第一條 本法ニ於テ結核ト稱スルハ肺結核又ハ喉頭結核ニシテ病毒傳播ノ危險アルモノヲ謂フ
第二條 醫師結核患者ヲ診斷シ又ハ其ノ死體ヲ檢案シタルトキハ患者ノ場合ニ在リテハ患者又ハ其ノ居住ノ場所ノ管理ヲ爲ス者若ハ其ノ代理ヲ爲ス者、死體ノ場合ニ在リテハ死體所在ノ場所ノ管理ヲ爲ス者又ハ其ノ代理ヲ爲ス者ニ命令ノ定ムル所ニ依リ消毒其ノ他ノ豫防方法ヲ指示スヘシ
前項ノ規定ニ依リ指示ヲ受ケタル者ハ其ノ指示ニ從ヒ消毒其ノ他ノ豫防方法ヲ行フヘシ
第三條 行政官廳ハ結核患者又ハ其ノ死者アリタル場所ニ付家屋物件ノ消毒其ノ他ノ豫防方法ヲ施行シ又ハ其ノ施行ヲ患者又ハ場所ノ管理ヲ爲ス者若ハ其ノ代理ヲ爲ス者ニ命スルコトヲ得
第四條 行政官廳ハ結核豫防上必要ト認ムルトキハ左ノ事項ヲ行フコトヲ得
一 業態上病毒傳播ノ虞アル職業ニ從事スル者又ハ病毒蔓延ノ虞アル場所ニ居住シ若ハ其ノ場所ニ於テ職業ニ從事スル者ニ對シ健康診斷ヲ施行スルコト
二 結核患者ニ對シ業態上病毒傳播ノ虞アル職業ニ從事スルヲ禁止スルコト
三 學校、病院、製造所其ノ他ノ多衆ノ集合スル場所又ハ旅店、料理店、理髮店其ノ他ノ客ノ來集ヲ目的トスル場所ニ付病毒傳播ノ媒介トナルヘキ事項ヲ制限シ若ハ禁止シ又ハ場所ノ管理ヲ爲ス者若ハ其ノ代理ヲ爲ス者ニ對シ結核豫防上必要ナル施設ヲ爲サシムルコト
四 古著、古蒲團、古本、紙屑、襤褸、飮食物其ノ他ノ物件ニシテ病毒ニ汚染シ又ハ其ノ疑アルモノノ賣買若ハ授受ヲ制限シ若ハ禁止シ、其ノ物件ノ消毒若ハ廢棄ヲ爲サシメ又ハ其ノ物件ノ廢棄ヲ爲スコト
地方長官ニ於テ前項ノ規定ニ依リ健康診斷ヲ施行シ又ハ物件ノ廢棄ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ費用ハ北海道地方費又ハ府縣ノ負擔トス
第五條 地方長官ハ結核豫防上必要ト認ムルトキハ採光、換氣其ノ他ノ關係ニ於テ衞生上不良ナル建物ノ使用ヲ制限シ又ハ禁止スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ因リ生シタル損害ニ對シテハ地方長官必要ト認ムルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ補償金ヲ交付ス補償金ハ北海道地方費又ハ府縣ノ負擔トス
第六條 主務大臣ハ結核患者ニシテ療養ノ途ナキモノヲ收容セシムル爲人口五萬以上ノ市又ハ特ニ必要ト認ムル其ノ他ノ公共團體ニ對シテ結核療養所ノ設置ヲ命スルコトヲ得
第七條 地方長官ハ結核患者ニシテ療養ノ途ナキモノ及豫防上特ニ必要ト認ムルモノヲ前條ノ規定ニ依リ設置スル結核療養所ニ入所セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル入所ノ費用ノ負擔及徵收ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ從ヒ第六條ノ規定ニ依リ結核療養所ヲ設置スル公共團體ニ對シ其ノ結核療養所ニ關シ公共團體ノ支出スル經費ノ六分ノ一乃至二分ノ一ヲ補助ス
第九條 國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ從ヒ第六條ノ規定ニ依ラスシテ結核療養所ヲ設置スル公共團體又ハ公益法人ニ對シ其ノ結核療養所ニ關シ公共團體又ハ公益法人ノ支出スル經費ノ二分ノ一以內ヲ補助スルコトヲ得
第十條 結核療養所ヲ設置スル公共團體ニシテ第八條又ハ前條ノ規定ニ依ル補助ヲ受クルモノハ他ノ公共團體ノ委託アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ療養ノ途ナキ結核患者ヲ其ノ結核療養所ニ收容スヘシ
第十一條 北海道地方費又ハ府縣ハ勅令ノ定ムル所ニ從ヒ第四條第一項第二號ノ規定ニ依ル從業禁止又ハ第七條第一項ノ規定ニ依ル入所ニ因リ生活スルコト能ハサル者ニ對シ其ノ生活費ヲ補給スヘシ
第十二條 國庫ハ第四條第二項、第五條第二項又ハ前條ノ規定ニ依リ支出ヲ爲ス北海道地方費又ハ府縣ニ對シ其ノ支出額ノ四分ノ一ヲ補助ス
第十三條 官廳、公署、官立公立ノ學校病院製造所等ニ於テハ其ノ長ハ第四條第一項第三號第四號及第五條第一項ノ規定ニ準シ結核豫防ニ關スル事項ヲ施行スヘシ
第十四條 第二條ノ規定ニ違反シタル者又ハ第三條ノ規定ニ依ル行政官廳ノ命令ニ違反シタル者ハ科料ニ處ス
第十五條 第四條第一項又ハ第五條第一項ノ規定ニ依ル行政官廳ノ命令又ハ處分ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス