地球温暖化対策の推進に関する法律
法令番号: 法律第117号
公布年月日: 平成10年10月9日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

地球温暖化は地球環境に深刻な影響を及ぼす人類共通の課題である。1992年5月に気候変動に関する国際連合枠組条約が、1997年12月に京都議定書が採択され、日本は2008年から2012年までの温室効果ガス排出量を1990年比で6%削減する法的拘束力のある目標が定められた。しかし、国内の二酸化炭素排出量は増加傾向にあり、早急な対策が必要である。このような状況下で、国、地方公共団体、事業者、国民それぞれの責務を定め、実効性のある地球温暖化対策を推進するため、本法律案を提案するものである。

参照した発言:
第142回国会 衆議院 環境委員会 第6号

審議経過

第142回国会

衆議院
(平成10年5月19日)
(平成10年5月19日)
(平成10年5月21日)
(平成10年5月22日)

第143回国会

衆議院
(平成10年9月4日)
(平成10年9月8日)
参議院
(平成10年9月9日)
(平成10年9月10日)
(平成10年9月17日)
(平成10年9月22日)
(平成10年9月24日)
(平成10年10月1日)
(平成10年10月2日)
地球温暖化対策の推進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十年十月九日
内閣総理大臣 小渕恵三
法律第百十七号
地球温暖化対策の推進に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、地球温暖化が地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、気候変動に関する国際連合枠組条約及び気候変動に関する国際連合枠組条約第三回締約国会議の経過を踏まえ、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが人類共通の課題であり、すべての者が自主的かつ積極的にこの課題に取り組むことが重要であることにかんがみ、地球温暖化対策に関し、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、地球温暖化対策に関する基本方針を定めること等により、地球温暖化対策の推進を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「地球温暖化」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表及び大気の温度が追加的に上昇する現象をいう。
2 この法律において「地球温暖化対策」とは、温室効果ガスの排出の抑制並びに動植物による二酸化炭素の吸収作用の保全及び強化(以下「温室効果ガスの排出の抑制等」という。)その他の国際的に協力して地球温暖化の防止を図るための施策をいう。
3 この法律において「温室効果ガス」とは、次に掲げる物質をいう。
一 二酸化炭素
二 メタン
三 一酸化二窒素
四 ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
五 パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
六 六ふっ化硫黄
4 この法律において「温室効果ガスの排出」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスを大気中に排出し、放出し若しくは漏出させ、又は他人から供給された電気若しくは熱(燃料又は電気を熱源とするものに限る。)を使用することをいう。
5 この法律において「温室効果ガスの総排出量」とは、温室効果ガスたる物質ごとに政令で定める方法により算定される当該物質の排出量に当該物質の地球温暖化係数(温室効果ガスたる物質ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素に係る当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき政令で定める係数をいう。)を乗じて得た量の合計量をいう。
(国の責務)
第三条 国は、大気中における温室効果ガスの濃度変化の状況並びにこれに関連する気候の変動及び生態系の状況を把握するための観測及び監視を行うとともに、総合的な地球温暖化対策を策定し、及び実施するものとする。
2 国は、温室効果ガスの排出の抑制等のための施策を推進するとともに、温室効果ガスの排出の抑制等に関係のある施策について、当該施策の目的の達成との調和を図りつつ温室効果ガスの排出の抑制等が行われるよう配意するものとする。
3 国は、自らの事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を講ずるとともに、温室効果ガスの排出の抑制等のための地方公共団体の施策を支援し、及び事業者、国民又はこれらの者の組織する民間の団体(第五項において「民間団体等」という。)が温室効果ガスの排出の抑制等に関して行う活動の促進を図るため、技術的な助言その他の措置を講ずるように努めるものとする。
4 国は、地球温暖化及びその影響の予測に関する調査、温室効果ガスの排出の抑制等のための技術に関する調査その他の地球温暖化対策の策定に必要な調査を実施するものとする。
