(樺太所得税令中改正ノ件)
法令番号: 勅令第四十三號
公布年月日: 昭和2年3月31日
法令の形式: 勅令
朕樺太所得稅令中改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十日
內閣總理大臣 若槻禮次郞
勅令第四十三號
樺太所得稅令中左ノ通改正ス
第三條 所得稅ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス但シ國債、貯蓄債券法ニ依リ發行シタル貯蓄債券又ハ復興貯蓄債券法ニ依リ發行シタル復興貯蓄債券ノ利子ニハ之ヲ課セス
第一種
甲 法人ノ普通所得
乙 法人ノ超過所得
丙 法人ノ淸算所得
第二種
甲 樺太ニ於テ支拂ヲ受クル公債、社債又ハ銀行預金ノ利子
乙 第一條ノ規定ニ該當セサル者ノ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當、剩餘金ノ分配又ハ利益若ハ剩餘金ノ處分タル賞與若ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與
第三種
第二種ニ屬セサル個人ノ所得
第四條及第八條中「法人ノ所得」ヲ「法人ノ普通所得」ニ改ム
第五條中「法人ノ各事業年度ノ所得」ヲ「法人ノ普通所得」ニ、「同年度」ヲ「當該事業年度」ニ改ム
第九條 削除
第十條 削除
第十一條中「拂込株式金額、出資金額、積立金及最後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額」ヲ「拂込株式金額又ハ出資金額」ニ改ム
第十三條中「第九條第三項及」ヲ削ル
第十五條 第三種ノ所得ハ左ノ各號ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 營業ニ非サル貸金ノ利子竝第二種ノ所得ニ屬セサル公債、社債及預金ノ利子ハ前年中ノ收入金額
二 山林ノ所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
三 賞與又ハ賞與ノ性質ヲ有スル給與ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額
四 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ收入金額(無記名株式ノ配當ニ付テハ支拂ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ十分ノ四ヲ控除シタル金額
五 俸給、給料、歲費、年金、恩給、退隱料及此等ノ性質ヲ有スル給與ハ前年中ノ收入金額但シ前年一月一日ヨリ引續キ支給ヲ受ケタルニ非サルモノニ付テハ其ノ年ノ豫算年額
六 前各號以外ノ所得ハ前年中ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額但シ前年一月一日ヨリ引續キ有シタルニ非サル資產、營業又ハ職業ノ所得ニ付テハ其ノ年ノ豫算年額
株式ノ消却ニ因リ支拂ヲ受クル金額又ハ退社ニ因リ持分ノ拂戾トシテ受クル金額カ其ノ株式ノ拂込濟金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ法人ヨリ受クル利益ノ配當ト看做ス
第一項第一號、第二號及第四號ノ所得ニ付テハ被相續人ノ所得ハ之ヲ相續人ノ所得ト看做シ第六號ノ所得ニ付テハ相續シタル資產又ハ營業ハ相續人カ引續キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十六條 前條ノ規定ニ依リ算出シタル所得總額一萬二千圓以下ナルトキハ其ノ所得中勤勞所得(前條第一項第三號及第五號ノ所得)ニ付左ノ金額ヲ控除ス
一 所得中ニ勤勞所得以外ノ所得ナキトキハ所得總額中三千圓以下ノ金額ニ付十分ノ三、三千圓ヲ超ユル全額ニ付十分ノ二、六千圓ヲ超ユル金額ニ付十分ノ一ヲ乘シタル金額ノ合計金額
二 所得中ニ勤勞所得以外ノ所得アルトキハ所得總額ニ付前號ニ規定スル計算方法ヲ用ヒテ算出シタル金額ヨリ勤勞所得以外ノ所得ニ付前號ニ規定スル計算方法ヲ用ヒテ算出シタル金額ヲ控除シタル金額
戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戶主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第十七條第一項ヲ左ノ如ク改ム
前二條ノ規定ニ依リ算出シタル所得總額三千圓以下ナルトキハ其ノ所得ヲ有スル者ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ其ノ年三月一日現在ノ同居ノ戶主及家族中年齡十八歲未滿若ハ六十歲以上ノ者又ハ不具癈疾者一人ニ付百圓ヲ控除ス但シ第二條ノ規定ニ依ル納稅義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十七條第三項ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ場合ニ於テ控除スヘキ金額ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ納稅義務者ノ一人又ハ數人ノ所得ヨリ之ヲ控除ス
第十九條中「法人ノ第一種甲及戊」ヲ「法人ノ第一種甲及乙」ニ改ム
第二十一條第八號ヲ削ル
第二十四條中「千圓」ヲ「千五百圓」ニ改ム
第二十五條 第一種ノ所得ニ對スル所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 普通所得
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人 百分ノ五
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人 百分ノ十
乙 超過所得
超過所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
普通所得金額中資本金額ニ對シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ四
同百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ十
同百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ二十
丙 淸算所得
淸算所得金額ヲ左ノ如ク區分シ各稅率ヲ適用ス
積立金又ハ本令ニ依リ所得稅ヲ課セラレサル所得ヨリ成ル金額 百分ノ五
其ノ他ノ金額 百分ノ十
法人カ各事業年度ニ於テ納付シタル第二種ノ所得ニ對スル所得稅額ハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ當該事業年度ノ第一種ノ所得ニ對スル所得稅額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スヘキ第二種ノ所得ニ對スル所得稅ハ第一種ノ所得計算上之ヲ損金ニ算入セス
前二項ノ規定ハ法人ノ淸算所得ニ對スル所得稅ニ付之ヲ準用ス
第二十五條ノ二 同族會社カ各事業年度ニ於テ留保シタル金額中左ノ各號ノ一ニ該當スル金額アルトキハ政府ハ其ノ事業年度ノ普通所得ヲ年額ニ換算シタル金額中五萬圓以下ノ金額ニ百分ノ八、五萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ十二、十萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ十六、五十萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十、百萬圓ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十五ヲ乘シタル合計金額ノ普通所得年額ニ對スル割合ヲ求メ之ヲ稅率トシテ左ノ各號ノ一ニ該當スル金額(各號共ニ該當スル場合ニハ其ノ多額ナル一方)ニ付適用シテ算出シタル稅額ヲ普通所得ニ對スル所得稅ニ加算スルコトヲ得
