朕米穀統制法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年十月二十一日
內閣總理大臣 子爵 齋藤實
大藏大臣 高橋是淸
農林大臣 後藤文夫
拓務大臣 永井柳太郞
外務大臣 廣田弘毅
勅令第二百八十號
米穀統制法施行令
第一條 米穀統制法第二條ノ最低價格及最高價格ハ每年十二月東京市及大阪市ニ於ケル價格ニ付之ヲ公定ス
前項ノ最低價格及最高價格ハ當該年產ノ內地米ニシテ農林大臣ノ吿示スル銘柄及等級ノモノニ付之ヲ定ム
第二條 最低價格ハ農林大臣ノ定ムル標準最低價格ヲ農林大臣ノ指定スル銘柄及等級ノ米穀ノ最低價格ノ總平均タラシムル計算ノ下ニ命令ノ定ムル所ニ依リ格差ニ從ヒ各銘柄及等級ノ米穀每ニ之ヲ定ム
前項ノ標準最低價格ハ當該年產米穀ノ生產費ニ運賃諸掛ヲ加ヘタル額ト米價指數ト物價指數トノ關係ヨリ算出シタル價格ニ基キ農林大臣ノ定ムル價格トノ範圍內ニ於テ之ヲ定ム
前項ノ農林大臣ノ定ムル價格ハ米價指數ト物價指數トノ關係ヨリ算出シタル價格ノ下値一割ニ相當スル價格ト下値二割ニ相當スル價格トノ範圍內ニ於テ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第三條 最高價格ハ農林大臣ノ定ムル標準最高價格ト前條ノ標準最低價格トノ差額ヲ前條ノ規定ニ依リ定メタル各銘柄及等級ノ米穀ノ最低價格ニ加ヘ之ヲ定ム
前項ノ標準最高價格ハ當該年ニ調查シタル家計費ヲ基礎トシテ算出シタル價格(家計米價)ト米價指數ト物價指數トノ關係ヨリ算出シタル價格ニ基キ農林大臣ノ定ムル價格トノ範圍內ニ於テ之ヲ定ム
前項ノ農林大臣ノ定ムル價格ハ米價指數ト物價指數トノ關係ヨリ算出シタル價格ノ上値二割ニ相當スル價格ト上値三割ニ相當スル價格トノ範圍內ニ於テ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第四條 米穀統制法第二條ノ米穀生產費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每年調查シタル各農家ノ玄米一石當生產費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ玄米一石當生產費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各號ニ揭グル費用ノ合計額ヨリ副收入ノ金額ヲ控除シタルモノヲ米穀收量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
一 種籾代
二 肥料代
三 勞賃
四 畜力費
五 諸材料費
六 農舍費
七 農具費
八 租稅其ノ他ノ公課
九 部落協議費又ハ之ニ準ズルモノ(水利費又ハ病蟲害驅除豫防費タルモノ)
十 土地資本利子
十一 小作料
十二 米穀檢查手數料
前項各號ニ揭グル事項、副收入及米穀收量ノ調查方法ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條 第二條第二項ノ運賃諸掛ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ニ揭グル費用ノ合計額ヲ平均シ之ヲ算出ス
一 農林大臣ノ指定スル地方主要米穀集散地ニ於テ要スル小運送費及積込賃
二 前號ノ地方主要米穀集散地ヨリ第一條ノ地迄ノ鐵道又ハ船舶ノ運賃
三 第一條ノ地ニ於テ要スル積卸賃及小運送費
第六條 第三條第二項ノ家計米價ハ命令ノ定ムル所ニ依リ白米一石當價格ヲ玄米一石當價格ニ換算シテ之ヲ定ム
前項ノ白米一石當價格ハ命令ノ定ムル所ニ從ヒ每年調查シタル各世帶ノ家計費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ニ依リ算定スル平均家計費中ノ米代ト平均家計費中ノ副食物費、嗜好品費、交際費、修養娛樂費、旅行費及貯金額ノ合計額ニ別ニ吿示スル割合ヲ乘ジタル額トノ合計額ヲ平均一世帶當白米消費量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
第七條 米穀統制法第二條第三項ノ規定ニ依ル最低價格又ハ最高價格ノ改定ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第二條又ハ第三條ノ規定ニ準ジテ之ヲ行フ
米穀ノ需給狀況ニ著シキ變動ヲ生ジ又ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テ最低價格又ハ最高價格ヲ改定スルハ九月一日以後ニ限ル
第八條 米穀統制法第三條ノ規定ニ依リ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲ス場合ニ於テ東京市及大阪市以外ノ地ヲ其ノ受渡地ニ指定シタルトキハ其ノ地ヨリ東京市又ハ大阪市ニ至ル迄ノ運賃諸掛ノ範圍內ニ於テ農林大臣ノ定ムル金額ヲ參酌シテ買入又ハ賣渡ノ代金ヲ定ムルコトヲ得
第九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ハ政府ハ米穀統制法第三條ノ規定ニ依ル賣渡又ハ買入ノ申込ニ應ゼザルコトヲ得
一 申込數量ガ命令ノ定ムル數量ニ達セザルトキ
二 買占其ノ他不當ノ利得ヲ圖ル目的ヲ以テ申込ヲ爲シタルモノト認メタルトキ
第十條 最高價格ニ依ル買入ノ申込アリタル場合ニ於テ買入ノ申込アリタル銘柄及等級ノ米穀ヲ所有セザルトキハ政府ハ買入申込者ニ於テ申込ノ際反對ノ意思ヲ表示シタル場合ヲ除クノ外他ノ銘柄及等級ノ米穀ヲ賣渡スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ第三條ノ規定ニ依ル最高價格ノ定ナキ銘柄及等級ノ米穀ヲ賣渡ス場合ニ於テハ其ノ價格ハ農林大臣之ヲ定メ公示ス
第十一條 米穀統制法第四條ノ規定ニ依ル內地米ノ買入數量ハ當該米穀年度ニ於ケル年推算移出數量ヲ月平均シタルモノノ四月分ヲ當該米穀年度ニ於ケル十一月ヨリ二月ニ至ル各月推算移出數量ノ合計額ヨリ控除シタル數量ヲ限度トス
前項ノ年推算移出數量ハ命令ヲ以テ定ムル各道府縣別ノ第二囘米穀豫想收穫高ニ當該道府縣ノ米穀生產高ニ對スル當該道府縣產米ノ地域外移出數量ノ割合ヲ前五年ニ付平均シタルモノヲ乘ジ算出シタルモノノ合計額トス
第一項ノ各月推算移出數量ハ各月ニ於ケル各道府縣產米ノ地域外移出數量ノ年移出數量ニ對スル割合ヲ前五年ニ付平均シタルモノヲ當該道府縣ノ年推算移出數量ニ乘ジタルモノノ合計額トス
米穀統制法第四條ノ規定ニ依ル朝鮮米又ハ臺灣米ノ買入數量ノ限度ハ前三項ノ規定ニ準ジテ算出シタル數量ヲ限度トス
第十二條 米穀統制法第四條ノ規定ニ依リ買入レタル米穀ノ數量ニ相當スル米穀ハ當該米穀年度內ニ於テ賣渡ヲ爲スモノトス但シ農林大臣ノ指定スル銘柄及等級ニ該當スル米穀ノ農林大臣ノ指定スル市場ニ於ケル平均價格ガ標準最低價格ノ上値五分ニ相當スル價格以下ニ在ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ平均價格ハ前項ノ市場ニ於テ每日取引セラレタルモノノ一石當平均取引價格ノ總和ヲ平均シテ之ヲ定ム
前項ノ一石當平均取引價格ハ各銘柄及等級別ニ其ノ取引總金額ヲ取引總數量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
第十三條 米穀統制法第四條ノ規定ニ依ル朝鮮米及臺灣米ノ買入又ハ賣渡ハ朝鮮米ニ在リテハ朝鮮ニ於テ、臺灣米ニ在リテハ臺灣ニ於テ之ヲ行フ但シ特別ノ事情アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十四條 米穀ノ買換ヲ行フ場合ニ於ケル賣渡及買入ハ同時期ニ於テ之ヲ行フ但シ八月ヨリ十月迄ノ間ニ於テ賣渡ヲ行ヒ新米ノ出廻期ニ於テ買入ヲ行フ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十五條 米穀統制法第六條ノ規定ニ依ル米穀ノ貸付ハ道府縣ニ於テ米穀ヲ市町村、產業組合、農會等ニ對シ農林大臣ノ適當ト認ムル條件ヲ以テ貸付又ハ賣渡ヲ爲サントスル場合ニ之ヲ行フ
第十六條 米穀統制法第六條ノ規定ニ依リ米穀ノ貸付ヲ受ケタル道府縣ハ貸付ヲ受ケタル米穀ト同一數量ノ米穀ヲ貸付ヲ受ケタル日ヨリ一年以內ニ於テ農林大臣ノ指定スル時期ニ返還スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ返還スベキ米穀ハ農林大臣ノ指定スル所ニ從ヒ返還スベキ時期ノ屬スル年當該年產又ハ其ノ前年產ノ米穀ニシテ貸付ヲ受ケタル米穀ト同一ノ銘柄及等級ノモノ又ハ之ト同格ノモノタルコトヲ要ス
第十七條 貸付又ハ返還ノ爲ニスル米穀ノ受渡ハ農林大臣ノ指定スル倉庫ニ於テ之ヲ行フ
第十八條 米穀統制法第七條ノ規定ニ依ル米穀ノ輸入又ハ輸出ノ許可ハ內地ニ於テハ農林大臣、朝鮮ニ於テハ朝鮮總督、臺灣ニ於テハ臺灣總督、樺太ニ於テハ樺太廳長官之ヲ行フ
朝鮮總督、臺灣總督及樺太廳長官ハ豫メ農林大臣ト議シ每年許可ニ依リ輸入セラルベキ米穀ノ數量ヲ定ム其ノ數量ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第十九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ米穀統制法第七條ノ規定ニ依ル許可ハ之ヲ受クルコトヲ要セズ
一 通商航海條約ニ別段ノ定アルトキ
二 政府ガ米穀統制法ニ依リ米穀ノ買入又ハ賣渡ヲ爲ス場合ニ於テ其ノ委託ヲ受ケ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ
三 船用品又ハ旅客ノ携帶品タル米穀、標本米其ノ他之ニ準ズベキ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ
前項第三號ニ規定スル米穀ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十條 主務大臣ハ米穀生產費、家計費竝ニ米穀其ノ他ノ穀物ノ生產高、現在高、移動及價格ノ調查ノ爲道府縣、市町村及市町村長ニ對シ調查上必要ナル事務ヲ行フベキコトヲ命ジ竝ニ適當ト認ムル者ニ對シ記帳及報吿ヲ命ズルコトヲ得
第二十一條 農林大臣ノ指定シタル市場ノ開設者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ市場ニ於テ每日取引セラレタル米穀ノ相場及數量ヲ農林大臣ニ報吿スベシ
第二十二條 日本銀行ハ卸賣物價ニ關スル調查ノ結果ヲ每月農林大臣ニ報吿スベシ
第二十三條 本令中米穀年度ト稱スルハ前年ノ十一月一日ヨリ其ノ年ノ十月三十一日迄トス
附 則
本令ハ米穀統制法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
米穀法施行令ハ之ヲ廢止ス
米穀統制法第二條ノ最低價格及最高價格ハ昭和八年ニ限リ十一月及十二月ニ之ヲ公定ス
前項ノ最低價格ノ決定ニ付參酌スベキ米穀生產費ハ十一月ニ公定スルモノニ付テハ米穀法施行令第五條ノ規定ニ依リ算出シタル昭和七年產米穀ノ生產費、十二月ニ公定スルモノニ付テハ昭和八年產米穀ノ生產費トス
昭和八年產米穀ノ生產費ニ付本令施行前米穀法施行令ニ依リ調查シタルモノハ本令ニ依リ之ヲ調查シタルモノト看做ス
米穀統制法第二條ノ最高價格ハ當分ノ內第三條ノ規定ニ拘ラズ米價指數ト物價指數トノ關係ヨリ算出シタル價格ノ上値二割ニ相當スル價格ト上値三割ニ相當スル價格トノ範圍內ニ於テ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ムルコトヲ得
米穀ノ輸入ハ當分ノ內總テ米穀統制法第七條ノ規定ニ依ル許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ
昭和八年勅令第二百七十一號ハ之ヲ廢止ス
朕米穀統制法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和八年十月二十一日
内閣総理大臣 子爵 斎藤実
大蔵大臣 高橋是清
農林大臣 後藤文夫
拓務大臣 永井柳太郎
外務大臣 広田弘毅
勅令第二百八十号
米穀統制法施行令
第一条 米穀統制法第二条ノ最低価格及最高価格ハ毎年十二月東京市及大阪市ニ於ケル価格ニ付之ヲ公定ス
前項ノ最低価格及最高価格ハ当該年産ノ内地米ニシテ農林大臣ノ告示スル銘柄及等級ノモノニ付之ヲ定ム
第二条 最低価格ハ農林大臣ノ定ムル標準最低価格ヲ農林大臣ノ指定スル銘柄及等級ノ米穀ノ最低価格ノ総平均タラシムル計算ノ下ニ命令ノ定ムル所ニ依リ格差ニ従ヒ各銘柄及等級ノ米穀毎ニ之ヲ定ム
前項ノ標準最低価格ハ当該年産米穀ノ生産費ニ運賃諸掛ヲ加ヘタル額ト米価指数ト物価指数トノ関係ヨリ算出シタル価格ニ基キ農林大臣ノ定ムル価格トノ範囲内ニ於テ之ヲ定ム
前項ノ農林大臣ノ定ムル価格ハ米価指数ト物価指数トノ関係ヨリ算出シタル価格ノ下値一割ニ相当スル価格ト下値二割ニ相当スル価格トノ範囲内ニ於テ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム
第三条 最高価格ハ農林大臣ノ定ムル標準最高価格ト前条ノ標準最低価格トノ差額ヲ前条ノ規定ニ依リ定メタル各銘柄及等級ノ米穀ノ最低価格ニ加ヘ之ヲ定ム
前項ノ標準最高価格ハ当該年ニ調査シタル家計費ヲ基礎トシテ算出シタル価格(家計米価)ト米価指数ト物価指数トノ関係ヨリ算出シタル価格ニ基キ農林大臣ノ定ムル価格トノ範囲内ニ於テ之ヲ定ム
前項ノ農林大臣ノ定ムル価格ハ米価指数ト物価指数トノ関係ヨリ算出シタル価格ノ上値二割ニ相当スル価格ト上値三割ニ相当スル価格トノ範囲内ニ於テ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム
第四条 米穀統制法第二条ノ米穀生産費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ毎年調査シタル各農家ノ玄米一石当生産費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ヲ平均シテ之ヲ算出ス
前項ノ玄米一石当生産費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各号ニ掲グル費用ノ合計額ヨリ副収入ノ金額ヲ控除シタルモノヲ米穀収量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
一 種籾代
二 肥料代
三 労賃
四 畜力費
五 諸材料費
六 農舎費
七 農具費
八 租税其ノ他ノ公課
九 部落協議費又ハ之ニ準ズルモノ(水利費又ハ病虫害駆除予防費タルモノ)
十 土地資本利子
十一 小作料
十二 米穀検査手数料
前項各号ニ掲グル事項、副収入及米穀収量ノ調査方法ニ関シテハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 第二条第二項ノ運賃諸掛ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ニ掲グル費用ノ合計額ヲ平均シ之ヲ算出ス
一 農林大臣ノ指定スル地方主要米穀集散地ニ於テ要スル小運送費及積込賃
二 前号ノ地方主要米穀集散地ヨリ第一条ノ地迄ノ鉄道又ハ船舶ノ運賃
三 第一条ノ地ニ於テ要スル積卸賃及小運送費
第六条 第三条第二項ノ家計米価ハ命令ノ定ムル所ニ依リ白米一石当価格ヲ玄米一石当価格ニ換算シテ之ヲ定ム
前項ノ白米一石当価格ハ命令ノ定ムル所ニ従ヒ毎年調査シタル各世帯ノ家計費(例外ト認ムルモノヲ除ク)ニ依リ算定スル平均家計費中ノ米代ト平均家計費中ノ副食物費、嗜好品費、交際費、修養娯楽費、旅行費及貯金額ノ合計額ニ別ニ告示スル割合ヲ乗ジタル額トノ合計額ヲ平均一世帯当白米消費量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
第七条 米穀統制法第二条第三項ノ規定ニ依ル最低価格又ハ最高価格ノ改定ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第二条又ハ第三条ノ規定ニ準ジテ之ヲ行フ
米穀ノ需給状況ニ著シキ変動ヲ生ジ又ハ生ズルノ虞アル場合ニ於テ最低価格又ハ最高価格ヲ改定スルハ九月一日以後ニ限ル
第八条 米穀統制法第三条ノ規定ニ依リ米穀ノ買入又ハ売渡ヲ為ス場合ニ於テ東京市及大阪市以外ノ地ヲ其ノ受渡地ニ指定シタルトキハ其ノ地ヨリ東京市又ハ大阪市ニ至ル迄ノ運賃諸掛ノ範囲内ニ於テ農林大臣ノ定ムル金額ヲ参酌シテ買入又ハ売渡ノ代金ヲ定ムルコトヲ得
第九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ハ政府ハ米穀統制法第三条ノ規定ニ依ル売渡又ハ買入ノ申込ニ応ゼザルコトヲ得
一 申込数量ガ命令ノ定ムル数量ニ達セザルトキ
二 買占其ノ他不当ノ利得ヲ図ル目的ヲ以テ申込ヲ為シタルモノト認メタルトキ
第十条 最高価格ニ依ル買入ノ申込アリタル場合ニ於テ買入ノ申込アリタル銘柄及等級ノ米穀ヲ所有セザルトキハ政府ハ買入申込者ニ於テ申込ノ際反対ノ意思ヲ表示シタル場合ヲ除クノ外他ノ銘柄及等級ノ米穀ヲ売渡スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ第三条ノ規定ニ依ル最高価格ノ定ナキ銘柄及等級ノ米穀ヲ売渡ス場合ニ於テハ其ノ価格ハ農林大臣之ヲ定メ公示ス
第十一条 米穀統制法第四条ノ規定ニ依ル内地米ノ買入数量ハ当該米穀年度ニ於ケル年推算移出数量ヲ月平均シタルモノノ四月分ヲ当該米穀年度ニ於ケル十一月ヨリ二月ニ至ル各月推算移出数量ノ合計額ヨリ控除シタル数量ヲ限度トス
前項ノ年推算移出数量ハ命令ヲ以テ定ムル各道府県別ノ第二回米穀予想収穫高ニ当該道府県ノ米穀生産高ニ対スル当該道府県産米ノ地域外移出数量ノ割合ヲ前五年ニ付平均シタルモノヲ乗ジ算出シタルモノノ合計額トス
第一項ノ各月推算移出数量ハ各月ニ於ケル各道府県産米ノ地域外移出数量ノ年移出数量ニ対スル割合ヲ前五年ニ付平均シタルモノヲ当該道府県ノ年推算移出数量ニ乗ジタルモノノ合計額トス
米穀統制法第四条ノ規定ニ依ル朝鮮米又ハ台湾米ノ買入数量ノ限度ハ前三項ノ規定ニ準ジテ算出シタル数量ヲ限度トス
第十二条 米穀統制法第四条ノ規定ニ依リ買入レタル米穀ノ数量ニ相当スル米穀ハ当該米穀年度内ニ於テ売渡ヲ為スモノトス但シ農林大臣ノ指定スル銘柄及等級ニ該当スル米穀ノ農林大臣ノ指定スル市場ニ於ケル平均価格ガ標準最低価格ノ上値五分ニ相当スル価格以下ニ在ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ平均価格ハ前項ノ市場ニ於テ毎日取引セラレタルモノノ一石当平均取引価格ノ総和ヲ平均シテ之ヲ定ム
前項ノ一石当平均取引価格ハ各銘柄及等級別ニ其ノ取引総金額ヲ取引総数量ヲ以テ除シテ之ヲ算出ス
第十三条 米穀統制法第四条ノ規定ニ依ル朝鮮米及台湾米ノ買入又ハ売渡ハ朝鮮米ニ在リテハ朝鮮ニ於テ、台湾米ニ在リテハ台湾ニ於テ之ヲ行フ但シ特別ノ事情アル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十四条 米穀ノ買換ヲ行フ場合ニ於ケル売渡及買入ハ同時期ニ於テ之ヲ行フ但シ八月ヨリ十月迄ノ間ニ於テ売渡ヲ行ヒ新米ノ出廻期ニ於テ買入ヲ行フ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十五条 米穀統制法第六条ノ規定ニ依ル米穀ノ貸付ハ道府県ニ於テ米穀ヲ市町村、産業組合、農会等ニ対シ農林大臣ノ適当ト認ムル条件ヲ以テ貸付又ハ売渡ヲ為サントスル場合ニ之ヲ行フ
