朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ工場法施行令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正五年八月二日
內閣總理大臣 侯爵 大隈重信
農商務大臣 河野廣中
勅令第百九十三號
工場法施行令
第一章 通則
第一條 左ニ揭クル事業ノミヲ營ム工場ニ付テハ工場法ノ適用ヲ除外ス但シ農商務大臣ノ定ムル原動機ヲ用井ルモノハ此ノ限ニ在ラス
菓子、飴又ハ麵麭ノ製造
寒天、凍蒟蒻、凍豆腐、湯葉、麵類又ハ麩ノ製造
淸酒、濁酒、白酒、味淋、燒酎、酢、醬油又ハ味噌ノ製造
行李、簾、籠、和傘骨其ノ他ノ𣏌柳、籐、竹、籜、經木、蔓、莖又ハ藁ノ手工品ノ製造
經木眞田又ハ麥稈眞田ノ編製
「アタン」、「パナマ」又ハ之ニ類スルモノヲ以テスル帽子其ノ他ノモノノ編製
扇子、團扇、和傘又ハ提燈ノ製造
紙、絲、棉、竹又ハ布帛ヲ主タル材料トスル玩具又ハ造花ノ製造
形紙、紙函、元結又ハ水引ノ製造
被服、足袋其ノ他ノ布帛類ノ裁縫
手工ニ依ル組紐ノ編製
刺繍、「レース」、「バテンレース」又ハ「ドローンウォーク」ノ業
第二條 鑛業法ノ適用ヲ受クル工場ニ付テハ工場法ノ適用ヲ除外ス
第三條 左ニ揭クル事業ヲ營ム工場ハ工場法第一條第一項第二號ニ該當スルモノトス
毒劇物又ハ毒劇藥ノ製造
動物ノ剝製
金屬ノ熔融又ハ精煉
水銀ヲ用井ル計器ノ製造
燐寸ノ製造
火藥、爆藥又ハ火工品ノ製造又ハ取扱
塗料又ハ顏料ノ製造
「エーテル」ノ製造
溶劑ヲ用井ル護謨製品ノ製造
脂肪油ノ精製
溶劑ヲ用井ル油脂ノ採收
「ボイル」油ノ製造
礦油ノ蒸溜又ハ精製
乾燥油又ハ溶劑ヲ用井ル擬革紙布又ハ防水紙布ノ製造
亞硫酸瓦斯、鹽素瓦斯又ハ水素瓦斯ヲ用井ル事業
金屬、骨、角又ハ貝殼ノ乾燥硏磨
硝子ノ製造、腐蝕、砂吹又ハ粉碎
織物又ハ編物ノ起毛
製棉
麻ノ梳解
其ノ他農商務大臣ノ命令ヲ以テ指定シタル事業
第二章 職工又ハ其ノ遺族ノ扶助
第四條 職工業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタルトキハ工業主ハ當該職工ノ重大ナル過失ニ因ルコトヲ證明シタル場合ヲ除クノ外本章ノ規定ニ依リ扶助ヲ爲スヘシ但シ扶助ヲ受クヘキ者民法ニ依リ同一ノ原因ニ付損害賠償ヲ受ケタルトキハ工業主ハ扶助金額ヨリ其ノ金額ヲ控除スルコトヲ得
前項扶助ノ義務ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外職工ノ解雇ニ因リテ變更セラルルコトナシ
第五條 職工負傷シ又ハ疾病ニ罹リタルトキハ工業主ハ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負擔スヘシ
第六條 職工療養ノ爲勞務ニ服スルコト能ハサルニ因リ賃金ヲ受ケサルトキハ工業主ハ職工ノ療養中一日ニ付賃金二分ノ一以上ノ扶助料ヲ支給スヘシ但シ其ノ支給引續キ三月以上ニ捗リタルトキハ其ノ後ノ支給額ヲ賃金三分ノ一迄ニ減スルコトヲ得
第七條 職工ノ負傷又ハ疾病治癒シタル時ニ於テ左ノ各號ノ一ニ該當スル程度ノ身體障害ヲ存スルトキハ工業主ハ左ニ揭クル區別ニ依リ扶助料ヲ支給スヘシ
一 終身自用ヲ辨スルコト能ハサルモノ 賃金百七十日分以上
二 終身勞務ニ服スルコト能ハサルモノ 賃金百五十日分以上
三 從來ノ勞務ニ服スルコト能ハサルモノ、健康舊ニ復スルコト能ハサルモノ又ハ女子ノ外貌ニ醜痕ヲ殘シタルモノ 賃金百日分以上
四 身體ヲ傷害シ舊ニ復スルコト能ハスト雖引續キ從來ノ勞務ニ服スルコトヲ得ルモノ 賃金三十日分以上
第八條 職工死亡シタルトキハ工業主ハ遺族ニ賃金百七十日分以上ノ遺族扶助料ヲ支給スヘシ