一 事業年度ノ普通所得中留保シタル金額カ其ノ事業年度ニ於ケル普通所得ノ十分ノ三ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額
二 事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ノ普通所得中留保シタル金額ノ合計カ其ノ事業年度末ニ於ケル拂込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ニ相當スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額但シ其ノ事業年度末ニ於ケル積立金カ拂込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ヲ超過スル場合ニ於テハ其ノ超過額ハ之ヲ控除ス
本令ニ於テ同族會社ト稱スルハ株主又ハ社員ノ一人及之ト親族、使用人等特殊ノ關係アル者ノ株式金額又ハ出資金額ノ合計カ其ノ法人ノ株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一以上ニ相當スル法人ヲ謂フ
第二十七條中
千圓以下ノ金額 百分ノ〇・五
千圓ヲ超ユル金額 百分ノ一
ヲ「千五百圓以下ノ金額  百分ノ〇・六」ニ改メ第一項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ山林ノ所得ハ山林以外ノ所得ト之ヲ區分シ其ノ所得ヲ五分シタル金額ニ對シ此ノ稅率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ其ノ稅額トス
第二十九條中「四月中」ヲ「三月十五日迄」ニ、「第十七條」ヲ「第十七條又ハ第十七條ノ二」ニ改ム
第三十條 第一種ノ所得金額ハ第二十八條ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調查ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定シ第三種ノ所得金額ハ所得調查委員會ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調查委員會閉會後第三種ノ所得ノ決定ニ付脫漏アルコトヲ發見シタルトキハ其ノ決定ヲ爲スヘカリシ年ノ翌年ニ於ケル所得調查委員會ニ諮問シ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調查委員會閉會後第三種ノ所得ヲ有スル者納稅義務アルコトヲ申出テ又ハ納稅義務者所得金額ノ增加アルコトヲ申出テタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラス政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
第三十條ノ二 支廳長ハ每年第三種ノ所得ニ付納稅義務アリト認ムル者ノ所得金額ヲ調查シ其ノ調查書ヲ所得調查委員會ニ送付スヘシ
前項ノ規定ハ前條第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十一條第一項ヲ左ノ如ク改ム
各支廳所轄內ニ所得調查委員會ヲ置ク
第三十二條 調查委員ハ所得調查委員會ノ屬スル區域內ニ住居シ第三種ノ所得又ハ個人ノ營業ニ付其ノ年法定ノ期限迄ニ所得金額又ハ純益金額ノ申告ヲ爲シ且ツ其ノ決定ヲ受ケタル者ニ就キ支廳長之ヲ命ス
其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前任命ノ要アル場合ニ於テハ前年第三種ノ所得又ハ個人ノ營業ニ付所得稅又ハ營業收益稅ヲ納メタルコトヲ以テ其ノ年所得金額又ハ純益金額ノ決定ヲ受ケタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テ法定ノ申告期限前ナルトキハ前年法定ノ期限迄ニ所得金額又ハ純益金額ノ申告ヲ爲シタルコトヲ以テ其ノ年法定ノ期限迄ニ申告ヲ爲シタルモノト看做ス
