生活保護法施行令
法令番号: 勅令第四百三十八號
公布年月日: 昭和21年9月20日
法令の形式: 勅令
朕は、生活保護法施行令を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月十九日
內閣總理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郞
內務大臣 大村淸一
厚生大臣 河合良成
大藏大臣 石橋湛山
勅令第四百三十八號
生活保護法施行令
第一條 民生委員は、保護に關して必要な調査をしなければならない。
民生委員は、保護を受ける者について、市町村長(東京都の區のある區域においては東京都長官とする。以下同じ。)にその狀況を通知し、且つ、必要な保護の種類、程度若しくは方法又は保護の廢止、停止若しくは變更に關して意見を具申しなければならない。
第二條 生活扶助は、金錢又は物品の給與によつてこれを行ふ。
第三條 生活扶助のため給與する金錢又は物品は、一箇月分以內を限度としてこれを前渡しする。
保護の廢止、停止又は變更の場合において、保護を受ける者が已むを得ない事由により前渡しした金錢又は物品を費消し、又は喪失し、且つ返還の資力がないときは、これを返還させないことができる。
保護の廢止、停止又は變更の場合において、前渡しした金錢又は物品中返還させなければならないものについては、これに相當する額を後に給與するものから減ずることができる。
第四條 醫療の範圍は、左の通りとする。
一 診療
二 藥劑又は治療材料の支給
三 處置、手術その他の治療
四 看護
第五條 助產の範圍は、左の通りとする。
一 分娩の介助
二 分娩前及び分娩後の處置
三 看護
第六條 醫療又は助產は、保護施設、厚生大臣の指定した醫療施設又は市町村長の指定した醫師、齒科醫師若しくは產婆についてこれを受けさせる。但し、急迫した事情がある場合においては、市町村長の指定しない醫師、齒科醫師又は產婆についてこれを受けさせることができる。
第七條 醫師又は齒科醫師が處方箋を交付したときは、市町村長の指定した藥劑師について藥劑を受けさせる。
第八條 生業扶助は、生業に必要な資金、器具若しくは資料の給與若しくは貸與をなし、又は主業に必要な技能を授けることによつてこれを行ふ。
第九條 葬祭扶助は、葬祭に必要な金錢の給與又は器具の給與若しくは貸與によつてこれを行ふ。
第十條 保護のため支出する費用、生活保護法第十七條第一項の葬祭費及び同條第二項の規定による葬祭のため支出する費用の程度は、厚生大臣の認可を受け、地方長官が、これを定める。
第十一條 保護のため保護を受ける者の移送をなした場合においては、その實費を支出することができる。
第十二條 生活保護法第十五條の規定により市町村長又はその指定した者が後見人の職務を行ふ場合においては、後見監督人及び親族會の職務權限は、その市町村長がこれを行ふ。
第十三條 都道府縣が設置した保護施設及び生活保護法第七條の規定により市町村又は市町村以外の者が設置した保護施設の事務費についての市町村又は都道府縣の負擔は、各年度におけるその施設の事務費の額から、その費用のための寄附金その他の收入の額を控除した精算額を、その施設において保護又は援護を受ける者の延人員數を標準として按分負擔する。
前項の規定により控除しなければならない金額がその年度における事務費の額を超過した場合においては、その超過額は、後年度における支出額からこれを控除する。
保護施設が他の目的に利用された場合においては、第一項の精算額は、保護又は援護のため利用された程度を標準としてこれを定める。
第十四條 生活保護法第七條の規定により市町村又は市町村以外の者が設置した保護施設の設備に要する費用に對する都道府縣の補助は、保護施設の創設費、改良費、擴張費、修理費及びこれに伴ふ初度調辨費の合計額から、その費用のための寄附金その他の收入の額を控除した精算額に對してこれを行ふ。
保護施設が他の目的に利用される場合においては、前項の精算額は、保護又は援護のため利用される程度を標準としてこれを定める。
第十五條 生活保護法第二十三條の規定により市町村が負擔した費用に對する都道府縣の補助は、各年度において市町村が民生委員に關して支出した費用の額から、その年度におけるその費用のための寄附金その他の收入の額を控除した精算額に對してこれを行ふ。
第十三條第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第十六條 生活保護法第十八條第一項、第十九條、第二十二條及び第二十四條の規定により市町村が負擔した費用に對する都道府縣の補助は、各年度において市町村が保護に要した費用、葬祭費として支出した費用、葬祭に要した費用及び保護施設の事務費として支出した費用の合計額から、その年度において生活保護法第三十二條乃至第三十五條の規定により徵收し、償還させ又は充當した金額及びその費用のための寄附金その他の收入の額を控除した精算額に對してこれを行ふ。
