ事故ノ生シタル當日ヨリ事故ノ止ミタル當日マテ增俸ヲ停止ス
第九條 戰地若クハ臨戰合圍地境ニ在リ又ハ派遣セラルヽ准士官以上及候補生ニハ手當トシテ一囘限リ俸給ノ三十日分、文官ニハ俸給ノ一箇月分ヲ給ス但明治二十七年勅令第六十四號海軍臨時給與規則ニ依リ旣ニ手當金ヲ受ケタル者ニハ之ヲ給セス
第五條ニ揭クル者ニハ一囘限リ前項手當ノ半額ヲ給ス但本項ニ該ル者更ニ前項ニ依リ派遣セラルヽトキハ尙半額ヲ差繼キ支給ス
派遣ヲ命セラレタル者出發前死亡シ又ハ官ノ都合ニ依リ免セラレタルトキハ前各項手當金ノ半額ヲ給ス
第十條 豫備後備ノ軍籍ニ在ル准士官以上ニシテ召集ニ應シ就職スル者ニハ一囘限手當トシテ前條第一項手當ノ半額ヲ給ス但戰地若クハ臨戰合圍地境ニ派遣スル場合ニ在テハ尙半額ヲ差繼キ支給ス
第十一條 軍人軍屬ノ糧食ノ給與海軍糧食條例第二條ノ規程ニ依リ難キトキハ其ノ品種及量額ヲ適宜換給增減スルコトヲ得又同條例第六條及第七條ニ依リ支給スル金額ニシテ同第八條ノ平均價格ニ依リ難キトキハ適宜之ヲ定ムルコトヲ得
第十二條 軍人軍屬外ノ者ニシテ糧食給與ノ必要アルトキハ海軍糧食條例第一條ニ準シ適宜ノ糧食ヲ給スルコトヲ得
第十三條 下士卒給與ニ係ル被服物品ノ內使用ニ堪ヘサルモノヲ生シタルトキハ海軍被服條例第二表ノ交換期限ニ拘ラス隨時交換支給シ又艦船乘組若クハ軍隊病院使役ノ軍屬、職工、人夫其ノ他ノ者ニシテ被服物品ノ必要アルトキハ海軍被服條例第九條ニ準シ之ニ被服物品ヲ給與若クハ貸與スルコトヲ得
第十四條 軍人軍屬ノ旅費ハ總テ實費拂トス但單獨旅行ノ者ニハ內地ニ在テハ海軍內國旅費規則第二表ノ定額ヲ給スルコトヲ得
第十五條 軍人軍屬死亡スルトキハ官費ヲ以テ之ヲ埋葬ス但軍人軍屬外ニシテ戰役ニ從事スル者官ニ於テ埋葬ヲ要スルトキモ亦同シ
第十六條 傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタル軍人軍屬ノ治療費ハ總テ官給トス但軍人軍屬外ト雖戰役ニ從事スル者ニハ時宜ニ依リ官給スルコトヲ得
第十七條 軍人軍屬ノ俸給及增俸ハ適宜其ノ家族ニ下渡スコトヲ得軍人軍屬外ノ者ニ給スル給料及增俸モ亦同シ
第十八條 各部、各隊、艦船艇及軍人軍屬ニ要スル筆紙墨文具其ノ他消耗品ノ類ハ總テ現品ヲ給ス
第十九條 戰地若クハ臨戰合圍地境ニアラサルモ戰時若クハ事變ニ際シ特別ノ任務ヲ受ケ外國ニ在リ又ハ出張スル軍人軍屬ニハ第二條增俸ノ半額ヲ增給ス
前項ノ場合ニ於ケル旅費ノ給與ハ平時ノ規程ニ依ル
附 則
第二十條 戰時若クハ事變ニ際シ繁劇ノ職務ニ從事スル官衙ノ軍人軍屬ニハ其ノ期間第二條增俸ノ半額ヲ增給ス其ノ官衙ハ海軍大臣之ヲ定ム
第二十一條 豫備後備ノ軍籍ニ在ル准士官以上ニシテ本年六月一日以降召集ニ應シ就職シタル者ニモ本規則第十條ヲ適用ス
第二十二條 本規則ニ依レル給與ノ時期、停止、減額及本規則ノ施行細則ハ海軍大臣之ヲ定ム
第二十三條 明治二十七年勅令第六十四號海軍臨時給與規則ハ本規則施行ノ日ヨリ廢止ス
朕海軍戦時給与規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十七年八月二日
海軍大臣 伯爵 西郷従道
勅令第百三十六号
海軍戦時給与規則
第一条 戦時若クハ事変ニ際シ軍人軍属ノ給与ハ本規則ニ依ル但本規則中明文ナキモノハ総テ現行ノ諸条規ヲ適用ス
第二条 軍人軍属ニシテ戦地若クハ臨戦合囲地境ニ在ル者又ハ派遣セラルヽ者ニハ左ノ区別ニ依リ増俸ヲ給ス
一 准士官以上及候補生ニハ俸給上級職務心得加給俸ヲ加算ス五分ノ二
二 下士卒ニハ俸給上級職務心得加給俸ヲ加算ス四分ノ二
三 文官ニハ俸給五分ノ二
四 雇員傭人ニハ給料四分ノ二
在外国公使館附海軍武官ニ在テハ其ノ本俸ヲ本条ノ俸給トス
第三条 戦地派遣軍人軍属ノ増俸ハ其ノ出発ノ日ヨリ、既ニ派遣中ノ者ノ増俸ハ戒厳布告若クハ宣告又ハ開戦ノ日ヨリ各任務ヲ了ヘ帰著ノ日マテ之ヲ給ス