前三項ノ場合ニ於テ被相續人ノ爲シタル納稅又ハ申告ハ其ノ相續人ノ納稅又ハ申告ト看做ス
第三十二條ノ二 調查委員ノ任期ハ任命ノ日ノ屬スル月ヨリ四年トス
所得調查委員會ノ屬スル區域ノ變更ニ因リ其ノ區域內ニ於ケル第三種ノ所得ニ付其ノ年所得金額ノ決定ヲ受ケタル者及個人ノ營業ニ付其ノ年純益金額ノ決定ヲ受ケタル者ノ合計數ニ五分ノ一以上ノ增減ヲ來シタル場合ニ於テハ調查委員ノ任期ハ其ノ區域ノ變更アリタル月ヲ以テ終了スルモノトス但シ其ノ變更ノ月カ一月又ハ二月ナルトキハ三月、四月乃至八月ナルトキハ九月、十二月ナルトキハ翌年三月ヲ以テ終了スルモノトス
前條第二項ノ規定ハ其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前所得調查委員會ノ屬スル區域ノ變更アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十三條中「第三種ノ所得ニ付」ヲ「第三種ノ所得ニ對スル所得稅若ハ營業收益稅ノ何レニ付テモ」ニ、「又ハ體面ヲ汚損スル行爲アリタルトキハ」ヲ「若ハ體面ヲ汚損シタルトキ又ハ職務ニ堪ヘサルモノト認メタルトキハ」ニ改ム
第三十六條 五月三十一日迄ニ所得調查委員會成立セサルトキ又ハ所得調查委員會開會ノ日ヨリ樺太廳長官ノ定ムル開會期間內若ハ五月三十一日迄ニ諮問事項ヲ議了セサルトキハ政府ハ直ニ所得稅額ヲ決定ス
第三十七條 削除
第四十二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
第三十條若ハ第三十六條ノ規定ニ依リ第一種若ハ第三種ノ所得金額ヲ決定シタルトキ又ハ第二十五條ノ二ノ規定ニ依リ稅額ヲ加算シタルトキハ政府ハ之ヲ納稅義務者ニ通知スヘシ
第四十二條ノ二 納稅義務者前條ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル所得金額又ハ加算稅額ニ對シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日內ニ不服ノ事由ヲ詳具シ政府ニ審查ノ請求ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ト雖政府ハ稅金ノ徵收ヲ猶豫セス
第四十二條ノ三 前條第一項ノ請求アリタルトキハ所得審查委員會ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得審查委員會ハ前條第一項ノ請求ヲ爲シタル者ニ對シ其ノ所得ニ關スル事實ヲ質問スルコトヲ得
第四十二條ノ四 所得審查委員會ハ樺太廳ニ之ヲ置ク
所得審查委員會ハ會長一人及委員六人ヲ以テ之ヲ組織ス
會長ハ樺太廳高等官中ヨリ樺太廳長官之ヲ命ス
委員ハ稅務官吏中ヨリ三人及所得調查委員中ヨリ三人ヲ樺太廳長官ニ於テ命ス
所得審查委員會ノ議事ニ關スル事項ハ樺太廳長官之ヲ定ム
第四十二條ノ五 調查委員ヨリ任命セラレタル審查委員ニハ樺太廳長官ノ定ムル所ニ依リ日當及旅費ヲ給ス
第四十三條中「收入豫算年額四分ノ一」ヲ「第十五條第一項第五號及第六號ノ所得額二分ノ一」ニ、「贈與ヲ爲シタル爲」ヲ「相續、贈與又ハ營業繼續ニ因リ」ニ改ム
第四十四條中「收入豫算年額ニ對シ四分ノ一」ヲ「二分ノ一」ニ改ム
第四十五條第三項ヲ左ノ如ク改ム
第三種ノ所得ニ付テハ所得稅ノ年額ヲ四分シ左ノ四期ニ於テ之ヲ徵收ス但シ納稅義務者納稅管理人ノ申告ヲ爲サスシテ樺太外ニ住所又ハ居所ヲ移ストキハ直ニ其ノ所得稅ヲ徵收スルコトヲ得
第一期 其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年十月一日ヨリ三十一日限
第三期 翌年一月一日ヨリ三十一日限
第四期 翌年三月一日ヨリ三十一日限
第五十二條ノ二 同族會社ノ行爲又ハ計算ニシテ其ノ所得又ハ株主社員若ハ之ト親族、使用人等特殊ノ關係アル者ノ所得ニ付所得稅逋脫ノ目的アリト認メラルルモノアル場合ニ於テハ其ノ行爲又ハ計算ニ拘ラス政府ハ其ノ認ムル所ニ依リ此等ノ者ノ所得金額ヲ計算スルコトヲ得
附 則