第十六条 米穀統制法第六条ノ規定ニ依リ米穀ノ貸付ヲ受ケタル道府県ハ貸付ヲ受ケタル米穀ト同一数量ノ米穀ヲ貸付ヲ受ケタル日ヨリ一年以内ニ於テ農林大臣ノ指定スル時期ニ返還スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ返還スベキ米穀ハ農林大臣ノ指定スル所ニ従ヒ返還スベキ時期ノ属スル年当該年産又ハ其ノ前年産ノ米穀ニシテ貸付ヲ受ケタル米穀ト同一ノ銘柄及等級ノモノ又ハ之ト同格ノモノタルコトヲ要ス
第十七条 貸付又ハ返還ノ為ニスル米穀ノ受渡ハ農林大臣ノ指定スル倉庫ニ於テ之ヲ行フ
第十八条 米穀統制法第七条ノ規定ニ依ル米穀ノ輸入又ハ輸出ノ許可ハ内地ニ於テハ農林大臣、朝鮮ニ於テハ朝鮮総督、台湾ニ於テハ台湾総督、樺太ニ於テハ樺太庁長官之ヲ行フ
朝鮮総督、台湾総督及樺太庁長官ハ予メ農林大臣ト議シ毎年許可ニ依リ輸入セラルベキ米穀ノ数量ヲ定ム其ノ数量ヲ変更セントスルトキ亦同ジ
第十九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ米穀統制法第七条ノ規定ニ依ル許可ハ之ヲ受クルコトヲ要セズ
一 通商航海条約ニ別段ノ定アルトキ
二 政府ガ米穀統制法ニ依リ米穀ノ買入又ハ売渡ヲ為ス場合ニ於テ其ノ委託ヲ受ケ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ
三 船用品又ハ旅客ノ携帯品タル米穀、標本米其ノ他之ニ準ズベキ米穀ヲ輸入又ハ輸出スルトキ
前項第三号ニ規定スル米穀ノ範囲ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十条 主務大臣ハ米穀生産費、家計費並ニ米穀其ノ他ノ穀物ノ生産高、現在高、移動及価格ノ調査ノ為道府県、市町村及市町村長ニ対シ調査上必要ナル事務ヲ行フベキコトヲ命ジ並ニ適当ト認ムル者ニ対シ記帳及報告ヲ命ズルコトヲ得
第二十一条 農林大臣ノ指定シタル市場ノ開設者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ市場ニ於テ毎日取引セラレタル米穀ノ相場及数量ヲ農林大臣ニ報告スベシ
第二十二条 日本銀行ハ卸売物価ニ関スル調査ノ結果ヲ毎月農林大臣ニ報告スベシ
第二十三条 本令中米穀年度ト称スルハ前年ノ十一月一日ヨリ其ノ年ノ十月三十一日迄トス
附 則
本令ハ米穀統制法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
米穀法施行令ハ之ヲ廃止ス
米穀統制法第二条ノ最低価格及最高価格ハ昭和八年ニ限リ十一月及十二月ニ之ヲ公定ス
前項ノ最低価格ノ決定ニ付参酌スベキ米穀生産費ハ十一月ニ公定スルモノニ付テハ米穀法施行令第五条ノ規定ニ依リ算出シタル昭和七年産米穀ノ生産費、十二月ニ公定スルモノニ付テハ昭和八年産米穀ノ生産費トス
昭和八年産米穀ノ生産費ニ付本令施行前米穀法施行令ニ依リ調査シタルモノハ本令ニ依リ之ヲ調査シタルモノト看做ス
米穀統制法第二条ノ最高価格ハ当分ノ内第三条ノ規定ニ拘ラズ米価指数ト物価指数トノ関係ヨリ算出シタル価格ノ上値二割ニ相当スル価格ト上値三割ニ相当スル価格トノ範囲内ニ於テ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ムルコトヲ得
米穀ノ輸入ハ当分ノ内総テ米穀統制法第七条ノ規定ニ依ル許可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ
昭和八年勅令第二百七十一号ハ之ヲ廃止ス