朕樺太所得稅令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年四月十四日
內閣總理大臣 子爵 高橋是淸
勅令第二百二號
樺太所得稅令左ノ通改正ス
樺太所得稅令
第一條 樺太ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本令ニ依リ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第二條 前條ノ規定ニ該當セサル者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
一 樺太ニ資產又ハ營業ヲ有スルトキ
二 樺太ニ於テ公債、社債、銀行定期預金又ハ定期預金ノ性質ヲ有スル銀行預金ノ利子支拂ヲ受クルトキ
三 樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配當、剩餘金ノ分配又ハ利益若ハ剩餘金ノ處分タル賞與若ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ヲ受クルトキ
第三條 所得稅ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス但シ國債ノ利子及貯蓄債券法ニ依リ發行シタル貯蓄債券ノ利子ニハ之ヲ課セス
第一種
甲 法人ノ超過所得
乙 法人ノ留保所得
丙 法人ノ配當所得
丁 法人ノ淸算所得
戊 樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人ノ樺太ニ於ケル資產又ハ營業ヨリ生スル所得
第二種
甲 樺太ニ於テ支拂ヲ受クル公債、社債、銀行定期預金又ハ定期預金ノ性質ヲ有スル銀行預金ノ利子
乙 第一條ノ規定ニ該當セサル者ノ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當、剩餘金ノ分配又ハ利益若ハ剩餘金ノ處分タル賞與若ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與
第三種
第二種ニ屬セサル個人ノ所得
第四條 法人ノ所得ハ各事業年度ノ總益金ヨリ總損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ保險會社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剩餘金ニ依ル
第二條ノ規定ニ依リ納稅義務アル法人ノ所得ハ樺太ニ於ケル資產又ハ營業ニ付前項ノ規定ニ準シ之ヲ計算ス
法人カ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第五條 法人ノ各事業年度ノ所得カ同年度ノ資本金額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ超過所得トス
第六條 法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算ス
前項計算ノ場合ニ於テ繰越缺損金アルトキハ其ノ各月末ニ於ケル金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算シ資本金額ヨリ控除ス
第七條 第二條ノ規定ニ依リ納稅義務アル法人又ハ所得稅ヲ課スヘキ所得ト其ノ他ノ所得トヲ有スル法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第八條 本令ニ於テ積立金ト稱スルハ積立金其ノ他名義ノ何タルヲ問ハス法人ノ所得中其ノ留保シタルモノヲ謂フ
第九條 法人ノ各事業年度ノ所得中積立金ト爲シタル金額ヲ以テ法人ノ留保所得トス
法人カ積立金ヲ減少シタルトキハ其ノ減少額ヲ塡補スルニ至ル迄其ノ後ノ各事業年度ノ留保所得ニ付所得稅ヲ課セス
積立金ヲ減少シタル法人カ合併ニ因リテ消滅シタルトキハ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ニ付前項ノ規定ヲ適用ス但シ合併ノ際合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ積立金ヲ以テ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ノ株式金額又ハ出資金額ニ充當シタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十條 法人ノ各事業年度ノ所得中利益ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ニ充當シタル金額ヲ以テ法人ノ配當所得トス
法人ノ積立金ヲ減少シテ利益ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ニ充當シタル金額ハ之ヲ前項ノ配當所得ニ加算ス
第十一條 法人解散シタル場合ニ於テ其ノ殘餘財產ノ價額カ解散當時ノ拂込株式金額、出資金額、積立金及最後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ淸算所得トス
法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ社員カ合併後存續スル法人若ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ因リテ取得スル株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額及金錢ノ總額カ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ合併當時ノ拂込株式金額、出資金額、積立金及最後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ淸算所得ト看做ス
第十二條 合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ所得ニ付所得稅ヲ納ムル義務アルモノトス