本令ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第三種ノ所得ニ付テハ昭和二年分所得稅ヨリ本令ヲ適用ス但シ第二十九條、第三十六條及第四十五條ノ改正規定ハ昭和三年分所得稅ヨリ之ヲ適用ス
第十五條第一項第三號又ハ第四號ノ所得ニシテ大正十五年三月中ノ收入ニ屬スルモノハ之ヲ昭和二年分第三種所得トシテ計算セス
第十七條第一項ノ改正規定中三月一日トアルハ昭和二年ニ限リ四月一日トス
本令施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度分ノ所得及本令施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ル淸算所得ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
所得調查委員ニ關シテハ昭和二年九月三十日迄ハ仍從前ノ例ニ依ル
從前ノ規定ニ依ル所得調查委員ノ任期ハ昭和二年九月三十日ヲ以テ終了ス
第三十二條及第三十三條ノ改正規定中營業收益稅ニ關スルモノハ昭和二年分ニ付テハ之ヲ營業稅ニ關スルモノトス
朕樺太所得税令中改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年三月三十日
内閣総理大臣 若槻礼次郎
勅令第四十三号
樺太所得税令中左ノ通改正ス
第三条 所得税ハ左ノ所得ニ付之ヲ賦課ス但シ国債、貯蓄債券法ニ依リ発行シタル貯蓄債券又ハ復興貯蓄債券法ニ依リ発行シタル復興貯蓄債券ノ利子ニハ之ヲ課セス
第一種
甲 法人ノ普通所得
乙 法人ノ超過所得
丙 法人ノ清算所得
第二種
甲 樺太ニ於テ支払ヲ受クル公債、社債又ハ銀行預金ノ利子
乙 第一条ノ規定ニ該当セサル者ノ樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当、剰余金ノ分配又ハ利益若ハ剰余金ノ処分タル賞与若ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与
第三種
第二種ニ属セサル個人ノ所得
第四条及第八条中「法人ノ所得」ヲ「法人ノ普通所得」ニ改ム
第五条中「法人ノ各事業年度ノ所得」ヲ「法人ノ普通所得」ニ、「同年度」ヲ「当該事業年度」ニ改ム
第九条 削除
第十条 削除
第十一条中「払込株式金額、出資金額、積立金及最後ノ事業年度ニ於ケル留保所得ノ合計金額」ヲ「払込株式金額又ハ出資金額」ニ改ム
第十三条中「第九条第三項及」ヲ削ル
第十五条 第三種ノ所得ハ左ノ各号ノ規定ニ依リ之ヲ算出ス
一 営業ニ非サル貸金ノ利子並第二種ノ所得ニ属セサル公債、社債及預金ノ利子ハ前年中ノ収入金額
二 山林ノ所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
三 賞与又ハ賞与ノ性質ヲ有スル給与ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ収入金額
四 法人ヨリ受クル利益若ハ利息ノ配当又ハ剰余金ノ分配ハ前年三月一日ヨリ其ノ年二月末日迄ノ収入金額(無記名株式ノ配当ニ付テハ支払ヲ受ケタル金額)ヨリ其ノ十分ノ四ヲ控除シタル金額
五 俸給、給料、歳費、年金、恩給、退隠料及此等ノ性質ヲ有スル給与ハ前年中ノ収入金額但シ前年一月一日ヨリ引続キ支給ヲ受ケタルニ非サルモノニ付テハ其ノ年ノ予算年額
六 前各号以外ノ所得ハ前年中ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額但シ前年一月一日ヨリ引続キ有シタルニ非サル資産、営業又ハ職業ノ所得ニ付テハ其ノ年ノ予算年額
株式ノ消却ニ因リ支払ヲ受クル金額又ハ退社ニ因リ持分ノ払戻トシテ受クル金額カ其ノ株式ノ払込済金額又ハ出資金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額ハ之ヲ法人ヨリ受クル利益ノ配当ト看做ス