第十三條第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第十七條 前三條の規定は、國庫の補助について、これを準用する。
第十八條 生活保護法第二十六條の規定により都道府縣が負擔した費用に對する國庫の補助は、生活保護法第七條第二項の規定により市町村以外の者の設置した保護施設の設備に要する費用に對する都道府縣の補助費の額から、その補助費のための寄附金その他の收入の額を控除した精算額に對してこれを行ふ。
第十九條 生活保護法第二十六條乃至第三十一條の規定による都道府縣及び國庫の補助金の額は、第十四條乃至前條の場合における控除額にこれを算入しない。
第二十條 第十四條乃至前條の規定により交付した都道府縣及び國庫の補助金は、左に揭げる場合においては、その全部又は一部を返還させることができる。
一 保護施設が生活保護法若しくは同法に基いて發する命令又はこれに基いてなす處分に違反したとき。
二 保護施設の事業の全部若しくは一部を廢止し、又は當初豫定した目的以外の用途に利用するやうになつたとき。
三 補助金交付の條件に違反したとき。
四 詐僞の手段を以て補助金の交付を受けたとき。
第二十一條 保護を受ける者が收容保護を受け、又は保護施設において宿所の提供を受けるときは、生活保護法第十八條第一項及び第十九條の期間計算については、收容又は宿泊の期間は、收容され、又は宿所の提供を受けるやうになつた時までの居住地における居住の期間とする。
第二十二條 この勅令中、町村に關する規定は、町村制を施行しない地においては町村に準ずるものに、町村長に關する規定は、町村長に準ずる者に、これを適用する。
附 則
第二十三條 この勅令は、生活保護法施行の日から、これを施行する。
第二十四條 この法律施行の際厚生大臣の指定した保護事業の保護を受けてゐる者が引き續き生活保護法による保護を受けるときは、同法第十八條第一項及び第十九條の期間計算については、當該保護事業の保護を受けてゐた期間は、その保護を受けるやうになつた時までの居住地における居住の期間とする。
第二十五條 救護法施行令、軍事扶助法施行令、母子保護法施行令、醫療保護法施行令及び戰時災害保護法施行令は、これを廢止する。
第二十六條 昭和十三年勅令第四百四十五號の一部を次のやうに改正する。
第二條第一號中「救護法、母子保護法」を「生活保護法」に改め、同條第二號を削除する。
第二十七條 昭和二十年勅令第五百六十六號の一部を次のやうに改正する。
附則第三項を削る。
朕は、生活保護法施行令を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年九月十九日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
内務大臣 大村清一
厚生大臣 河合良成
大蔵大臣 石橋湛山
勅令第四百三十八号
生活保護法施行令
第一条 民生委員は、保護に関して必要な調査をしなければならない。
民生委員は、保護を受ける者について、市町村長(東京都の区のある区域においては東京都長官とする。以下同じ。)にその状況を通知し、且つ、必要な保護の種類、程度若しくは方法又は保護の廃止、停止若しくは変更に関して意見を具申しなければならない。
第二条 生活扶助は、金銭又は物品の給与によつてこれを行ふ。
第三条 生活扶助のため給与する金銭又は物品は、一箇月分以内を限度としてこれを前渡しする。
保護の廃止、停止又は変更の場合において、保護を受ける者が已むを得ない事由により前渡しした金銭又は物品を費消し、又は喪失し、且つ返還の資力がないときは、これを返還させないことができる。
保護の廃止、停止又は変更の場合において、前渡しした金銭又は物品中返還させなければならないものについては、これに相当する額を後に給与するものから減ずることができる。
第四条 医療の範囲は、左の通りとする。
一 診療
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 看護
第五条 助産の範囲は、左の通りとする。
一 分娩の介助
二 分娩前及び分娩後の処置
三 看護
第六条 医療又は助産は、保護施設、厚生大臣の指定した医療施設又は市町村長の指定した医師、歯科医師若しくは産婆についてこれを受けさせる。但し、急迫した事情がある場合においては、市町村長の指定しない医師、歯科医師又は産婆についてこれを受けさせることができる。
第七条 医師又は歯科医師が処方箋を交付したときは、市町村長の指定した薬剤師について薬剤を受けさせる。
第八条 生業扶助は、生業に必要な資金、器具若しくは資料の給与若しくは貸与をなし、又は主業に必要な技能を授けることによつてこれを行ふ。
第九条 葬祭扶助は、葬祭に必要な金銭の給与又は器具の給与若しくは貸与によつてこれを行ふ。
第十条 保護のため支出する費用、生活保護法第十七条第一項の葬祭費及び同条第二項の規定による葬祭のため支出する費用の程度は、厚生大臣の認可を受け、地方長官が、これを定める。
