朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條第一項ニ依リ金融緊急措置令ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十一年二月十七日
內閣總理大臣兼第一復員大臣 第二復員大臣 男爵 幣原喜重郞
內務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
國務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大藏大臣 子爵 澁澤敬三
商工大臣 小笠原三九郞
國務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十三號
金融緊急措置令
第一條 金融機關ハ本令施行ノ際現ニ存スル預金其ノ他金融業務上ノ債務ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ(以下封鎖預金等ト稱ス)ニ付テハ第三條第二項ノ規定ニ依ルノ外其ノ支拂ヲ爲スコトヲ得ズ
日本銀行券預入令第四條第二項ノ規定ニ依リ生ジタル預金、貯金及金錢信託ハ之ヲ封鎖預金等ト看做ス
第二條 封鎖支拂ニ基キ生ジタル金融機關ノ預金其ノ他金融業務上トノ債務ハ之ヲ封鎖預金等ト看做ス
前項ノ封鎖支拂トハ手形、小切手、郵便爲替證書其ノ他之ニ準ズル支拂指圖ヲ以テ爲サルル封鎖預金等ヘノ拂込又ハ振替及金融機關ノ帳簿上ノ振替ノ方法ニ依ル封鎖預金等ノ支拂ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ謂フ
第三條 第一條ノ規定ハ左ニ揭グル者ガ金融機關ニ對シ有スル預金其ノ他ノ債權ニ付テハ之ヲ適用セズ
一 國又ハ都道府縣其ノ他地方公共團體
二 金融機關
封鎖預金等ノ支拂ハ命令ノ定ムル所ニ依リ現金ニ依ル支拂、現金以外ノ封鎖支拂ニ非ザル支拂又ハ封鎖支拂ニ依リ之ヲ爲スベシ
第四條 本令施行ノ際現ニ存スル國債、地方債、社債其ノ他命令ヲ以テ定ムル之ニ準ズル債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ハ封鎖支拂ニ依リ之ヲ爲スベシ本令施行ノ際現ニ存スル株式、出資其ノ他命令ヲ以テ定ムル之ニ準ズルモノニ對スル配當金、殘餘財產ノ分配金及合併又ハ減資ニ因ル交付金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ竝ニ本令施行ノ際現ニ存スル保險契約ニ基ク保險金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ支拂ニ付亦同ジ
第五條 大藏大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ封鎖預金等ノ債權ヲ讓渡シ又ハ之ヲ債務ノ擔保ニ供スルコトヲ制限シ又ハ禁止スルコトヲ得
第六條 大藏大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金融機關其ノ他大藏大臣ノ指定スル者ニ對シ資金ノ融通ヲ制限シ又ハ禁止スルコトヲ得
第七條 大藏大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金錢債務ノ辨濟ニ關シ封鎖支拂其ノ他命令ヲ以テ定ムル現金支拂以外ノ方法ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得
大藏大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ資金ノ保有方法ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第八條 本令ニ於テ金融機關トハ郵便官署、銀行、信託會社、保險會社、無盡會社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、恩給金庫、庶民金庫、國民更生金庫、地方農業會、漁業會及市街地信用組合其ノ他貯金ノ受入ヲ爲ス組合ヲ謂フ
第九條 封鎖預金等ニ付テハ其ノ債權者ハ第三條第二項ニ規定スル場合ヲ除クノ外支拂禁止ノ解除セラルルニ至ル迄ハ其ノ支拂ノ請求ヲ爲スノ權利ヲ有セザルモノトス
支拂禁止ノ解除セラルルニ至ル迄ノ間ニ於テ封鎖預金等ニ附スベキ利息ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
支拂禁止ノ解除前ニ於テ時效期間ノ滿了スル封鎖預金等ニ付テハ支拂禁止ノ解除後一月以內ハ時效完成セズ
第十條 本令ハ他ノ法令ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ノ適用アル場合ニ於テモ仍之ヲ適用ス但シ他ノ法令ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ガ本令ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ヨリモ重キトキハ當該法令ヲ適用ス
第十一條 第一條、第三條第二項若ハ第四條ノ規定、第五條若ハ第六條ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ第七條ノ規定ニ依ル命令ノ違反アリタル場合ニ於テハ其ノ行爲ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ前條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ行爲ヲ爲シタル者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦同條ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朕茲ニ緊急ノ必要アリト認メ枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ帝国憲法第八条第一項ニ依リ金融緊急措置令ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二十一年二月十七日
