中部圏開発整備法
法令番号: 法律第102号
公布年月日: 昭和41年7月1日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

国土総合開発法制定以来、全国各地で地域開発整備法が制定される中、東海三県と長野県のみが法的空白地帯として取り残されている。東海地方は首都圏と近畿圏の中間に位置し、産業経済の三大拠点の一つとして重要な地位を占めている。この地域を中核とする太平洋ベルト地帯と北陸地方の日本海沿岸地域を結び、広域的な経済圏を形成する必要がある。また、中京地区でも人口・産業の集中が進んでおり、京浜・阪神のような過密都市化を防ぐための予防的対策が必要である。そこで、中京先進地区の計画的整備と、その背後地域である日本海沿岸部を一体的に開発し、人口配置や産業立地の適正化を図り、均衡ある地域開発を実現することで、産業経済の発展と社会福祉の向上を目指すため、本法案を提出する。

参照した発言:
第51回国会 衆議院 建設委員会 第24号

審議経過

第51回国会

参議院
(昭和41年5月10日)
衆議院
(昭和41年5月11日)
参議院
(昭和41年5月12日)
衆議院
(昭和41年5月25日)
(昭和41年5月26日)
参議院
(昭和41年6月2日)
(昭和41年6月3日)
(昭和41年6月27日)
中部圏開発整備法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十一年七月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百二号
中部圏開発整備法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
中部圏開発整備本部(第三条―第五条)
第三章
中部圏開発整備審議会(第六条・第七条)
第四章
中部圏開発整備地方協議会(第八条)
第五章
中部圏開発整備計画(第九条―第十二条)
第六章
中部圏開発整備計画に基づく事業の実施(第十三条―第二十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、中部圏の開発及び整備に関する総合的な計画を策定し、その実施を推進することにより、東海地方、北陸地方等相互間の産業経済等の関係の緊密化を促進するとともに、首都圏と近畿圏の中間に位する地域としての機能を高め、わが国の産業経済等において重要な地位を占めるにふさわしい中部圏の建設とその均衡ある発展を図り、あわせて社会福祉の向上に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「中部圏」とは、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県及び滋賀県の区域を一体とした広域をいう。
2 この法律で「中部圏開発整備計画」とは、中部圏の建設とその均衡ある発展を図るため必要な中部圏の開発及び整備に関する計画をいう。
3 この法律で「都市整備区域」とは、中部圏の地域のうち第十三条第一項の規定により指定された区域をいう。
4 この法律で「都市開発区域」とは、都市整備区域以外の中部圏の地域のうち第十四条第一項の規定により指定された区域をいう。
5 この法律で「保全区域」とは、中部圏の地域内において観光資源を保全し、若しくは開発し、緑地を保全し、又は文化財を保存する必要がある区域で、第十六条第一項の規定により指定された区域をいう。
第二章 中部圏開発整備本部
(設置)
第三条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条第一項の規定に基づいて、総理府の機関として、中部圏開発整備本部(以下「本部」という。)を設置する。
(所掌事務)
第四条 本部の所掌事務は、次のとおりとする。
一 中部圏開発整備計画の案の作成に関して必要な相互の連絡を図ること。
二 中部圏開発整備計画の作成及びその作成のため必要な調査を行なうこと。
三 中部圏開発整備計画の実施に関して必要な関係行政機関相互の連絡調整を図ること。
四 中部圏開発整備計画の実施を推進すること。
五 その他中部圏開発整備計画に関し、内閣総理大臣の権限に属する事務を処理すること。
(組織)
第五条 本部の長は、中部圏開発整備長官とし、国務大臣をもつて充てる。
2 中部圏開発整備長官は、本部の事務を統轄し、所部の職員の服務を監督する。
3 本部に、次長その他の職員を置く。
4 この法律に定めるもののほか、本部の組織に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 中部圏開発整備審議会
(設置及び所掌事務)
第六条 総理府に、附属機関として、中部圏開発整備審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じ、中部圏開発整備計画の策定及び実施に関する重要事項その他審議会の権限に属させられた事項について調査審議する。
3 審議会は、中部圏開発整備計画の策定及び実施に関する重要事項について内閣総理大臣に意見を述べることができる。
(組織及び運営)
第七条 審議会は、次に掲げる者につき、内閣総理大臣が任命する委員三十三人以内で組織する。
 一 関係行政機関の職員
十一人以内
 二 関係県の知事及び関係指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下同じ。)の市長
十人
 三 関係市の市長(関係指定都市の市長を除く。)を代表する者
一人
 四 関係町村の町村長を代表する者
一人
 五 学識経験のある者
十人以内
2 審議会の委員は、非常勤とする。