第四条 臨戦合囲地境ニ在ル軍人軍属ノ増俸ハ戒厳布告若クハ宣告又ハ開戦ノ日ヨリ戒厳解止又ハ平定ノ日マテ之ヲ給ス
臨戦合囲地境ニ派遣スル軍人軍属ノ増俸ハ其ノ出発ノ日ヨリ戒厳解止若クハ平定ノ日又ハ任務ヲ了ヘ本勤務地ニ帰著ノ日マテ之ヲ給ス
第五条 戦地若クハ臨戦合囲地境ニ一時往復スル軍人軍属ニハ其ノ出発ノ日ヨリ帰著ノ日マテ増俸ヲ給ス
第六条 戦備完成ノ各部、各隊及艦船艇ノ軍人軍属ニハ戦地若クハ臨戦合囲地境ニ発航ノ前日又ハ戒厳布告若クハ宣告又ハ開戦ノ前日マテ第二条増俸ノ半額ヲ増給ス
第七条 軍人軍属ニシテ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ戦地若クハ臨戦合囲地境ニ在テ治療ヲ受クル間ハ俸給及増俸ノ全額ヲ給ス
第八条 軍人軍属ニシテ擅ニ職務ヲ離レ若クハ他方ニ赴キ帰著ノ期ニ後レタルトキ又ハ収禁、拘留、処刑、処罰若クハ被告事件ノ為メ護送中ハ其ノ事故ノ生シタル当日ヨリ事故ノ止ミタル当日マテ増俸ヲ停止ス
第九条 戦地若クハ臨戦合囲地境ニ在リ又ハ派遣セラルヽ准士官以上及候補生ニハ手当トシテ一回限リ俸給ノ三十日分、文官ニハ俸給ノ一箇月分ヲ給ス但明治二十七年勅令第六十四号海軍臨時給与規則ニ依リ既ニ手当金ヲ受ケタル者ニハ之ヲ給セス
第五条ニ掲クル者ニハ一回限リ前項手当ノ半額ヲ給ス但本項ニ該ル者更ニ前項ニ依リ派遣セラルヽトキハ尚半額ヲ差継キ支給ス
派遣ヲ命セラレタル者出発前死亡シ又ハ官ノ都合ニ依リ免セラレタルトキハ前各項手当金ノ半額ヲ給ス
第十条 予備後備ノ軍籍ニ在ル准士官以上ニシテ召集ニ応シ就職スル者ニハ一回限手当トシテ前条第一項手当ノ半額ヲ給ス但戦地若クハ臨戦合囲地境ニ派遣スル場合ニ在テハ尚半額ヲ差継キ支給ス
第十一条 軍人軍属ノ糧食ノ給与海軍糧食条例第二条ノ規程ニ依リ難キトキハ其ノ品種及量額ヲ適宜換給増減スルコトヲ得又同条例第六条及第七条ニ依リ支給スル金額ニシテ同第八条ノ平均価格ニ依リ難キトキハ適宜之ヲ定ムルコトヲ得
第十二条 軍人軍属外ノ者ニシテ糧食給与ノ必要アルトキハ海軍糧食条例第一条ニ準シ適宜ノ糧食ヲ給スルコトヲ得
第十三条 下士卒給与ニ係ル被服物品ノ内使用ニ堪ヘサルモノヲ生シタルトキハ海軍被服条例第二表ノ交換期限ニ拘ラス随時交換支給シ又艦船乗組若クハ軍隊病院使役ノ軍属、職工、人夫其ノ他ノ者ニシテ被服物品ノ必要アルトキハ海軍被服条例第九条ニ準シ之ニ被服物品ヲ給与若クハ貸与スルコトヲ得
第十四条 軍人軍属ノ旅費ハ総テ実費払トス但単独旅行ノ者ニハ内地ニ在テハ海軍内国旅費規則第二表ノ定額ヲ給スルコトヲ得
第十五条 軍人軍属死亡スルトキハ官費ヲ以テ之ヲ埋葬ス但軍人軍属外ニシテ戦役ニ従事スル者官ニ於テ埋葬ヲ要スルトキモ亦同シ
第十六条 傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタル軍人軍属ノ治療費ハ総テ官給トス但軍人軍属外ト雖戦役ニ従事スル者ニハ時宜ニ依リ官給スルコトヲ得
第十七条 軍人軍属ノ俸給及増俸ハ適宜其ノ家族ニ下渡スコトヲ得軍人軍属外ノ者ニ給スル給料及増俸モ亦同シ
第十八条 各部、各隊、艦船艇及軍人軍属ニ要スル筆紙墨文具其ノ他消耗品ノ類ハ総テ現品ヲ給ス
第十九条 戦地若クハ臨戦合囲地境ニアラサルモ戦時若クハ事変ニ際シ特別ノ任務ヲ受ケ外国ニ在リ又ハ出張スル軍人軍属ニハ第二条増俸ノ半額ヲ増給ス
前項ノ場合ニ於ケル旅費ノ給与ハ平時ノ規程ニ依ル
附 則
第二十条 戦時若クハ事変ニ際シ繁劇ノ職務ニ従事スル官衙ノ軍人軍属ニハ其ノ期間第二条増俸ノ半額ヲ増給ス其ノ官衙ハ海軍大臣之ヲ定ム
第二十一条 予備後備ノ軍籍ニ在ル准士官以上ニシテ本年六月一日以降召集ニ応シ就職シタル者ニモ本規則第十条ヲ適用ス
第二十二条 本規則ニ依レル給与ノ時期、停止、減額及本規則ノ施行細則ハ海軍大臣之ヲ定ム
第二十三条 明治二十七年勅令第六十四号海軍臨時給与規則ハ本規則施行ノ日ヨリ廃止ス