通運事業法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年十二月七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百四十一号
通運事業法
目次
第一章
総則(第一條―第三條)
第二章
通運事業(第四條―第二十七條)
第三章
通運計算事業(第二十八條―第三十二條)
第四章
雑則(第三十三條―第三十七條)
第五章
罰則(第三十八條―第四十一條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、通運に関する秩序の確立、通運事業における公正な競争の確保及び通運事業の健全な発達並びに鉄道による物品運送の効率の向上を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律で、「通運」とは、他人の需用に応じてする左に掲げる行為をいう。
一 自己の名をもつてする鉄道(軌道及び日本国有鉄道の経営する航路を含む。以下同じ。)による物品運送の取次又は運送物品の鉄道からの受取
二 鉄道により運送される物品の他人の名をもつてする鉄道への託送又は鉄道からの受取
三 鉄道により運送される物品の集貨又は配達(海上におけるものを除く。)
四 鉄道により運送される物品の鉄道の車両(日本国有鉄道の経営する航路の船舶を含む。)への積込又は取卸
五 鉄道を利用してする物品の運送
2 この法律で、「通運事業」とは、営利を目的とするとしないとを問わず、通運を行う事業(国の行う郵便の事業を除く。)をいう。
第三條 この法律で、「通運計算」とは、通運事業者の需用に応じて、通運から生ずる通運事業者間の債権債務の決済又は債権の取立をすることをいう。
2 この法律で、「通運計算事業」とは、営利を目的とするとしないとを問わず、通運計算を行う事業をいう。
第二章 通運事業
(免許)
第四條 通運事業を経営しようとする者は、運輸大臣の免許を受けなければならない。
2 通運事業の免許は、取扱駅及び第二條第一項各号の種別について行う。
3 通運事業の免許は、荷主、取扱物品の種類又は作業場所を指定し、その他業務の範囲を限定して行うことができる。
(免許申請)
第五條 通運事業の免許を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を運輸大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 事業の経営上使用する記号
三 取扱駅
四 第二條第一項各号の種別
2 業務の範囲を限定する免許を受けようとする者は、申請書に前項に掲げる事項の外、荷主、取扱物品の種類又は作業場所その他業務の範囲をあわせて記載しなければならない。
3 申請書には、事業の施設、事業收支見積その他省令で定める事項を記載した事業計画を添附しなければならない。
4 運輸大臣は、通運事業の免許を申請した者に対し、前各項に規定するものの外、商業登記簿の謄本その他必要な書類の提出を求めることができる。
(免許基準)
第六條 運輸大臣は、前條に規定する申請書を受理したときは、左の基準によつて、これを審査しなければならない。
一 当該事業の開始が一般の需要に適合するものであること。
二 当該事業の開始が公衆の利便を増進するものであること。
三 当該申請に係る事業を適確に遂行するに足る能力を有するものであること。
四 当該事業の開始が鉄道による物品運送の効率の向上に資するものであること。
3 運輸大臣は、前項の規定により審査した結果、その申請が、同項の基準に適合していると認めたときは、左の場合を除いて、通運事業の免許をしなければならない。
一 免許を受けようとする者が一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者であるとき。
二 免許を受けようとする者が免許の取消を受け、その取消の日から二年を経過しない者であるとき。
三 免許を受けようとする者が法人である場合において、その法人の役員が前二号の一に該当する者であるとき。
(事業の讓渡及び讓受の認可等)
第七條 通運事業の讓渡及び讓受は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 通運事業を行う法人の合併は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。但し、通運事業を経営する法人と通運事業を経営しない法人が合併する場合において、通運事業を経営する法人が存続するときは、この限りでない。
3 通運事業を経営する法人の合併があつたときは、合併後存続する法人又は合併により設立された法人は、免許に基く権利義務を承継する。
4 前條の規定は、第一項又は第二項の認可について準用する。
(相続)
第八條 通運事業の免許を受けた者が死亡した場合において、相続人が被相続人の経営していた通運事業を引き続き経営しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
2 相続人は、被相続人の死亡後六十日以内に前項の認可の申請をした場合においては、その認可があつた旨又はその認可をしない旨の通知を受けるまでは、第四條第一項の規定にかかわらず通運事業を経営することができる。
3 第六條の規定は、第一項の認可について準用する。
4 第一項の認可を受けた者及び第二項の規定により通運事業を経営する者は、通運事業の免許を受けた者とみなす。
(名義の利用及び事業の貸借等)
第九條 通運事業の免許を受けた者(以下「通運事業者」という。)は、その名義を他人に通運事業のため利用させてはならない。
2 通運事業者は、事業の貸借その他如何なる方法をもつてするかを問わず、通運事業を他人に経営させてはならない。
(事業の管理)
第十條 通運事業者の通運事業の管理の委託及び受託については、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の許可の申請を受理した場合において、当該申請が左の基準に適合していると認めるときは、これを許可しなければならない。
一 当該事業を継続して運営するために必要であること。
二 受託者が当該事業を管理するのに適している者であること。
(事業の休止及び廃止)
第十一條 通運事業者は、通運事業の全部又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の許可の申請があつたときは、その休止又は廃止によつて公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあると認める場合を除く外、これを許可しなければならない。
(事業計画の変更)
第十二條 通運事業者は、事業計画を変更しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。但し、次條の規定による運輸大臣の認可を受けた場合その他省令で定める場合は、この限りでない。
2 運輸大臣は、前項の認可の申請を受理した場合において、当該申請が左の基準に適合していると認めるときは、これを認可しなければならない。
一 事業計画の変更が公衆の利便を害するおそれがないものであること。
二 事業計画の変更によつて通運が一般の需要と著しく不均衡となるおそれがないものであること。
三 事業計画の変更が鉄道による物品運送の効率を著しく低下させるおそれがないものであること。
(自動車の新規使用)
第十三條 通運事業のために自動車を使用していない通運事業者が、通運事業のために新たに自動車を使用しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の認可の申請を受理した場合において、当該申請が左の基準に適合していると認めるときは、これを認可しなければならない。
一 使用しようとする自動車の供給輸送力が、当該事業に対する物品の集貨配達の需要と均衡のとれたものであること。
二 自動車を使用することが当該事業の能率的な運営を図るため必要であること。
(事業の停止及び免許の取消)
第十四條 運輸大臣は、通運事業者が左の各号の一に該当するときは、期間を定めて事業の停止を命じ、又は免許を取り消すことができる。
一 この法律若しくはこの法律に基く命令若しくはこれらに基く処分、第四條第三項の規定による業務の範囲の限定又は免許、許可若しくは認可に附した條件に違反したとき。
二 正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しないとき。
(貨物自動車運送事業者の特則)
第十五條 道路運送法(昭和二十二年法律第百九十一号)第十條に規定する貨物自動車運送事業の免許を有する者は、運輸大臣が取扱駅を指定したときは、第四條第一項、第九條、第十條、第十四條、第十六條、第十七條、第二十條から第二十二條まで、第二十六條及び第二十七條の規定の適用については、第二條第一項第三号の行為を行う事業について通運事業の免許を受けた者とみなす。
(免許の失効)
第十六條 左の場合には、通運事業の免許は、当該範囲について、その効力を失う。
一 取扱駅が物品運送の営業を廃止したとき。
二 取扱物品の種類を限定した通運事業の免許を受けた場合において、取扱駅がその物品の運送の営業を廃止したとき。
三 事業の廃止の許可を受けたとき。
(通運引受義務)
第十七條 通運事業者は、左の場合を除いては、通運の引受を拒絶してはならない。
一 当該通運の申込が第二十一條の規定により認可を受けた通運約款によらないものであるとき。
二 委託者が第十九條第一項の規定による明告をせず、又は同條第二項の規定による点検の同意を與えないとき。
三 当該通運に関し委託者から特別の負担を求められたとき。
四 当該通運が法令の規定又は公の秩序若しくは善良な風俗に反するものであるとき。
五 天災その他やむを得ない事由があるとき。
(通運順序)
第十八條 通運事業者は、通運の申込を受けた順序により、物品を鉄道に託送しなければならない。但し、鉄道の輸送上の事由その他正当な事由があるときは、この限りでない。
(物品の種類及び性質の確認)
第十九條 通運事業者は、通運の申込があつたときは、その物品の種類及び性質を明告することを委託者に求めることができる。
2 通運事業者は、前項の場合において、物品の種類及び性質につき委託者が告げたことに疑があるときは、委託者の同意を得て、その立会の上で、これを点検することができる。
3 通運事業者は、前項の規定により点検をした場合において、物品の種類及び性質が委託者の明告したところと異ならないときは、これがため生じた損害の賠償をしなければならない。
4 通運事業者が第二項の規定により点検をした場合において、物品の種類及び性質が委託者の明告したところと異なるときは、委託者は、点検に要した費用を負担しなければならない。
(運賃及び料金)
第二十條 通運事業者は、通運事業の運賃及び料金を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によつてこれをしなければならない。
一 能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。
二 特定の荷主に対し不当な差別的取扱をするものでないこと。
3 運賃及び料金は、集貨、配達、取扱、積込、取卸その他業務の種別について定額をもつて明確に定められなければならない。
(通運約款)
第二十一條 通運事業者は、通運約款を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によつてこれをしなければならない。
一 公衆の正当な利益を害するおそれがないものであること。
二 少くとも物品の受取及び引渡、運賃及び料金の收受並びに通運事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
(運賃、料金及び通運約款の掲示)
第二十二條 通運事業者は、運賃、料金及び通運約款を事務所その他の事業場において公衆の見易い箇所に掲示しなければならない。
(引渡不能の物品の寄託)
第二十三條 通運事業者は、その責に帰すべからざる事由により物品の引渡をすることができないときは、荷主の費用をもつて、これを倉庫営業者に寄託することができる。
