朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル有價證券移轉稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
內閣總理大臣 林銑十郞
大藏大臣 結城豊太郞
法律第七號
有價證券移轉稅法
第一條 有價證券ノ賣買、交換、贈與、遺贈其ノ他ノ原因ニ因ル移轉アリタルトキハ本法ニ依リ有價證券移轉稅ヲ課ス
第二條 本法ニ於テ有價證券トハ國債證券、地方債證券、社債券、產業債券、商工債券及株券竝ニ外國又ハ外國法人ノ發行スル此等ノ性質ヲ有スル證券ヲ謂フ
第三條 甲種國債登錄簿ニ登錄シタル國債ニ付テノ名義變更及會社ノ社員ノ持分ノ移轉ハ之ヲ有價證券ノ移轉ト看做ス
第四條 有價證券移轉稅ハ有價證券ノ取得者之ヲ納ムベシ
第五條 有價證券移轉稅ハ左ノ區別ニ從ヒ之ヲ納ムベシ
第一種 有價證券仲買人ヲ買受人トスル賣買取引ニ因ル移轉
國債證券 取得價額 萬分ノ一
其ノ他ノ有價證券 取得價額 萬分ノ二
第二種 第一種以外ノ移轉
甲 取引所ノ實物市場ニ於ケル賣買取引ニ因ル移轉
國債證券 取得價額 萬分ノ二
其ノ他ノ有價證券 取得價額 萬分ノ四
乙 其ノ他
國債證券 取得價額 萬分ノ四
其ノ他ノ有價證券 取得價額 萬分ノ八
第六條 前條ノ取得價額ハ賣買ニ因ル移轉ニ付テハ賣買價額ニ依リ其ノ他ノ原因ニ因ルモノニ付テハ移轉ノ時ノ價格ニ依ル
第七條 有價證券移轉稅ハ總テ一錢以上トス一錢未滿ノ端數ハ一錢トシテ之ヲ計算ス
第八條 營利ヲ目的トセザル法人ニシテ所得稅法其ノ他ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セラレザル者ハ有價證券移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ
第九條 左ニ揭グル有價證券ニ付テハ有價證券移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ
一 一年內ノ期限ヲ以テ發行スル國債證券
二 地方債證券、勸業債券及命令ヲ以テ指定スル社債券ニシテ額面金額二十圓以下ノモノ
第十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル有價證券ノ移轉ニ付テハ有價證券移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ
一 相續、法人ノ合併又ハ保險業法第十三條ノ五ノ規定ニ依ル保險契約ノ全部ノ移轉ニ因ル有價證券ノ移轉
二 日本銀行ヲ賣買ノ當事者トスル國債證券ノ移轉
三 信託ノ場合ニ於ケル委託者ヨリ受託者ヘノ有價證券ノ移轉
四 信託終了ノ場合ニ於ケル受託者ヨリ委託者又ハ其ノ相續人ヘノ有價證券ノ移轉
五 消費貸借及其ノ終了ノ場合ニ於ケル無記名有價證券ノ移轉
六 短期淸算取引ニ於ケル受渡調節ノ爲ノ賣買取引ヲ業トスル會員又ハ取引員ノ代引ニ因ル有價證券ノ移轉
七 第一號及第三號ノ場合ノ外會社ガ自己ノ株式ヲ取得スル場合ニ於ケル有價證券ノ移轉
八 賣出ノ方法ニ依リ發行スル場合ノ有價證券ノ移轉
第十一條 國債、地方債又ハ社債ノ總額ヲ契約ニ依リ引受ケタル者又ハ募集ノ委託ヲ受ケ自ラ其ノ一部ヲ引受ケタル者ヨリノ引受ケタル有價證券ノ移轉ニ付テハ發行ノ日ヨリ一年內ニ限リ有價證券移轉稅ヲ納ムルコトヲ要セズ下引受ヲ爲シタル者ヨリノ下引受ヲ爲シタル有價證券ノ移轉ニ付亦同ジ
第十二條 有價證券移轉稅ハ有價證券ノ移轉每ニ移轉當事者ガ命令ノ定ムル所ニ依リ作成スル有價證券移轉書ニ印紙ヲ貼用シテ之ヲ納ムベシ
