飼料需給安定法
法令番号: 法律第356号
公布年月日: 昭和27年12月29日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

食糧増産計画の一環として畜産振興十箇年計画が立てられ、家畜増殖による農業経営への畜力導入や自給肥料増産、国民食糧の蛋白給源確保が図られているが、特に家畜増殖に不可欠な飼料対策が極めて不十分である。現状では畜産振興計画の目標達成が危ぶまれる状況にある。飼料対策の根幹は供給確保と価格安定にあり、飼料自給度向上や輸入増大が必要だが、現実にはふすま等の価格が極めて不安定で農家は飼料確保に困惑している。この状況を打開するため、国家による特定飼料の需給調整を行い、飼料価格の安定を図る必要がある。

参照した発言:
第15回国会 衆議院 農林委員会 第12号

審議経過

第15回国会

参議院
(昭和27年12月10日)
衆議院
(昭和27年12月19日)
(昭和27年12月22日)
参議院
(昭和27年12月23日)
衆議院
(昭和27年12月24日)
(昭和27年12月24日)
参議院
(昭和27年12月24日)
(昭和27年12月25日)
(昭和27年12月26日)
(昭和28年3月13日)
衆議院
(昭和28年3月14日)
飼料需給安定法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年十二月二十九日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第三百五十六号
飼料需給安定法
(目的)
第一条 この法律は、政府が輸入飼料の買入、保管及び売渡を行うことにより、飼料の需給及び価格の安定を図り、もつて畜産の振興に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「輸入飼料」とは、輸入に係る麦類、ふすま、とうもろこしその他農林大臣が指定するものであつて、飼料の用に供するものと農林大臣が認めたものをいう。
(飼料需給計画)
第三条 農林大臣は、毎年、輸入飼料の買入、保管及び売渡に関する計画(以下「飼料需給計画」という。)を定める。
(飼料の買入)
第四条 政府は、飼料需給計画に基き、食糧管理法(昭和十七年法律第四十号)第十一条第二項の規定により大麦及び小麦を買い入れるの外輸入飼料(大麦及び小麦を除く。以下本条において同じ。)を買い入れることができる。
2 前項の規定による輸入飼料の買入は、入札の方法による一般競争契約によらなければならない。但し、政令で定める特別の事由があるときは、指名競争契約又は随意契約によることができる。
(飼料の売渡)
第五条 政府は、飼料需給計画に基き、その買い入れた輸入飼料を売り渡すものとする。
2 前項の規定による輸入飼料の売渡は、入札の方法による一般競争契約によらなければならない。但し、政令で定める特別の事由があるときは、指名競争契約又は随意契約によることができる。
3 第一項の規定により輸入飼料の売渡をする場合の予定価格は、当該飼料の原価にかかわらず、国内の飼料の市価その他の経済事情を参しやくし、畜産業の経営を安定せしめることを旨として定める。
4 第一項の規定による輸入飼料たる大麦及び小麦の売渡については、食糧管理法第四条ノ三第一項の規定を適用しない。
(売渡の附帯条件)
第六条 政府は、前条の規定により輸入飼料を売り渡す場合には、その相手方に対し、売渡に係る輸入飼料(これを原料又は材料として製造した飼料を含む。)の譲渡又は使用に関し、地域又は時期の指定、価格の制限その他必要な条件を附することができる。
2 政府は、前項の規定により条件を附されて輸入飼料の売渡を受けた者が、その条件に違反したときは、当該違反に係る輸入飼料の売渡価格に農林大臣が定める割合を乗じて算出される金額に相当する額の違約金を徴収することができる。
3 農林大臣は、第一項の規定により条件を附されて輸入飼料の売渡を受けた者が、その条件に違反したときは、その後二年間、第四条第二項又は第五条第二項の規定による入札の方法による競争に加わらしめないことができる。
(飼料の需給がひつ迫した場合の特例)
第七条 政府は、国内の飼料の需給がひつ迫しその価格が著しく騰貴した場合において、これを安定させるため特に必要があると認めるときは、飼料需給安定審議会にはかり、その所有に係る小麦を売り渡す場合において、その相手方に対し、その小麦から生産されるふすまの譲渡又は使用に関し、地域又は時期の指定、価格の制限その他必要な条件を附することができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の規定により条件を附されて小麦の売渡を受けた者につき準用する。