3 学識経験のある者のうちから任命される審議会の委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の審議会の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 前項の審議会の委員は、再任されることができる。
5 この法律に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 中部圏開発整備地方協議会
(中部圏開発整備地方協議会)
第八条 中部圏の開発及び整備に関する重要事項を調査審議するため、関係県は、その協議により規約を定め、共同して、中部圏開発整備地方協議会を設置する。
2 前項の規定による関係県の協議については、当該県の議会の議決を経なければならない。
3 中部圏開発整備地方協議会は、委員三十四人以内で組織する。
4 委員は、次に掲げる者をもつて充てる。
 一 関係県の知事及び関係指定都市の市長
十人
 二 関係県及び関係指定都市の議会の議長
十人
 三 関係市の市長(関係指定都市の市長を除く。)を代表する者につき関係県の知事が協議して任命する者
一人
 四 関係市の議会の議長(関係指定都市の議会の議長を除く。)を代表する者につき関係県の知事が協議して任命する者
一人
 五 関係町村の町村長を代表する者につき関係県の知事が協議して任命する者
一人
 六 関係町村の議会の議長を代表する者につき関係県の知事が協議して任命する者
一人
 七 学識経験のある者のうちから関係県の知事が協議して任命する者
十人以内
5 この法律に定めるもののほか、中部圏開発整備地方協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規約で定めるものとする。
第五章 中部圏開発整備計画
(中部圏開発整備計画の内容)
第九条 中部圏開発整備計画は、基本開発整備計画及び事業計画とする。
2 基本開発整備計画(以下「基本計画」という。)には、次に掲げる事項を定めるものとする。この場合において、第二号及び第三号に掲げる事項については、第一号に規定する方針に基づいて定めるものとする。
一 中部圏における人口の規模及び配分、産業の配置、土地、水その他の資源の保全及び開発、都市の開発及び整備、交通体系の確立、教育の振興その他中部圏の開発及び整備に関する総合的かつ基本的な方針
二 都市整備区域、都市開発区域及び保全区域の指定に関する事項
三 次に掲げる事項で根幹となるべきものとして政令で定めるもの
イ 道路、鉄道、港湾、空港、運河等の交通施設及び通信施設の整備に関する事項
ロ 住宅用地、工場用地等の土地利用に関する事項
ハ 水資源の開発及び利用に関する事項
ニ 国土保全施設の整備に関する事項
ホ 住宅及び生活環境施設の整備に関する事項
ヘ 公害の発生の防止に関する施設その他公害の防止に関する事項
ト 教育文化施設の整備に関する事項
チ 観光資源の開発、利用及び保全並びに文化財の保存に関する事項
リ その他中部圏の開発及び整備に関する事項
3 事業計画は、基本計画の実施のため必要な毎年度の事業で政令で定めるものについての計画とする。
(基本計画の案の作成及び提出)
第十条 関係県は、その協議により、中部圏開発整備地方協議会の調査審議を経て基本計画の案を作成し、これを中部圏開発整備長官に提出しなければならない。
(中部圏開発整備計画の作成及び決定)
第十一条 基本計画は、前条の規定により提出された案に基づいて作成するものとする。
2 中部圏開発整備長官は、中部圏開発整備計画を作成するについて必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係のある事業を営む者(以下「関係事業者」という。)に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
3 中部圏開発整備計画は、内閣総理大臣が、審議会(事業計画については、審議会及び関係県)の意見をきくとともに、関係行政機関の長に協議して、決定するものとする。
4 内閣総理大臣は、基本計画の決定をするに当たつて、基本計画が前条の規定により提出された案と著しく異なるものである場合その他特別の必要があると認める場合には、関係県の意見をきくものとする。
5 内閣総理大臣は、中部圏開発整備計画を決定したときは、これを関係行政機関の長及び関係地方公共団体に送付するとともに、総理府令の定めるところにより公表しなければならない。
6 前項の規定により公表された事項に関し利害関係を有する者は、公表の日から三十日以内に、総理府令の定めるところにより内閣総理大臣に意見を申し出ることができる。
7 前項の規定による申出があつたときは、内閣総理大臣は、その申出を考慮して必要な措置を講じなければならない。
(中部圏開発整備計画の変更)
第十二条 中部圏開発整備計画は、情勢の推移により適当でなくなつたとき、その他これを変更することが適当であると認められたときは、変更することができる。
2 関係県は、前項に規定する事由に該当すると認めるときは、その協議により、中部圏開発整備長官に対し、中部圏開発整備計画の変更の申出をすることができる。
3 前条第二項、第三項及び第五項から第七項までの規定は、第一項の中部圏開発整備計画の変更について準用する。この場合において、同条第三項中「審議会(事業計画については、審議会及び関係県)」とあるのは、「審議会及び関係県」と読み替えるものとする。
第六章 中部圏開発整備計画に基づく事業の実施
(都市整備区域の指定)
第十三条 内閣総理大臣は、中部圏の地域内において、産業の開発の程度が高く、さらに経済の発展が予想される地域で当該地域の発展の進度に応じ都市の機能が十分に発揮されるよう計画的に基盤整備を行なう必要がある区域を都市整備区域として指定することができる。
2 内閣総理大臣は、都市整備区域を指定しようとするときは、関係地方公共団体及び審議会の意見をきくとともに、関係行政機関の長に協議しなければならない。
3 都市整備区域の指定は、内閣総理大臣が総理府令の定めるところにより告示することによつて、その効力を生ずる。
(都市開発区域の指定)
第十四条 内閣総理大臣は、中部圏の均衡ある発展を図るため、都市整備区域以外の中部圏の地域のうち、工業等の産業都市その他当該地域の発展の中心的な都市として開発整備することを必要とする区域を都市開発区域として指定することができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の都市開発区域の指定について準用する。
(都市整備区域等の整備等に関する法律)
第十五条 前二条に定めるもののほか、都市整備区域内及び都市開発区域内における宅地の造成その他都市整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関し必要な事項は、別に法律で定める。
(保全区域)
第十六条 内閣総理大臣は、中部圏の地域内において観光資源を保全し、若しくは開発し、緑地を保全し、又は文化財を保存する必要があると認める区域を保全区域として指定することができる。
2 第十三条第二項及び第三項の規定は、前項の保全区域の指定について準用する。
3 保全区域の整備に関し特別の措置を必要とするときは、別に法律で定めるものとする。
(事業の実施)
第十七条 事業計画に基づく事業は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体又は関係事業者が実施するものとする。
(協力及び勧告)
第十八条 関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、基本計画及び事業計画の実施に関し、できる限り協力しなければならない。
2 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体又は関係事業者に対し、基本計画又は事業計画の実施に関し勧告し、及びその勧告によつて採られた措置その他基本計画又は事業計画の実施に関する状況について報告を求めることができる。
(基本計画に関する施策の立案及び勧告)
第十九条 内閣総理大臣は、中部圏の建設とその均衡ある発展を図るため特に必要があると認めるときは、審議会の意見をきいて基本計画に関する総合的な施策を立案し、これに基づいて関係行政機関の長及び関係地方公共団体に対し、勧告し、及びその勧告によつて採られた措置について報告を求めることができる。
(国の普通財産の譲渡)
第二十条 国は、事業計画に基づく事業の用に供するため必要があると認めるときは、その事業の執行に要する費用を負担する地方公共団体に対し、普通財産を譲渡することができる。
(中部圏開発整備計画の実施に要する経費)
第二十一条 政府は、中部圏開発整備計画を実施するため必要な資金の確保を図り、かつ、国の財政の許す範囲内において、その実施を促進することに努めなければならない。
(地方債についての配慮)
第二十二条 地方公共団体が中部圏開発整備計画を達成するために行なう事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(中部圏開発整備計画と北陸地方開発促進計画との調整)
第二十三条 中部圏開発整備計画と北陸地方開発促進計画との調整は、内閣総理大臣が審議会と北陸地方開発審議会の意見をきいて行なうものとする。
2 前項の場合においては、北陸地方開発促進計画について適切な考慮を払いつつ調整を図るものとする。
(中部圏開発整備計画と近畿圏整備計画との調整)
第二十四条 中部圏開発整備計画と近畿圏整備計画との調整は、内閣総理大臣が審議会と近畿圏整備審議会の意見をきいて行なうものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(総理府設置法の一部改正)
2 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第十六条・第十六条の二」を「第十六条―第十六条の三」に改める。
第十五条第一項の表中近畿圏整備審議会の項の次に次のように加える。
中部圏開発整備審議会
中部圏開発整備法(昭和四十一年法律第百二号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行なうこと。
第二章第三節中第十六条の二の次に次の一条を加える。
(中部圏開発整備本部)
第十六条の三 総理府の機関として、中部圏開発整備本部を置く。
2 中部圏開発整備本部は、中部圏の開発及び整備に関する総合的な計画を策定し、その実施を推進するための機関とする。
3 中部圏開発整備本部の組織及び所掌事務については、中部圏開発整備法の定めるところによる。
第二十三条中「並びに近畿圏整備長官」を「、近畿圏整備長官並びに中部圏開発整備長官」に改める。
附則に次の一項を加える。
6 当分の間、第二十三条に規定する定員は、同条の規定による定数に二十人を加えたものとする。
(国土総合開発法の一部改正)
3 国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)の一部を次のように改正する。
第十四条第二項中「又は近畿圏整備計画」を「、近畿圏整備計画又は中部圏開発整備計画」に改める。
(水資源開発促進法の一部改正)
4 水資源開発促進法(昭和三十六年法律第二百十七号)の一部を次のように改正する。
第十一条に次の一項を加える。
4 中部圏開発整備計画と基本計画との調整は、内閣総理大臣が中部圏開発整備審議会と審議会の意見をきいて行なうものとする。
内閣総理大臣 佐藤栄作
大蔵大臣 福田赳夫
文部大臣 中村梅吉
厚生大臣 鈴木善幸
農林大臣 坂田英一
通商産業大臣 三木武夫
運輸大臣 中村寅太
郵政大臣 郡祐一
労働大臣 小平久雄
建設大臣 瀬戸山三男
自治大臣 永山忠則