高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律
法令番号: 法律第44号
公布年月日: 平成6年6月29日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

2020年には65歳以上の高齢者が人口の4分の1を占めると予測される中、運動機能や知覚機能に制約を持つ国民の増加が見込まれている。また、障害者の社会参加が望まれており、誰もが老いや障害を持つ可能性があることを踏まえ、豊かな生活のための社会的配慮が必要である。そこで、不特定多数が利用する公共的建築物について、高齢者や身体障害者等の移動・利用の自由と安全性を確保し、自立した生活と社会参加を促進するため、建築主の努力義務や基準の策定、都道府県知事による指導、支援措置等を定める法律を提案する。

参照した発言:
第129回国会 参議院 建設委員会 第4号

審議経過

第129回国会

参議院
(平成6年6月2日)
(平成6年6月3日)
(平成6年6月6日)
衆議院
(平成6年6月17日)
(平成6年6月20日)
(平成6年6月21日)
高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成六年六月二十九日
内閣総理大臣 羽田孜
法律第四十四号
高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条)
第二章
特定建築物に係る措置等(第二条―第十一条)
第三章
雑則(第十二条―第十六条)
第四章
罰則(第十七条―第十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、高齢者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるもの、身体障害者その他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者が円滑に利用できる建築物の建築の促進のための措置を講ずることにより建築物の質の向上を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
第二章 特定建築物に係る措置等
(特定建築主の努力)
第二条 病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店その他の不特定かつ多数の者が利用する政令で定める建築物(建築物の部分を含む。以下「特定建築物」という。)を建築しようとする者(建築物の用途を変更して特定建築物としようとする者を含む。以下「特定建築主」という。)は、出入口、廊下、階段、昇降機、便所その他の建設省令で定める施設(以下「特定施設」という。)を高齢者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるもの、身体障害者その他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者(以下単に「高齢者、身体障害者等」という。)が円滑に利用できるようにするための措置を講ずるよう努めなければならない。
(特定建築主の判断の基準となるべき事項)
第三条 建設大臣は、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進を図るため、特定施設を高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにするための措置に関し特定建築主の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
(指導及び助言並びに指示等)
第四条 都道府県知事は、特定建築物について第二条に規定する措置の適確な実施を確保するため必要があると認めるときは、特定建築主に対し、前条に規定する判断の基準となるべき事項を勘案して、特定建築物の設計及び施工に係る事項について必要な指導及び助言をすることができる。
2 都道府県知事は、特定建築物のうち政令で定める規模以上のものの特定施設を高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにするための措置が前条に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、特定建築主に対し、その判断の根拠を示して、当該特定建築物の設計及び施工に係る事項のうち特定施設を高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにするための措置に関するものについて必要な指示をすることができる。
3 都道府県知事は、前項の規定の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定建築主に対し、特定建築物の設計及び施工に係る事項に関し報告させ、又はその職員に、特定建築物若しくは特定建築物の工事現場に立ち入り、特定建築物、建築設備、書類その他の物件を検査させることができる。
4 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
5 第三項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(計画の認定)
第五条 特定建築主は、建設省令で定めるところにより、特定建築物の建築及び維持保全の計画を作成し、都道府県知事の認定を申請することができる。
2 前項の計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 特定建築物の位置
二 特定建築物の延べ面積、構造方法及び用途並びに敷地面積
三 特定建築物に設ける特定施設の構造及び配置並びに維持保全に関する事項
四 特定建築物の建築事業に関する資金計画
五 その他建設省令で定める事項
3 都道府県知事は、第一項の申請があった場合において、特定施設の構造及び配置並びに維持保全に関する事項が第三条に規定する判断の基準となるべき事項に適合し、かつ、前項第四号に規定する資金計画が特定建築物の建築の事業を確実に遂行するため適切なものであると認めるときは、認定(以下「計画の認定」という。)をすることができる。
4 計画の認定の申請をする者は、都道府県知事に対し、当該申請に併せて、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項(同法第八十七条第一項において準用する場合を含む。第七項において同じ。)の規定による確認の申請書を提出して、当該申請に係る特定建築物の建築の計画が当該特定建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合する旨の建築主事の通知(第七項及び第八項において「適合通知」という。)を受けるよう申し出ることができる。
5 前項の申出を受けた都道府県知事は、速やかに当該申出に係る特定建築物の建築の計画を建築主事に通知しなければならない。
6 建築基準法第十八条第三項の規定は、建築主事が前項の通知を受けた場合について準用する。
7 都道府県知事が、適合通知を受けて計画の認定をしたときは、当該計画の認定に係る特定建築物の建築の計画は、建築基準法第六条第一項の規定による確認を受けたものとみなす。