第十三條 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人カ所得稅法施行地、朝鮮、臺灣、關東州又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ト合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人カ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スルトキハ第九條第三項及前條ノ規定ヲ準用ス
第十四條 第二種ノ所得ハ其ノ支拂ヲ受クヘキ金額ニ依ル
第十五條 第三種ノ所得ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 俸給給料歲費年金恩給退隱料及此等ノ性質ヲ有スル給與、營業ニ非サル貸金ノ利子竝第二種ノ所得ニ屬セサル公債社債及預金ノ利子ハ其ノ收入豫算年額
二 田又ハ畑ノ所得ハ前三年間每年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタルモノノ平均ニ依リ算出シタル收入豫算年額但シ前三年以來引續キ自作セス、小作セス又ハ小作ニ付セサル田又ハ畑ニ在リテハ近傍類地ノ所得ニ依リ算出シタル收入豫算年額
三 山林ノ所得ハ前年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
四 賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ハ前年四月一日ヨリ其ノ年三月末日ニ至ル期間ノ收入金額
五 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ハ前年四月一日ヨリ其ノ年三月末日ニ至ル期間ノ收入金額ヨリ其ノ十分ノ四ニ相當スル金額ヲ控除シタル金額但シ無記名式ノ株式ヲ有スル者ノ受クル配當ハ同期間ニ於テ支拂ヲ受ケタル金額ヨリ其ノ十分ノ四ニ相當スル金額ヲ控除シタル金額
六 前各號以外ノ所得ハ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル收入豫算年額
法人ノ社員其ノ退社ニ因リ持分ノ拂戾トシテ受クル金額カ其ノ退社當時ニ於ケル出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ其ノ法人ヨリ受クル利益ノ配當ト看做ス株式ノ消却ニ因リ支拂ヲ受クル金額カ其ノ株式ノ拂込濟金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額亦同シ
第十六條 前條ノ規定ニ依リ算出シタル金額一萬二千圓以下ナルトキハ其ノ所得中俸給給料歲費年金恩給退隱料賞與及此等ノ性質ヲ有スル給與ニ付テハ其ノ十分ノ一、六千圓以下ナルトキハ同十分ノ二、三千圓以下ナルトキハ同十分ノ三ニ相當スル金額ヲ控除ス
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第十七條 前二條ノ規定ニ依リ算出シタル金額三千圓以下ナル場合ニ於テ其ノ年四月一日現在ノ同居ノ戶主及家族中年齡十八歲未滿若ハ六十歲以上ノ者又ハ不具癈疾者アルトキハ其ノ所得ヲ有スル者ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ左ノ各號ノ規定ニ依ル金額ヲ控除ス但シ第二條ノ規定ニ依ル納稅義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
一 所得二千圓以下ナルトキ 年齡十八歲未滿若ハ六十歲以上ノ者又ハ不具癈疾者 一人ニ付 七十圓
二 所得三千圓以下ナルトキ 同 一人ニ付 五十圓
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ所得ヨリ控除セラルヘキ金額ハ各其ノ所得ニ案分シテ之ヲ計算ス
同一人ニシテ山林ノ所得ト其ノ以外ノ所得トヲ有スル場合ニ於テハ前三項ノ規定ニ依ル控除ハ先ツ山林ノ所得以外ノ所得ニ付之ヲ爲シ不足アルトキハ山林ノ所得ニ及フ
第一項ノ不具癈疾者ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第十八條 左ニ揭クルモノニハ所得稅ヲ課セス
一 樺太廳長官ノ指定スル公共團體
二 民法第三十四條ノ規定ニ依リ設立シタル法人其ノ他之ニ類スルモノニシテ樺太廳長官ノ指定スルモノ
第十九條 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ關東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ第一種甲及戊竝第二種乙ノ所得ニ付テハ所得稅ヲ課セス
第二十條 所得稅法施行地又ハ臺灣ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第二種乙ノ所得ニ付テハ所得稅ヲ課セス
所得稅法施行地若ハ臺灣ニ住所ヲ有スル個人又ハ樺太ニ住所ヲ有セスシテ所得稅法施行地若ハ臺灣ニ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第三種ノ所得ニ付テハ左ニ揭クル場合ヲ除クノ外所得稅ヲ課セス
一 樺太ニ住所ヲ有スル者所得金額決定後所得稅法施行地又ハ臺灣ニ住所ヲ移轉シタルトキ
二 所得稅法施行地又ハ臺灣ニ住所ヲ有スル者所得稅法施行地又ハ臺灣ニ於ケル法令ニ依ル所得金額決定前樺太ニ住所ヲ移轉シタルトキ
三 樺太、所得稅法施行地又ハ臺灣ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル者ノ住所又ハ居所ニ付前二號ニ準スヘキ事由ノ生シタルトキ
第二十一條 第三種ノ所得ニシテ左ノ各號ニ該當スルモノニハ所得稅ヲ課セス
一 軍人從軍中ノ俸給及手當
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給又ハ退隱料
三 旅費、學資金法定扶養料
四 郵便貯金、產業組合貯金及銀行貯蓄預金ノ利子
五 所得稅法施行地又ハ臺灣ニ於ケル法令ニ依ル第二種ノ所得トシテ所得稅ヲ課スル所得
六 營利ノ事業ニ屬セサル一時ノ所得
七 日本ノ國籍ヲ有セサル者ノ樺太、臺灣及所得稅法施行地外ニ於ケル資產、營業又ハ職業ヨリ生スル所得
八 乘馬ヲ有スル義務アル軍人カ政府ヨリ受クル馬糧、繫畜料及馬匹保續料
第二十二條 樺太廳長官ノ指定スル重要物產ノ製造業ヲ營ム者ニハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生スル所得ニ付所得稅ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ所得稅ノ免除ヲ受クル重要物產ノ製造業ヲ繼續シ又ハ其ノ繼續ト認ムヘキ事實アル者ハ其ノ製造業ニ付所得稅ノ免除期間ノ殘存スルトキニ限リ其ノ免除期間ヲ繼承ス