第九條 職工死亡シタルトキハ工業主ハ葬祭ヲ行フ遺族ニ十圓以上ノ葬祭料ヲ支給スヘシ
第十條 遺族扶助料ヲ受クヘキ者ハ職工ノ配偶者トス
配偶者ナキ場合ニ於テ遺族扶助料ヲ受クヘキ者ハ職工死亡當時之ト同一ノ家ニ在リタル職工ノ直系卑屬又ハ直系尊屬トシ其ノ順位ハ親等ノ近キ者ヲ先ニシ卑屬ト尊屬ト親等相同シキトキハ卑屬ヲ先ニス
第十一條 前條第二項ニ定メタル同順位者ノ間ニ在リテハ其ノ順位ハ左ノ規定ニ依ル
一 職工ノ家督相續人又ハ戶主ハ之ヲ他ノ者ヨリ先ニス
二 男ハ之ヲ女ヨリ先ニス
三 直系卑屬ニ付テハ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニシ嫡出子、庶子及私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及庶子ハ女ト雖之ヲ私生子ヨリ先ニス
四 前二號ニ揭クル事項ニ付相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
第十二條 第十條ノ規定ニ該當スル者ナキ場合ニ於テハ左ニ揭クル者ノ中一人ニ遺族扶助料ヲ支給スヘシ但シ職工ノ遺言又ハ工業主ニ對シテ爲シタル豫吿ニ依リ左ニ揭クル者ノ中一人ヲ特ニ指定シタルトキハ之ニ從フヘシ
一 職工ノ家督相續人又ハ戶主
二 職工ノ兄弟姊妹ニシテ職工死亡當時之ト同一ノ家ニ在リタル者
三 職工ノ親族又ハ職工ト同一ノ家ニ在ル者ニシテ職工死亡當時其ノ收入ニ依リ生計ヲ維持シタル者
第十三條 第六條ノ規定ニ依ル扶助料ハ每月一囘以上之ヲ支給スヘシ第五條ノ規定ニ依ル費用ヲ本人ニ支給スル場合亦同シ
第十四條 第五條ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クル職工療養開始後三年ヲ經過スルモ負傷又ハ疾病治癒セサルトキハ工業主ハ賃金百七十日分以上ノ扶助料ヲ支給シ以後本章ノ規定ニ依ル扶助ヲ爲ササルコトヲ得
第十五條 工業主ハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ本章ノ規定ニ依ル扶助ヲ爲ササルコトヲ得
一 職工ノ解雇後一年ヲ經過シテ扶助ヲ請求スルトキ但シ旣ニ受ケタル扶助ノ原因タル負傷又ハ疾病ニ基キ請求スルトキハ此ノ限ニ在ラス解雇前ニ又ハ解雇後一年內ニ請求シタル扶助ノ原因タル負傷又ハ疾病ニ基キ請求スルトキ亦同シ
二 扶助ヲ受ケテ治癒シタル負傷又ハ疾病カ職工ノ解雇後ニ於テ再發スルトキ
第十六條 第六條乃至第八條及第十四條ノ規定ニ依ル扶助料算出ノ標準トスヘキ賃金ハ左ノ各號ノ金額トス
一 定額ニ依リ賃金ヲ定ムル場合ニ於テハ其ノ賃金ノ額
二 稼高又ハ就業時間ニ依リ賃金ヲ定ムル場合ニ於テハ疾病ニ在リテハ診斷ニ據ル發病ノ日ヲ除キ發病ノ日明ナラサルトキハ診斷前七日ヲ除キ負傷又ハ卽死ニ在リテハ事故發生ノ日ヲ除キ其ノ前就業三十日分ノ賃金ノ平均額但シ就業三十日ニ滿タサルトキハ其ノ賃金ノ平均額トス
三 前二號ノ規定ニ依リテ金額ヲ算出スルコトヲ得サル場合ニ於テハ扶助規則ニ於テ定ムル金額但シ扶助規則ニ定ナキトキハ地方長官之ヲ定ム
第十七條 前條第一號又ハ第二號ノ規定ニ依リ金額ヲ算出スル場合ニ於テ工業主カ食事其ノ他ノ給與ヲ支給スルトキハ其ノ價額ハ之ヲ金額中ニ加算ス
第十八條 地方長官ハ職權ヲ以テ又ハ申請ニ因リ職工ノ負傷、疾病若ハ死亡ノ原因、第七條各號ニ揭クル身體障害ノ程度其ノ他扶助ニ關スル事項ニ付之ヲ審査シ及事件ノ調停ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ醫師ヲシテ診斷又ハ檢案セシムルコトヲ得
