朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝國議会の協賛を経た皇室経済法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年一月十五日
内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
國務大臣 男爵 幣原喜重郞
司法大臣 木村篤太郎
内務大臣 大村清一
文部大臣 田中耕太郎
農林大臣 和田博雄
國務大臣 齋藤隆夫
逓信大臣 一松定吉
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
國務大臣 植原悦二郎
運輸大臣 平塚常次郎
大藏大臣 石橋湛山
國務大臣 金森徳次郎
國務大臣 膳桂之助
法律第四号
皇室経済法
第一條 皇室の公用に供し、又は供するものと決定した國有財產(以下皇室用財產という。)は、これを國有財產法の公用財產とし、これに関する事務は、宮内府で、これを掌る。
國有財產を皇室の公用に供し、又は供するものと決定しようとするときは、皇室経済会議の議を経ることを要する。皇室用財產の用途を廃止し、又は変更するときも同樣とする。
皇室用財產は、收益を目的とするものであつてはならない。
皇室経済会議は、五年を超えない期間ごとに皇室用財產に関し、必要な調査を行い、これを内閣に報告しなければならない。
前項の報告があつたときは、内閣は、その内容を國会に報告しなければならない。
第二條 相当の対價による賣買等通常の私的経済行爲に係る場合その他左の各号の一に該当する場合においては、その度ごとに國会の議決を経なくても、皇室に財產を讓り渡し、又は皇室が、財產を讓り受け、若しくは賜與することができる。
一 別に法律で定める一定價額を超えない財產の授受に係る場合
二 前号の一定價額を超え、別に法律で定める一定價額を超えない財產の授受で、皇室経済会議の議を経たものに係る場合
前項各号の規定は、同一の者の間において、一年以内に、二回以上財產の授受が行われる場合には、その價額を通計したものについて、これを適用する。
一年に滿たない期間内に、第一項第一号又は第二号の規定により皇室に属する同一の者のなす賜與又は讓受に係る財產の價額が、別に法律で定める一定價額に達するに至つたときは、一年の期間が滿了するまでのその後の期間において、その者のなす財產の賜與又は讓受については、これらの規定を適用しない。
第三條 予算に計上する皇室の費用は、これを内廷費、宮廷費及び皇族費とする。
第四條 内廷費は、天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるものとし、別に法律で定める定額を、毎年支出するものとする。
内廷費として支出されたものは、御手元金となるものとし、宮内府の経理に属する公金としない。
皇室経済会議は、第一項の定額について、変更の必要があると認めるときは、これに関する意見を内閣に提出しなければならない。
前項の意見の提出があつたときは、内閣は、その内容をなるべく速かに國会に報告しなければならない。
第五條 宮廷費は、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるものとし、宮内府で、これを経理する。
第六條 皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、一時金額により皇族の身分を離れる際に支出するものとする。その年額又は一時金額は、別に法律で定める定額に基いて、これを算出する。
年額による皇族費は、左の各号及び第三項から第五項までの規定により算出する額とし、第四條に規定する皇族以外の各皇族に対し、毎年これを支出するものとする。
一 親王に対しては、左の金額とする。
既婚者 定額相当額
成年未婚者 定額の二分の一に相当する額
未成年未婚者 定額の四分の一に相当する額
二 親王妃に対しては、定額の二分の一に相当する金額とする。
三 内親王に対しては、左の金額とする。
成年者 定額の二分の一に相当する額
未成年者 定額の四分の一に相当する額
四 王、王妃及び女王に対しては、夫ゝ親王、親王妃及び内親王に準じて算出した金額の十分の七に相当する金額とする。
既婚の親王及び王に対しては、婚姻が解消した後においても、從前と同額とする。
攝政たる皇族に対しては、その在任中は、定額の五倍に相当する金額とする。
同一人が二以上の身分を有するときは、その年額中の多額のものによる。
一時金額による皇族費は、皇室典範の定めるところにより皇族の身分を離れる皇族に対し、一時にこれを支出するものとし、その皇族について第二項、第三項及び前項の規定により算出する年額の十五倍に相当する金額を超えない範囲内において、皇室経済会議の議を経て定める金額による。
前項の規定による一時金額の算出に関しては、未婚又は未成年の親王又は王は、既婚の親王又は王の例に、未成年の内親王又は女王は、成年の内親王又は女王の例によるものとする。
第四條第二項の規定は、皇族費として支出されたものに、これを準用する。
第四條第三項及び第四項の規定は、第一項の定額に、これを準用する。
第七條 皇位とともに傳わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。
第八條 皇室経済会議は、議員八人でこれを組織する。
議員は、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、大藏大臣、宮内府の長並びに会計檢査院の長を以て、これに充てる。
第九條 皇室経済会議に、予備議員八人を置く。
第十條 皇室経済会議は、五人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
皇室経済会議の議事は、過半数でこれを決する。可否同数のときは、議長の決するところによる。
第十一條 皇室典範第二十九條、第三十條第三項から第七項まで、第三十一條、第三十三條第一項、第三十六條及び第三十七條の規定は、皇室経済会議に、これを準用する。
大藏大臣たる議員の予備議員は、大藏次官を以て、これに充て、会計檢査院の長たる議員の予備議員は、内閣総理大臣の指定する会計檢査院の官吏を以て、これに充てる。
附 則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
この法律施行の際、現に皇室の用に供せられている從前の皇室財產で、國有財產法の國有財產となつたものは、第一條第二項の規定にかかわらず、皇室経済会議の議を経ることなく、これを皇室用財產とする。
この法律施行の際、從前の皇室会計に所属する権利義務で國に引き継がるべきものの経過的処理に関し、必要な事項は、政令でこれを定める。
この法律施行の日の属する年度における内廷費及び皇族費の年額は、月割による。
朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝国議会の協賛を経た皇室経済法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年一月十五日
内閣総理大臣兼外務大臣 吉田茂
国務大臣 男爵 幣原喜重郎
司法大臣 木村篤太郎
内務大臣 大村清一
文部大臣 田中耕太郎
農林大臣 和田博雄
国務大臣 斎藤隆夫
逓信大臣 一松定吉
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
国務大臣 植原悦二郎
運輸大臣 平塚常次郎
大蔵大臣 石橋湛山
国務大臣 金森徳次郎
国務大臣 膳桂之助
法律第四号
皇室経済法
第一条 皇室の公用に供し、又は供するものと決定した国有財産(以下皇室用財産という。)は、これを国有財産法の公用財産とし、これに関する事務は、宮内府で、これを掌る。
国有財産を皇室の公用に供し、又は供するものと決定しようとするときは、皇室経済会議の議を経ることを要する。皇室用財産の用途を廃止し、又は変更するときも同様とする。
皇室用財産は、収益を目的とするものであつてはならない。
皇室経済会議は、五年を超えない期間ごとに皇室用財産に関し、必要な調査を行い、これを内閣に報告しなければならない。
前項の報告があつたときは、内閣は、その内容を国会に報告しなければならない。
第二条 相当の対価による売買等通常の私的経済行為に係る場合その他左の各号の一に該当する場合においては、その度ごとに国会の議決を経なくても、皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することができる。
一 別に法律で定める一定価額を超えない財産の授受に係る場合
二 前号の一定価額を超え、別に法律で定める一定価額を超えない財産の授受で、皇室経済会議の議を経たものに係る場合
前項各号の規定は、同一の者の間において、一年以内に、二回以上財産の授受が行われる場合には、その価額を通計したものについて、これを適用する。
一年に満たない期間内に、第一項第一号又は第二号の規定により皇室に属する同一の者のなす賜与又は譲受に係る財産の価額が、別に法律で定める一定価額に達するに至つたときは、一年の期間が満了するまでのその後の期間において、その者のなす財産の賜与又は譲受については、これらの規定を適用しない。
第三条 予算に計上する皇室の費用は、これを内廷費、宮廷費及び皇族費とする。
第四条 内廷費は、天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるものとし、別に法律で定める定額を、毎年支出するものとする。
内廷費として支出されたものは、御手元金となるものとし、宮内府の経理に属する公金としない。
皇室経済会議は、第一項の定額について、変更の必要があると認めるときは、これに関する意見を内閣に提出しなければならない。
前項の意見の提出があつたときは、内閣は、その内容をなるべく速かに国会に報告しなければならない。
第五条 宮廷費は、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるものとし、宮内府で、これを経理する。
第六条 皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、一時金額により皇族の身分を離れる際に支出するものとする。その年額又は一時金額は、別に法律で定める定額に基いて、これを算出する。
年額による皇族費は、左の各号及び第三項から第五項までの規定により算出する額とし、第四条に規定する皇族以外の各皇族に対し、毎年これを支出するものとする。
一 親王に対しては、左の金額とする。
既婚者 定額相当額
成年未婚者 定額の二分の一に相当する額
未成年未婚者 定額の四分の一に相当する額
二 親王妃に対しては、定額の二分の一に相当する金額とする。
三 内親王に対しては、左の金額とする。
成年者 定額の二分の一に相当する額
未成年者 定額の四分の一に相当する額
四 王、王妃及び女王に対しては、夫ゝ親王、親王妃及び内親王に準じて算出した金額の十分の七に相当する金額とする。
既婚の親王及び王に対しては、婚姻が解消した後においても、従前と同額とする。
摂政たる皇族に対しては、その在任中は、定額の五倍に相当する金額とする。
同一人が二以上の身分を有するときは、その年額中の多額のものによる。
一時金額による皇族費は、皇室典範の定めるところにより皇族の身分を離れる皇族に対し、一時にこれを支出するものとし、その皇族について第二項、第三項及び前項の規定により算出する年額の十五倍に相当する金額を超えない範囲内において、皇室経済会議の議を経て定める金額による。
前項の規定による一時金額の算出に関しては、未婚又は未成年の親王又は王は、既婚の親王又は王の例に、未成年の内親王又は女王は、成年の内親王又は女王の例によるものとする。
第四条第二項の規定は、皇族費として支出されたものに、これを準用する。
第四条第三項及び第四項の規定は、第一項の定額に、これを準用する。
第七条 皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。
第八条 皇室経済会議は、議員八人でこれを組織する。
議員は、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、大蔵大臣、宮内府の長並びに会計検査院の長を以て、これに充てる。
第九条 皇室経済会議に、予備議員八人を置く。
第十条 皇室経済会議は、五人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
皇室経済会議の議事は、過半数でこれを決する。可否同数のときは、議長の決するところによる。
第十一条 皇室典範第二十九条、第三十条第三項から第七項まで、第三十一条、第三十三条第一項、第三十六条及び第三十七条の規定は、皇室経済会議に、これを準用する。
大蔵大臣たる議員の予備議員は、大蔵次官を以て、これに充て、会計検査院の長たる議員の予備議員は、内閣総理大臣の指定する会計検査院の官吏を以て、これに充てる。
附 則
この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
この法律施行の際、現に皇室の用に供せられている従前の皇室財産で、国有財産法の国有財産となつたものは、第一条第二項の規定にかかわらず、皇室経済会議の議を経ることなく、これを皇室用財産とする。
この法律施行の際、従前の皇室会計に所属する権利義務で国に引き継がるべきものの経過的処理に関し、必要な事項は、政令でこれを定める。
この法律施行の日の属する年度における内廷費及び皇族費の年額は、月割による。