(水産業團体の解散)
第一條 水産業團体法(昭和十八年法律第四十七号)は、これを廃止する。
2 この法律施行の際現に存する漁業会、製造業会、都道府縣水産業会及び中央水産業会(以下「水産業團体」と総称する。)については、前項の法律は、この法律施行後でも、なおその効力を有する。
3 前項の水産業團体であつてこの法律施行の日から起算して八箇月を経過した時に現に存するもの(清算中のものを除く。)は、その時に解散する。但し、漁業会であつて、その時に漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権を有するものについては、この限りでない。
4 前項但書の漁業会は、前項の期間満了後は、その有する漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権の管理以外の事業を行うことができない。
5 第三項但書の漁業会は、その有する漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権を失つた時に解散する。
6 行政廳は、必要があると認めるときは、何時でも、第二項の水産業團体に対し解散を命ずることができる。この場合には、当該水産業團体は、当該命令に因つて解散する。
7 主務大臣は、第三項但書の漁業会に対し、その財産の処分、保全その他管理に関し必要な命令又は処分をすることができる。
(水産業團体の資産処分の制限)
第二條 水産業團体は、行政廳の認可を受けなければ、その資産を処分してはならない。但し、通常の業務として行う処分は、この限りでない。
2 前項の規定施行前に水産業團体のした資産の処分に関する契約で同項の規定施行の日までに当該契約に係る資産の引渡又は代金の受領のいづれかが完了しているもの又は水産業團体の資産処分の制限に関する件(昭和二十二年農林省令第七十三号)第一條の規定により行政廳の許可を受けたものについては、同項の規定を適用しない。
3 第一項の規定に違反する処分は、これを無効とする。
4 第一項の規定施行前に水産業團体のした資産の処分に関する契約に係る資産の引渡及び代金の受領につき、同項の規定施行の日から二箇月以内に同項の認可がなかつたときは、当該契約は、解除されたものとみなす。
5 水産業團体が第一項の規定に違反してその資産を処分したときは、その行爲をした水産業團体の代表者又は代理人、使用人その他の從業者は、これを三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
6 前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
(水産業協同組合と水産業團体との関係)
第三條 水産業協同組合は、水産業團体の会員となることができない。
(水産業團体の財産分配の原則)
第四條 水産業團体の財産の分配は、各会員にその持分に応じて平等にこれをしなければならない。
(漁業会の財産の分割)
第五條 漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権を有する漁業会(以下本條から第八條までにおいて「漁業会」という。)の会員たる者の全部又は一部を組合員とする漁業協同組合は、当該漁業会が有するこれらの権利を失う前、行政廳の認可を受けて、当該漁業会に対し、その財産のうちこれらの権利以外のものの分割を請求することができる。
2 前項の規定による認可の申請は、漁業協同組合と漁業会との協議により、当該漁業会の会員の持分(漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権に対する部分を除く。以下本條及び第六條において同じ。)の総額のうち当該漁業会の会員であつて漁業協同組合の組合員たるものの持分の総額の占める割合に応じて当該漁業協同組合に帰属すべき財産を定めてこれをしなければならない。
3 前項の協議が整わないとき又は協議をすることができないときは、漁業協同組合は行政廳に対し裁定を申請することができる。
4 前項の裁定があつたときは、第二項の協議が整つたものとみなす。
5 第一項の場合には、漁業会の財産は、第二項の規定による協議の定めるところにより当該漁業協同組合に帰属する。
第六條 前條第五項の規定による財産の帰属があつたときは、漁業協同組合の組合員であつて漁業会の会員たるものは、その帰属の時に当該漁業会の出資を有しない会員となる。
2 前項の規定により出資を有しなくなつた会員は、当該漁業会の財産(漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権に対する部分を除く。)に対して有した持分を失う。
3 前條第五項の規定による財産の帰属があつたときは、第一項に規定する組合員は、その帰属の時にその者が漁業会において有した持分の額の割合に応じ当該財産の價格を分割して得た額に相当する額の持分を取得したものとする。
4 前項の規定による取得のあつた持分は、定款の定めるところにより、その全部又は一部を漁業協同組合の出資に引き当てることができる。
第七條 漁業会の会員たるものの全部又は一部を組合員とする漁業協同組合は、当該漁業会がその有する漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権を失つた後、行政廳の認可を受けて、当該漁業会に対し、第五條第五項の規定による財産の帰属がないときはその総財産、同條同項の規定による財産の帰属があつたときはその時以後その有していた漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権に基いて当該漁業会の取得した財産の分割を請求することができる。
2 前項の請求については、第五條第二項から第五項までの規定を準用する。この場合において、第五條第二項中「持分(漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権に対する部分を除く。以下本條及び第六條において同じ。)」とあるのは「持分」と読み替えるものとする。
第八條 前條第二項において準用する第五條第五項の規定による財産の帰属があつたときは、漁業協同組合の組合員であつて漁業会の会員たるものは、その帰属の時に漁業会を脱退する。
2 前項の場合には、第六條第二項から第四項までの規定を準用する。この場合において、第六條第二項中「財産(漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権に対する部分を除く。)」とあるのは「財産」と、第六條第三項中「前條第五項」とあるのは「第八條第二項において準用する前條第五項」と読み替えるものとする。
第九條 漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権を有しない漁業会の会員たる者の全部又は一部を組合員とする漁業協同組合は、行政廳の認可を受けて、当該漁業会に対し、その財産の分割を請求することができる。
2 前項の場合には、第五條第二項から第五項まで、第六條第三項、第四項及び前條第一項の規定を準用する。この場合において、第五條第二項中「持分(漁業権若しくはこれを使用する権利又は入漁権に対する部分を除く。以下本條及び第六條において同じ。)」とあるのは「持分」と、第六條第三項中「前條第五項」とあるのは「第九條第二項において準用する前條第五項」と、前條第一項中「前條第二項」とあるのは「第九條第二項」と読み替えるものとする。
(漁業会の資産の讓渡又は債務の引渡)
第十條 漁業会の会員たる者の全部又は一部を組合員とする漁業協同組合は、行政廳の認可を受けて、当該漁業会に対し、その資産の讓渡又は債務の引受に関する協議を求めることができる。
2 前項の場合において協議が整わないときは、行政廳は、当事者又はその一方の申請に因り、当事者の意見を聽き、当該漁業会に対し、讓渡の條件を定めてその資産の讓渡を命ずることができる。
3 前二項の規定により漁業会の讓渡する資産の額の当該漁業会の資産の総額に対する割合は、当該漁業会の会員の持分の総額のうち、当該漁業会の会員で当該漁業協同組合の組合員たるものの持分の額の占める割合をこえてはならない。
4 第一項の規定による認可又は第二項の規定による命令の取消又は変更を求める訴は、当該認可又は命令を受けた日から一箇月を経過したときは、これを提起することができない。
5 第二項から前項までに規定するものの外、第一項の規定の施行に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
(都道府縣水産業会等の資産の讓渡又は債務の引渡)
第十一條 漁業協同組合連合会は都道府縣水産業会に対し、水産加工業協同組合又は水産加工業協同組合連合会は製造業会に対し、行政廳の認可を受けて、その資産の讓渡又は 債務の引受に関する協議を求めることができる。
2 前項の場合には、前條第二項、第四項及び第五項の規定を準用する。
(水産業團体の解散準備総会)
第十二條 この法律施行の際現に存する水産業團体(中央水産業会を除く。以下本條及び第十三條において同じ。)は、この法律施行後二箇月以内に総会を招集しなければならない。
2 前項の総会の招集は会日の少くとも十日前までに会議の目的たる事項、日時及び場所を公告してこれをしなければならない。
3 第一項の総会は、会員の五分の二以上が自ら出席しなければ、議事を開き、議決をすることができない。
4 行政廳は、第一項の水産業團体の理事又は清算人に対し、前項に規定する会員の出席を得るため必要な措置を採るべきことを命ずることができる
5 第一項の総会の招集があつた場合において、第三項に規定する会員の出席がないときは、水産業團体は、第一項の期間経過後でも、第三項に規定する会員の出席があるまで総会を招集しなければならない。この場合には、第二項から前項までの規定を準用する。
6 前項の規定は、第一條第三項、第五項及び第六項の規定の適用を妨げない。
第十三條 前條第一項の水産業團体の理事又は清算人は、同項又は同條第五項の総会の会日の一週間前までに事業報告書及び財産目録を監事に提出し、且つ、その総会に監事の意見書とともにこれらの書類を提出してその承認を求めなければならない。
2 前項の理事又は清算人は、同項の総会において、水産業協同組合法及びこの法律に関し詳細な報告をしなければならない。
3 第一項の総会においては、資産処理委員会の委員を選挙しなければならない。