第十九條 工業主ハ扶助規則ヲ作成シ扶助ノ金額、手續其ノ他扶助ニ關シ必要ナル事項ヲ定メ之ヲ地方長官ニ屆出ツヘシ扶助規則ヲ變更セムトスルトキ亦同シ
地方長官必要ト認ムルトキハ扶助規則ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第二十條 官立工場ニ於ケル職工ノ扶助ニ付テハ別ニ定ムル規程ニ依ル
第三章 職工ノ雇入、解雇及周旋
第二十一條 工業主ハ職工名簿ヲ調製シ工場每ニ之ヲ備付クヘシ
職工名簿ニ記載スヘキ事項ニ關シテハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第二十二條 職工ニ給與スル賃金ハ通貨ヲ以テ每月一囘以上之ヲ支拂フヘシ
第二十三條 工業主ハ職工ノ死亡若ハ解雇ノ場合又ハ農商務大臣ノ定ムル場合ニ於テ權利者ノ請求アリタルトキハ遲滯ナク賃金ヲ支拂フヘシ
前項ノ場合ニ於テ積立金、信認金其ノ他何等ノ名義ヲ用井ルニ拘ラス職工ノ貯蓄金ハ遲滯ナク之ヲ返還スヘシ
第二十四條 工業主ハ職工ノ雇入ニ關シ前二條ノ規定ニ違反スル契約又ハ工業主ノ受クヘキ違約金ヲ定メ若ハ損害賠償額ヲ豫定スル契約ヲ爲スコトヲ得ス但シ左ノ事項ニ付豫メ方法ヲ定メ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 職工ニ貯蓄ヲ爲サシメ又ハ職工ノ利益ノ爲賃金ノ一部ニ代ヘ他ノ給付ヲ爲スコト
二 職工カ雇入契約ニ違反シ其ノ他職工ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リ解雇セラルル場合ニ於テ職工ノ貯蓄金中工業主ノ給與ニ係ル部分ヲ交付セサルコト
第二十五條 職工ノ貯蓄金ヲ管理スル場合ニ於テハ工業主ハ豫メ確實ナル方法ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第二十六條 尋常小學校ノ敎科ヲ修了セサル學齡兒童ヲ雇傭スル場合ニ於テハ工業主ハ就學ニ關シ必要ナル事項ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第二十七條 未成年者若ハ女子カ工業主ノ都合ニ依リ解雇セラレ又ハ第五條若ハ第六條ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クル職工若ハ第七條第一號第二號ニ該當スル職工解雇セラレ解雇ノ日ヨリ十五日內ニ歸鄕スル場合ニ於テハ工業主ハ其ノ必要ナル旅費ヲ負擔スヘシ第十四條ノ規定ニ依リ扶助ヲ廢止セラレタル者廢止ノ日ヨリ十五日內ニ歸鄕スル場合亦同シ
第十八條ノ規定ハ前項ノ旅費ニ關シ之ヲ準用ス
第四章 徒弟
第二十八條 工場ニ收容スル徒弟ハ左ノ各號ノ條件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 一定ノ職業ニ必要ナル知識技能ヲ習得スルノ目的ヲ以テ業務ニ就クコト
二 一定ノ指導者指揮監督ノ下ニ敎習ヲ受クルコト
三 品性ノ修養ニ關シ常時一定ノ監督ヲ受クルコト
四 地方長官ノ認可ヲ受ケタル規程ニ依リ收容セラルルコト
第二十九條 工業主前條第四號ノ認可ヲ申請スルニハ左ノ事項ヲ具備スヘシ
一 徒弟ノ員數
二 徒弟ノ年齡
三 指導者ノ資格
四 敎習ノ事項及期間
五 就業ノ方法及一日ニ於ケル就業ノ時間
六 休日及休憩ニ關スル事項
七 品性修養ニ關スル監督ノ方法
八 給與ノ方法
九 第三十條ノ規定ニ依リ設クル規程
十 徒弟契約ノ條項
第三十條 徒弟未成年者又ハ女子ナル場合ニ於テハ其ノ就業ニ付十五歲未滿ノ者又ハ女子ニ關スル工場法ノ規定ニ準據シテ危險ヲ避ケ及衞生上ノ害ヲ防クノ方法ヲ定ムヘシ
第二十六條及之ニ關スル罰則ハ徒弟ノ收容ニ之ヲ準用ス