第二十三條 所得稅法施行地、朝鮮、臺灣又ハ關東州ニ於テ所得稅ヲ免除スル各當該地ノ製造業ヨリ生スル所得ニ付テハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ所得稅ヲ免除ス
第二十四條 第三種ノ所得ハ千圓ニ滿タサルトキハ所得稅ヲ課セス第十六條及第十七條ノ規定ニ依ル控除ヲ爲シタル爲千圓ニ滿タサルニ至リタルトキ亦同シ
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第二十五條 第一種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 超過所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
所得金額中資本金額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ四
同 百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ十
同 百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ二十
乙 百分ノ五
丙 百分ノ五
丁 百分ノ七・五
戊 百分ノ七・五
法人ノ事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額カ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及之ニ代ルヘキ積立金ノ合計金額ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ニ屬スル其ノ事業年度ノ留保所得ニ對スル稅率ハ百分ノ十トシ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額、出資金額又ハ基金及之ニ代ルヘキ積立金ノ合計金額ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ニ屬スル其ノ事業年度ノ留保所得ニ對スル稅率ハ百分ノ二十トス但シ其ノ事業年度ニ於ケル所得ノ二十分ノ一ニ相當スル金額以內ノ金額ニ付テハ其ノ稅率ハ百分ノ五トス
第二十六條 第二種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 公債ノ利子 百分ノ四
其ノ他 百分ノ五
乙 百分ノ七・五
第二十七條 第三種ノ所得ニ對スル所得稅ハ所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用シテ之ヲ賦課ス但シ山林ノ所得ト其ノ以外ノ所得トハ之ヲ區分シ各別ニ稅率ヲ適用ス
千圓以下ノ金額 百分ノ〇・五
千圓ヲ超ユル金額 百分ノ一
千五百圓ヲ超ユル金額 百分ノ一・五
二千圓ヲ超ユル金額 百分ノ二
三千圓ヲ超ユル金額 百分ノ三
五千圓ヲ超ユル金額 百分ノ四
七千圓ヲ超ユル金額 百分ノ五
一萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ六・五
一萬五千圓ヲ超ユル金額 百分ノ八
二萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ九・五
三萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十一
四萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十三
五萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十五
七萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十七
十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ十九
二十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十一
五十萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十三
百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
二百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ二十七
三百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ三十
四百萬圓ヲ超ユル金額 百分ノ三十三
前項ノ場合ニ於テ戶主及其ノ同居家族ノ所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ對シ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ各其ノ所得金額ニ案分シテ各其ノ稅額ヲ定ム戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得金額ニ付亦同シ
第二十八條 第一種ノ所得ニ付納稅義務アル者ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ財產目錄、貸借對照表、損益計算書又ハ淸算若ハ合併ニ關スル計算書竝第四條乃至第十一條ノ規定ニ依リ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附シ其ノ所得ヲ政府ニ申告スヘシ但シ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人ハ樺太ニ於ケル資產又ハ營業ニ關スル損益ヲ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附スヘシ
前項ノ規定ハ第一種ノ所得ニ付所得稅ヲ課セラルヘキ法人ニ付其ノ所得ナキ場合ニ之ヲ準用ス
第二十九條 第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者ハ每年四月中ニ所得ノ種類及金額ヲ詳記シ政府ニ申告スヘシ
