結核予防法施行令
法令番号: 勅令第四百五十號
公布年月日: 大正8年10月23日
法令の形式: 勅令
朕結核豫防法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年十月二十二日
內閣總理大臣 原敬
內務大臣 床次竹二郞
勅令第四百五十號
結核豫防法施行令
第一條 結核豫防法第五條第一項ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ因リ損害ヲ受ケタル建物ノ所有者又ハ使用者ニシテ同條第二項ノ補償金ノ交付ヲ受ケムトスルモノハ制限又ハ禁止アリタル日ヨリ六十日內ニ地方長官ニ交付ヲ申請スヘシ
第二條 補償金ノ額ハ建物ノ使用ノ制限又ハ禁止ニ因リ通常生スヘキ損害ヲ限度トシ地方長官ニ於テ三人以上ノ評價人ノ意見ヲ徵シ之ヲ決定ス
第三條 地方長官前條ノ規定ニ依リ補償金ノ額ヲ決定シタルトキハ之ヲ建物ノ所有者及使用者ニ通知シ且建物所在地ノ市町村長ヲシテ建物ノ所在地及補償金ノ額ヲ所有者及使用者ヲ除クノ外建物ニ關シ權利ヲ有スル者ニ通知セシメ且相當ノ期間公吿セシムヘシ但シ其ノ期間ハ一月ヲ下ルコトヲ得ス
第四條 前條ノ規定ニ依ル公吿期間ヲ經過シタルトキハ地方長官ハ速ニ補償金ヲ交付スヘシ但シ公吿期間內ニ建物ニ關シ權利ヲ有スル者ヨリ申請アリタルトキハ期日ヲ指定シテ其ノ交付ヲ延期スルコトヲ得
第五條 結核豫防法第七條ノ規定ニ依ル入所ノ費用ハ結核療養所ヲ設置スル公共團體ノ負擔トス
第六條 結核療養所ノ管理者ハ前條ノ規定ニ拘ラス本人ヨリ入所ノ費用ノ全部又ハ一部ヲ徵收スルコトヲ得管理者本人ヨリ徵收スルコトヲ得スト認ムルトキハ其ノ扶養義務者ヨリ之ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ入所ノ費用ノ徵收ハ必要アルトキハ納付義務者ノ居住地又ハ財產所在地ノ地方長官又ハ市町村長ニ之ヲ囑託スルコトヲ得
第一項ノ入所ノ費用ニシテ指定ノ期間內ニ納付ナキモノニ付テハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得
第七條 結核豫防法第七條ノ規定ニ依リ入所セシメラレタル結核患者入所中死亡シタルトキハ遺留財產ヲ以テ入所ノ費用ノ全部又ハ一部ニ充ツルコトヲ得
第八條 結核豫防法第八條ノ規定ニ依ル國庫補助ハ左ノ區分ニ依ル
一 結核療養所ノ創設費及擴張費竝之ニ伴フ初度調辨費ハ支出額ノ二分ノ一
二 其ノ他ノ諸費ハ支出額ノ四分ノ一
第九條 結核豫防法第九條ノ規定ニ依ルニ國庫補助ハ左ノ區分ニ依ル
一 結核療養所ノ創設費及擴張費竝之ニ伴フ初度調辨費ハ支出額ノ四分ノ一乃至二分ノ一
二 其ノ他ノ諸費ハ支出額ノ八分ノ一乃至六分ノ一
第十條 前二條ニ於テ支出額トハ事業ニ伴フ收入、國庫以外ノ補助金又ハ寄附金ノ額ヲ控除シタル支出精算額ヲ謂フ但シ他ノ公共團體ヨリ受ケタル委託患者收容料ノ額ハ之ヲ控除セス
前項ノ支出精算額ノ算出ニ付テハ公益法人ノ場合ニ於テハ寄附金ノ額ヲ控除セサルコトヲ得
第十一條 結核豫防法第十條ノ規定ニ依リ收容スヘキ委託患者ノ數ハ結核療養所ノ豫定收容人員ノ十分ノ一以內トス但シ內務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
委託患者ヲ收容シタル公共團體ハ患者ノ收容ヲ委託シタル公共團體ニ對シ委託患者收容料ヲ請求スルコトヲ得
委託患者收容料ノ額ハ患者ヲ收容スル公共團體ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ定ム
第十二條 收容シタル委託患者死亡シタルトキハ受託公共團體ハ其ノ旨ヲ委託公共團體ニ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル公共團體ハ死亡者ノ相續人、扶養義務者又ハ家族ヲシテ直ニ其ノ死體ヲ引取ラシムヘシ