内閣総理大臣兼第一復員大臣 第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 三土忠造
司法大臣 岩田宙造
外務大臣 吉田茂
国務大臣 松本烝治
厚生大臣 芦田均
大蔵大臣 子爵 渋沢敬三
商工大臣 小笠原三九郎
国務大臣 小林一三
文部大臣 安倍能成
農林大臣 副島千八
運輸大臣 村上義一
勅令第八十三号
金融緊急措置令
第一条 金融機関ハ本令施行ノ際現ニ存スル預金其ノ他金融業務上ノ債務ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ(以下封鎖預金等ト称ス)ニ付テハ第三条第二項ノ規定ニ依ルノ外其ノ支払ヲ為スコトヲ得ズ
日本銀行券預入令第四条第二項ノ規定ニ依リ生ジタル預金、貯金及金銭信託ハ之ヲ封鎖預金等ト看做ス
第二条 封鎖支払ニ基キ生ジタル金融機関ノ預金其ノ他金融業務上トノ債務ハ之ヲ封鎖預金等ト看做ス
前項ノ封鎖支払トハ手形、小切手、郵便為替証書其ノ他之ニ準ズル支払指図ヲ以テ為サルル封鎖預金等ヘノ払込又ハ振替及金融機関ノ帳簿上ノ振替ノ方法ニ依ル封鎖預金等ノ支払ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ謂フ
第三条 第一条ノ規定ハ左ニ掲グル者ガ金融機関ニ対シ有スル預金其ノ他ノ債権ニ付テハ之ヲ適用セズ
一 国又ハ都道府県其ノ他地方公共団体
二 金融機関
封鎖預金等ノ支払ハ命令ノ定ムル所ニ依リ現金ニ依ル支払、現金以外ノ封鎖支払ニ非ザル支払又ハ封鎖支払ニ依リ之ヲ為スベシ
第四条 本令施行ノ際現ニ存スル国債、地方債、社債其ノ他命令ヲ以テ定ムル之ニ準ズル債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ハ封鎖支払ニ依リ之ヲ為スベシ本令施行ノ際現ニ存スル株式、出資其ノ他命令ヲ以テ定ムル之ニ準ズルモノニ対スル配当金、残余財産ノ分配金及合併又ハ減資ニ因ル交付金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ並ニ本令施行ノ際現ニ存スル保険契約ニ基ク保険金ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ支払ニ付亦同ジ
第五条 大蔵大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ封鎖預金等ノ債権ヲ譲渡シ又ハ之ヲ債務ノ担保ニ供スルコトヲ制限シ又ハ禁止スルコトヲ得
第六条 大蔵大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金融機関其ノ他大蔵大臣ノ指定スル者ニ対シ資金ノ融通ヲ制限シ又ハ禁止スルコトヲ得
第七条 大蔵大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ金銭債務ノ弁済ニ関シ封鎖支払其ノ他命令ヲ以テ定ムル現金支払以外ノ方法ニ依ルベキコトヲ命ズルコトヲ得
大蔵大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ資金ノ保有方法ニ関シ必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
第八条 本令ニ於テ金融機関トハ郵便官署、銀行、信託会社、保険会社、無尽会社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、恩給金庫、庶民金庫、国民更生金庫、地方農業会、漁業会及市街地信用組合其ノ他貯金ノ受入ヲ為ス組合ヲ謂フ
第九条 封鎖預金等ニ付テハ其ノ債権者ハ第三条第二項ニ規定スル場合ヲ除クノ外支払禁止ノ解除セラルルニ至ル迄ハ其ノ支払ノ請求ヲ為スノ権利ヲ有セザルモノトス
支払禁止ノ解除セラルルニ至ル迄ノ間ニ於テ封鎖預金等ニ附スベキ利息ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
支払禁止ノ解除前ニ於テ時効期間ノ満了スル封鎖預金等ニ付テハ支払禁止ノ解除後一月以内ハ時効完成セズ
第十条 本令ハ他ノ法令ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ノ適用アル場合ニ於テモ仍之ヲ適用ス但シ他ノ法令ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ガ本令ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ヨリモ重キトキハ当該法令ヲ適用ス
第十一条 第一条、第三条第二項若ハ第四条ノ規定、第五条若ハ第六条ノ規定ニ依ル制限若ハ禁止又ハ第七条ノ規定ニ依ル命令ノ違反アリタル場合ニ於テハ其ノ行為ヲ為シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ一万円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条ノ違反行為ヲ為シタルトキハ其ノ行為ヲ為シタル者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ亦同条ノ罰金刑ヲ科ス
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス