産業設備営団法
法令番号: 法律第九十二號
公布年月日: 昭和16年11月26日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル產業設備營團法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年十一月二十五日
內閣總理大臣兼內務大臣 東條英機
大藏大臣 賀屋興宣
商工大臣 岸信介
法律第九十二號
產業設備營團法
第一章 總則
第一條 產業設備營團ハ戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム)ニ際シ軍需產業、生產擴充計畫產業其ノ他ノ國家緊要產業ノ設備ニシテ事業者ニ於テ建設又ハ維持スルコト著シク困難ナルモノヲ施設シ竝ニ產業設備(之ニ充ツベキ機械及器具ヲ含ム)ニシテ未完成又ハ遊休ノ狀態ニ在ルモノ(以下未動遊休設備ト稱ス)ノ活用ヲ圖ルコトヲ目的トス
產業設備營團ハ法人トス
第二條 產業設備營團ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
產業設備營團ハ政府ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第三條 產業設備營團ノ資本金ハ二億圓トス
第四條 政府ハ二億圓ヲ產業設備營團ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ國債證券ヲ交付シテ之ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第五條 產業設備營團ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名稱
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資產ニ關スル事項
五 役員ニ關スル事項
六 業務及其ノ執行ニ關スル事項
七 產業設備債券ノ發行ニ關スル事項
八 會計ニ關スル事項
九 公吿ノ方法
定款ハ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更スルコトヲ得
第六條 產業設備營團ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ズ
第七條 產業設備營團ニハ所得稅、法人稅及營業稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ產業設備營團ノ事業又ハ第十七條第一項第一號若ハ第三號ノ業務ノ爲ニスル建物ノ建設若ハ取得若ハ土地ノ取得ニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ產業設備營團ノ事業ニ對シテハ特別ノ事情ニ基キ內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第八條 產業設備營團ガ第十七條第一項第一號又ハ第三號ノ業務ノ爲ニスル不動產ニ關スル權利ノ取得又ハ所有權ノ保存ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登錄稅ノ額ハ不動產ノ價格ノ千分ノ一トス
第九條 產業設備營團ニ付解散ヲ必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 產業設備營團ニ非ザル者ハ產業設備營團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第十一條 民法第四十四條、第五十條、第五十四條及第五十七條竝ニ非訟事件手續法第三十五條第一項ノ規定ハ產業設備營團ニ之ヲ準用ス
第二章 役員
第十二條 產業設備營團ニ總裁副總裁各一人、理事五人以上及監事二人以上ヲ置ク
總裁ハ產業設備營團ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副總裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ產業設備營團ヲ代表シ總裁ヲ輔佐シテ產業設備營團ノ業務ヲ掌理ス
副總裁ハ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ產業設備營團ヲ代表シ總裁及副總裁ヲ輔佐シテ產業設備營團ノ業務ヲ掌理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ總裁及副總裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ總裁及副總裁共ニ缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ產業設備營團ノ業務ヲ監査ス
第十三條 總裁、副總裁、理事及監事ハ政府之ヲ命ズ
總裁、副總裁及理事ノ任期ハ四年、監事ノ任期ハ二年トス
第十四條 總裁、副總裁及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ從タル事務所ノ業務ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十五條 總裁、副總裁及理事ハ他ノ職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條 產業設備營團ニ評議員若干人ヲ置キ政府之ヲ命ズ
評議員ハ業務經營ニ關スル重要ナル事項ニ付總裁ノ諮問ニ應ジ必要アルトキハ之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ二年トス
第三章 業務
第十七條 產業設備營團ハ左ノ業務ヲ行フ
一 國家緊要產業ノ設備ニシテ事業者ニ於テ建設又ハ維持スルコト著シク困難ナルモノノ建設又ハ買受
二 前號ノ規定ニ依リ取得シタル設備ノ貸付、出資及賣渡
三 未動遊休設備ノ賣買及保有
四 未動遊休設備ノ活用ニ關スル斡旋
五 前各號ノ業務ニ附帶スル事業
產業設備營團ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項ニ揭グル業務以外ノ業務ヲ行フコトヲ得
第十八條 產業設備營團ハ其ノ建設スル國家緊要產業ノ設備ノ用ニ充ツル爲必要ナル土地又ハ土地ニ關スル所有權以外ノ權利ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ關シテハ土地收用法ヲ適用ス
第一項ノ規定ニ依リ收用又ハ使用シタル土地又ハ土地ニ關スル所有權以外ノ權利ノ處分及管理ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條 產業設備營團ハ第十七條第一項第一號又ハ第三號ノ規定ニ依リ買受ケタル設備ノ代價ニ付テハ國債證券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證券ノ交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第二十條 政府ハ產業設備營團ガ第十七條第一項第一號又ハ第三號ノ規定ニ依リ設備ヲ買受ケタル場合ニ於テ之ヲ賣渡シタル者ニ對シ其ノ代價トシテ受ケタル金錢又ハ國債證券ノ處分ニ關シ必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得
第四章 產業設備債券
第二十一條 產業設備營團ハ拂込資本金額ノ五倍ヲ限リ產業設備債券ヲ發行スルコトヲ得
第二十二條 產業設備債券ハ額面金額五十圓以上トシ無記名利札附トス但シ應募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコトヲ得
產業設備債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
第二十三條 產業設備營團ハ產業設備債券借換ノ爲一時第二十一條ノ制限ニ依ラズ產業設備債券ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ產業設備債券ヲ發行シタルトキハ發行後一月以內ニ其ノ發行額面金額ニ相當スル舊產業設備債券ヲ償還スベシ
第二十四條 政府ハ產業設備債券ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
第二十五條 產業設備債券ハ賣出ノ方法ヲ以テ之ヲ發行スルコトヲ得
第二十六條 產業設備營團ニ於テ產業設備債券ヲ發行セントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十七條 產業設備債券ノ消滅時效ハ元本ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十八條 產業設備債券ノ所有者ハ產業設備營團ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特權ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第二十九條 所得稅法及有價證券移轉稅法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ產業設備債券ニ之ヲ準用ス
第三十條 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外產業設備債券ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 會計
第三十一條 產業設備營團ノ事業年度ハ每年四月ヨリ翌年三月迄トス
第三十二條 產業設備營團ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 國債、地方債又ハ政府ノ認可ヲ受ケタル有價證券ノ取得ヲ爲スコト
二 大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト爲スコト
第三十三條 產業設備營團ハ設立ノ時及每事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
第六章 監督及補助
第三十四條 產業設備營團ハ政府之ヲ監督ス
第三十五條 產業設備營團ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ剩餘金ノ處分ヲ爲スコトヲ得ズ
第三十六條 產業設備營團ハ業務開始ノ際業務ノ方法ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
產業設備營團ハ每事業年度ノ初ニ於テ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第三十七條 政府ハ產業設備營團ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報吿ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十八條 役員ガ法令、定款若ハ政府ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ政府ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第三十九條 政府ハ產業設備營團ニ對シ第十七條ニ規定スル業務ニ因リテ受ケタル損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項ノ契約ハ之ニ基キ交付スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第一項ノ損失ヲ決定スル基準ハ政府之ヲ定ム
第四十條 前條第一項ノ損失及其ノ額ハ產業設備營團損失審査會之ヲ決定ス
產業設備營團損失審査會ノ組織及權限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 罰則