8 建築基準法第九十三条及び第九十三条の二の規定は、建築主事が適合通知をする場合について準用する。
(計画の変更)
第六条 計画の認定を受けた者(以下「認定事業者」という。)は、当該計画の認定を受けた計画の変更(建設省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、都道府県知事の認定を受けなければならない。
2 前条の規定は、前項の場合について準用する。
(報告の徴収)
第七条 都道府県知事は、認定事業者に対し、計画の認定を受けた計画(前条第一項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。次条において同じ。)に係る特定建築物(以下「認定建築物」という。)の建築又は維持保全の状況について報告を求めることができる。
(改善命令)
第八条 都道府県知事は、認定事業者が計画の認定を受けた計画に従って認定建築物の建築又は維持保全を行っていないと認めるときは、当該認定事業者に対し、相当の期限を定めて、その改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(計画の認定の取消し)
第九条 都道府県知事は、認定事業者が前条の規定による処分に違反したときは、計画の認定を取り消すことができる。
(資金の確保等)
第十条 国及び地方公共団体は、認定建築物の特定施設を高齢者、身体障害者等が円滑に利用できるようにするため必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
(既存の特定建築物に設ける昇降機についての建築基準法の特例)
第十一条 この法律の施行の際現に存する特定建築物に専ら車いすを使用している者の利用に供する昇降機を設置する場合において、当該昇降機が次に掲げる基準に適合し、特定行政庁(建築基準法第二条第三十二号に規定する特定行政庁をいう。次項において同じ。)が防火上及び避難上支障がないと認めたときは、当該昇降機については、同法第二十七条第一項、第六十一条及び第六十二条第一項の規定は適用しない。
一 昇降機及び当該昇降機の設置に係る特定建築物の主要構造部の部分の構造が建設省令で定める安全上及び防火上の基準に適合していること。
二 昇降機の制御方法及びその作動状態の監視方法が建設省令で定める安全上の基準に適合していること。
2 建築基準法第九十三条第一項本文及び第二項の規定は、前項の規定により特定行政庁が防火上及び避難上支障がないと認める場合について準用する。
第三章 雑則
(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の特例)
第十二条 特定施設の床面積が高齢者、身体障害者等の円滑な利用を確保するため通常の床面積よりも著しく大きい建築物で、建設大臣が高齢者、身体障害者等の円滑な利用を確保する上で必要と認めて定める基準に適合するものについては、当該建築物を建築基準法第五十二条第六項第一号に規定する建築物とみなして、同項の規定を適用する。
(研究開発の促進のための措置)
第十三条 国は、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の建築の促進に資する技術に関する研究開発を促進するため、当該技術に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(国民の理解を深める等のための措置)
第十四条 国は、教育活動、広報活動等を通じて、高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の建築の促進に関する国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努めなければならない。
(地方公共団体の責務)
第十五条 地方公共団体は、国の施策に準じて高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる建築物の建築を促進するよう努めなければならない。
(大都市の特例)
第十六条 この法律中都道府県知事の権限に属する事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下この条において「指定都市」という。)においては、当該指定都市の長が行うものとする。この場合においては、この法律中都道府県知事に関する規定は、指定都市の長に関する規定として指定都市の長に適用があるものとする。
第四章 罰則
(罰則)
第十七条 第四条第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第十八条 第七条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
第十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(地方税法の一部改正)
2 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
附則第三十二条の三第二十項中「第十八項」を「第十九項」に改め、同項を同条第二十一項とし、同条第十九項の表中「第十八項」を「第十九項」に改め、同項を同条第二十項とし、同条第十八項の次に次の一項を加える。
19 指定都市等は、事業所用家屋で高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成六年法律第四十四号)第六条第一項に規定する認定事業者で政令で定めるものが同法第七条に規定する計画の認定を受けた計画(平成八年三月三十一日までに同法第五条第三項の規定による認定(同法第六条第一項の規定による認定を含む。以下本項において同じ。)を受けたものに限る。)に従つて建築する同法第七条に規定する認定建築物で政令で定めるものに設置される同法第二条に規定する特定施設で政令で定めるものに係るものの新築又は増築に係る新増設事業所床面積(当該特定施設のうち政令で定める部分に係るものに限る。)に対しては、当該新築又は増築が当該計画の認定を受けた計画に係る同法第五条第三項の規定による認定を受けた日から三年を経過する日までの間に行われたときに限り、第七百一条の三十二第一項の規定にかかわらず、新増設に係る事業所税を課することができない。この場合においては、第七百一条の三十四第十項の規定に準用する。
附則第三十八条第十一項、第三十九条第十一項及び第四十条第八項中「附則第三十二条の三第十九項」を「附則第三十二条の三第二十項」に、「第十八項」を「第十九項」に改める。
(建設省設置法の一部改正)
3 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第四十五号中「及びエネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法(平成五年法律第十八号)」を「、エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法(平成五年法律第十八号)及び高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成六年法律第四十四号)」に改める。
建設大臣 森本晃司
自治大臣 石井一
内閣総理大臣 羽田孜