第一條 本法ハ生絲ノ價格ノ異常ナル騰貴又ハ低落ノ防止ヲ圖リ蠶絲業ノ安定及發達ヲ期スルコトヲ目的トス
第二條 製絲業者ハ絲價ノ安定ヲ圖リ蠶絲業ノ改善發達ヲ期スル目的ヲ以テ主務大臣ノ認可ヲ受ケ絲價安定施設組合ヲ設立スルコトヲ得
第三條 本法ニ於テ製絲業者トハ命令ヲ以テ規定スル者ヲ除クノ外生絲ノ製造ヲ業トスル者ヲ謂フ
製絲ヲ爲シ又ハ製絲工場ヲ有スル產業組合及產業組合聯合會ハ命令ヲ以テ規定スル者ヲ除クノ外本法ノ適用ニ付テハ之ヲ製絲業者ト看做ス
第四條 製絲業者絲價安定施設組合ヲ設立セザル場合ニ於テ主務大臣必要アリト認ムルトキハ製絲業者ニ對シ絲價安定施設組合ノ設立ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ設立ヲ命ゼラレタル者命令ノ定ムル所ニ依リ設立ノ認可ヲ申請セザルトキハ主務大臣ハ定款ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
絲價安定施設組合ハ營利ヲ目的トシテ其ノ事業ヲ營ムコトヲ得ズ
第七條 絲價安定施設組合ノ名稱中ニハ絲價安定施設組合ナル文字ヲ用フベシ
本法ニ依リ設立シタル絲價安定施設組合ニ非ザレバ其ノ名稱中ニ絲價安定施設組合タルコトヲ示スベキ文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第八條 絲價安定施設組合ハ設立ノ認可アリタル時又ハ第四條第二項ノ規定ニ依リ定款ノ作成アリタル時成立ス
前項ノ場合ニ於テハ主務大臣ハ組合設立ノ旨、主タル事務所ノ所在地竝ニ理事長及副理事長ノ氏名及住所ヲ吿示スベシ其ノ吿示シタル事項ニ變更アリタルトキ亦同ジ
第九條 絲價安定施設組合成立シタルトキハ製絲業者ハ總テ其ノ組合員トス
絲價安定施設組合ハ命令ノ定ムル所ニ依リ輸出生絲取引法第一條ノ輸出生絲問屋及生絲輸出業者竝ニ本法施行地域外ニ於ケル製絲業者ヲ組合員ト爲スコトヲ得
第十條 絲價安定施設組合ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ價格(賣渡價格)ニ依ル買入ノ申込又ハ一定ノ價格(買入價格)ニ依ル賣渡ノ申込ニ應ジテ生絲ノ賣渡又ハ買入ヲ爲スモノトス
第十一條 賣渡價格及買入價格ハ勅令ヲ以テ定ムル制限ノ範圍內ニ於テ勅令ノ定ムル所ニ依リ競爭纖維ノ價格、繭生產費中ニ於ケル現金支出額ニ自給費ノ一定割合ノ金額ヲ加ヘタルモノ及生絲ノ製造販賣ニ要スル費用竝ニ物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ主務大臣之ヲ定ム
第十二條 賣渡價格及買入價格ハ絲價安定委員會ニ諮問シテ之ヲ定ム
第十三條 絲價安定施設組合ハ第十條ニ揭グル事業ノ外左ノ事業ヲ行フコトヲ得
四 組合ノ行フ事業ニ要スル費用ニ充ツル爲ノ積立金ノ造成
五 前各號ニ揭グルモノノ外組合ノ目的ヲ達成スルニ必要ナル施設
第十四條 絲價安定施設組合ハ生絲ノ市價ガ勅令ヲ以テ定ムル價格以下ニ低落シタル場合ニ限リ生絲ノ共同保管ヲ行フコトヲ得
第十五條 生絲ノ市價ガ前條ノ規定ニ依ル價格以下ニ低落シタル場合ニ於テ主務大臣必要アリト認ムルトキハ絲價安定委員會ニ諮問シテ絲價安定施設組合ニ對シ其ノ組合員ノ生絲ノ共同保管ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ得
絲價安定施設組合前項ノ規定ニ依リ生絲ノ共同保管ヲ行ヒタルトキハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ組合ニ對シ其ノ所有スル生絲ヲ交付スルコトヲ得
第十六條 主務大臣必要アリト認ムルトキハ絲價安定委員會ニ諮問シテ絲價安定施設組合ニ對シ其ノ共同保管スル生絲ニ付保管ノ解除ヲ命ズルコトヲ得
第十七條 絲價安定施設組合ハ第十條ニ規定スル場合及勅令ヲ以テ規定スル場合ヲ除クノ外生絲ノ賣渡又ハ買入ヲ爲スコトヲ得ズ
第十八條 絲價安定施設組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ組合員ニ對シ經費ヲ分賦シ及過怠金ヲ徵收スルコトヲ得
絲價安定施設組合ノ經費又ハ過怠金ヲ滯納スル者アル場合ニ於テ其ノ理事長ノ請求アルトキハ市町村ハ市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場合ニ於テ絲價安定施設組合ハ其ノ徵收金額ノ百分ノ四ヲ市町村ニ交付スベシ
市町村ガ前項ノ請求ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ其ノ處分ニ著手セズ又ハ九十日以內ニ之ヲ結了セザルトキハ理事長ハ主務大臣ノ認可ヲ得テ之ヲ處分スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ町村制第百十一條第一項及第四項ノ規定ヲ準用ス
前二項ニ規定スル徵收金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之ニ準ズベキモノノ徵收金ニ次ギ其ノ時效ニ付テハ市町村稅ノ例ニ依ル
第一項ニ規定スル徵收金ノ賦課徵收及滯納處分ニ關シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ異議ノ申立若ハ訴願ヲ爲シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十九條 絲價安定施設組合ハ定款ノ定ムル所ニ依リ使用料及手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第二十條 使用料及手數料ノ徵收、生絲ノ寄託其ノ他絲價安定施設組合ト組合員トノ間ニ於ケル權利義務ニ關シテハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外民事訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第二十二條 絲價安定施設組合ノ組合員ハ命令ノ定ムル所ニ依リ組合員中ヨリ總代ヲ選擧スベシ
第二十三條 左ニ揭グル事項ハ總代會ノ議決ヲ經ベシ
三 第十三條第一號、第二號及第四號ニ揭グル事業其ノ他命令ヲ以テ定ムル事業ノ開始及改廢
前項第一號乃至第三號及第五號乃至第八號ニ揭グル事項ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
主務大臣生絲ノ共同保管及其ノ解除ノ決議ノ認可ヲ爲サントスル場合ニ於テハ絲價安定委員會ニ諮問スルコトヲ要ス
役員ハ組合員又ハ組合員タル法人ノ役員中ヨリ之ヲ選任ス但シ理事長及副理事長ハ其ノ他ノ者ヨリ之ヲ選任スルコトヲ妨ゲズ
第二十五條 主務大臣ハ絲價安定施設組合ニ對シ組合ノ事業ニ關スル報吿ヲ爲サシメ、組合ノ業務執行又ハ財產ノ狀況ヲ檢査シ、定款、收支豫算又ハ經費ノ分賦收入方法ノ變更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十六條 絲價安定施設組合ノ決議若ハ選擧又ハ役員ノ行爲ガ法令若ハ定款ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ主務大臣ハ決議、選擧若ハ當選ヲ取消シ、役員ヲ解任シ、總代ノ改選ヲ命ジ、組合ノ事業ヲ停止シ又ハ組合ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
第二十七條 本法ニ規定スルモノヲ除クノ外絲價安定施設組合ノ設立、管理、解散、淸算其ノ他組合ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ絲價安定施設組合ニ對シ賣渡價格ニ依リ生絲ノ賣渡ヲ爲シ又ハ絲價安定施設組合ヨリ買入價格ニ依リ生絲ノ買入ヲ爲ス
第二十九條 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ所有生絲ノ貯藏、買換、交換、加工、整理ノ爲ニスル賣渡及新規ノ用途又ハ販路ニ向クル爲ニスル處分ヲ爲スコトヲ得
第三十條 政府ハ賣渡價格ヲ維持スルニ必要ナル數量ノ生絲ヲ保有スル爲必要アリト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ生絲ノ市價ガ賣渡價格ノ一定割合ニ相當スル價格以下ナル場合ニ限リ絲價安定委員會ニ諮問シテ市價ニ惡影響ヲ及ボサザル方法ニ依リ生絲ノ買入ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 主務大臣絲價安定上必要アリト認ムルトキハ絲價安定施設組合其ノ他命令ヲ以テ規定スル蠶絲業者ノ團體ノ組織員ニ對シ蠶種、繭又ハ生絲ノ生產、保管又ハ販賣ニ關スル其ノ團體ノ統制ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第三十二條 繭及生絲ノ生產費、生產高、現在高、消費高及價格ノ調査ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十三條 政府ハ前條ニ規定スル事項其ノ他絲價安定ニ關シ必要ナル事項ヲ調査スル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ繭若ハ生絲ノ生產者、取引業者、倉庫業者、消費者其ノ他占有者ニ對シ必要ナル事項ノ報吿ヲ命ジ又ハ官吏若ハ吏員ヲシテ其ノ營業所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨檢シ帳簿物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該官吏又ハ吏員ハ其ノ身分ヲ證明スル證票ヲ携帶スベシ
第三十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
二 第三十三條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ當該官吏若ハ吏員ノ職務ノ執行ヲ妨ゲタル者
第三十五條 第三十一條ニ規定スル團體ノ組織員ハ其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十六條 第三十四條ノ規定又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十七條 絲價安定施設組合ノ證票ヲ不正ニ使用シタル者、行使ノ目的ヲ以テ證票ヲ僞造若ハ變造シタル者又ハ僞造若ハ變造ノ證票ヲ使用シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十八條 絲價安定施設組合ノ役員、職員、總代又ハ淸算人其ノ職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ懲役ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第三十九條 前條第一項ニ揭グル者ニ對シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十條 第三十七條ニ揭グル罪ハ刑法第三條ノ例ニ、第三十八條ニ揭グル罪ハ刑法第四條ノ例ニ從フ