第十七條ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケムトスル者ハ前項ノ申告ト同時ニ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スヘシ
第三十條 第一種及第三種ノ所得金額ハ前二條ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
第三十一條 各支廳所轄內ニ所得調査委員會ヲ置キ第三種所得ノ調査ニ關スル事項ヲ諮問ス
調査委員ノ定數ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第三十二條 調査委員ハ所得調査委員會ノ屬スル區域內ニ住居シ前年第三種ノ所得稅ヲ納メ其ノ年第二十九條ノ申告ヲ爲シタル者ニ就キ支廳長之ヲ命ス
調査委員ノ任期ハ四年トス
第三十三條 調査委員左ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
一 第三種ノ所得ニ付納稅義務ヲ有セサルニ至リタルトキ
二 所得調査委員會ノ屬スル區域內ニ住居セサルニ至リタルトキ
調査委員職務ヲ怠リ又ハ體面ヲ汚損スル行爲アリタルトキハ支廳長ハ之ヲ免スルコトヲ得
第三十四條 調査委員ニハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ手當及旅費ヲ給ス
第三十五條 所得調査委員會ノ議事ニ關スル事項ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第三十六條 八月三十日迄ニ所得調査委員會諮問事項ヲ議了セサルトキハ政府ハ直ニ所得金額ヲ決定ス
第三十七條 所得調査委員會閉會後第三種ノ所得ヲ有スル者納稅義務アルコトヲ申出テ又ハ納稅義務者所得金額ノ增加アルコトヲ申出テタルトキハ政府ハ所得調査委員會ニ諮問セス其ノ金額ヲ決定ス
第三十八條 樺太ニ於テ利子支拂ヲ爲スヘキ公債又ハ社債ヲ募集シタル者ハ遲滯ナク其ノ公債又ハ社債ニ付左ノ事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スヘシ
一 公債又ハ社債ノ名稱及其ノ總額
二 利子支拂期限及利率
三 償還ノ方法及期限
四 數囘ニ分チテ拂込ヲ爲サシムルトキハ其ノ拂込ノ金額及時期
第三十九條 第三種ノ所得ニ屬スル俸給給料歲費年金恩給退隱料賞與若ハ此等ノ性質ヲ有スル給與ノ支拂ヲ爲ス者又ハ利益若ハ利息ノ配當若ハ剩餘金ノ分配ヲ爲ス法人ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ支拂調書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ支拂調書ヲ提出シタル者ニ對シテハ樺太廳長官ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第四十條 稅務官吏ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者、納稅義務アリト認ムル者又ハ前條第一項ノ支拂調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問シ又ハ其ノ所得若ハ支拂ニ關スル帳簿及物件ヲ檢査スルコトヲ得
第四十一條 稅務官吏ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者又ハ納稅義務アリト認ムル者ニ金錢又ハ物品ヲ支拂フノ義務ヲ有スト認ムル者ニ對シ其ノ金額、數量、價格又ハ支拂期日ニ付質問スルコトヲ得
第四十二條 第一種又ハ第三種ノ所得金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
樺太ニ住所又ハ居所ヲ有セサル納稅義務者納稅管理人ノ申告ヲ爲ササルトキハ前項ノ通知ハ公告ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第四十三條 第三種ノ所得ニ付納稅義務アル者收入豫算年額四分ノ一以上ヲ減損シタルトキハ政府ニ所得金額ノ更訂ノ請求ヲ爲スコトヲ得但シ翌年一月三十一日ヲ過キタルトキハ此ノ限ニ在ラス
所得金額決定後贈與ヲ爲シタル爲所得金額ヲ減損シタル場合ニハ前項ノ規定ヲ適用セス
第四十四條 前條第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ所得金額ヲ査覈シ收入豫算年額ニ對シ四分ノ一以上ノ減損アルトキハ之ヲ更訂ス
第四十五條 第一種ノ所得ニ付テハ事業年度每ニ所得稅ヲ徵收ス但シ淸算所得ニ付テハ淸算又ハ合併ノ際之ヲ徵收ス
第二種ノ所得ニ付テハ其ノ金額支拂ノ際支拂者其ノ所得稅ヲ徵收シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムヘシ
第三種ノ所得ニ付テハ其ノ所得稅ノ納期ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第四十六條 前條第二項ノ規定ニ依リ徵收スヘキ所得稅ヲ徵收セサルトキ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セサルトキハ國稅徵收ノ例ニ依リ之ヲ支拂者ヨリ徵收ス
第四十七條 法人解散シタル場合ニ於テ淸算所得ニ對スル所得稅又ハ前條ノ規定ニ依リ徵收セラルル稅金ヲ納付セスシテ殘餘財產ヲ分配シタルトキハ其ノ稅金ニ付淸算人連帶シテ納稅ノ義務アルモノトス
第四十八條 第四十三條第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ更訂處分ノ確定スルニ至ル迄稅金ノ徵收ヲ猶豫スルコトヲ得
第四十九條 第三種ノ所得ニ付二以上ノ支廳所轄內ニ於テ所得金額ノ決定アリタルトキハ政府ハ納稅義務者ノ住所地以外、住所ナキトキハ居所地以外ニ於ケル所得金額ノ決定ヲ取消スヘシ
第五十條 所得稅ヲ納ムル義務アル法人樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサルトキハ納稅地ヲ定メ政府ニ申告スヘシ申告ナキトキハ政府其ノ納稅地ヲ指定ス
第五十一條 第三種ノ所得ニ對スル所得稅ハ納稅義務者ノ住所地、住所ナキトキハ居所地ヲ以テ納稅地トス但シ住所地以外ニ在ル者ハ申告シテ居所地ニ於テ所得稅ヲ納ムルコトヲ得