5 国は、第一項に規定する観測及び監視の効果的な推進を図るための国際的な連携の確保、前項に規定する調査の推進を図るための国際協力その他の地球温暖化に関する国際協力を推進するために必要な措置を講ずるように努めるとともに、地方公共団体又は民間団体等による温室効果ガスの排出の抑制等に関する国際協力のための活動の促進を図るため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、その区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガスの排出の抑制等のための施策を推進するものとする。
2 地方公共団体は、自らの事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を講ずるとともに、その区域の事業者又は住民が温室効果ガスの排出の抑制等に関して行う活動の促進を図るため、前項に規定する施策に関する情報の提供その他の措置を講ずるように努めるものとする。
(事業者の責務)
第五条 事業者は、その事業活動に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置(他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置を含む。)を講ずるように努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する温室効果ガスの排出の抑制等のための施策に協力しなければならない。
(国民の責務)
第六条 国民は、その日常生活に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を講ずるように努めるとともに、国及び地方公共団体が実施する温室効果ガスの排出の抑制等のための施策に協力しなければならない。
(基本方針並びに政府の事務及び事業に関する実行計画等)
第七条 政府は、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地球温暖化対策に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 地球温暖化対策の推進に関する基本的方向
二 国、地方公共団体、事業者及び国民のそれぞれが講ずべき温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する基本的事項
三 政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画に関する事項のうち、次に掲げるもの
イ 当該計画の策定、変更及び公表に関すること。
ロ 当該計画に定めるべき措置の内容、当該措置により達成すべき目標その他当該計画の内容に関すること。
ハ 当該計画に基づく措置の実施の状況(温室効果ガスの総排出量を含む。)の公表に関すること。
四 温室効果ガスの総排出量が相当程度多い事業者について温室効果ガスの排出の抑制等のための措置(他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置を含む。)に関し策定及び公表に努めるべき計画に関する基本的事項
五 前各号に掲げるもののほか、地球温暖化対策に関する基本的事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議しなければならない。
5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(地方公共団体の事務及び事業に関する実行計画等)
第八条 都道府県及び市町村は、基本方針に即して、当該都道府県及び市町村の事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する計画(以下この条において「実行計画」という。)を策定するものとする。
2 都道府県及び市町村は、実行計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
3 都道府県及び市町村は、実行計画に基づく措置の実施の状況(温室効果ガスの総排出量を含む。)を公表しなければならない。
(事業者の事業活動に関する計画等)
第九条 事業者は、その事業活動に関し、基本方針の定めるところに留意しつつ、単独に又は共同して、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置(他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置を含む。)に関する計画を作成し、これを公表するように努めなければならない。
2 前項の計画の作成及び公表を行った事業者は、基本方針の定めるところに留意しつつ、単独に又は共同して、同項の計画に係る措置の実施の状況を公表するように努めなければならない。
(地球温暖化防止活動推進員)
第十条 都道府県知事は、地域における地球温暖化の現状及び地球温暖化対策に関する知識の普及並びに地球温暖化対策の推進を図るための活動の推進に熱意と識見を有する者のうちから、地球温暖化防止活動推進員を委嘱することができる。
2 地球温暖化防止活動推進員は、次に掲げる活動を行う。
一 地球温暖化の現状及び地球温暖化対策の重要性について住民の理解を深めること。
二 住民に対し、その求めに応じ日常生活に関する温室効果ガスの排出の抑制等のため必要な助言をすること。
三 地球温暖化対策の推進を図るための活動を行う住民に対し、当該活動に関する情報の提供その他の協力をすること。
四 温室効果ガスの排出の抑制等のために国又は地方公共団体が行う施策に必要な協力をすること。
(都道府県地球温暖化防止活動推進センター)