(売渡の価格等の公表)
第八条 政府は、第五条第一項の規定により輸入飼料を売り渡したとき又は前条第一項の規定により条件を附して小麦を売り渡したときは、省令の定めるところにより、遅滞なく、売り渡した輸入飼料の価格、品目、数量、条件その他必要な事項又は前条第一項の規定により附した条件を、買受人別に、公表しなければならない。
(報告の徴取等)
第九条 農林大臣は、この法律の目的を達成するため特に必要があると認めるときは、省令の定めるところにより、輸入飼料の輸入業者、倉庫業者、販売業者若しくは加工業者又は第七条第一項の規定により条件を附されて小麦の売渡を受けた者から、輸入飼料又は条件を附されて売渡を受けた小麦から生産されたふすまの在庫、販売の数量、価格その他必要な事項に関し報告を徴し、又は当該職員に事務所、事業場、倉庫その他必要な場所に立ち入つて調査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入調査を行う場合においては、省令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、何時でもこれを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(飼料需給安定審議会)
第十条 この法律の適正な運用を図るため、農林省に飼料需給安定審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、農林大臣の諮問に応じ、飼料の需給及び価格の安定に関する重要事項を審議する。
3 審議会は、飼料の需給及び価格の安定のために必要な事項に関し、その議決により、農林大臣に随時意見を述べることができる。
4 審議会は、農林大臣及び委員三十人以内をもつて組織する。
5 委員は、左に掲げる者とする。
一 衆議院議員のうちから衆議院が指名した者
五人
二 参議院議員のうちから参議院が指名した者
三人
三 関係行政機関の職員のうちから農林大臣が任命した者
五人以内
四 飼料に関し学識経験のある者、農業者の団体を代表する者、飼料の消費者を代表する者その他飼料の関係者のうちから農林大臣が任命した者
十七人以内
6 審議会に会長を置き、農林大臣をもつて充てる。
7 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
8 会長に事故があるときは、会長があらかじめ指定した者がその職務を代行する。
9 委員は、非常勤とする。
10 前各項に規定するものを除く外、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(委任事項)
第十一条 この法律において政令に委任するものの外、この法律実施のための手続その他その執行について必要な事項は、農林省令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して百二十日をこえない期間内において、政令で定める。
(食糧管理特別会計法の改正)
2 食糧管理特別会計法(大正十年法律第三十七号)の一部を次のように改正する。
附則に次の一項を加える。
飼料需給安定法(昭和二十七年法律第三百五十六号)の規定による飼料の買入、売渡、保管又は検査に関する一切の歳入歳出は、当分の間本会計の所属とする。この場合において、第二条、第三条、第六条第一項及び第六条ノ五中「食糧」とあるのは「食糧及飼料」と読み替えるものとする。
(農林省設置法の改正)
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条第三十八号の次に次の一号を加える。
三十八の二 飼料需給安定法(昭和二十七年法律第三百五十六号)に基き飼料需給計画を定めること。
第四条第四十七号の次に次の一号を加える。
四十七の二 輸入飼料の買入、保管及び売渡を行うこと。
第三十四条第一項の表中
中央作況決定審議会
農作物の作況決定に関する重要事項を調査審議すること。
中央作況決定審議会
農作物の作況決定に関する重要事項を調査審議すること。
飼料需給安定審議会
飼料需給安定法による飼料の需給及び価格の安定に関する重要事項を審議すること。
に改める。
大蔵大臣 向井忠晴
農林大臣 広川弘禅
内閣総理大臣 吉田茂