樺太ニ住所及居所ナキ者ハ納稅地ヲ定メ政府ニ申告スヘシ申告ナキトキハ政府其ノ納稅地ヲ指定ス
第五十二條 納稅義務者納稅地ニ現住セサルトキハ其ノ所得ノ申告、納稅其ノ他所得稅ニ關スル一切ノ事項ヲ處理セシムル爲納稅管理人ヲ定メ政府ニ申告スヘシ樺太外ニ住所又ハ居所ヲ移サムトスルトキ亦同シ
第五十三條 本令ニ定ムルモノノ外所得稅ニ關シ必要ナル規定ハ樺太廳長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三種ノ所得ニ付テハ大正十一年分所得稅ヨリ之ヲ適用ス
大正十一年中ニ任命スヘキ所得調査委員ハ所得調査委員會ノ屬スル區域內ニ住居シ其ノ年第二十九條ノ申告ヲ爲シタル者ニ就キ支廳長之ヲ命ス
朕樺太所得税令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年四月十四日
内閣総理大臣 子爵 高橋是清
勅令第二百二号
樺太所得税令左ノ通改正ス
樺太所得税令
第一条 樺太ニ住所ヲ有シ又ハ一年以上居所ヲ有スル者ハ本令ニ依リ所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第二条 前条ノ規定ニ該当セサル者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ其ノ所得ニ付テノミ所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
一 樺太ニ資産又ハ営業ヲ有スルトキ
二 樺太ニ於テ公債、社債、銀行定期預金又ハ定期預金ノ性質ヲ有スル銀行預金ノ利子支払ヲ受クルトキ
三 樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ利益若ハ利息ノ配当、剰余金ノ分配又ハ利益若ハ剰余金ノ処分タル賞与若ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ヲ受クルトキ
第三条 所得税ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス但シ国債ノ利子及貯蓄債券法ニ依リ発行シタル貯蓄債券ノ利子ニハ之ヲ課セス
第一種
甲 法人ノ超過所得
乙 法人ノ留保所得
丙 法人ノ配当所得
丁 法人ノ清算所得
戊 樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人ノ樺太ニ於ケル資産又ハ営業ヨリ生スル所得
第二種
甲 樺太ニ於テ支払ヲ受クル公債、社債、銀行定期預金又ハ定期預金ノ性質ヲ有スル銀行預金ノ利子
乙 第一条ノ規定ニ該当セサル者ノ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当、剰余金ノ分配又ハ利益若ハ剰余金ノ処分タル賞与若ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与
第三種
第二種ニ属セサル個人ノ所得
第四条 法人ノ所得ハ各事業年度ノ総益金ヨリ総損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ保険会社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剰余金ニ依ル
第二条ノ規定ニ依リ納税義務アル法人ノ所得ハ樺太ニ於ケル資産又ハ営業ニ付前項ノ規定ニ準シ之ヲ計算ス
法人カ事業年度中ニ解散シ又ハ合併ニ因リテ消滅シタル場合ニ於テハ其ノ事業年度ノ始ヨリ解散又ハ合併ニ至ル迄ノ期間ヲ以テ一事業年度ト看做ス
第五条 法人ノ各事業年度ノ所得カ同年度ノ資本金額ニ対シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ超過所得トス
第六条 法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ各月末ニ於ケル払込株式金額、出資金額又ハ基金及積立金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算ス
前項計算ノ場合ニ於テ繰越欠損金アルトキハ其ノ各月末ニ於ケル金額ノ月割平均ヲ以テ之ヲ計算シ資本金額ヨリ控除ス
第七条 第二条ノ規定ニ依リ納税義務アル法人又ハ所得税ヲ課スヘキ所得ト其ノ他ノ所得トヲ有スル法人ノ各事業年度ノ資本金額ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ之ヲ計算ス
第八条 本令ニ於テ積立金ト称スルハ積立金其ノ他名義ノ何タルヲ問ハス法人ノ所得中其ノ留保シタルモノヲ謂フ
第九条 法人ノ各事業年度ノ所得中積立金ト為シタル金額ヲ以テ法人ノ留保所得トス
法人カ積立金ヲ減少シタルトキハ其ノ減少額ヲ填補スルニ至ル迄其ノ後ノ各事業年度ノ留保所得ニ付所得税ヲ課セス
積立金ヲ減少シタル法人カ合併ニ因リテ消滅シタルトキハ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ニ付前項ノ規定ヲ適用ス但シ合併ノ際合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ積立金ヲ以テ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ノ株式金額又ハ出資金額ニ充当シタルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十条 法人ノ各事業年度ノ所得中利益ノ配当又ハ剰余金ノ分配ニ充当シタル金額ヲ以テ法人ノ配当所得トス
法人ノ積立金ヲ減少シテ利益ノ配当又ハ剰余金ノ分配ニ充当シタル金額ハ之ヲ前項ノ配当所得ニ加算ス
第十一条 法人解散シタル場合ニ於テ其ノ残余財産ノ価額カ解散当時ノ払込株式金額、出資金額、積立金及最後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ヲ以テ法人ノ清算所得トス
法人合併ヲ為シタル場合ニ於テ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ株主又ハ社員カ合併後存続スル法人若ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ヨリ合併ニ因リテ取得スル株式ノ払込済金額又ハ出資金額及金銭ノ総額カ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ合併当時ノ払込株式金額、出資金額、積立金及最後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ清算所得ト看做ス