第一項第一号、第二号及第四号ノ所得ニ付テハ被相続人ノ所得ハ之ヲ相続人ノ所得ト看做シ第六号ノ所得ニ付テハ相続シタル資産又ハ営業ハ相続人カ引続キ之ヲ有シタルモノト看做シテ其ノ所得ヲ計算ス
第十六条 前条ノ規定ニ依リ算出シタル所得総額一万二千円以下ナルトキハ其ノ所得中勤労所得(前条第一項第三号及第五号ノ所得)ニ付左ノ金額ヲ控除ス
一 所得中ニ勤労所得以外ノ所得ナキトキハ所得総額中三千円以下ノ金額ニ付十分ノ三、三千円ヲ超ユル全額ニ付十分ノ二、六千円ヲ超ユル金額ニ付十分ノ一ヲ乗シタル金額ノ合計金額
二 所得中ニ勤労所得以外ノ所得アルトキハ所得総額ニ付前号ニ規定スル計算方法ヲ用ヒテ算出シタル金額ヨリ勤労所得以外ノ所得ニ付前号ニ規定スル計算方法ヲ用ヒテ算出シタル金額ヲ控除シタル金額
戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス戸主ト別居スル二人以上ノ同居家族ノ所得ニ付亦同シ
第十七条第一項ヲ左ノ如ク改ム
前二条ノ規定ニ依リ算出シタル所得総額三千円以下ナルトキハ其ノ所得ヲ有スル者ノ申請ニ依リ其ノ所得ヨリ其ノ年三月一日現在ノ同居ノ戸主及家族中年齢十八歳未満若ハ六十歳以上ノ者又ハ不具廃疾者一人ニ付百円ヲ控除ス但シ第二条ノ規定ニ依ル納税義務者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十七条第三項ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ場合ニ於テ控除スヘキ金額ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ納税義務者ノ一人又ハ数人ノ所得ヨリ之ヲ控除ス
第十九条中「法人ノ第一種甲及戊」ヲ「法人ノ第一種甲及乙」ニ改ム
第二十一条第八号ヲ削ル
第二十四条中「千円」ヲ「千五百円」ニ改ム
第二十五条 第一種ノ所得ニ対スル所得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
甲 普通所得
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有スル法人 百分ノ五
樺太ニ本店又ハ主タル事務所ヲ有セサル法人 百分ノ十
乙 超過所得
超過所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用ス
普通所得金額中資本金額ニ対シ年百分ノ十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ四
同百分ノ二十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ十
同百分ノ三十ノ割合ヲ以テ算出シタル金額ヲ超ユル金額 百分ノ二十
丙 清算所得
清算所得金額ヲ左ノ如ク区分シ各税率ヲ適用ス
積立金又ハ本令ニ依リ所得税ヲ課セラレサル所得ヨリ成ル金額 百分ノ五
其ノ他ノ金額 百分ノ十
法人カ各事業年度ニ於テ納付シタル第二種ノ所得ニ対スル所得税額ハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ当該事業年度ノ第一種ノ所得ニ対スル所得税額ヨリ之ヲ控除ス
前項ノ場合ニ於テ控除スヘキ第二種ノ所得ニ対スル所得税ハ第一種ノ所得計算上之ヲ損金ニ算入セス
前二項ノ規定ハ法人ノ清算所得ニ対スル所得税ニ付之ヲ準用ス
第二十五条ノ二 同族会社カ各事業年度ニ於テ留保シタル金額中左ノ各号ノ一ニ該当スル金額アルトキハ政府ハ其ノ事業年度ノ普通所得ヲ年額ニ換算シタル金額中五万円以下ノ金額ニ百分ノ八、五万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ十二、十万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ十六、五十万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十、百万円ヲ超ユル金額ニ百分ノ二十五ヲ乗シタル合計金額ノ普通所得年額ニ対スル割合ヲ求メ之ヲ税率トシテ左ノ各号ノ一ニ該当スル金額(各号共ニ該当スル場合ニハ其ノ多額ナル一方)ニ付適用シテ算出シタル税額ヲ普通所得ニ対スル所得税ニ加算スルコトヲ得