第四十一條 左ノ場合ニ於テハ產業設備營團ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ千圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法ニ依リ政府ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ營ミタルトキ
三 第二十一條又ハ第二十三條第二項ノ規定ニ違反シ產業設備債券ノ發行ヲ爲シ又ハ償還ヲ爲サザルトキ
四 第三十二條ノ規定ニ違反シ業務上ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
五 政府ノ監督上ノ命令又ハ處分ニ違反シタルトキ
第四十二條 左ノ場合ニ於テハ產業設備營團ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ五百圓以下ノ過料ニ處ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 第三十三條ノ規定ニ違反シ書類ヲ備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ又ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ
第四十三條 第十條ノ規定ニ違反シ產業設備營團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒタル者ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
附 則
第四十四條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十五條 政府ハ設立委員ヲ命ジ產業設備營團ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セシム
第四十六條 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四十七條 定款ニ付政府ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資ノ第一囘ノ拂込ヲ禀請スベシ
第四十八條 出資ノ第一囘ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ產業設備營團總裁ニ引繼グベシ
總裁前項ノ事務ノ引繼ヲ受ケタルトキハ總裁、副總裁、理事及監事ノ全員ハ設立ノ登記ヲ爲スベシ
產業設備營團ハ設立ノ登記ヲ爲スニ因リテ成立ス
第四十九條 登錄稅法中左ノ通改正ス
第十九條第七號中「住宅營團、」ノ下ニ「產業設備營團、」ヲ、「住宅營團法、」ノ下ニ「產業設備營團法、」ヲ加フ
第五十條 印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第六號ノ四ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
六ノ五 產業設備營團ノ業務ニ關スル證書帳簿及產業設備債券
第五十一條 有價證券移轉稅法中左ノ通改正ス
第十條ニ左ノ一號ヲ加フ
九 產業設備營團法第十九條ノ規定ニ依ル國債證券ノ移轉
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル産業設備営団法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十六年十一月二十五日
内閣総理大臣兼内務大臣 東条英機
大蔵大臣 賀屋興宣
商工大臣 岸信介
法律第九十二号
産業設備営団法
第一章 総則
第一条 産業設備営団ハ戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム)ニ際シ軍需産業、生産拡充計画産業其ノ他ノ国家緊要産業ノ設備ニシテ事業者ニ於テ建設又ハ維持スルコト著シク困難ナルモノヲ施設シ並ニ産業設備(之ニ充ツベキ機械及器具ヲ含ム)ニシテ未完成又ハ遊休ノ状態ニ在ルモノ(以下未動遊休設備ト称ス)ノ活用ヲ図ルコトヲ目的トス
産業設備営団ハ法人トス
第二条 産業設備営団ハ主タル事務所ヲ東京市ニ置ク
産業設備営団ハ政府ノ認可ヲ受ケ必要ノ地ニ従タル事務所ヲ設置スルコトヲ得
第三条 産業設備営団ノ資本金ハ二億円トス
第四条 政府ハ二億円ヲ産業設備営団ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ国債証券ヲ交付シテ之ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
第五条 産業設備営団ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ規定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額及資産ニ関スル事項
五 役員ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 産業設備債券ノ発行ニ関スル事項
八 会計ニ関スル事項
九 公告ノ方法
定款ハ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ変更スルコトヲ得
第六条 産業設備営団ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第七条 産業設備営団ニハ所得税、法人税及営業税ヲ課セズ
北海道、府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノハ産業設備営団ノ事業又ハ第十七条第一項第一号若ハ第三号ノ業務ノ為ニスル建物ノ建設若ハ取得若ハ土地ノ取得ニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ産業設備営団ノ事業ニ対シテハ特別ノ事情ニ基キ内務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第八条 産業設備営団ガ第十七条第一項第一号又ハ第三号ノ業務ノ為ニスル不動産ニ関スル権利ノ取得又ハ所有権ノ保存ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ其ノ登録税ノ額ハ不動産ノ価格ノ千分ノ一トス