2 通運事業者は、前項の規定により物品を寄託したときは、遅滞なくその旨を荷主に通知しなければならない。
3 通運事業者は、第一項の規定により物品を寄託した場合において倉庫証券を作らせたときは、その証券の交付をもつて物品の引渡に代えることができる。
4 通運事業者は、第一項の費用の弁済を受けるまで、倉庫証券を留置することができる。
(引渡不能の物品の競売)
第二十四條 通運事業者は、委託者及び物品の引渡を受くべき者が知れない場合において、省令で定める手続により公告をした後三箇月を経過してもなおその権利者を知ることができないときは、その物品を競売することができる。但し、損敗し易い物品は、公告をした後三箇月以内でも競売することができる。
2 通運事業者は、物品の引渡を受くべき者が知れない場合において、委託者に対し相当の期間を定めその物品の処分につき指図をすべきことを催告しても委託者がその指図をしないときは、その物品を競売することができる。但し、損敗し易い物品は催告しないでも競売することができる。
3 通運事業者は、物品の引渡を受くべき者が物品の受取を拒み、又はこれを受け取ることができない場合において、相当の期間を定めて物品の受取を催告し、その期間経過後更に委託者に対し相当の期間を定めてその物品の処分につき指図をすべきことを催告しても委託者がその指図をしないときは、その物品を競売することができる。但し、損敗し易い物品は、催告しないでも競売することができる。
4 通運事業者は、第二項の規定により競売をしたときは委託者に、前項の規定により競売をしたときは委託者及び物品の引渡を受くべき者に、遅滞なくその旨の通知を発しなければならない。
5 通運事業者は、第一項から第三項までの規定により競売をしたときは、その代価を供託しなければならない。但し、その全部又は一部を運賃、料金、立替金又は保管、公告、催告若しくは競売に要した費用に充当することができる。
(会計)
第二十五條 通運事業者は、省令で定める様式の帳簿書類によりその会計を処理しなければならない。
(事業改善の命令)
第二十六條 運輸大臣は、通運事業者の事業について公衆の利便を阻害している事実があると認めるときは、通運事業者に対し、左に掲げる事項を命ずることができる。
一 事業計画を変更すること。
二 運賃、料金又は通運約款を変更すること。
(附帶業務)
第二十七條 第二十條から第二十二條まで及び前條の規定は、通運事業者が通運事業に附帶して行う物品の荷造、保管及び仕分、代金の取立及び立替その他通常通運事業に附帶する業務について準用する。
第三章 通運計算事業
(認可)
第二十八條 通運計算事業を経営しようとする者は、運輸大臣の認可を受けなければならない。
2 第五條第一項第一号及び第二号、第三項並びに第四項の規定は、前項の認可を申請する場合に、第六條の規定は、運輸大臣が前項の認可をする場合に準用する。
(通運計算事業の運営)
第二十九條 第七條から第十二條まで、第十四條、第十六條第三号、第二十條、第二十五條及び第二十六條の規定は、通運計算事業に準用する。
(通運計算規程)
第三十條 通運計算事業の認可を受けた者(以下「通運計算事業者」という。)は、通運計算規程を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によつて、これをしなければならない。
一 公正且つ迅速な通運計算を確保し得るものであること。
二 通運事業者に不当な負担を課するものでないものであること。
三 少くとも通運計算に関する契約の締結及び解除、通運計算の方式、通運計算の停止、計算料の收受並びに通運計算事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
(通運計算に関する契約の締結)
第三十一條 通運計算事業者は、通運事業者が通運計算に関する契約の申込をした場合には、その申込が前條の規定により認可を受けた通運計算規程によらない場合を除き、これを承諾しなければならない。
(通運計算に関する契約の強制の禁止等)
第三十二條 通運計算事業者は、通運事業者に対し、如何なる方法によるかを問わず、通運計算に関する契約を締結することを強制してはならない。
2 通運計算事業者は、通運事業者が通運計算に関する契約の解除を申し出た場合には、通運計算規程による場合の外、これを拒絶してはならない。
第四章 雑則
(運輸審議会への諮問)
第三十三條 運輸大臣は、この法律の規定に基き、免許、許可、認可その他の処分をしようとするときは、運輸審議会にはかり、その決定を尊重してこれをしなければならない。但し、運輸審議会が軽微な事項と認めたものについては、この限りでない。
(免許等の條件)
第三十四條 免許、許可又は認可には條件を附し、及びこれを変更することができる。
2 前項の條件は、公衆の利益を増進し、又は免許、許可若しくは認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最少限度のものに限り、且つ、当該通運事業者又は通運計算事業者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(訴願)
第三十五條 この法律又はこの法律に基く命令の規定により行政官庁のした処分に不服のある者は、訴願をすることができる。
(職権の委任)
第三十六條 この法律に規定する運輸大臣の職権の一部であつて政令で定めるものは、陸運局長が行う。
(報告及び検査)
第三十七條 運輸大臣は、第一條の目的を達成するために必要があると認めるときは、通運事業者又は通運計算事業者に、事業に関し報告をさせることができる。
2 運輸大臣は、第一條の目的を達成するため必要があると認めるときは、通運事業者又は通運計算事業者の事務所その他の事業場にその職員を派遣して、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 前項の場合には、当該職員は、その身分を示す証票を携帶し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
4 第二項の検査は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第五章 罰則
