外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第十七条及び歯科医師法第十七条の特例等に関する法律
法令番号: 法律第二十九号
公布年月日: 昭和62年5月26日
法令の形式: 法律
外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第十七条及び歯科医師法第十七条の特例等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和六十二年五月二十六日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第二十九号
外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第十七条及び歯科医師法第十七条の特例等に関する法律
(趣旨)
第一条 この法律は、医療に関する知識及び技能の修得を目的として本邦に入国した外国医師又は外国歯科医師が医業又は歯科医業を行うことができるように、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十七条及び歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)第十七条の特例等を定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 外国医師 外国において医師に相当する資格を有する者をいう。
二 外国歯科医師 外国において歯科医師に相当する資格を有する者をいう。
三 臨床修練 医療に関する知識及び技能の修得を目的として本邦に入国した外国医師又は外国歯科医師が厚生大臣の指定する病院において臨床修練指導医又は臨床修練指導歯科医の実地の指導監督の下に医業又は歯科医業(政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行うことをいう。
四 臨床修練外国医師 次条第一項の許可を受けた外国医師をいう。
五 臨床修練外国歯科医師 次条第一項の許可を受けた外国歯科医師をいう。
六 臨床修練指導医 第八条の認定を受けた医師をいう。
七 臨床修練指導歯科医 第八条の認定を受けた歯科医師をいう。
(臨床修練の許可)
第三条 外国医師又は外国歯科医師は、医師法第十七条又は歯科医師法第十七条の規定にかかわらず、厚生省令で定めるところにより厚生大臣の許可を受けて、臨床修練を行うことができる。
2 厚生大臣は、前項の許可(以下「許可」という。)を受けようとする者が次の各号に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可を与えてはならない。
一 医療に関する知識及び技能の修得を目的として本邦に入国していること。
二 医業又は歯科医業を行うのに必要な医学又は歯科医学に関する知識及び技能を有すること。
三 外国において医師又は歯科医師に相当する資格を取得した後三年以上診療した経験を有すること。
四 臨床修練を行うのに支障のない程度に日本語又は厚生省令で定める外国語を理解し、使用する能力を有すること。
五 患者に与えた損害を賠償する能力を有すること。
3 厚生大臣は、許可を受けようとする者が前項各号に掲げる基準に適合していると認める場合であつても、次の各号のいずれかに該当する者には、許可を与えてはならない。
一 医師法第三条又は歯科医師法第三条に規定する者
二 医師法第七条第二項に規定する医業の停止の命令又は歯科医師法第七条第二項に規定する歯科医業の停止の命令に相当する外国の法令による処分を受け、当該外国において医業又は歯科医業を行うことができない者
三 禁治産者又は準禁治産者と外国の法令上同様に取り扱われている者
4 厚生大臣は、許可を受けようとする者が第二項各号に掲げる基準に適合していると認める場合であつても、次の各号のいずれかに該当する者には、許可を与えないことができる。
一 医師法第四条各号又は歯科医師法第四条各号に掲げる者
二 罰金以上の刑に相当する外国の法令による刑に処せられた者
5 許可の有効期間は、許可の日から起算して二年を超えない範囲内において厚生大臣が定める期間とする。
6 許可には、条件を付し、及びこれを変更することができる。
7 前項の条件は、許可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、許可を受ける者に不当な義務を課することとなるものであつてはならない。
8 許可を申請する者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納めなければならない。
(許可証の交付等)
第四条 厚生大臣は、外国医師又は外国歯科医師に対し許可をしたときは、厚生省令で定めるところにより、臨床修練許可証を交付するものとする。
2 臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師は、臨床修練を行うときは、厚生省令で定めるところにより、臨床修練許可証を着用しなければならない。
(許可の失効)
第五条 許可は、その有効期間が満了したとき及び次条の規定により取り消されたときのほか、許可を受けた者が外国医師又は外国歯科医師でなくなつたときは、その効力を失う。
(許可の取消し)
第六条 厚生大臣は、許可を受けた者が第三条第三項各号に掲げる者に該当するに至つたときは、その許可を取り消すものとする。
2 厚生大臣は、許可を受けた者が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可を取り消すことができる。
一 第三条第二項第一号又は第五号に掲げる基準に適合しなくなつたと認めるとき。
二 第三条第四項各号に掲げる者に該当するに至つたとき。
三 第三条第六項の規定による条件に違反したとき。
四 この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき。
(許可証の返納)
第七条 許可を受けた者は、その許可の効力が失われたときは、五日以内に、臨床修練許可証を厚生大臣に返納しなければならない。
(臨床修練指導医及び臨床修練指導歯科医の認定)
第八条 厚生大臣は、その申請に基づき、医師又は歯科医師であつて次の各号に掲げる基準に適合すると認める者を臨床修練指導医又は臨床修練指導歯科医として認定する。
一 医学又は歯科医学に関する専門的な知識及び技能を有すること。
二 臨床修練を実地に指導監督するのに支障のない程度に第三条第二項第四号の厚生省令で定める外国語を理解し、使用する能力を有すること。