有價證券仲買人ノ取扱ニ依ル有價證券ノ移轉ニ付テハ前項ノ規定ニ依ラズ移轉ノ際有價證券仲買人其ノ稅金ヲ徵收シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ有價證券仲買人ヲ移轉當事者トスル有價證券ノ移轉ニ付亦同ジ
第十三條 前條第二項ノ規定ニ依リ徵收スベキ有價證券移轉稅ヲ徵收セザルトキ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セザルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ有價證券仲買人ヨリ徵收ス
第十四條 本法ニ於テ有價證券仲買人トハ有價證券ノ賣買又ハ其ノ媒介ヲ爲スヲ業トスル者ヲ謂フ
第十五條 有價證券仲買人ノ業ヲ營マントスル者ハ每營業所ニ付豫メ政府ニ申吿スベシ其ノ營業ヲ廢止セントスルトキ亦同ジ
第十六條 有價證券仲買人ハ營業ニ關スル帳簿ヲ備ヘ命令ノ定ムル事項ヲ之ニ記載スベシ
第十七條 納稅義務者ハ有價證券移轉書ニ印紙ヲ貼用スルトキハ移轉書ノ紙面ト印紙ノ彩紋トニカケテ自己ノ印章又ハ署名ヲ以テ判明ニ之ヲ消スベシ
第十八條 第十二條第一項ニ規定スル有價證券移轉書ニ付テハ印紙稅法ニ依ル印紙稅ヲ納ムルコトヲ要セズ
第十九條 收稅官吏ハ有價證券仲買人ニ對シ有價證券ノ移轉ニ關スル事項ニ付質問シ又ハ其ノ帳簿書類ヲ檢査スルコトヲ得
第二十條 有價證券移轉書ニ有價證券ノ取得價額ニ應ズル相當印紙ヲ貼用セザル者ハ其ノ脫稅高五倍ノ罰金又ハ科料ニ處ス但シ科料額ガ三圓ニ滿タザルトキハ之ヲ三圓トス
有價證券移轉書ヲ作成セズ因テ有價證券移轉稅ヲ逋脫シタル者亦前項ニ同ジ
第二十一條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ因リ有價證券移轉稅ヲ逋脫シタル有價證券仲買人ハ其ノ脫稅高五倍ノ罰金ニ處シ直ニ其ノ有價證券移轉稅ヲ徵收ス但シ罰金額ガ二十圓ニ滿タザルトキハ之ヲ二十圓トス
第二十二條 第十五條ノ規定ニ違反シ政府ニ申吿セズシテ有價證券仲買人ノ業ヲ營ミタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十三條 第十七條ノ規定ニ違反シ有價證券移轉書ニ貼用シタル印紙ヲ消サザル者ハ有價證券移轉書每ニ消サザル貼用印紙額ノ二倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處ス但シ科料額ガ一圓ニ滿タザルトキハ之ヲ一圓トス
第二十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第十六條ノ規定ニ違反シ帳簿ヲ備ヘズ又ハ之ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者
二 第十九條ノ規定ニ依ル收稅官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第二十五條 第二十條又ハ第二十三條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第一項ノ規定ヲ適用セズ
第二十條、第二十一條又ハ第二十三條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ
第二十六條 有價證券ノ移轉當事者又ハ有價證券仲買人ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ有價證券ノ移轉ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ有價證券ノ移轉當事者又ハ有價證券仲買人ヲ處罰ス
附 則