第三十八條 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第四條第一項の規定に違反して通運事業を経営した者
二 第八條の規定に違反して通運事業を経営した者
三 第九條の規定に違反した者
第三十九條 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第四條第三項の規定による業務の範囲の限定に違反した者
二 第十四條の規定による通運事業の停止の命令に違反した者
三 第二十條の規定による認可を受けないで運賃又は料金を收受した者
四 第二十八條第一項の規定に違反して通運計算事業を経営した者
五 第二十九條において準用する第八條の規定に違反して通運計算事業を経営した者
六 第二十九條において準用する第九條の規定に違反した者
第四十條 左の各号の一に該当する者は、これを三万円以下の罰金に処する。
一 第十條第一項、第十一條第一項若しくは第十二條第一項(第二十九條においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第二十一條第一項(第二十七條において準用する場合を含む。)、第二十七條及び第二十九條において準用する第二十條又は第三十條第一項の規定により許可又は認可を受けてしなければならない事項を許可又は認可を受けないでした者
二 第二十二條(第二十七條において準用する場合を含む。)の規定による掲示をせず、又は虚僞の掲示をした者
三 第二十九條において準用する第十四條の規定による通運計算事業の停止の命令又は第二十六條(第二十七條及び第二十九條において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
四 第十七條、第十八條、第三十一條又は第三十二條第二項の規定に違反した者
五 第三十七條第一項の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
六 第三十七條第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第四十一條 法人の代表者又は人若しくは法人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、第三十八條から前條までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、昭和二十五年二月一日から施行する。
2 小運送業法(昭和十二年法律第四十五号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
3 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、旧法は、この法律施行後も、なおその効力を有する。
4 旧法又は旧法に基く命令によりした処分、手続その他の行為は、この法律中これに相当する規定がある場合には、この法律によりしたものとみなす。
5 この法律施行の際現に通運計算事業を経営している者は、この法律施行の日から三箇月以内に限り、第二十八條の規定による認可を受けないでも通運計算事業を経営することができる。この期間内に認可の申請をした場合においてその申請に対する認可又は認可の拒否のある日まで同様とする。
6 この法律施行前にした道路運送法第十一條の規定による小運送業のためにする貨物自動車運送事業の免許は、この法律第十三條の規定による認可とみなす。
7 道路運送法の一部を次のように改正する。
第十一條の次に次の一條を加える。
(通運事業者の特則)
第十一條の二 自動車を使用して通運事業を経営することの免許を受けた者又は通運事業法(昭和二十四年法律第二百四十一号)第十三條の規定により新たに自動車を使用することの認可を受けた者は、主務大臣が第十條に掲げる種類を指定したときは、第十一條第一項、第二十三條、第二十四條第一項第二号、第二十七條、第三十條、第三十一條第四号及び第三十二條の規定の適用については、その種類について通運事業のためにする貨物自動車運送事業の免許を受けた者とみなす。
第二十三條、第二十四條第一項第二号及び第二十五條中「小運送業者」を「通運事業者」に改める。
8 事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。
第七條第二号中「小運送業者」を「通運事業者」に改める。
9 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四條第四十二号を次のように改める。
四十二 通運事業を免許し、及び通運事業の業務(附帶業務を含む。)に関し、許可し、又は認可すること。
第四條第四十二号の次に次の一号を加える。
四十二の二 通運計算事業を認可し、及び通運計算事業の業務に関し、許可し、又は認可すること。
第四條第四十四号中「及び小運送業」を「、通運事業及び通運計算事業」に改める。
第六條第一項第二号中「及び小運送業」を「、通運事業及び通運計算事業」に、同項第八号中「小運送業」を「通運事業」に改め、同号の次に次の一号を加える。
八の二 通運計算事業の認可若しくはその取消又は事業の停止
第六條第一項第十一号の二の次に次の一号を加える。
十一の三 第二号、第八号及び第八号の二に規定するものを除く外、通運事業法(昭和二十四年法律第二百四十一号)の規定に基く許可、認可その他の処分
第二十八條第一項第三号を次のように改める。
三 通運事業(附帶業務を含む。以下同じ。)及び通運計算事業に関する免許、許可又は認可に関すること。
第二十八條第一項第八号中「及び小運送業」を「、通運事業及び通運計算事業」に改める。
第二十八條第二項第六号中「小運送業」を「通運事業」に改める。
第五十一條第一項第七号を次のように改める。
七 通運事業及び通運計算事業に関する免許、許可又は認可に関すること。
第五十一條第一項第二十一号中「小運送業」を「通運事業、通運計算事業」に改める。
第五十二條第二項中「小運送業」を「通運事業」に改める。
内閣総理大臣 吉田茂
運輸大臣 大屋晋三