第十一条 都道府県知事は、地球温暖化対策に関する普及啓発を行うこと等により地球温暖化の防止に寄与する活動の促進を図ることを目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人であって、次項に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、都道府県に一を限って、都道府県地球温暖化防止活動推進センター(以下「都道府県センター」という。)として指定することができる。
2 都道府県センターは、当該都道府県の区域において、次に掲げる事業を行うものとする。
一 地球温暖化の現状及び地球温暖化対策の重要性について啓発活動及び広報活動を行うとともに、地球温暖化防止活動推進員及び地球温暖化対策の推進を図るための活動を行う民間の団体の活動を助けること。
二 日常生活に関する温室効果ガスの排出の抑制等のための措置について、照会及び相談に応じ、並びに必要な助言を行うこと。
三 前号に規定する照会及び相談の実例に即して、日常生活に関する温室効果ガスの排出の実態について調査を行い、当該調査に係る情報及び資料を分析すること。
四 地球温暖化対策の推進を図るための住民の活動を促進するため、前号の規定による分析の結果を、定期的に又は時宜に応じて提供すること。
五 前各号の事業に附帯する事業
3 都道府県知事は、都道府県センターの財産の状況又はその事業の運営に関し改善が必要であると認めるときは、都道府県センターに対し、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
4 都道府県知事は、都道府県センターが前項の規定による命令に違反したときは、第一項の指定を取り消すことができる。
5 都道府県センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、第二項第二号若しくは第三号に掲げる事業又は同項第五号に掲げる事業(同項第二号又は第三号に掲げる事業に附帯するものに限る。)に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
6 第一項の指定の手続その他都道府県センターに関し必要な事項は、総理府令で定める。
(全国地球温暖化防止活動推進センター)
第十二条 環境庁長官は、地球温暖化対策に関する普及啓発を行うこと等により地球温暖化の防止に寄与する活動の促進を図ることを目的として設立された民法第三十四条の法人であって、次項に規定する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国に一を限って、全国地球温暖化防止活動推進センター(以下「全国センター」という。)として指定することができる。
2 全国センターは、次に掲げる事業を行うものとする。
一 地球温暖化の現状及び地球温暖化対策の重要性についての二以上の都道府県の区域における啓発活動及び広報活動を行うとともに、二以上の都道府県の区域において地球温暖化対策の推進を図るための活動を行う民間の団体の活動を助けること。
二 日常生活に関する温室効果ガスの排出の実例に即して、日常生活に関する温室効果ガスの排出の抑制等のための措置を促進する方策の調査研究を行うこと。
三 前号に掲げるもののほか、地球温暖化及び地球温暖化対策に関する調査研究並びに情報及び資料の収集、分析及び提供を行うこと。
四 日常生活における利用に伴って温室効果ガスの排出がされる製品について、当該排出の量に関する情報の収集及び提供を行うこと。
五 都道府県センターの事業について連絡調整を図り、及びこれに従事する者に対する研修を行い、並びに都道府県センターに対する指導その他の援助を行うこと。
六 前各号の事業に附帯する事業
3 環境庁長官は、第一項の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議しなければならない。
4 前条第三項、第四項及び第六項の規定は、全国センターについて準用する。この場合において、同条第三項中「都道府県知事」とあるのは「環境庁長官」と、同条第四項中「都道府県知事」とあるのは「環境庁長官」と、「第一項」とあるのは「次条第一項」と、同条第六項中「第一項」とあるのは「次条第一項」と読み替えるものとする。
(温室効果ガスの総排出量の公表)
第十三条 政府は、毎年、我が国における温室効果ガスの総排出量を算定し、総理府令で定めるところにより、これを公表するものとする。
(関係行政機関の協力)
第十四条 環境庁長官は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、温室効果ガスの排出の抑制等に資する施策の実施に関し、地球温暖化対策の推進について必要な協力を求めることができる。
2 環境庁長官は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係都道府県知事に対し、必要な資料の提出又は説明を求めることができる。
(経過措置)
第十五条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。
(罰則)
第十六条 第十一条第五項の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第一条、第二条第一項、第二項及び第四項並びに第三条から第六条まで並びに附則第三条の規定は、公布の日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(環境庁設置法の一部改正)
第三条 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第四条第六号の二の次に次の一号を加える。
六の三 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)の施行に関する事務を処理すること。
内閣総理大臣 小渕恵三