第九条 産業設備営団ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 産業設備営団ニ非ザル者ハ産業設備営団又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第十一条 民法第四十四条、第五十条、第五十四条及第五十七条並ニ非訟事件手続法第三十五条第一項ノ規定ハ産業設備営団ニ之ヲ準用ス
第二章 役員
第十二条 産業設備営団ニ総裁副総裁各一人、理事五人以上及監事二人以上ヲ置ク
総裁ハ産業設備営団ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ産業設備営団ヲ代表シ総裁ヲ輔佐シテ産業設備営団ノ業務ヲ掌理ス
副総裁ハ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ産業設備営団ヲ代表シ総裁及副総裁ヲ輔佐シテ産業設備営団ノ業務ヲ掌理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ総裁及副総裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁及副総裁共ニ欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ産業設備営団ノ業務ヲ監査ス
第十三条 総裁、副総裁、理事及監事ハ政府之ヲ命ズ
総裁、副総裁及理事ノ任期ハ四年、監事ノ任期ハ二年トス
第十四条 総裁、副総裁及理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ従タル事務所ノ業務ニ関シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行為ヲ為ス権限ヲ有スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十五条 総裁、副総裁及理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六条 産業設備営団ニ評議員若干人ヲ置キ政府之ヲ命ズ
評議員ハ業務経営ニ関スル重要ナル事項ニ付総裁ノ諮問ニ応ジ必要アルトキハ之ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ二年トス
第三章 業務
第十七条 産業設備営団ハ左ノ業務ヲ行フ
一 国家緊要産業ノ設備ニシテ事業者ニ於テ建設又ハ維持スルコト著シク困難ナルモノノ建設又ハ買受
二 前号ノ規定ニ依リ取得シタル設備ノ貸付、出資及売渡
三 未動遊休設備ノ売買及保有
四 未動遊休設備ノ活用ニ関スル斡旋
五 前各号ノ業務ニ附帯スル事業
産業設備営団ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項ニ掲グル業務以外ノ業務ヲ行フコトヲ得
第十八条 産業設備営団ハ其ノ建設スル国家緊要産業ノ設備ノ用ニ充ツル為必要ナル土地又ハ土地ニ関スル所有権以外ノ権利ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル収用又ハ使用ニ関シテハ土地収用法ヲ適用ス
第一項ノ規定ニ依リ収用又ハ使用シタル土地又ハ土地ニ関スル所有権以外ノ権利ノ処分及管理ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九条 産業設備営団ハ第十七条第一項第一号又ハ第三号ノ規定ニ依リ買受ケタル設備ノ代価ニ付テハ国債証券ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル国債証券ノ交付価格ハ時価ヲ参酌シテ大蔵大臣之ヲ定ム
第二十条 政府ハ産業設備営団ガ第十七条第一項第一号又ハ第三号ノ規定ニ依リ設備ヲ買受ケタル場合ニ於テ之ヲ売渡シタル者ニ対シ其ノ代価トシテ受ケタル金銭又ハ国債証券ノ処分ニ関シ必要ナル指示ヲ為スコトヲ得
第四章 産業設備債券
第二十一条 産業設備営団ハ払込資本金額ノ五倍ヲ限リ産業設備債券ヲ発行スルコトヲ得
第二十二条 産業設備債券ハ額面金額五十円以上トシ無記名利札附トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト為スコトヲ得
産業設備債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第二十三条 産業設備営団ハ産業設備債券借換ノ為一時第二十一条ノ制限ニ依ラズ産業設備債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ産業設備債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月以内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧産業設備債券ヲ償還スベシ
第二十四条 政府ハ産業設備債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払ヲ保証スルコトヲ得
第二十五条 産業設備債券ハ売出ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第二十六条 産業設備営団ニ於テ産業設備債券ヲ発行セントスルトキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第二十七条 産業設備債券ノ消滅時効ハ元本ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十八条 産業設備債券ノ所有者ハ産業設備営団ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特権ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第二十九条 所得税法及有価証券移転税法中国債以外ノ公債ニ関スル規定ハ産業設備債券ニ之ヲ準用ス