第十二条 合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人ハ合併ニ因リテ消滅シタル法人ノ所得ニ付所得税ヲ納ムル義務アルモノトス
第十三条 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人カ所得税法施行地、朝鮮、台湾、関東州又ハ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ト合併ヲ為シタル場合ニ於テ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リテ設立シタル法人カ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スルトキハ第九条第三項及前条ノ規定ヲ準用ス
第十四条 第二種ノ所得ハ其ノ支払ヲ受クヘキ金額ニ依ル
第十五条 第三種ノ所得ハ左ノ各号ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 俸給給料歳費年金恩給退隠料及此等ノ性質ヲ有スル給与、営業ニ非サル貸金ノ利子並第二種ノ所得ニ属セサル公債社債及預金ノ利子ハ其ノ収入予算年額
二 田又ハ畑ノ所得ハ前三年間毎年ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタルモノノ平均ニ依リ算出シタル収入予算年額但シ前三年以来引続キ自作セス、小作セス又ハ小作ニ付セサル田又ハ畑ニ在リテハ近傍類地ノ所得ニ依リ算出シタル収入予算年額
三 山林ノ所得ハ前年ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
四 賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ハ前年四月一日ヨリ其ノ年三月末日ニ至ル期間ノ収入金額
五 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ハ前年四月一日ヨリ其ノ年三月末日ニ至ル期間ノ収入金額ヨリ其ノ十分ノ四ニ相当スル金額ヲ控除シタル金額但シ無記名式ノ株式ヲ有スル者ノ受クル配当ハ同期間ニ於テ支払ヲ受ケタル金額ヨリ其ノ十分ノ四ニ相当スル金額ヲ控除シタル金額
六 前各号以外ノ所得ハ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル収入予算年額
法人ノ社員其ノ退社ニ因リ持分ノ払戻トシテ受クル金額カ其ノ退社当時ニ於ケル出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ其ノ法人ヨリ受クル利益ノ配当ト看做ス株式ノ消却ニ因リ支払ヲ受クル金額カ其ノ株式ノ払込済金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額亦同シ
第十六条 前条ノ規定ニ依リ算出シタル金額一万二千円以下ナルトキハ其ノ所得中俸給給料歳費年金恩給退隠料賞与及此等ノ性質ヲ有スル給与ニ付テハ其ノ十分ノ一、六千円以下ナルトキハ同十分ノ二、三千円以下ナルトキハ同十分ノ三ニ相当スル金額ヲ控除ス
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第十七条 前二条ノ規定ニ依リ算出シタル金額三千円以下ナル場合ニ於テ其ノ年四月一日現在ノ同居ノ戸主及家族中年齢十八歳未満若ハ六十歳以上ノ者又ハ不具廃疾者アルトキハ其ノ所得ヲ有スル者ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ左ノ各号ノ規定ニ依ル金額ヲ控除ス但シ第二条ノ規定ニ依ル納税義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
一 所得二千円以下ナルトキ 年齢十八歳未満若ハ六十歳以上ノ者又ハ不具廃疾者 一人ニ付 七十円
二 所得三千円以下ナルトキ 同 一人ニ付 五十円
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テハ所得ヨリ控除セラルヘキ金額ハ各其ノ所得ニ案分シテ之ヲ計算ス
同一人ニシテ山林ノ所得ト其ノ以外ノ所得トヲ有スル場合ニ於テハ前三項ノ規定ニ依ル控除ハ先ツ山林ノ所得以外ノ所得ニ付之ヲ為シ不足アルトキハ山林ノ所得ニ及フ
第一項ノ不具廃疾者ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第十八条 左ニ掲クルモノニハ所得税ヲ課セス
一 樺太庁長官ノ指定スル公共団体
二 民法第三十四条ノ規定ニ依リ設立シタル法人其ノ他之ニ類スルモノニシテ樺太庁長官ノ指定スルモノ
第十九条 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ関東州ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ノ第一種甲及戊並第二種乙ノ所得ニ付テハ所得税ヲ課セス
第二十条 所得税法施行地又ハ台湾ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第二種乙ノ所得ニ付テハ所得税ヲ課セス
所得税法施行地若ハ台湾ニ住所ヲ有スル個人又ハ樺太ニ住所ヲ有セスシテ所得税法施行地若ハ台湾ニ一年以上居所ヲ有スル個人ノ第三種ノ所得ニ付テハ左ニ掲クル場合ヲ除クノ外所得税ヲ課セス
一 樺太ニ住所ヲ有スル者所得金額決定後所得税法施行地又ハ台湾ニ住所ヲ移転シタルトキ
二 所得税法施行地又ハ台湾ニ住所ヲ有スル者所得税法施行地又ハ台湾ニ於ケル法令ニ依ル所得金額決定前樺太ニ住所ヲ移転シタルトキ
三 樺太、所得税法施行地又ハ台湾ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有スル者ノ住所又ハ居所ニ付前二号ニ準スヘキ事由ノ生シタルトキ
第二十一条 第三種ノ所得ニシテ左ノ各号ニ該当スルモノニハ所得税ヲ課セス
一 軍人従軍中ノ俸給及手当