第三十一條 地方長官ハ工業主ニ於テ第二十八條第四號ノ規程ニ遵ハス又ハ徒弟敎習ノ目的ヲ完クスルコト能ハスト認ムルトキハ之ヲ矯正スル爲必要ナル事項ヲ命シ又ハ第二十八條第四號ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第三十二條 第二十八條ノ條件ヲ具備セサル者ニ對シテハ工業主ニ於テ徒弟ノ名義ヲ用井ルニ拘ラス職工ニ關スル工場法及本令ノ規定ヲ適用ス第二十八條第四號ノ認可ヲ取消サレタルトキ從來ノ徒弟ニ付亦同シ
第五章 罰則
第三十三條 工業主左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 地方長官ノ爲シタル扶助規則變更ノ命令ニ違反シタルトキ
二 職工ノ雇入ニ付詐術ヲ用井タルトキ
三 第二十四條ニ違反シ又ハ同條但書ノ規定ニ依ル許可ノ條件ニ違反シタルトキ
四 不正ニ扶助義務ノ全部若ハ一部ヲ免レ又ハ免レムトスルノ所爲ヲ爲シタルトキ
五 不正ニ賃金支拂ノ義務、職工ノ貯蓄金返還ノ義務又ハ第二十七條第一項ノ規定ニ依ル義務ノ全部又ハ一部ヲ免レ又ハ免レムトスルノ所爲ヲ爲シタルトキ
六 第二十五條ノ認可ヲ受ケス又ハ認可ヲ受ケタル方法ニ依ラスシテ職工ノ貯蓄金ヲ管理シタルトキ
七 第二十六條ノ認可ヲ受ケスシテ尋常小學校ノ敎科ヲ修了セサル學齡兒童ヲ雇傭シタルトキ
八 第二十八條第四號ノ規程又ハ第三十一條ノ規定ニ依ル地方長官ノ命令ニ違反シタルトキ
工業主ノ爲ニスル職工ノ雇入ニ付詐術ヲ用井タル者又ハ工業主ヲシテ不正ニ前項第四號若ハ第五號ニ揭クル義務ノ全部若ハ一部ヲ免レシメ若ハ免レシメムトスルノ所爲ヲ爲シタル者ハ罰前項ニ同シ但シ其ノ者ノ所爲ニ付工場法第二十二條ノ規定ニ依リ工業主又ハ之ニ代ル者ヲ罰スヘキ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第三十四條 職工ノ周旋ニ付詐術ヲ用井タル者ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十五條 工業主左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 職工名簿ノ調製又ハ備付ヲ怠リタルトキ
二 扶助規則ノ作成若ハ屆出ヲ怠リタルトキ
三 通貨ニ非サルモノヲ以テ賃金ヲ支拂ヒタルトキ
第三十六條 本令ニ規定スル所爲カ同時ニ刑法其ノ他ノ法令ノ罰則ノ規定ニ觸ルル爲其ノ所爲ヲ爲シタル工業主又ハ之ニ代ル者ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニ對シ刑法其ノ他ノ法令ヲ適用スル場合ニ於テモ工業主又ハ之ニ代ル者ニ對シ本令ヲ適用スルコトヲ妨ケス
附 則
第三十七條 本令ハ大正五年九月一日ヨリ之ヲ施行ス
第三十八條 第二十四條ノ規定ハ本令施行後一年間本令施行前ノ契約ニ之ヲ適用セス
賃金ノ支拂期ニ關シ第二十二條ノ規定ニ異ル慣習アルトキハ工業主ハ地方長官ノ許可ヲ受ケ本令施行後三年內其ノ慣習ニ依ル支拂期ヲ延長セサル限度ニ於テ支拂期ヲ定ムルノ契約ヲ爲スコトヲ得
第三十九條 本令施行ノ際工場法ノ適用ヲ受クル工場ノ工業主ハ本令施行ノ日ヨリ四月內ハ第十九條、第二十一條、第二十二條、第二十五條及第二十六條ノ規定ニ依ラサルコトヲ得
本令施行ノ際職工ノ貯蓄金ヲ管理シ又ハ尋常小學校ノ敎科ヲ修了セサル學齡兒童ヲ雇傭シ若ハ徒弟トシテ收容スル工業主前項ノ期間內ニ第二十五條、第二十六條又ハ第三十條第二項ノ規定ニ依ル認可ヲ申請シタルトキハ之ニ對スル行政處分アル迄仍從前ノ例ニ依ルコトヲ得
前項ノ規定ハ前條第二項ノ許可ノ申請ニ付之ヲ準用ス