通運事業法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年十二月七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百四十一号
通運事業法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
通運事業(第四条―第二十七条)
第三章
通運計算事業(第二十八条―第三十二条)
第四章
雑則(第三十三条―第三十七条)
第五章
罰則(第三十八条―第四十一条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、通運に関する秩序の確立、通運事業における公正な競争の確保及び通運事業の健全な発達並びに鉄道による物品運送の効率の向上を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で、「通運」とは、他人の需用に応じてする左に掲げる行為をいう。
一 自己の名をもつてする鉄道(軌道及び日本国有鉄道の経営する航路を含む。以下同じ。)による物品運送の取次又は運送物品の鉄道からの受取
二 鉄道により運送される物品の他人の名をもつてする鉄道への託送又は鉄道からの受取
三 鉄道により運送される物品の集貨又は配達(海上におけるものを除く。)
四 鉄道により運送される物品の鉄道の車両(日本国有鉄道の経営する航路の船舶を含む。)への積込又は取卸
五 鉄道を利用してする物品の運送
2 この法律で、「通運事業」とは、営利を目的とするとしないとを問わず、通運を行う事業(国の行う郵便の事業を除く。)をいう。
第三条 この法律で、「通運計算」とは、通運事業者の需用に応じて、通運から生ずる通運事業者間の債権債務の決済又は債権の取立をすることをいう。
2 この法律で、「通運計算事業」とは、営利を目的とするとしないとを問わず、通運計算を行う事業をいう。
第二章 通運事業
(免許)
第四条 通運事業を経営しようとする者は、運輸大臣の免許を受けなければならない。
2 通運事業の免許は、取扱駅及び第二条第一項各号の種別について行う。
3 通運事業の免許は、荷主、取扱物品の種類又は作業場所を指定し、その他業務の範囲を限定して行うことができる。
(免許申請)
第五条 通運事業の免許を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を運輸大臣に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所
二 事業の経営上使用する記号
三 取扱駅
四 第二条第一項各号の種別
2 業務の範囲を限定する免許を受けようとする者は、申請書に前項に掲げる事項の外、荷主、取扱物品の種類又は作業場所その他業務の範囲をあわせて記載しなければならない。
3 申請書には、事業の施設、事業収支見積その他省令で定める事項を記載した事業計画を添附しなければならない。
4 運輸大臣は、通運事業の免許を申請した者に対し、前各項に規定するものの外、商業登記簿の謄本その他必要な書類の提出を求めることができる。
(免許基準)
第六条 運輸大臣は、前条に規定する申請書を受理したときは、左の基準によつて、これを審査しなければならない。
一 当該事業の開始が一般の需要に適合するものであること。
二 当該事業の開始が公衆の利便を増進するものであること。
三 当該申請に係る事業を適確に遂行するに足る能力を有するものであること。
四 当該事業の開始が鉄道による物品運送の効率の向上に資するものであること。
3 運輸大臣は、前項の規定により審査した結果、その申請が、同項の基準に適合していると認めたときは、左の場合を除いて、通運事業の免許をしなければならない。
一 免許を受けようとする者が一年以上の懲役又は禁この刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者であるとき。
二 免許を受けようとする者が免許の取消を受け、その取消の日から二年を経過しない者であるとき。
三 免許を受けようとする者が法人である場合において、その法人の役員が前二号の一に該当する者であるとき。
(事業の譲渡及び譲受の認可等)
第七条 通運事業の譲渡及び譲受は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
2 通運事業を行う法人の合併は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。但し、通運事業を経営する法人と通運事業を経営しない法人が合併する場合において、通運事業を経営する法人が存続するときは、この限りでない。
3 通運事業を経営する法人の合併があつたときは、合併後存続する法人又は合併により設立された法人は、免許に基く権利義務を承継する。
4 前条の規定は、第一項又は第二項の認可について準用する。
(相続)
第八条 通運事業の免許を受けた者が死亡した場合において、相続人が被相続人の経営していた通運事業を引き続き経営しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
2 相続人は、被相続人の死亡後六十日以内に前項の認可の申請をした場合においては、その認可があつた旨又はその認可をしない旨の通知を受けるまでは、第四条第一項の規定にかかわらず通運事業を経営することができる。
3 第六条の規定は、第一項の認可について準用する。
4 第一項の認可を受けた者及び第二項の規定により通運事業を経営する者は、通運事業の免許を受けた者とみなす。
(名義の利用及び事業の貸借等)
第九条 通運事業の免許を受けた者(以下「通運事業者」という。)は、その名義を他人に通運事業のため利用させてはならない。
2 通運事業者は、事業の貸借その他如何なる方法をもつてするかを問わず、通運事業を他人に経営させてはならない。
(事業の管理)
第十条 通運事業者の通運事業の管理の委託及び受託については、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の許可の申請を受理した場合において、当該申請が左の基準に適合していると認めるときは、これを許可しなければならない。