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給又ハ退隠料
三 旅費、学資金法定扶養料
四 郵便貯金、産業組合貯金及銀行貯蓄預金ノ利子
五 所得税法施行地又ハ台湾ニ於ケル法令ニ依ル第二種ノ所得トシテ所得税ヲ課スル所得
六 営利ノ事業ニ属セサル一時ノ所得
七 日本ノ国籍ヲ有セサル者ノ樺太、台湾及所得税法施行地外ニ於ケル資産、営業又ハ職業ヨリ生スル所得
八 乗馬ヲ有スル義務アル軍人カ政府ヨリ受クル馬糧、繋畜料及馬匹保続料
第二十二条 樺太庁長官ノ指定スル重要物産ノ製造業ヲ営ム者ニハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生スル所得ニ付所得税ヲ免除ス
前項ノ規定ニ依リ所得税ノ免除ヲ受クル重要物産ノ製造業ヲ継続シ又ハ其ノ継続ト認ムヘキ事実アル者ハ其ノ製造業ニ付所得税ノ免除期間ノ残存スルトキニ限リ其ノ免除期間ヲ継承ス
第二十三条 所得税法施行地、朝鮮、台湾又ハ関東州ニ於テ所得税ヲ免除スル各当該地ノ製造業ヨリ生スル所得ニ付テハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ所得税ヲ免除ス
第二十四条 第三種ノ所得ハ千円ニ満タサルトキハ所得税ヲ課セス第十六条及第十七条ノ規定ニ依ル控除ヲ為シタル為千円ニ満タサルニ至リタルトキ亦同シ
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第二十五条 第一種ノ所得ニ対スル所得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 超過所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用ス
所得金額中資本金額ニ対シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ四
同 百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ十
同 百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ二十
乙 百分ノ五
丙 百分ノ五
丁 百分ノ七・五
戊 百分ノ七・五
法人ノ事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額カ其ノ事業年度末ニ於ケル払込株式金額、出資金額又ハ基金及之ニ代ルヘキ積立金ノ合計金額ノ二分ノ一ニ相当スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ニ属スル其ノ事業年度ノ留保所得ニ対スル税率ハ百分ノ十トシ其ノ事業年度末ニ於ケル払込株式金額、出資金額又ハ基金及之ニ代ルヘキ積立金ノ合計金額ニ相当スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ニ属スル其ノ事業年度ノ留保所得ニ対スル税率ハ百分ノ二十トス但シ其ノ事業年度ニ於ケル所得ノ二十分ノ一ニ相当スル金額以内ノ金額ニ付テハ其ノ税率ハ百分ノ五トス
第二十六条 第二種ノ所得ニ対スル所得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 公債ノ利子 百分ノ四
其ノ他 百分ノ五
乙 百分ノ七・五
第二十七条 第三種ノ所得ニ対スル所得税ハ所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用シテ之ヲ賦課ス但シ山林ノ所得ト其ノ以外ノ所得トハ之ヲ区分シ各別ニ税率ヲ適用ス
千円以下ノ金額 百分ノ〇・五
千円ヲ超ユル金額 百分ノ一
千五百円ヲ超ユル金額 百分ノ一・五
二千円ヲ超ユル金額 百分ノ二
三千円ヲ超ユル金額 百分ノ三
五千円ヲ超ユル金額 百分ノ四
七千円ヲ超ユル金額 百分ノ五
一万円ヲ超ユル金額 百分ノ六・五
一万五千円ヲ超ユル金額 百分ノ八
二万円ヲ超ユル金額 百分ノ九・五
三万円ヲ超ユル金額 百分ノ十一
四万円ヲ超ユル金額 百分ノ十三
五万円ヲ超ユル金額 百分ノ十五
七万円ヲ超ユル金額 百分ノ十七
十万円ヲ超ユル金額 百分ノ十九
二十万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十一
五十万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十三
百万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十五
二百万円ヲ超ユル金額 百分ノ二十七
三百万円ヲ超ユル金額 百分ノ三十
四百万円ヲ超ユル金額 百分ノ三十三
前項ノ場合ニ於テ戸主及其ノ同居家族ノ所得金額ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ対シ税率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ各其ノ所得金額ニ案分シテ各其ノ税額ヲ定ム戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得金額ニ付亦同シ
第二十八条 第一種ノ所得ニ付納税義務アル者ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ財産目録、貸借対照表、損益計算書又ハ清算若ハ合併ニ関スル計算書並第四条乃至第十一条ノ規定ニ依リ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附シ其ノ所得ヲ政府ニ申告スヘシ但シ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人ハ樺太ニ於ケル資産又ハ営業ニ関スル損益ヲ計算シタル所得及資本金額ノ明細書ヲ添附スヘシ
前項ノ規定ハ第一種ノ所得ニ付所得税ヲ課セラルヘキ法人ニ付其ノ所得ナキ場合ニ之ヲ準用ス
第二十九条 第三種ノ所得ニ付納税義務アル者ハ毎年四月中ニ所得ノ種類及金額ヲ詳記シ政府ニ申告スヘシ
第十七条ノ規定ニ依ル控除ヲ受ケムトスル者ハ前項ノ申告ト同時ニ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ其ノ申請書ヲ提出スヘシ