第四十條 現行ノ命令ハ工場法又ハ本令ニ牴觸セサル限リ本令施行ノ爲其ノ效力ヲ妨ケラルルコトナシ
第四十一條 本令ニ定ムルモノノ外主務大臣及地方長官ハ職工ノ雇入、解雇、周旋ノ取締其ノ他本令施行ノ爲必要ナル事項ニ關シ命令ヲ發スルコトヲ得
第四十二條 本令中地方長官トアルハ東京府ニ於テハ警視總監トス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ工場法施行令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正五年八月二日
内閣総理大臣 侯爵 大隈重信
農商務大臣 河野広中
勅令第百九十三号
工場法施行令
第一章 通則
第一条 左ニ掲クル事業ノミヲ営ム工場ニ付テハ工場法ノ適用ヲ除外ス但シ農商務大臣ノ定ムル原動機ヲ用井ルモノハ此ノ限ニ在ラス
菓子、飴又ハ麺麭ノ製造
寒天、凍蒟蒻、凍豆腐、湯葉、麺類又ハ麩ノ製造
清酒、濁酒、白酒、味淋、焼酎、酢、醬油又ハ味噌ノ製造
行李、簾、籠、和傘骨其ノ他ノ𣏌柳、籐、竹、籜、経木、蔓、茎又ハ藁ノ手工品ノ製造
経木真田又ハ麦稈真田ノ編製
「アタン」、「パナマ」又ハ之ニ類スルモノヲ以テスル帽子其ノ他ノモノノ編製
扇子、団扇、和傘又ハ提灯ノ製造
紙、糸、棉、竹又ハ布帛ヲ主タル材料トスル玩具又ハ造花ノ製造
形紙、紙函、元結又ハ水引ノ製造
被服、足袋其ノ他ノ布帛類ノ裁縫
手工ニ依ル組紐ノ編製
刺繍、「レース」、「バテンレース」又ハ「ドローンウォーク」ノ業
第二条 鉱業法ノ適用ヲ受クル工場ニ付テハ工場法ノ適用ヲ除外ス
第三条 左ニ掲クル事業ヲ営ム工場ハ工場法第一条第一項第二号ニ該当スルモノトス
毒劇物又ハ毒劇薬ノ製造
動物ノ剥製
金属ノ熔融又ハ精煉
水銀ヲ用井ル計器ノ製造
燐寸ノ製造
火薬、爆薬又ハ火工品ノ製造又ハ取扱
塗料又ハ顔料ノ製造
「エーテル」ノ製造
溶剤ヲ用井ル護謨製品ノ製造
脂肪油ノ精製
溶剤ヲ用井ル油脂ノ採収
「ボイル」油ノ製造
礦油ノ蒸溜又ハ精製
乾燥油又ハ溶剤ヲ用井ル擬革紙布又ハ防水紙布ノ製造
亜硫酸瓦斯、塩素瓦斯又ハ水素瓦斯ヲ用井ル事業
金属、骨、角又ハ貝殻ノ乾燥研磨
硝子ノ製造、腐蝕、砂吹又ハ粉砕
織物又ハ編物ノ起毛
製棉
麻ノ梳解
其ノ他農商務大臣ノ命令ヲ以テ指定シタル事業
第二章 職工又ハ其ノ遺族ノ扶助
第四条 職工業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタルトキハ工業主ハ当該職工ノ重大ナル過失ニ因ルコトヲ証明シタル場合ヲ除クノ外本章ノ規定ニ依リ扶助ヲ為スヘシ但シ扶助ヲ受クヘキ者民法ニ依リ同一ノ原因ニ付損害賠償ヲ受ケタルトキハ工業主ハ扶助金額ヨリ其ノ金額ヲ控除スルコトヲ得
前項扶助ノ義務ハ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外職工ノ解雇ニ因リテ変更セラルルコトナシ
第五条 職工負傷シ又ハ疾病ニ罹リタルトキハ工業主ハ其ノ費用ヲ以テ療養ヲ施シ又ハ療養ニ必要ナル費用ヲ負担スヘシ
第六条 職工療養ノ為労務ニ服スルコト能ハサルニ因リ賃金ヲ受ケサルトキハ工業主ハ職工ノ療養中一日ニ付賃金二分ノ一以上ノ扶助料ヲ支給スヘシ但シ其ノ支給引続キ三月以上ニ捗リタルトキハ其ノ後ノ支給額ヲ賃金三分ノ一迄ニ減スルコトヲ得
第七条 職工ノ負傷又ハ疾病治癒シタル時ニ於テ左ノ各号ノ一ニ該当スル程度ノ身体障害ヲ存スルトキハ工業主ハ左ニ掲クル区別ニ依リ扶助料ヲ支給スヘシ
一 終身自用ヲ弁スルコト能ハサルモノ 賃金百七十日分以上
二 終身労務ニ服スルコト能ハサルモノ 賃金百五十日分以上
三 従来ノ労務ニ服スルコト能ハサルモノ、健康旧ニ復スルコト能ハサルモノ又ハ女子ノ外貌ニ醜痕ヲ残シタルモノ 賃金百日分以上
四 身体ヲ傷害シ旧ニ復スルコト能ハスト雖引続キ従来ノ労務ニ服スルコトヲ得ルモノ 賃金三十日分以上
第八条 職工死亡シタルトキハ工業主ハ遺族ニ賃金百七十日分以上ノ遺族扶助料ヲ支給スヘシ
第九条 職工死亡シタルトキハ工業主ハ葬祭ヲ行フ遺族ニ十円以上ノ葬祭料ヲ支給スヘシ
第十条 遺族扶助料ヲ受クヘキ者ハ職工ノ配偶者トス
配偶者ナキ場合ニ於テ遺族扶助料ヲ受クヘキ者ハ職工死亡当時之ト同一ノ家ニ在リタル職工ノ直系卑属又ハ直系尊属トシ其ノ順位ハ親等ノ近キ者ヲ先ニシ卑属ト尊属ト親等相同シキトキハ卑属ヲ先ニス
第十一条 前条第二項ニ定メタル同順位者ノ間ニ在リテハ其ノ順位ハ左ノ規定ニ依ル
一 職工ノ家督相続人又ハ戸主ハ之ヲ他ノ者ヨリ先ニス
二 男ハ之ヲ女ヨリ先ニス
三 直系卑属ニ付テハ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニシ嫡出子、庶子及私生子ノ間ニ在リテハ嫡出子及庶子ハ女ト雖之ヲ私生子ヨリ先ニス
四 前二号ニ掲クル事項ニ付相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
第十二条 第十条ノ規定ニ該当スル者ナキ場合ニ於テハ左ニ掲クル者ノ中一人ニ遺族扶助料ヲ支給スヘシ但シ職工ノ遺言又ハ工業主ニ対シテ為シタル予告ニ依リ左ニ掲クル者ノ中一人ヲ特ニ指定シタルトキハ之ニ従フヘシ
一 職工ノ家督相続人又ハ戸主
二 職工ノ兄弟姉妹ニシテ職工死亡当時之ト同一ノ家ニ在リタル者
三 職工ノ親族又ハ職工ト同一ノ家ニ在ル者ニシテ職工死亡当時其ノ収入ニ依リ生計ヲ維持シタル者
第十三条 第六条ノ規定ニ依ル扶助料ハ毎月一回以上之ヲ支給スヘシ第五条ノ規定ニ依ル費用ヲ本人ニ支給スル場合亦同シ
第十四条 第五条ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クル職工療養開始後三年ヲ経過スルモ負傷又ハ疾病治癒セサルトキハ工業主ハ賃金百七十日分以上ノ扶助料ヲ支給シ以後本章ノ規定ニ依ル扶助ヲ為ササルコトヲ得
第十五条 工業主ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ本章ノ規定ニ依ル扶助ヲ為ササルコトヲ得
一 職工ノ解雇後一年ヲ経過シテ扶助ヲ請求スルトキ但シ既ニ受ケタル扶助ノ原因タル負傷又ハ疾病ニ基キ請求スルトキハ此ノ限ニ在ラス解雇前ニ又ハ解雇後一年内ニ請求シタル扶助ノ原因タル負傷又ハ疾病ニ基キ請求スルトキ亦同シ
二 扶助ヲ受ケテ治癒シタル負傷又ハ疾病カ職工ノ解雇後ニ於テ再発スルトキ
第十六条 第六条乃至第八条及第十四条ノ規定ニ依ル扶助料算出ノ標準トスヘキ賃金ハ左ノ各号ノ金額トス
一 定額ニ依リ賃金ヲ定ムル場合ニ於テハ其ノ賃金ノ額
二 稼高又ハ就業時間ニ依リ賃金ヲ定ムル場合ニ於テハ疾病ニ在リテハ診断ニ拠ル発病ノ日ヲ除キ発病ノ日明ナラサルトキハ診断前七日ヲ除キ負傷又ハ即死ニ在リテハ事故発生ノ日ヲ除キ其ノ前就業三十日分ノ賃金ノ平均額但シ就業三十日ニ満タサルトキハ其ノ賃金ノ平均額トス
三 前二号ノ規定ニ依リテ金額ヲ算出スルコトヲ得サル場合ニ於テハ扶助規則ニ於テ定ムル金額但シ扶助規則ニ定ナキトキハ地方長官之ヲ定ム
第十七条 前条第一号又ハ第二号ノ規定ニ依リ金額ヲ算出スル場合ニ於テ工業主カ食事其ノ他ノ給与ヲ支給スルトキハ其ノ価額ハ之ヲ金額中ニ加算ス
第十八条 地方長官ハ職権ヲ以テ又ハ申請ニ因リ職工ノ負傷、疾病若ハ死亡ノ原因、第七条各号ニ掲クル身体障害ノ程度其ノ他扶助ニ関スル事項ニ付之ヲ審査シ及事件ノ調停ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ト認ムルトキハ医師ヲシテ診断又ハ検案セシムルコトヲ得