第十一条 保護のため保護を受ける者の移送をなした場合においては、その実費を支出することができる。
第十二条 生活保護法第十五条の規定により市町村長又はその指定した者が後見人の職務を行ふ場合においては、後見監督人及び親族会の職務権限は、その市町村長がこれを行ふ。
第十三条 都道府県が設置した保護施設及び生活保護法第七条の規定により市町村又は市町村以外の者が設置した保護施設の事務費についての市町村又は都道府県の負担は、各年度におけるその施設の事務費の額から、その費用のための寄附金その他の収入の額を控除した精算額を、その施設において保護又は援護を受ける者の延人員数を標準として按分負担する。
前項の規定により控除しなければならない金額がその年度における事務費の額を超過した場合においては、その超過額は、後年度における支出額からこれを控除する。
保護施設が他の目的に利用された場合においては、第一項の精算額は、保護又は援護のため利用された程度を標準としてこれを定める。
第十四条 生活保護法第七条の規定により市町村又は市町村以外の者が設置した保護施設の設備に要する費用に対する都道府県の補助は、保護施設の創設費、改良費、拡張費、修理費及びこれに伴ふ初度調弁費の合計額から、その費用のための寄附金その他の収入の額を控除した精算額に対してこれを行ふ。
保護施設が他の目的に利用される場合においては、前項の精算額は、保護又は援護のため利用される程度を標準としてこれを定める。
第十五条 生活保護法第二十三条の規定により市町村が負担した費用に対する都道府県の補助は、各年度において市町村が民生委員に関して支出した費用の額から、その年度におけるその費用のための寄附金その他の収入の額を控除した精算額に対してこれを行ふ。
第十三条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第十六条 生活保護法第十八条第一項、第十九条、第二十二条及び第二十四条の規定により市町村が負担した費用に対する都道府県の補助は、各年度において市町村が保護に要した費用、葬祭費として支出した費用、葬祭に要した費用及び保護施設の事務費として支出した費用の合計額から、その年度において生活保護法第三十二条乃至第三十五条の規定により徴収し、償還させ又は充当した金額及びその費用のための寄附金その他の収入の額を控除した精算額に対してこれを行ふ。
第十三条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
第十七条 前三条の規定は、国庫の補助について、これを準用する。
第十八条 生活保護法第二十六条の規定により都道府県が負担した費用に対する国庫の補助は、生活保護法第七条第二項の規定により市町村以外の者の設置した保護施設の設備に要する費用に対する都道府県の補助費の額から、その補助費のための寄附金その他の収入の額を控除した精算額に対してこれを行ふ。
第十九条 生活保護法第二十六条乃至第三十一条の規定による都道府県及び国庫の補助金の額は、第十四条乃至前条の場合における控除額にこれを算入しない。
第二十条 第十四条乃至前条の規定により交付した都道府県及び国庫の補助金は、左に掲げる場合においては、その全部又は一部を返還させることができる。
一 保護施設が生活保護法若しくは同法に基いて発する命令又はこれに基いてなす処分に違反したとき。
二 保護施設の事業の全部若しくは一部を廃止し、又は当初予定した目的以外の用途に利用するやうになつたとき。
三 補助金交付の条件に違反したとき。
四 詐偽の手段を以て補助金の交付を受けたとき。
第二十一条 保護を受ける者が収容保護を受け、又は保護施設において宿所の提供を受けるときは、生活保護法第十八条第一項及び第十九条の期間計算については、収容又は宿泊の期間は、収容され、又は宿所の提供を受けるやうになつた時までの居住地における居住の期間とする。
第二十二条 この勅令中、町村に関する規定は、町村制を施行しない地においては町村に準ずるものに、町村長に関する規定は、町村長に準ずる者に、これを適用する。
附 則
第二十三条 この勅令は、生活保護法施行の日から、これを施行する。
第二十四条 この法律施行の際厚生大臣の指定した保護事業の保護を受けてゐる者が引き続き生活保護法による保護を受けるときは、同法第十八条第一項及び第十九条の期間計算については、当該保護事業の保護を受けてゐた期間は、その保護を受けるやうになつた時までの居住地における居住の期間とする。
第二十五条 救護法施行令、軍事扶助法施行令、母子保護法施行令、医療保護法施行令及び戦時災害保護法施行令は、これを廃止する。
第二十六条 昭和十三年勅令第四百四十五号の一部を次のやうに改正する。
第二条第一号中「救護法、母子保護法」を「生活保護法」に改め、同条第二号を削除する。
第二十七条 昭和二十年勅令第五百六十六号の一部を次のやうに改正する。
附則第三項を削る。