第三十条 第一種及第三種ノ所得金額ハ前二条ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定ス
第三十一条 各支庁所轄内ニ所得調査委員会ヲ置キ第三種所得ノ調査ニ関スル事項ヲ諮問ス
調査委員ノ定数ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第三十二条 調査委員ハ所得調査委員会ノ属スル区域内ニ住居シ前年第三種ノ所得税ヲ納メ其ノ年第二十九条ノ申告ヲ為シタル者ニ就キ支庁長之ヲ命ス
調査委員ノ任期ハ四年トス
第三十三条 調査委員左ノ各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
一 第三種ノ所得ニ付納税義務ヲ有セサルニ至リタルトキ
二 所得調査委員会ノ属スル区域内ニ住居セサルニ至リタルトキ
調査委員職務ヲ怠リ又ハ体面ヲ汚損スル行為アリタルトキハ支庁長ハ之ヲ免スルコトヲ得
第三十四条 調査委員ニハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ手当及旅費ヲ給ス
第三十五条 所得調査委員会ノ議事ニ関スル事項ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第三十六条 八月三十日迄ニ所得調査委員会諮問事項ヲ議了セサルトキハ政府ハ直ニ所得金額ヲ決定ス
第三十七条 所得調査委員会閉会後第三種ノ所得ヲ有スル者納税義務アルコトヲ申出テ又ハ納税義務者所得金額ノ増加アルコトヲ申出テタルトキハ政府ハ所得調査委員会ニ諮問セス其ノ金額ヲ決定ス
第三十八条 樺太ニ於テ利子支払ヲ為スヘキ公債又ハ社債ヲ募集シタル者ハ遅滞ナク其ノ公債又ハ社債ニ付左ノ事項ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スヘシ
一 公債又ハ社債ノ名称及其ノ総額
二 利子支払期限及利率
三 償還ノ方法及期限
四 数回ニ分チテ払込ヲ為サシムルトキハ其ノ払込ノ金額及時期
第三十九条 第三種ノ所得ニ属スル俸給給料歳費年金恩給退隠料賞与若ハ此等ノ性質ヲ有スル給与ノ支払ヲ為ス者又ハ利益若ハ利息ノ配当若ハ剰余金ノ分配ヲ為ス法人ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ支払調書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ支払調書ヲ提出シタル者ニ対シテハ樺太庁長官ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第四十条 税務官吏ハ調査上必要アルトキハ納税義務者、納税義務アリト認ムル者又ハ前条第一項ノ支払調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問シ又ハ其ノ所得若ハ支払ニ関スル帳簿及物件ヲ検査スルコトヲ得
第四十一条 税務官吏ハ調査上必要アルトキハ納税義務者又ハ納税義務アリト認ムル者ニ金銭又ハ物品ヲ支払フノ義務ヲ有スト認ムル者ニ対シ其ノ金額、数量、価格又ハ支払期日ニ付質問スルコトヲ得
第四十二条 第一種又ハ第三種ノ所得金額ヲ決定シタルトキハ政府ハ之ヲ納税義務者ニ通知スヘシ
樺太ニ住所又ハ居所ヲ有セサル納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為ササルトキハ前項ノ通知ハ公告ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テ公告ノ初日ヨリ七日ヲ経過シタルトキハ其ノ通知アリタルモノト看做ス
第四十三条 第三種ノ所得ニ付納税義務アル者収入予算年額四分ノ一以上ヲ減損シタルトキハ政府ニ所得金額ノ更訂ノ請求ヲ為スコトヲ得但シ翌年一月三十一日ヲ過キタルトキハ此ノ限ニ在ラス
所得金額決定後贈与ヲ為シタル為所得金額ヲ減損シタル場合ニハ前項ノ規定ヲ適用セス
第四十四条 前条第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ所得金額ヲ査覈シ収入予算年額ニ対シ四分ノ一以上ノ減損アルトキハ之ヲ更訂ス
第四十五条 第一種ノ所得ニ付テハ事業年度毎ニ所得税ヲ徴収ス但シ清算所得ニ付テハ清算又ハ合併ノ際之ヲ徴収ス
第二種ノ所得ニ付テハ其ノ金額支払ノ際支払者其ノ所得税ヲ徴収シ翌月十日迄ニ之ヲ政府ニ納ムヘシ
第三種ノ所得ニ付テハ其ノ所得税ノ納期ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第四十六条 前条第二項ノ規定ニ依リ徴収スヘキ所得税ヲ徴収セサルトキ又ハ其ノ徴収シタル税金ヲ納付セサルトキハ国税徴収ノ例ニ依リ之ヲ支払者ヨリ徴収ス
第四十七条 法人解散シタル場合ニ於テ清算所得ニ対スル所得税又ハ前条ノ規定ニ依リ徴収セラルル税金ヲ納付セスシテ残余財産ヲ分配シタルトキハ其ノ税金ニ付清算人連帯シテ納税ノ義務アルモノトス
第四十八条 第四十三条第一項ノ請求アリタルトキハ政府ハ更訂処分ノ確定スルニ至ル迄税金ノ徴収ヲ猶予スルコトヲ得
第四十九条 第三種ノ所得ニ付二以上ノ支庁所轄内ニ於テ所得金額ノ決定アリタルトキハ政府ハ納税義務者ノ住所地以外、住所ナキトキハ居所地以外ニ於ケル所得金額ノ決定ヲ取消スヘシ
第五十条 所得税ヲ納ムル義務アル法人樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサルトキハ納税地ヲ定メ政府ニ申告スヘシ申告ナキトキハ政府其ノ納税地ヲ指定ス
第五十一条 第三種ノ所得ニ対スル所得税ハ納税義務者ノ住所地、住所ナキトキハ居所地ヲ以テ納税地トス但シ住所地以外ニ在ル者ハ申告シテ居所地ニ於テ所得税ヲ納ムルコトヲ得
樺太ニ住所及居所ナキ者ハ納税地ヲ定メ政府ニ申告スヘシ申告ナキトキハ政府其ノ納税地ヲ指定ス
第五十二条 納税義務者納税地ニ現住セサルトキハ其ノ所得ノ申告、納税其ノ他所得税ニ関スル一切ノ事項ヲ処理セシムル為納税管理人ヲ定メ政府ニ申告スヘシ樺太外ニ住所又ハ居所ヲ移サムトスルトキ亦同シ
第五十三条 本令ニ定ムルモノノ外所得税ニ関シ必要ナル規定ハ樺太庁長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第三種ノ所得ニ付テハ大正十一年分所得税ヨリ之ヲ適用ス
大正十一年中ニ任命スヘキ所得調査委員ハ所得調査委員会ノ属スル区域内ニ住居シ其ノ年第二十九条ノ申告ヲ為シタル者ニ就キ支庁長之ヲ命ス