第十九条 工業主ハ扶助規則ヲ作成シ扶助ノ金額、手続其ノ他扶助ニ関シ必要ナル事項ヲ定メ之ヲ地方長官ニ届出ツヘシ扶助規則ヲ変更セムトスルトキ亦同シ
地方長官必要ト認ムルトキハ扶助規則ノ変更ヲ命スルコトヲ得
第二十条 官立工場ニ於ケル職工ノ扶助ニ付テハ別ニ定ムル規程ニ依ル
第三章 職工ノ雇入、解雇及周旋
第二十一条 工業主ハ職工名簿ヲ調製シ工場毎ニ之ヲ備付クヘシ
職工名簿ニ記載スヘキ事項ニ関シテハ農商務大臣ノ定ムル所ニ依ル
第二十二条 職工ニ給与スル賃金ハ通貨ヲ以テ毎月一回以上之ヲ支払フヘシ
第二十三条 工業主ハ職工ノ死亡若ハ解雇ノ場合又ハ農商務大臣ノ定ムル場合ニ於テ権利者ノ請求アリタルトキハ遅滞ナク賃金ヲ支払フヘシ
前項ノ場合ニ於テ積立金、信認金其ノ他何等ノ名義ヲ用井ルニ拘ラス職工ノ貯蓄金ハ遅滞ナク之ヲ返還スヘシ
第二十四条 工業主ハ職工ノ雇入ニ関シ前二条ノ規定ニ違反スル契約又ハ工業主ノ受クヘキ違約金ヲ定メ若ハ損害賠償額ヲ予定スル契約ヲ為スコトヲ得ス但シ左ノ事項ニ付予メ方法ヲ定メ地方長官ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 職工ニ貯蓄ヲ為サシメ又ハ職工ノ利益ノ為賃金ノ一部ニ代ヘ他ノ給付ヲ為スコト
二 職工カ雇入契約ニ違反シ其ノ他職工ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リ解雇セラルル場合ニ於テ職工ノ貯蓄金中工業主ノ給与ニ係ル部分ヲ交付セサルコト
第二十五条 職工ノ貯蓄金ヲ管理スル場合ニ於テハ工業主ハ予メ確実ナル方法ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第二十六条 尋常小学校ノ教科ヲ修了セサル学齢児童ヲ雇傭スル場合ニ於テハ工業主ハ就学ニ関シ必要ナル事項ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
第二十七条 未成年者若ハ女子カ工業主ノ都合ニ依リ解雇セラレ又ハ第五条若ハ第六条ノ規定ニ依リ扶助ヲ受クル職工若ハ第七条第一号第二号ニ該当スル職工解雇セラレ解雇ノ日ヨリ十五日内ニ帰郷スル場合ニ於テハ工業主ハ其ノ必要ナル旅費ヲ負担スヘシ第十四条ノ規定ニ依リ扶助ヲ廃止セラレタル者廃止ノ日ヨリ十五日内ニ帰郷スル場合亦同シ
第十八条ノ規定ハ前項ノ旅費ニ関シ之ヲ準用ス
第四章 徒弟
第二十八条 工場ニ収容スル徒弟ハ左ノ各号ノ条件ヲ具備スルコトヲ要ス
一 一定ノ職業ニ必要ナル知識技能ヲ習得スルノ目的ヲ以テ業務ニ就クコト
二 一定ノ指導者指揮監督ノ下ニ教習ヲ受クルコト
三 品性ノ修養ニ関シ常時一定ノ監督ヲ受クルコト
四 地方長官ノ認可ヲ受ケタル規程ニ依リ収容セラルルコト
第二十九条 工業主前条第四号ノ認可ヲ申請スルニハ左ノ事項ヲ具備スヘシ
一 徒弟ノ員数
二 徒弟ノ年齢
三 指導者ノ資格
四 教習ノ事項及期間
五 就業ノ方法及一日ニ於ケル就業ノ時間
六 休日及休憩ニ関スル事項
七 品性修養ニ関スル監督ノ方法
八 給与ノ方法
九 第三十条ノ規定ニ依リ設クル規程
十 徒弟契約ノ条項
第三十条 徒弟未成年者又ハ女子ナル場合ニ於テハ其ノ就業ニ付十五歳未満ノ者又ハ女子ニ関スル工場法ノ規定ニ準拠シテ危険ヲ避ケ及衛生上ノ害ヲ防クノ方法ヲ定ムヘシ
第二十六条及之ニ関スル罰則ハ徒弟ノ収容ニ之ヲ準用ス
第三十一条 地方長官ハ工業主ニ於テ第二十八条第四号ノ規程ニ遵ハス又ハ徒弟教習ノ目的ヲ完クスルコト能ハスト認ムルトキハ之ヲ矯正スル為必要ナル事項ヲ命シ又ハ第二十八条第四号ノ認可ヲ取消スコトヲ得