4 前項の委員の選挙は、無記名投票によつてこれを行う。
5 第三項の委員の定数は、五人から九人までとし、その少くとも四分の三は漁業会及び都道府縣水産業会にあつては水産業協同組合法第十八條第一項に規定する漁民、製造業会にあつては同法第九十四條に規定する水産加工業者でなければならない。
6 第一項の水産業團体の理事又は清算人は、水産業團体の財産の処分については、第二條第一項但書の場合を除き、資産処理委員会の意見を聽き、これに從わなければならない。但し、資産処理委員会の意見が総会の議決に反する場合はこの限りでない。
7 資産処理委員会は、水産業團体の財産につき必要な調査をすることができる。
(財産の承継の場合の普通所得の計算)
第十四條 第五條第五項(第七條第二項及び第九條第二項において準用する場合を含む。)の規定により漁業会の財産のうち漁業協同組合に帰属した財産の價額は、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)による普通所得の計算上、当該漁業協同組合の益金及び当該漁業会の損金にこれを算入しない。
(財産承継の場合の有價証券移轉税)
第十五條 水産業協同組合が第五條、第七條又は第九條から第十一條までの規定により水産業團体から財産の分割若しくは資産の讓渡を受け、又は債務の引受をする場合においては、有價証券移轉税は、これを課さない。
(財産承継の場合の登録税)
第十六條 水産業協同組合が第五條、第七條又は第九條から第十一條までの規定により水産業團体から不動産又は船舶に関する権利を承継する場合においては、その取得につき登記を受けるときは、その登録税の額は、不動産又は船舶の價格の千分の四とする。但し、登録税法(明治二十九年法律第二十七号)により算出した登録税の額がこの法律により算出した額より少ないときは、その額による。
2 前項の不動産又は船舶の價格は、水産業團体の賣渡直前の帳簿價格による。
(財産承継の場合の地方税)
第十七條 第十五條に規定する財産の移轉に関しては、地方公共團体は、地方税を課することができない。
(名称の変更)
第十八條 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)施行の際現にその名称中に漁業協同組合、漁業生産組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合又は水産加工業協同組合連合会という文字を用いているものは、同法施行後三箇月以内に、その名称を変更しなければならない。
2 水産業協同組合法第百三十一條の規定は、前項の期間内は、これを同項のものに適用しない。
(印紙税法の一部改正)
第十九條 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。
第四條第十二号中「製造業会、道府縣水産業会、中央水産業会」を「漁業生産組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会」に改める。
第五條第六号中「漁業会」を「漁業協同組合」に改める。
(地方税法の一部改正)
第二十二條 地方税法(昭和二十三年法律第百十号)の一部を次のように改正する。
第六十七條第二項第六号の次に次の一号を加える。
六ノ二 漁業協同組合、漁業生産組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合及び水産加工業協同組合連合会
(農林中央金庫法の一部改正)
第二十三條 農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)の一部を次のように改正する。
第二條第三項中「道府縣出資水産業会」を「漁業協同組合連合会」に改める。
第五條第一項中「中央水産業会、道府縣水産業会、製造業会、漁業会」を「漁業協同組合連合会、漁業協同組合、水産加工業協同組合連合会、水産加工業協同組合」に改める。
(金融緊急措置令の一部改正)
第二十四條 金融緊急措置令(昭和二十一年勅令第八十三号)の一部を次のように改正する。
(事業者團体法の一部改正)
第二十五條 事業者團体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。
第六條第一項第二号中「レ 水産業團体法(昭和十八年法律第四十七号)」を「レ 旧水産業團体法(昭和十八年法律第四十七号)」に改め、「ネ 消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)」の次に「ナ 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)」を加える。
(関係法令改正の経過規定)
第二十六條 この法律施行の際現に存する水産業團体については、第十九條、第二十條、第二十三條及び第二十四條の規定にかかわらず、この法律施行後でも、なお從前の例による。
(罰則の経過規定)
第二十七條 この法律施行前(第一條第二項の水産業團体については、同項の規定により効力を有する水産業團体法の失効前)にした行爲に対する罰則の適用については、この法律施行後(同項の水産業團体については、同項の規定により効力を有する水産業團体法の失効後)でも、なお從前の例による。