一 事業年度ノ普通所得中留保シタル金額カ其ノ事業年度ニ於ケル普通所得ノ十分ノ三ニ相当スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額
二 事業年度末ニ於ケル積立金及其ノ事業年度ノ普通所得中留保シタル金額ノ合計カ其ノ事業年度末ニ於ケル払込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ニ相当スル金額ヲ超過スルトキハ其ノ超過金額但シ其ノ事業年度末ニ於ケル積立金カ払込株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一ヲ超過スル場合ニ於テハ其ノ超過額ハ之ヲ控除ス
本令ニ於テ同族会社ト称スルハ株主又ハ社員ノ一人及之ト親族、使用人等特殊ノ関係アル者ノ株式金額又ハ出資金額ノ合計カ其ノ法人ノ株式金額又ハ出資金額ノ二分ノ一以上ニ相当スル法人ヲ謂フ
第二十七条中
千円以下ノ金額 百分ノ〇・五
千円ヲ超ユル金額 百分ノ一
ヲ「千五百円以下ノ金額  百分ノ〇・六」ニ改メ第一項但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ山林ノ所得ハ山林以外ノ所得ト之ヲ区分シ其ノ所得ヲ五分シタル金額ニ対シ此ノ税率ヲ適用シテ算出シタル金額ヲ五倍シタルモノヲ以テ其ノ税額トス
第二十九条中「四月中」ヲ「三月十五日迄」ニ、「第十七条」ヲ「第十七条又ハ第十七条ノ二」ニ改ム
第三十条 第一種ノ所得金額ハ第二十八条ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府ニ於テ之ヲ決定シ第三種ノ所得金額ハ所得調査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得調査委員会閉会後第三種ノ所得ノ決定ニ付脱漏アルコトヲ発見シタルトキハ其ノ決定ヲ為スヘカリシ年ノ翌年ニ於ケル所得調査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定スルコトヲ得
所得調査委員会閉会後第三種ノ所得ヲ有スル者納税義務アルコトヲ申出テ又ハ納税義務者所得金額ノ増加アルコトヲ申出テタルトキハ前二項ノ規定ニ拘ラス政府ニ於テ其ノ所得金額ヲ決定ス
第三十条ノ二 支庁長ハ毎年第三種ノ所得ニ付納税義務アリト認ムル者ノ所得金額ヲ調査シ其ノ調査書ヲ所得調査委員会ニ送付スヘシ
前項ノ規定ハ前条第二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三十一条第一項ヲ左ノ如ク改ム
各支庁所轄内ニ所得調査委員会ヲ置ク
第三十二条 調査委員ハ所得調査委員会ノ属スル区域内ニ住居シ第三種ノ所得又ハ個人ノ営業ニ付其ノ年法定ノ期限迄ニ所得金額又ハ純益金額ノ申告ヲ為シ且ツ其ノ決定ヲ受ケタル者ニ就キ支庁長之ヲ命ス
其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前任命ノ要アル場合ニ於テハ前年第三種ノ所得又ハ個人ノ営業ニ付所得税又ハ営業収益税ヲ納メタルコトヲ以テ其ノ年所得金額又ハ純益金額ノ決定ヲ受ケタルモノト看做ス
前項ノ場合ニ於テ法定ノ申告期限前ナルトキハ前年法定ノ期限迄ニ所得金額又ハ純益金額ノ申告ヲ為シタルコトヲ以テ其ノ年法定ノ期限迄ニ申告ヲ為シタルモノト看做ス
前三項ノ場合ニ於テ被相続人ノ為シタル納税又ハ申告ハ其ノ相続人ノ納税又ハ申告ト看做ス
第三十二条ノ二 調査委員ノ任期ハ任命ノ日ノ属スル月ヨリ四年トス
所得調査委員会ノ属スル区域ノ変更ニ因リ其ノ区域内ニ於ケル第三種ノ所得ニ付其ノ年所得金額ノ決定ヲ受ケタル者及個人ノ営業ニ付其ノ年純益金額ノ決定ヲ受ケタル者ノ合計数ニ五分ノ一以上ノ増減ヲ来シタル場合ニ於テハ調査委員ノ任期ハ其ノ区域ノ変更アリタル月ヲ以テ終了スルモノトス但シ其ノ変更ノ月カ一月又ハ二月ナルトキハ三月、四月乃至八月ナルトキハ九月、十二月ナルトキハ翌年三月ヲ以テ終了スルモノトス