本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ヨリ引續キ有價證券ノ賣買又ハ其ノ媒介ヲ爲スヲ業トスル者本法施行後一月內ニ其ノ旨ヲ政府ニ申吿スルトキハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申吿シタルモノト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル有価証券移転税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十日
内閣総理大臣 林銑十郎
大蔵大臣 結城豊太郎
法律第七号
有価証券移転税法
第一条 有価証券ノ売買、交換、贈与、遺贈其ノ他ノ原因ニ因ル移転アリタルトキハ本法ニ依リ有価証券移転税ヲ課ス
第二条 本法ニ於テ有価証券トハ国債証券、地方債証券、社債券、産業債券、商工債券及株券並ニ外国又ハ外国法人ノ発行スル此等ノ性質ヲ有スル証券ヲ謂フ
第三条 甲種国債登録簿ニ登録シタル国債ニ付テノ名義変更及会社ノ社員ノ持分ノ移転ハ之ヲ有価証券ノ移転ト看做ス
第四条 有価証券移転税ハ有価証券ノ取得者之ヲ納ムベシ
第五条 有価証券移転税ハ左ノ区別ニ従ヒ之ヲ納ムベシ
第一種 有価証券仲買人ヲ買受人トスル売買取引ニ因ル移転
国債証券 取得価額 万分ノ一
其ノ他ノ有価証券 取得価額 万分ノ二
第二種 第一種以外ノ移転
甲 取引所ノ実物市場ニ於ケル売買取引ニ因ル移転
国債証券 取得価額 万分ノ二
其ノ他ノ有価証券 取得価額 万分ノ四
乙 其ノ他
国債証券 取得価額 万分ノ四
其ノ他ノ有価証券 取得価額 万分ノ八
第六条 前条ノ取得価額ハ売買ニ因ル移転ニ付テハ売買価額ニ依リ其ノ他ノ原因ニ因ルモノニ付テハ移転ノ時ノ価格ニ依ル
第七条 有価証券移転税ハ総テ一銭以上トス一銭未満ノ端数ハ一銭トシテ之ヲ計算ス
第八条 営利ヲ目的トセザル法人ニシテ所得税法其ノ他ノ法律ニ依リ所得税ヲ課セラレザル者ハ有価証券移転税ヲ納ムルコトヲ要セズ
第九条 左ニ掲グル有価証券ニ付テハ有価証券移転税ヲ納ムルコトヲ要セズ
一 一年内ノ期限ヲ以テ発行スル国債証券
二 地方債証券、勧業債券及命令ヲ以テ指定スル社債券ニシテ額面金額二十円以下ノモノ
第十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル有価証券ノ移転ニ付テハ有価証券移転税ヲ納ムルコトヲ要セズ
一 相続、法人ノ合併又ハ保険業法第十三条ノ五ノ規定ニ依ル保険契約ノ全部ノ移転ニ因ル有価証券ノ移転
二 日本銀行ヲ売買ノ当事者トスル国債証券ノ移転
三 信託ノ場合ニ於ケル委託者ヨリ受託者ヘノ有価証券ノ移転
四 信託終了ノ場合ニ於ケル受託者ヨリ委託者又ハ其ノ相続人ヘノ有価証券ノ移転
五 消費貸借及其ノ終了ノ場合ニ於ケル無記名有価証券ノ移転
六 短期清算取引ニ於ケル受渡調節ノ為ノ売買取引ヲ業トスル会員又ハ取引員ノ代引ニ因ル有価証券ノ移転
七 第一号及第三号ノ場合ノ外会社ガ自己ノ株式ヲ取得スル場合ニ於ケル有価証券ノ移転
八 売出ノ方法ニ依リ発行スル場合ノ有価証券ノ移転
第十一条 国債、地方債又ハ社債ノ総額ヲ契約ニ依リ引受ケタル者又ハ募集ノ委託ヲ受ケ自ラ其ノ一部ヲ引受ケタル者ヨリノ引受ケタル有価証券ノ移転ニ付テハ発行ノ日ヨリ一年内ニ限リ有価証券移転税ヲ納ムルコトヲ要セズ下引受ヲ為シタル者ヨリノ下引受ヲ為シタル有価証券ノ移転ニ付亦同ジ
第十二条 有価証券移転税ハ有価証券ノ移転毎ニ移転当事者ガ命令ノ定ムル所ニ依リ作成スル有価証券移転書ニ印紙ヲ貼用シテ之ヲ納ムベシ