前項ノ規定ニ依リ死體ヲ引取ルヘキ者引取ヲ爲ササルトキ又ハ死體ノ引取人ナキトキハ委託公共團體ニ於テ其ノ死體ヲ引取ルヘシ此ノ場合ニ於ケル費用ハ其ノ公共團體ノ負擔トス
第十三條 結核豫防法第十一條ノ規定ニ依リ生活費ノ補給ヲ受クヘキ者ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ限ル
一 從業ヲ禁止セラレタル者
二 從業ヲ禁止セラレ又ハ入所セシメラレタル者ノ配偶者又ハ子ニシテ現ニ之ト同一ノ家ニ在ル者但シ養子ハ家督相續人ニ限ル
三 前號ニ揭クル者ヲ除クノ外從業ヲ禁止セラレ又ハ入所セシメラレタル者ニ依リ扶養ヲ受クヘキ者ニシテ從業ヲ禁止セラレ又ハ入所セシメラレタル時ヨリ引續キ之ト同一ノ家ニ在ル者
第十四條 生活費ノ補給ハ生活費ノ補給ヲ受ケムトスル者ノ申請ニ依リ地方長官ニ於テ其ノ許否ヲ決定ス
第十五條 生活費ノ補給ハ生活ニ必要ナル限度ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六條 生活費補給ノ程度、方法、期間、廢止及停止ニ關スル事項ハ地方長官ニ於テ內務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ定ム
第十七條 結核豫防法第五條第二項ノ補償金ノ額ノ決定ニ對シ不服アル建物ノ所有者又ハ使用者ハ決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ、同法第十一條ノ規定ニ依ル生活費補給ノ申請ヲ拒マレタル者又ハ其ノ生活費ノ補給ヲ廢止若ハ停止セラレタル者ハ處分ヲ受ケタル日ヨリ六十日內ニ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十八條 本令中市町村長トアルハ市制第六條ノ市ニ在リテハ區長、市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ市町村長ニ準スヘキ者トス
附 則
本令ハ結核豫防法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大正四年勅令第百二號ハ之ヲ廢止ス
朕結核予防法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年十月二十二日
内閣総理大臣 原敬
内務大臣 床次竹二郎
勅令第四百五十号
結核予防法施行令
第一条 結核予防法第五条第一項ノ規定ニ依ル制限又ハ禁止ニ因リ損害ヲ受ケタル建物ノ所有者又ハ使用者ニシテ同条第二項ノ補償金ノ交付ヲ受ケムトスルモノハ制限又ハ禁止アリタル日ヨリ六十日内ニ地方長官ニ交付ヲ申請スヘシ
第二条 補償金ノ額ハ建物ノ使用ノ制限又ハ禁止ニ因リ通常生スヘキ損害ヲ限度トシ地方長官ニ於テ三人以上ノ評価人ノ意見ヲ徴シ之ヲ決定ス
第三条 地方長官前条ノ規定ニ依リ補償金ノ額ヲ決定シタルトキハ之ヲ建物ノ所有者及使用者ニ通知シ且建物所在地ノ市町村長ヲシテ建物ノ所在地及補償金ノ額ヲ所有者及使用者ヲ除クノ外建物ニ関シ権利ヲ有スル者ニ通知セシメ且相当ノ期間公告セシムヘシ但シ其ノ期間ハ一月ヲ下ルコトヲ得ス
第四条 前条ノ規定ニ依ル公告期間ヲ経過シタルトキハ地方長官ハ速ニ補償金ヲ交付スヘシ但シ公告期間内ニ建物ニ関シ権利ヲ有スル者ヨリ申請アリタルトキハ期日ヲ指定シテ其ノ交付ヲ延期スルコトヲ得
第五条 結核予防法第七条ノ規定ニ依ル入所ノ費用ハ結核療養所ヲ設置スル公共団体ノ負担トス
第六条 結核療養所ノ管理者ハ前条ノ規定ニ拘ラス本人ヨリ入所ノ費用ノ全部又ハ一部ヲ徴収スルコトヲ得管理者本人ヨリ徴収スルコトヲ得スト認ムルトキハ其ノ扶養義務者ヨリ之ヲ徴収スルコトヲ得
前項ノ入所ノ費用ノ徴収ハ必要アルトキハ納付義務者ノ居住地又ハ財産所在地ノ地方長官又ハ市町村長ニ之ヲ嘱託スルコトヲ得
第一項ノ入所ノ費用ニシテ指定ノ期間内ニ納付ナキモノニ付テハ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ徴収スルコトヲ得
第七条 結核予防法第七条ノ規定ニ依リ入所セシメラレタル結核患者入所中死亡シタルトキハ遺留財産ヲ以テ入所ノ費用ノ全部又ハ一部ニ充ツルコトヲ得
第八条 結核予防法第八条ノ規定ニ依ル国庫補助ハ左ノ区分ニ依ル
一 結核療養所ノ創設費及拡張費並之ニ伴フ初度調弁費ハ支出額ノ二分ノ一
二 其ノ他ノ諸費ハ支出額ノ四分ノ一
第九条 結核予防法第九条ノ規定ニ依ルニ国庫補助ハ左ノ区分ニ依ル
一 結核療養所ノ創設費及拡張費並之ニ伴フ初度調弁費ハ支出額ノ四分ノ一乃至二分ノ一
二 其ノ他ノ諸費ハ支出額ノ八分ノ一乃至六分ノ一
第十条 前二条ニ於テ支出額トハ事業ニ伴フ収入、国庫以外ノ補助金又ハ寄附金ノ額ヲ控除シタル支出精算額ヲ謂フ但シ他ノ公共団体ヨリ受ケタル委託患者収容料ノ額ハ之ヲ控除セス
前項ノ支出精算額ノ算出ニ付テハ公益法人ノ場合ニ於テハ寄附金ノ額ヲ控除セサルコトヲ得
第十一条 結核予防法第十条ノ規定ニ依リ収容スヘキ委託患者ノ数ハ結核療養所ノ予定収容人員ノ十分ノ一以内トス但シ内務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
委託患者ヲ収容シタル公共団体ハ患者ノ収容ヲ委託シタル公共団体ニ対シ委託患者収容料ヲ請求スルコトヲ得
委託患者収容料ノ額ハ患者ヲ収容スル公共団体ニ於テ地方長官ノ認可ヲ受ケ之ヲ定ム
第十二条 収容シタル委託患者死亡シタルトキハ受託公共団体ハ其ノ旨ヲ委託公共団体ニ通知スヘシ
前項ノ通知ヲ受ケタル公共団体ハ死亡者ノ相続人、扶養義務者又ハ家族ヲシテ直ニ其ノ死体ヲ引取ラシムヘシ
前項ノ規定ニ依リ死体ヲ引取ルヘキ者引取ヲ為ササルトキ又ハ死体ノ引取人ナキトキハ委託公共団体ニ於テ其ノ死体ヲ引取ルヘシ此ノ場合ニ於ケル費用ハ其ノ公共団体ノ負担トス
第十三条 結核予防法第十一条ノ規定ニ依リ生活費ノ補給ヲ受クヘキ者ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ニ限ル
一 従業ヲ禁止セラレタル者
二 従業ヲ禁止セラレ又ハ入所セシメラレタル者ノ配偶者又ハ子ニシテ現ニ之ト同一ノ家ニ在ル者但シ養子ハ家督相続人ニ限ル
三 前号ニ掲クル者ヲ除クノ外従業ヲ禁止セラレ又ハ入所セシメラレタル者ニ依リ扶養ヲ受クヘキ者ニシテ従業ヲ禁止セラレ又ハ入所セシメラレタル時ヨリ引続キ之ト同一ノ家ニ在ル者
第十四条 生活費ノ補給ハ生活費ノ補給ヲ受ケムトスル者ノ申請ニ依リ地方長官ニ於テ其ノ許否ヲ決定ス
第十五条 生活費ノ補給ハ生活ニ必要ナル限度ヲ超ユルコトヲ得ス
第十六条 生活費補給ノ程度、方法、期間、廃止及停止ニ関スル事項ハ地方長官ニ於テ内務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ定ム
第十七条 結核予防法第五条第二項ノ補償金ノ額ノ決定ニ対シ不服アル建物ノ所有者又ハ使用者ハ決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ、同法第十一条ノ規定ニ依ル生活費補給ノ申請ヲ拒マレタル者又ハ其ノ生活費ノ補給ヲ廃止若ハ停止セラレタル者ハ処分ヲ受ケタル日ヨリ六十日内ニ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十八条 本令中市町村長トアルハ市制第六条ノ市ニ在リテハ区長、市制町村制ヲ施行セサル地ニ在リテハ市町村長ニ準スヘキ者トス
附 則
本令ハ結核予防法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
大正四年勅令第百二号ハ之ヲ廃止ス