前条第二項ノ規定ハ其ノ年分ノ所得金額及純益金額ノ決定前所得調査委員会ノ属スル区域ノ変更アリタル場合ニ之ヲ準用ス
第三十三条中「第三種ノ所得ニ付」ヲ「第三種ノ所得ニ対スル所得税若ハ営業収益税ノ何レニ付テモ」ニ、「又ハ体面ヲ汚損スル行為アリタルトキハ」ヲ「若ハ体面ヲ汚損シタルトキ又ハ職務ニ堪ヘサルモノト認メタルトキハ」ニ改ム
第三十六条 五月三十一日迄ニ所得調査委員会成立セサルトキ又ハ所得調査委員会開会ノ日ヨリ樺太庁長官ノ定ムル開会期間内若ハ五月三十一日迄ニ諮問事項ヲ議了セサルトキハ政府ハ直ニ所得税額ヲ決定ス
第三十七条 削除
第四十二条第一項ヲ左ノ如ク改ム
第三十条若ハ第三十六条ノ規定ニ依リ第一種若ハ第三種ノ所得金額ヲ決定シタルトキ又ハ第二十五条ノ二ノ規定ニ依リ税額ヲ加算シタルトキハ政府ハ之ヲ納税義務者ニ通知スヘシ
第四十二条ノ二 納税義務者前条ノ規定ニ依リ政府ノ通知シタル所得金額又ハ加算税額ニ対シテ異議アルトキハ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日内ニ不服ノ事由ヲ詳具シ政府ニ審査ノ請求ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ト雖政府ハ税金ノ徴収ヲ猶予セス
第四十二条ノ三 前条第一項ノ請求アリタルトキハ所得審査委員会ニ諮問シ政府ニ於テ之ヲ決定ス
所得審査委員会ハ前条第一項ノ請求ヲ為シタル者ニ対シ其ノ所得ニ関スル事実ヲ質問スルコトヲ得
第四十二条ノ四 所得審査委員会ハ樺太庁ニ之ヲ置ク
所得審査委員会ハ会長一人及委員六人ヲ以テ之ヲ組織ス
会長ハ樺太庁高等官中ヨリ樺太庁長官之ヲ命ス
委員ハ税務官吏中ヨリ三人及所得調査委員中ヨリ三人ヲ樺太庁長官ニ於テ命ス
所得審査委員会ノ議事ニ関スル事項ハ樺太庁長官之ヲ定ム
第四十二条ノ五 調査委員ヨリ任命セラレタル審査委員ニハ樺太庁長官ノ定ムル所ニ依リ日当及旅費ヲ給ス
第四十三条中「収入予算年額四分ノ一」ヲ「第十五条第一項第五号及第六号ノ所得額二分ノ一」ニ、「贈与ヲ為シタル為」ヲ「相続、贈与又ハ営業継続ニ因リ」ニ改ム
第四十四条中「収入予算年額ニ対シ四分ノ一」ヲ「二分ノ一」ニ改ム
第四十五条第三項ヲ左ノ如ク改ム
第三種ノ所得ニ付テハ所得税ノ年額ヲ四分シ左ノ四期ニ於テ之ヲ徴収ス但シ納税義務者納税管理人ノ申告ヲ為サスシテ樺太外ニ住所又ハ居所ヲ移ストキハ直ニ其ノ所得税ヲ徴収スルコトヲ得
第一期 其ノ年七月一日ヨリ三十一日限
第二期 其ノ年十月一日ヨリ三十一日限
第三期 翌年一月一日ヨリ三十一日限
第四期 翌年三月一日ヨリ三十一日限
第五十二条ノ二 同族会社ノ行為又ハ計算ニシテ其ノ所得又ハ株主社員若ハ之ト親族、使用人等特殊ノ関係アル者ノ所得ニ付所得税逋脱ノ目的アリト認メラルルモノアル場合ニ於テハ其ノ行為又ハ計算ニ拘ラス政府ハ其ノ認ムル所ニ依リ此等ノ者ノ所得金額ヲ計算スルコトヲ得
附 則
本令ハ昭和二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第三種ノ所得ニ付テハ昭和二年分所得税ヨリ本令ヲ適用ス但シ第二十九条、第三十六条及第四十五条ノ改正規定ハ昭和三年分所得税ヨリ之ヲ適用ス
第十五条第一項第三号又ハ第四号ノ所得ニシテ大正十五年三月中ノ収入ニ属スルモノハ之ヲ昭和二年分第三種所得トシテ計算セス
第十七条第一項ノ改正規定中三月一日トアルハ昭和二年ニ限リ四月一日トス
本令施行前ニ終了シタル法人ノ各事業年度分ノ所得及本令施行前ニ於ケル解散又ハ合併ニ因ル清算所得ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
所得調査委員ニ関シテハ昭和二年九月三十日迄ハ仍従前ノ例ニ依ル
従前ノ規定ニ依ル所得調査委員ノ任期ハ昭和二年九月三十日ヲ以テ終了ス
第三十二条及第三十三条ノ改正規定中営業収益税ニ関スルモノハ昭和二年分ニ付テハ之ヲ営業税ニ関スルモノトス