有価証券仲買人ノ取扱ニ依ル有価証券ノ移転ニ付テハ前項ノ規定ニ依ラズ移転ノ際有価証券仲買人其ノ税金ヲ徴収シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムベシ有価証券仲買人ヲ移転当事者トスル有価証券ノ移転ニ付亦同ジ
第十三条 前条第二項ノ規定ニ依リ徴収スベキ有価証券移転税ヲ徴収セザルトキ又ハ其ノ徴収シタル税金ヲ納付セザルトキハ国税徴収ノ例ニ依リ之ヲ有価証券仲買人ヨリ徴収ス
第十四条 本法ニ於テ有価証券仲買人トハ有価証券ノ売買又ハ其ノ媒介ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ
第十五条 有価証券仲買人ノ業ヲ営マントスル者ハ毎営業所ニ付予メ政府ニ申告スベシ其ノ営業ヲ廃止セントスルトキ亦同ジ
第十六条 有価証券仲買人ハ営業ニ関スル帳簿ヲ備ヘ命令ノ定ムル事項ヲ之ニ記載スベシ
第十七条 納税義務者ハ有価証券移転書ニ印紙ヲ貼用スルトキハ移転書ノ紙面ト印紙ノ彩紋トニカケテ自己ノ印章又ハ署名ヲ以テ判明ニ之ヲ消スベシ
第十八条 第十二条第一項ニ規定スル有価証券移転書ニ付テハ印紙税法ニ依ル印紙税ヲ納ムルコトヲ要セズ
第十九条 収税官吏ハ有価証券仲買人ニ対シ有価証券ノ移転ニ関スル事項ニ付質問シ又ハ其ノ帳簿書類ヲ検査スルコトヲ得
第二十条 有価証券移転書ニ有価証券ノ取得価額ニ応ズル相当印紙ヲ貼用セザル者ハ其ノ脱税高五倍ノ罰金又ハ科料ニ処ス但シ科料額ガ三円ニ満タザルトキハ之ヲ三円トス
有価証券移転書ヲ作成セズ因テ有価証券移転税ヲ逋脱シタル者亦前項ニ同ジ
第二十一条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ因リ有価証券移転税ヲ逋脱シタル有価証券仲買人ハ其ノ脱税高五倍ノ罰金ニ処シ直ニ其ノ有価証券移転税ヲ徴収ス但シ罰金額ガ二十円ニ満タザルトキハ之ヲ二十円トス
第二十二条 第十五条ノ規定ニ違反シ政府ニ申告セズシテ有価証券仲買人ノ業ヲ営ミタル者ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十三条 第十七条ノ規定ニ違反シ有価証券移転書ニ貼用シタル印紙ヲ消サザル者ハ有価証券移転書毎ニ消サザル貼用印紙額ノ二倍ニ相当スル罰金又ハ科料ニ処ス但シ科料額ガ一円ニ満タザルトキハ之ヲ一円トス
第二十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第十六条ノ規定ニ違反シ帳簿ヲ備ヘズ又ハ之ニ虚偽ノ記載ヲ為シタル者
二 第十九条ノ規定ニ依ル収税官吏ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第二十五条 第二十条又ハ第二十三条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第一項ノ規定ヲ適用セズ
第二十条、第二十一条又ハ第二十三条ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ規定ヲ適用セズ
第二十六条 有価証券ノ移転当事者又ハ有価証券仲買人ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ有価証券ノ移転ニ関シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ有価証券ノ移転当事者又ハ有価証券仲買人ヲ処罰ス
附 則
本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
本法施行前ヨリ引続キ有価証券ノ売買又ハ其ノ媒介ヲ為スヲ業トスル者本法施行後一月内ニ其ノ旨ヲ政府ニ申告スルトキハ本法施行ノ日ニ於テ本法ニ依リ申告シタルモノト看做ス