第三十条 本章ニ規定スルモノヲ除クノ外産業設備債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五章 会計
第三十一条 産業設備営団ノ事業年度ハ毎年四月ヨリ翌年三月迄トス
第三十二条 産業設備営団ハ左ノ方法ニ依ルノ外業務上ノ余裕金ヲ運用スルコトヲ得ズ
一 国債、地方債又ハ政府ノ認可ヲ受ケタル有価証券ノ取得ヲ為スコト
二 大蔵省預金部若ハ銀行ヘノ預金又ハ郵便貯金ト為スコト
第三十三条 産業設備営団ハ設立ノ時及毎事業年度ノ初ニ於テ財産目録、貸借対照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
第六章 監督及補助
第三十四条 産業設備営団ハ政府之ヲ監督ス
第三十五条 産業設備営団ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ剰余金ノ処分ヲ為スコトヲ得ズ
第三十六条 産業設備営団ハ業務開始ノ際業務ノ方法ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
産業設備営団ハ毎事業年度ノ初ニ於テ事業計画ヲ定メ政府ノ認可ヲ受クベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第三十七条 政府ハ産業設備営団ニ対シ業務及財産ノ状況ニ関シ報告ヲ為サシメ、検査ヲ為シ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
第三十八条 役員ガ法令、定款若ハ政府ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ政府ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第三十九条 政府ハ産業設備営団ニ対シ第十七条ニ規定スル業務ニ因リテ受ケタル損失ヲ補償スルノ契約ヲ為スコトヲ得
前項ノ契約ハ之ニ基キ交付スベキ補償金ノ総額ガ帝国議会ノ協賛ヲ経タル金額ヲ超エザル範囲内ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第一項ノ損失ヲ決定スル基準ハ政府之ヲ定ム
第四十条 前条第一項ノ損失及其ノ額ハ産業設備営団損失審査会之ヲ決定ス
産業設備営団損失審査会ノ組織及権限ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 罰則
第四十一条 左ノ場合ニ於テハ産業設備営団ノ総裁、副総裁、理事又ハ監事ヲ千円以下ノ過料ニ処ス
一 本法ニ依リ政府ノ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二 本法ニ規定セザル業務ヲ営ミタルトキ
三 第二十一条又ハ第二十三条第二項ノ規定ニ違反シ産業設備債券ノ発行ヲ為シ又ハ償還ヲ為サザルトキ
四 第三十二条ノ規定ニ違反シ業務上ノ余裕金ヲ運用シタルトキ
五 政府ノ監督上ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ
第四十二条 左ノ場合ニ於テハ産業設備営団ノ総裁、副総裁、理事又ハ監事ヲ五百円以下ノ過料ニ処ス
一 本法又ハ本法ニ基キテ発スル勅令ニ違反シ登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 第三十三条ノ規定ニ違反シ書類ヲ備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載スベキ事項ヲ記載セズ又ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ
第四十三条 第十条ノ規定ニ違反シ産業設備営団又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ五百円以下ノ過料ニ処ス
附 則
第四十四条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十五条 政府ハ設立委員ヲ命ジ産業設備営団ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第四十六条 設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ受クベシ
第四十七条 定款ニ付政府ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク出資ノ第一回ノ払込ヲ禀請スベシ
第四十八条 出資ノ第一回ノ払込アリタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ産業設備営団総裁ニ引継グベシ
総裁前項ノ事務ノ引継ヲ受ケタルトキハ総裁、副総裁、理事及監事ノ全員ハ設立ノ登記ヲ為スベシ
産業設備営団ハ設立ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第四十九条 登録税法中左ノ通改正ス
第十九条第七号中「住宅営団、」ノ下ニ「産業設備営団、」ヲ、「住宅営団法、」ノ下ニ「産業設備営団法、」ヲ加フ
第五十条 印紙税法中左ノ通改正ス
第五条第六号ノ四ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
六ノ五 産業設備営団ノ業務ニ関スル証書帳簿及産業設備債券
第五十一条 有価証券移転税法中左ノ通改正ス
第十条ニ左ノ一号ヲ加フ
九 産業設備営団法第十九条ノ規定ニ依ル国債証券ノ移転