三 臨床修練の指導監督について熱意と識見を有すること。
(職務及び責務)
第九条 臨床修練指導医又は臨床修練指導歯科医は、臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師が行う臨床修練を実地に指導監督するものとし、その指導監督に当たつては、臨床修練が適切に行われるように努めなければならない。
(認定の取消し)
第十条 厚生大臣は、臨床修練指導医又は臨床修練指導歯科医が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、その認定を取り消すものとする。
一 医師又は歯科医師でなくなつたとき。
二 医師法第七条第二項の規定による医業の停止又は歯科医師法第七条第二項の規定による歯科医業の停止を命ぜられたとき。
2 厚生大臣は、臨床修練指導医又は臨床修練指導歯科医がこの法律に違反したとき又は第八条各号に掲げる基準に適合しなくなつたと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
(診療録の記載等)
第十一条 医師法第二十四条又は歯科医師法第二十三条の規定は、臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師について準用する。
2 臨床修練指導医又は臨床修練指導歯科医は、臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師が行う臨床修練を実地に指導監督したときは、臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師が前項において準用する医師法第二十四条第一項又は歯科医師法第二十三条第一項の規定により記載した診療録にその旨を記載し、署名しなければならない。
(秘密を守る義務)
第十二条 臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師は、正当な理由がある場合を除き、その業務上知り得た人の秘密を他に漏らしてはならない。臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師でなくなつた後においても、同様とする。
(保健婦助産婦看護婦法の特例)
第十三条 臨床修練外国医師が臨床修練を行う場合における保健婦助産婦看護婦法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十条の規定の適用については、同条中「医師法(昭和二十三年法律第二百一号)」とあるのは、「外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第十七条及び歯科医師法第十七条の特例等に関する法律」とする。
2 臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師が臨床修練を行う場合における保健婦助産婦看護婦法第三十一条第一項の規定の適用については、同項中「医師法又は歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)」とあるのは、「外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第十七条及び歯科医師法第十七条の特例等に関する法律」とする。
(診療放射線技師法の特例)
第十四条 臨床修練外国医師又は臨床修練外国歯科医師は、臨床修練を行う場合には、診療放射線技師法(昭和二十六年法律第二百二十六号)第二十四条の規定にかかわらず、同法第二条第二項に規定する業務を行うことができる。
(歯科技工法の特例)
第十五条 臨床修練外国歯科医師が臨床修練において患者のために自ら行う歯科技工法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条第一項本文に規定する行為は、同項ただし書に規定する行為とみなす。
(医療関係者審議会)
第十六条 厚生大臣は、第二条第三号の規定による指定を行い、許可若しくは許可の取消しを行い、又は第八条の規定による認定若しくは第十条第二項の規定による認定の取消しを行うに当たつては、あらかじめ、医療関係者審議会の意見を聴かなければならない。
(法務大臣との協議)
第十七条 厚生大臣は、許可をしようとするときは、当該許可に係る者が第三条第二項第一号に掲げる基準に適合していることについて、あらかじめ、法務大臣と協議しなければならない。
(聴聞)
第十八条 厚生大臣は、第六条又は第十条第二項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、その相手方にその処分の理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
(罰則)
第十九条 第十二条の規定に違反して人の秘密を漏らした者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴を待つて論ずる。
第二十条 第十一条第一項において準用する医師法第二十四条又は歯科医師法第二十三条の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する。
第二十一条 第十一条第二項の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(厚生省設置法の一部改正)
第二条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第三十五号の次に次の一号を加える。
三十五の二 外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第十七条及び歯科医師法第十七条の特例等に関する法律(昭和六十二年法律第二十九号)を施行すること。
第六条第二十九号の次に次の一号を加える。
二十九の二 外国医師又は外国歯科医師が行う臨床修練に係る医師法第十七条及び歯科医師法第十七条の特例等に関する法律の規定に基づき、臨床修練を許可し、及びその許可を取り消し、並びに臨床修練指導医又は臨床修練指導歯科医の認定を行い、及びその認定を取り消すこと。
第七条第四項中「並びに医師法第十六条の二第一項に規定する臨床研修」を削り、「調査審議するほか」を「調査審議し、並びに医師法その他の法律によりその権限に属させられた事項を調査審議するほか」に改める。
厚生大臣 斎藤十朗
内閣総理大臣 中曽根康弘