一 当該事業を継続して運営するために必要であること。
二 受託者が当該事業を管理するのに適している者であること。
(事業の休止及び廃止)
第十一条 通運事業者は、通運事業の全部又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の許可の申請があつたときは、その休止又は廃止によつて公衆の利便が著しく阻害されるおそれがあると認める場合を除く外、これを許可しなければならない。
(事業計画の変更)
第十二条 通運事業者は、事業計画を変更しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。但し、次条の規定による運輸大臣の認可を受けた場合その他省令で定める場合は、この限りでない。
2 運輸大臣は、前項の認可の申請を受理した場合において、当該申請が左の基準に適合していると認めるときは、これを認可しなければならない。
一 事業計画の変更が公衆の利便を害するおそれがないものであること。
二 事業計画の変更によつて通運が一般の需要と著しく不均衡となるおそれがないものであること。
三 事業計画の変更が鉄道による物品運送の効率を著しく低下させるおそれがないものであること。
(自動車の新規使用)
第十三条 通運事業のために自動車を使用していない通運事業者が、通運事業のために新たに自動車を使用しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
2 運輸大臣は、前項の認可の申請を受理した場合において、当該申請が左の基準に適合していると認めるときは、これを認可しなければならない。
一 使用しようとする自動車の供給輸送力が、当該事業に対する物品の集貨配達の需要と均衡のとれたものであること。
二 自動車を使用することが当該事業の能率的な運営を図るため必要であること。
(事業の停止及び免許の取消)
第十四条 運輸大臣は、通運事業者が左の各号の一に該当するときは、期間を定めて事業の停止を命じ、又は免許を取り消すことができる。
一 この法律若しくはこの法律に基く命令若しくはこれらに基く処分、第四条第三項の規定による業務の範囲の限定又は免許、許可若しくは認可に附した条件に違反したとき。
二 正当な理由がないのに許可又は認可を受けた事項を実施しないとき。
(貨物自動車運送事業者の特則)
第十五条 道路運送法(昭和二十二年法律第百九十一号)第十条に規定する貨物自動車運送事業の免許を有する者は、運輸大臣が取扱駅を指定したときは、第四条第一項、第九条、第十条、第十四条、第十六条、第十七条、第二十条から第二十二条まで、第二十六条及び第二十七条の規定の適用については、第二条第一項第三号の行為を行う事業について通運事業の免許を受けた者とみなす。
(免許の失効)
第十六条 左の場合には、通運事業の免許は、当該範囲について、その効力を失う。
一 取扱駅が物品運送の営業を廃止したとき。
二 取扱物品の種類を限定した通運事業の免許を受けた場合において、取扱駅がその物品の運送の営業を廃止したとき。
三 事業の廃止の許可を受けたとき。
(通運引受義務)
第十七条 通運事業者は、左の場合を除いては、通運の引受を拒絶してはならない。
一 当該通運の申込が第二十一条の規定により認可を受けた通運約款によらないものであるとき。
二 委託者が第十九条第一項の規定による明告をせず、又は同条第二項の規定による点検の同意を与えないとき。
三 当該通運に関し委託者から特別の負担を求められたとき。
四 当該通運が法令の規定又は公の秩序若しくは善良な風俗に反するものであるとき。
五 天災その他やむを得ない事由があるとき。
(通運順序)
第十八条 通運事業者は、通運の申込を受けた順序により、物品を鉄道に託送しなければならない。但し、鉄道の輸送上の事由その他正当な事由があるときは、この限りでない。
(物品の種類及び性質の確認)
第十九条 通運事業者は、通運の申込があつたときは、その物品の種類及び性質を明告することを委託者に求めることができる。
2 通運事業者は、前項の場合において、物品の種類及び性質につき委託者が告げたことに疑があるときは、委託者の同意を得て、その立会の上で、これを点検することができる。
3 通運事業者は、前項の規定により点検をした場合において、物品の種類及び性質が委託者の明告したところと異ならないときは、これがため生じた損害の賠償をしなければならない。
4 通運事業者が第二項の規定により点検をした場合において、物品の種類及び性質が委託者の明告したところと異なるときは、委託者は、点検に要した費用を負担しなければならない。
(運賃及び料金)
第二十条 通運事業者は、通運事業の運賃及び料金を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によつてこれをしなければならない。
一 能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものであること。
二 特定の荷主に対し不当な差別的取扱をするものでないこと。
3 運賃及び料金は、集貨、配達、取扱、積込、取卸その他業務の種別について定額をもつて明確に定められなければならない。
(通運約款)
第二十一条 通運事業者は、通運約款を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によつてこれをしなければならない。
一 公衆の正当な利益を害するおそれがないものであること。
二 少くとも物品の受取及び引渡、運賃及び料金の収受並びに通運事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
(運賃、料金及び通運約款の掲示)
第二十二条 通運事業者は、運賃、料金及び通運約款を事務所その他の事業場において公衆の見易い箇所に掲示しなければならない。
(引渡不能の物品の寄託)
第二十三条 通運事業者は、その責に帰すべからざる事由により物品の引渡をすることができないときは、荷主の費用をもつて、これを倉庫営業者に寄託することができる。
2 通運事業者は、前項の規定により物品を寄託したときは、遅滞なくその旨を荷主に通知しなければならない。
3 通運事業者は、第一項の規定により物品を寄託した場合において倉庫証券を作らせたときは、その証券の交付をもつて物品の引渡に代えることができる。
4 通運事業者は、第一項の費用の弁済を受けるまで、倉庫証券を留置することができる。
(引渡不能の物品の競売)
第二十四条 通運事業者は、委託者及び物品の引渡を受くべき者が知れない場合において、省令で定める手続により公告をした後三箇月を経過してもなおその権利者を知ることができないときは、その物品を競売することができる。但し、損敗し易い物品は、公告をした後三箇月以内でも競売することができる。
2 通運事業者は、物品の引渡を受くべき者が知れない場合において、委託者に対し相当の期間を定めその物品の処分につき指図をすべきことを催告しても委託者がその指図をしないときは、その物品を競売することができる。但し、損敗し易い物品は催告しないでも競売することができる。
3 通運事業者は、物品の引渡を受くべき者が物品の受取を拒み、又はこれを受け取ることができない場合において、相当の期間を定めて物品の受取を催告し、その期間経過後更に委託者に対し相当の期間を定めてその物品の処分につき指図をすべきことを催告しても委託者がその指図をしないときは、その物品を競売することができる。但し、損敗し易い物品は、催告しないでも競売することができる。
4 通運事業者は、第二項の規定により競売をしたときは委託者に、前項の規定により競売をしたときは委託者及び物品の引渡を受くべき者に、遅滞なくその旨の通知を発しなければならない。
5 通運事業者は、第一項から第三項までの規定により競売をしたときは、その代価を供託しなければならない。但し、その全部又は一部を運賃、料金、立替金又は保管、公告、催告若しくは競売に要した費用に充当することができる。
(会計)
第二十五条 通運事業者は、省令で定める様式の帳簿書類によりその会計を処理しなければならない。
(事業改善の命令)
第二十六条 運輸大臣は、通運事業者の事業について公衆の利便を阻害している事実があると認めるときは、通運事業者に対し、左に掲げる事項を命ずることができる。
一 事業計画を変更すること。
二 運賃、料金又は通運約款を変更すること。
(附帯業務)
第二十七条 第二十条から第二十二条まで及び前条の規定は、通運事業者が通運事業に附帯して行う物品の荷造、保管及び仕分、代金の取立及び立替その他通常通運事業に附帯する業務について準用する。
第三章 通運計算事業
(認可)
第二十八条 通運計算事業を経営しようとする者は、運輸大臣の認可を受けなければならない。
2 第五条第一項第一号及び第二号、第三項並びに第四項の規定は、前項の認可を申請する場合に、第六条の規定は、運輸大臣が前項の認可をする場合に準用する。
(通運計算事業の運営)
第二十九条 第七条から第十二条まで、第十四条、第十六条第三号、第二十条、第二十五条及び第二十六条の規定は、通運計算事業に準用する。
(通運計算規程)
第三十条 通運計算事業の認可を受けた者(以下「通運計算事業者」という。)は、通運計算規程を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の認可をしようとするときは、左の基準によつて、これをしなければならない。
一 公正且つ迅速な通運計算を確保し得るものであること。
二 通運事業者に不当な負担を課するものでないものであること。
三 少くとも通運計算に関する契約の締結及び解除、通運計算の方式、通運計算の停止、計算料の収受並びに通運計算事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
(通運計算に関する契約の締結)
第三十一条 通運計算事業者は、通運事業者が通運計算に関する契約の申込をした場合には、その申込が前条の規定により認可を受けた通運計算規程によらない場合を除き、これを承諾しなければならない。
(通運計算に関する契約の強制の禁止等)
第三十二条 通運計算事業者は、通運事業者に対し、如何なる方法によるかを問わず、通運計算に関する契約を締結することを強制してはならない。
2 通運計算事業者は、通運事業者が通運計算に関する契約の解除を申し出た場合には、通運計算規程による場合の外、これを拒絶してはならない。
第四章 雑則
(運輸審議会への諮問)
第三十三条 運輸大臣は、この法律の規定に基き、免許、許可、認可その他の処分をしようとするときは、運輸審議会にはかり、その決定を尊重してこれをしなければならない。但し、運輸審議会が軽微な事項と認めたものについては、この限りでない。
(免許等の条件)
第三十四条 免許、許可又は認可には条件を附し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、公衆の利益を増進し、又は免許、許可若しくは認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最少限度のものに限り、且つ、当該通運事業者又は通運計算事業者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(訴願)
第三十五条 この法律又はこの法律に基く命令の規定により行政官庁のした処分に不服のある者は、訴願をすることができる。
(職権の委任)
第三十六条 この法律に規定する運輸大臣の職権の一部であつて政令で定めるものは、陸運局長が行う。
(報告及び検査)
第三十七条 運輸大臣は、第一条の目的を達成するために必要があると認めるときは、通運事業者又は通運計算事業者に、事業に関し報告をさせることができる。
2 運輸大臣は、第一条の目的を達成するため必要があると認めるときは、通運事業者又は通運計算事業者の事務所その他の事業場にその職員を派遣して、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 前項の場合には、当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
4 第二項の検査は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第五章 罰則
第三十八条 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第四条第一項の規定に違反して通運事業を経営した者
二 第八条の規定に違反して通運事業を経営した者
三 第九条の規定に違反した者
第三十九条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第四条第三項の規定による業務の範囲の限定に違反した者
二 第十四条の規定による通運事業の停止の命令に違反した者
三 第二十条の規定による認可を受けないで運賃又は料金を収受した者
四 第二十八条第一項の規定に違反して通運計算事業を経営した者
五 第二十九条において準用する第八条の規定に違反して通運計算事業を経営した者
六 第二十九条において準用する第九条の規定に違反した者
第四十条 左の各号の一に該当する者は、これを三万円以下の罰金に処する。
一 第十条第一項、第十一条第一項若しくは第十二条第一項(第二十九条においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第二十一条第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)、第二十七条及び第二十九条において準用する第二十条又は第三十条第一項の規定により許可又は認可を受けてしなければならない事項を許可又は認可を受けないでした者
二 第二十二条(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による掲示をせず、又は虚偽の掲示をした者
三 第二十九条において準用する第十四条の規定による通運計算事業の停止の命令又は第二十六条(第二十七条及び第二十九条において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反した者
四 第十七条、第十八条、第三十一条又は第三十二条第二項の規定に違反した者
五 第三十七条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
六 第三十七条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第四十一条 法人の代表者又は人若しくは法人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、第三十八条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、昭和二十五年二月一日から施行する。
2 小運送業法(昭和十二年法律第四十五号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
3 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、旧法は、この法律施行後も、なおその効力を有する。
4 旧法又は旧法に基く命令によりした処分、手続その他の行為は、この法律中これに相当する規定がある場合には、この法律によりしたものとみなす。
5 この法律施行の際現に通運計算事業を経営している者は、この法律施行の日から三箇月以内に限り、第二十八条の規定による認可を受けないでも通運計算事業を経営することができる。この期間内に認可の申請をした場合においてその申請に対する認可又は認可の拒否のある日まで同様とする。
6 この法律施行前にした道路運送法第十一条の規定による小運送業のためにする貨物自動車運送事業の免許は、この法律第十三条の規定による認可とみなす。
7 道路運送法の一部を次のように改正する。
第十一条の次に次の一条を加える。
(通運事業者の特則)
第十一条の二 自動車を使用して通運事業を経営することの免許を受けた者又は通運事業法(昭和二十四年法律第二百四十一号)第十三条の規定により新たに自動車を使用することの認可を受けた者は、主務大臣が第十条に掲げる種類を指定したときは、第十一条第一項、第二十三条、第二十四条第一項第二号、第二十七条、第三十条、第三十一条第四号及び第三十二条の規定の適用については、その種類について通運事業のためにする貨物自動車運送事業の免許を受けた者とみなす。
第二十三条、第二十四条第一項第二号及び第二十五条中「小運送業者」を「通運事業者」に改める。
8 事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。
第七条第二号中「小運送業者」を「通運事業者」に改める。
9 運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第四十二号を次のように改める。
四十二 通運事業を免許し、及び通運事業の業務(附帯業務を含む。)に関し、許可し、又は認可すること。
第四条第四十二号の次に次の一号を加える。
四十二の二 通運計算事業を認可し、及び通運計算事業の業務に関し、許可し、又は認可すること。
第四条第四十四号中「及び小運送業」を「、通運事業及び通運計算事業」に改める。
第六条第一項第二号中「及び小運送業」を「、通運事業及び通運計算事業」に、同項第八号中「小運送業」を「通運事業」に改め、同号の次に次の一号を加える。
八の二 通運計算事業の認可若しくはその取消又は事業の停止
第六条第一項第十一号の二の次に次の一号を加える。
十一の三 第二号、第八号及び第八号の二に規定するものを除く外、通運事業法(昭和二十四年法律第二百四十一号)の規定に基く許可、認可その他の処分
第二十八条第一項第三号を次のように改める。
三 通運事業(附帯業務を含む。以下同じ。)及び通運計算事業に関する免許、許可又は認可に関すること。
第二十八条第一項第八号中「及び小運送業」を「、通運事業及び通運計算事業」に改める。
第二十八条第二項第六号中「小運送業」を「通運事業」に改める。
第五十一条第一項第七号を次のように改める。
七 通運事業及び通運計算事業に関する免許、許可又は認可に関すること。
第五十一条第一項第二十一号中「小運送業」を「通運事業、通運計算事業」に改める。
第五十二条第二項中「小運送業」を「通運事業」に改める。
内閣総理大臣 吉田茂
運輸大臣 大屋晋三