第三十二条 第二十八条ノ条件ヲ具備セサル者ニ対シテハ工業主ニ於テ徒弟ノ名義ヲ用井ルニ拘ラス職工ニ関スル工場法及本令ノ規定ヲ適用ス第二十八条第四号ノ認可ヲ取消サレタルトキ従来ノ徒弟ニ付亦同シ
第五章 罰則
第三十三条 工業主左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ二百円以下ノ罰金ニ処ス
一 地方長官ノ為シタル扶助規則変更ノ命令ニ違反シタルトキ
二 職工ノ雇入ニ付詐術ヲ用井タルトキ
三 第二十四条ニ違反シ又ハ同条但書ノ規定ニ依ル許可ノ条件ニ違反シタルトキ
四 不正ニ扶助義務ノ全部若ハ一部ヲ免レ又ハ免レムトスルノ所為ヲ為シタルトキ
五 不正ニ賃金支払ノ義務、職工ノ貯蓄金返還ノ義務又ハ第二十七条第一項ノ規定ニ依ル義務ノ全部又ハ一部ヲ免レ又ハ免レムトスルノ所為ヲ為シタルトキ
六 第二十五条ノ認可ヲ受ケス又ハ認可ヲ受ケタル方法ニ依ラスシテ職工ノ貯蓄金ヲ管理シタルトキ
七 第二十六条ノ認可ヲ受ケスシテ尋常小学校ノ教科ヲ修了セサル学齢児童ヲ雇傭シタルトキ
八 第二十八条第四号ノ規程又ハ第三十一条ノ規定ニ依ル地方長官ノ命令ニ違反シタルトキ
工業主ノ為ニスル職工ノ雇入ニ付詐術ヲ用井タル者又ハ工業主ヲシテ不正ニ前項第四号若ハ第五号ニ掲クル義務ノ全部若ハ一部ヲ免レシメ若ハ免レシメムトスルノ所為ヲ為シタル者ハ罰前項ニ同シ但シ其ノ者ノ所為ニ付工場法第二十二条ノ規定ニ依リ工業主又ハ之ニ代ル者ヲ罰スヘキ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第三十四条 職工ノ周旋ニ付詐術ヲ用井タル者ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十五条 工業主左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 職工名簿ノ調製又ハ備付ヲ怠リタルトキ
二 扶助規則ノ作成若ハ届出ヲ怠リタルトキ
三 通貨ニ非サルモノヲ以テ賃金ヲ支払ヒタルトキ
第三十六条 本令ニ規定スル所為カ同時ニ刑法其ノ他ノ法令ノ罰則ノ規定ニ触ルル為其ノ所為ヲ為シタル工業主又ハ之ニ代ル者ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニ対シ刑法其ノ他ノ法令ヲ適用スル場合ニ於テモ工業主又ハ之ニ代ル者ニ対シ本令ヲ適用スルコトヲ妨ケス
附 則
第三十七条 本令ハ大正五年九月一日ヨリ之ヲ施行ス
第三十八条 第二十四条ノ規定ハ本令施行後一年間本令施行前ノ契約ニ之ヲ適用セス
賃金ノ支払期ニ関シ第二十二条ノ規定ニ異ル慣習アルトキハ工業主ハ地方長官ノ許可ヲ受ケ本令施行後三年内其ノ慣習ニ依ル支払期ヲ延長セサル限度ニ於テ支払期ヲ定ムルノ契約ヲ為スコトヲ得
第三十九条 本令施行ノ際工場法ノ適用ヲ受クル工場ノ工業主ハ本令施行ノ日ヨリ四月内ハ第十九条、第二十一条、第二十二条、第二十五条及第二十六条ノ規定ニ依ラサルコトヲ得
本令施行ノ際職工ノ貯蓄金ヲ管理シ又ハ尋常小学校ノ教科ヲ修了セサル学齢児童ヲ雇傭シ若ハ徒弟トシテ収容スル工業主前項ノ期間内ニ第二十五条、第二十六条又ハ第三十条第二項ノ規定ニ依ル認可ヲ申請シタルトキハ之ニ対スル行政処分アル迄仍従前ノ例ニ依ルコトヲ得
前項ノ規定ハ前条第二項ノ許可ノ申請ニ付之ヲ準用ス
第四十条 現行ノ命令ハ工場法又ハ本令ニ牴触セサル限リ本令施行ノ為其ノ効力ヲ妨ケラルルコトナシ
第四十一条 本令ニ定ムルモノノ外主務大臣及地方長官ハ職工ノ雇入、解雇、周旋ノ取締其ノ他本令施行ノ為必要ナル事項ニ関シ命令ヲ発スルコトヲ得
第四十二条 本令中地方長官トアルハ東京府ニ於テハ警視総監トス