(趣旨)
第一条 この法律は、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るため、特定非常災害が発生した場合における行政上の権利利益に係る満了日の延長、履行されなかった義務に係る免責、法人の破産宣告の特例、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)による調停の申立ての手数料の特例及び建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)による応急仮設住宅の存続期間の特例について定めるものとする。
(特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定)
第二条 著しく異常かつ激甚な非常災害であって、当該非常災害の被害者の行政上の権利利益の保全等を図り、又は当該非常災害により債務超過となった法人の存立、当該非常災害に起因する民事に関する紛争の迅速かつ円滑な解決若しくは当該非常災害に係る応急仮設住宅の入居者の居住の安定に資するための措置を講ずることが特に必要と認められるものが発生した場合には、当該非常災害を特定非常災害として政令で指定するものとする。この場合において、当該政令には、当該特定非常災害が発生した日を特定非常災害発生日として定めるものとする。
2 前項の政令においては、次条以下に定める措置のうち当該特定非常災害に対し適用すべき措置を指定しなければならない。当該指定の後、新たにその余の措置を適用する必要が生じたときは、当該措置を政令で追加して指定するものとする。
(行政上の権利利益に係る満了日の延長に関する措置)
第三条 次に掲げる権利利益(以下「特定権利利益」という。)に係る法律、政令又は国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第十二条第一項若しくは第十三条第一項の命令若しくは同法第十四条第一項の告示(以下「法令」という。)の施行に関する事務を所管する国の行政機関(同法第三条第二項に規定する国の行政機関をいう。以下同じ。)の長(当該国の行政機関が同法第三条第二項に規定する委員会である場合にあっては、当該委員会)は、特定非常災害の被害者の特定権利利益であってその存続期間が満了前であるものを保全し、又は当該特定権利利益であってその存続期間が既に満了したものを回復させるため必要があると認めるときは、特定非常災害発生日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日(以下「延長期日」という。)を限度として、これらの特定権利利益に係る満了日を延長する措置をとることができる。
一 法令に基づく行政庁の処分(特定非常災害発生日以前に行ったものに限る。)により付与された権利その他の利益であって、その存続期間が特定非常災害発生日以後に満了するもの
二 法令に基づき何らかの利益を付与する処分その他の行為を当該行為に係る権限を有する行政機関(国の行政機関及びこれらに置かれる機関並びに地方公共団体の機関に限る。)に求めることができる権利であって、その存続期間が特定非常災害発生日以後に満了するもの
2 前項の規定による延長の措置は、告示により、当該措置の対象となる特定権利利益の根拠となる法令の条項ごとに、地域を単位として、当該措置の対象者及び当該措置による延長後の満了日を指定して行うものとする。
3 第一項の規定による延長の措置のほか、同項第一号の行政庁又は同項第二号の行政機関(次項において「行政庁等」という。)は、特定非常災害の被害者であって、その特定権利利益について保全又は回復を必要とする理由を記載した書面により満了日の延長の申出を行つたものについて、延長期日までの期日を指定してその満了日を延長することができる。
4 延長期日が定められた後、第一項又は前項の規定による満了日の延長の措置を延長期日の翌日以後においても特に継続して実施する必要があると認められるときは、第一項の国の行政機関の長又は行政庁等は、同項又は前項の例に準じ、特定権利利益の根拠となる法令の条項ごとに新たに政令で定める日を限度として、当該特定権利利益に係る満了日を更に延長する措置をとることができる。
5 前各項の規定にかかわらず、災害その他やむを得ない事由がある場合における特定権利利益に係る期間に関する措置について他の法令に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
(期限内に履行されなかつた義務に係る免責に関する措置)
第四条 特定非常災害発生日以後に法令に規定されている履行期限が到来する義務(以下「特定義務」という。)であつて、特定非常災害により当該履行期限が到来するまでに履行されなかったものについて、その不履行に係る行政上及び刑事上の責任(過料に係るものを含む。以下単に「責任」という。)が問われることを猶予する必要があるときは、政令で、特定非常災害発生日から起算して四月を超えない範囲内において特定義務の不履行についての免責に係る期限(以下「免責期限」という。)を定めることができる。
2 免責期限が定められた場合において、免責期限が到来する日の前日までに履行期限が到来する特定義務が免責期限が到来する日までに履行されたときは、当該特定義務が特定非常災害により履行されなかつたことについて、責任は問われないものとする。
3 免責期限が定められた後、前二項に定める免責の措置を免責期限が到来する日の翌日以後においても特に継続して実施する必要があると認められるときは、政令で、特定義務の根拠となる法令の条項ごとに、新たに、当該特定義務の不履行についての免責に係る期限を定めることができる。前項の規定は、この場合について準用する。
4 前三項の規定にかかわらず、特定義務が災害その他やむを得ない事由によりその履行期限が到来するまでに履行されなかった場合について他の法令に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
(債務超過を理由とする法人の破産宣告の特例に関する措置)
第五条 特定非常災害によりその財産をもって債務を完済することができなくなった法人に対しては、第二条第一項又は第二項の政令でこの条に定める措置を指定するものの施行の日以後特定非常災害発生日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、破産の宣告をすることができない。ただし、その法人が、清算中である場合、支払をすることができない場合又は破産の申立てをした場合は、この限りでない。
2 裁判所は、法人に対して破産の申立てがあった場合において、前項の規定によりその法人に対して破産の宣告をすることができないときは、破産の宣告を留保する決定をしなければならない。
3 裁判所は、前項の決定に係る法人が支払をすることができなくなったとき、その他同項の決定をすべき第一項に規定する事情について変更があったときは、申立てにより又は職権で、その決定を取り消すことができる。
4 前二項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5 民法(明治二十九年法律第八十九号)第七十条第二項(他の法律において準用する場合を含む。)の規定は、特定非常災害発生日から第一項に規定する政令で定める日までの間、同項本文の法人については適用しない。
(民事調停法による調停の申立ての手数料の特例に関する措置)
第六条 特定非常災害により借地借家関係その他の民事上の法律関係に著しい混乱を生ずるおそれがある地区として政令で定めるものに特定非常災害発生日において住所、居所、営業所又は事務所を有していた者が、当該特定非常災害に起因する民事に関する紛争につき、特定非常災害発生日以後当該特定非常災害発生日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日までの間に、民事調停法による調停の申立てをする場合には、民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)第三条第一項の規定にかかわらず、その申立ての手数料を納めることを要しない。
(建築基準法による応急仮設住宅の存続期間の特例に関する措置)
第七条 建築基準法第二条第三十二号の特定行政庁は、同法第八十五条第一項の非常災害又は同条第二項の災害が特定非常災害である場合において、被災者の住宅の需要に応ずるに足りる適当な住宅が不足するため同条第三項後段に規定する期間を超えて当該被災者の居住の用に供されている応急仮設建築物である住宅を存続させる必要があり、かつ、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるときは、同項後段の規定にかかわらず、更に一年を超えない範囲内において同項の許可の期間を延長することができる。当該延長に係る期間が満了した場合において、これを更に延長しようとするときも、同様とする。