朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル運河法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正二年四月八日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
內務大臣 原敬
遞信大臣 元田肇
法律第十六號
運河法
第一條 一般運送ノ用ニ供スル目的ヲ以テ運河ヲ開設セムトスル者ハ內務大臣ノ免許ヲ受クヘシ
第二條 免許ヲ受ケタル者ハ內務大臣ノ指定シタル期限內ニ工事設計ノ認可ヲ地方長官ニ申請スヘシ
第三條 國、公共團體又ハ行政廳ノ許可ヲ受ケタル者ニ於テ運河ニ接續若ハ接近シ又ハ之ヲ橫斷シテ河川、溝渠、道路、橋梁、鐵道、軌道其ノ他公共ノ用ニ供スルモノヲ造設スルモ免許ヲ受ケタル者ハ運河ノ效用ニ妨ナキ限リ之ヲ拒ムコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ內務大臣又ハ地方長官ハ公益上必要ト認ムルトキハ免許ヲ受ケタル者ニ命シ接續、橫斷ノ場所ニ於ケル設備ヲ共用ニ供セシメ又ハ之ヲ變更セシムルコトヲ得
第四條 前條第一項ノ場合ニ於テ運河ノ效用ニ妨アリヤ否ニ付爭アルトキ又ハ同條第二項ノ場合ニ於テ設備ノ共用若ハ變更ニ要スル費用ノ負擔ニ付協議調ハサルトキハ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第五條 工事カ其ノ設計又ハ免許、許可若ハ認可ノ條件ニ違反スルトキハ地方長官ハ其ノ改築、除却又ハ停止ヲ命スルコトヲ得
第六條 工事ノ全部又ハ一部竣功シ運送ヲ開始セムトスルトキハ地方長官ノ許可ヲ受クヘシ
第七條 免許ヲ受ケタル者ハ通航料其ノ他運河使用ニ關スル規程ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
地方長官ニ於テ公益上必要ト認ムルトキハ前項ノ規程ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第八條 內務大臣又ハ地方長官ハ免許ヲ受ケタル者ヨリ事業ノ報吿ヲ徵シ又ハ其ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
第九條 內務大臣又ハ地方長官ハ免許ヲ受ケタル者ニ對シ運河及附屬物件ノ維持修繕ヲ命シ其ノ他公益上必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
第十條 運河及附屬物件ハ免許ノ效力存續スル間及其ノ效力消滅後一年間ハ內務大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ讓渡シ又ハ擔保ニ供スルコトヲ得ス
第十一條 株式會社又ハ株式合資會社カ事業經營者タル場合ニ於テハ株式ノ第一囘拂込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得
第十二條 左ニ揭クルモノヲ以テ運河用地トス
一 水路用地及運河ニ屬スル道路、橋梁、堤防、護岸、物揚場、繫船場ノ築設ニ要スル土地
二 運河用通信、信號ニ要スル土地
三 上屋、倉庫等ノ建設ニ要スル土地
四 運河ニ要スル船舶、器具、機械ヲ修理製作スル工場ノ建設ニ要スル土地
五 職務上常住ヲ要スル運河從事員ノ舍宅及從事員ノ駐在所等ノ建設ニ要スル土地
前項第三號乃至第五號ニ揭クル土地ハ運河ニ沿ヒタルモノニ限ル
第十三條 明治四十二年法律第二十八號ハ運河ノ抵當ニ之ヲ準用ス
第十四條 運河財團ハ左ニ揭クルモノニシテ運河財團ノ所有者ニ屬スルモノヲ以テ之ヲ組成ス
一 水路其ノ他ノ運河用地及其ノ上ニ存スル工作物竝之ニ屬スル器具、機械
二 工場、上屋、倉庫、事務所、舍宅及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具、機械
三 運河用通信、信號ニ要スル工作物及其ノ敷地竝之ニ屬スル器具、機械
四 前三號ニ揭クル工作物ヲ所有シ又ハ使用スル爲他人ノ不動產ノ上ニ存スル地上權、登記シタル賃借權及前三號ニ揭クル土地ノ爲ニ存スル地役權
五 運河ニ要スル船舶竝之ニ屬スル器具、機械
六 運河ノ維持修繕ニ要スル材料及器具、機械
第十五條 國又ハ公共團體ハ免許ノ效力消滅シタル後運河開設ニ要シタル費用ヲ支拂ヒ其ノ運河及附屬物件ヲ買收スルコトヲ得但シ運河及附屬物件ニシテ開設當時ニ比シ價格ヲ減損シタルモノアルトキハ開設ニ要シタル費用ヨリ之ヲ控除ス
前項費用ノ範圍及金額ニ付協議調ハサルトキハ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十六條 國又ハ公共團體ニ於テ必要ト認ムルトキハ免許年限ノ滿了前ト雖運河及附屬物件ヲ買收スルコトヲ得
前項ノ買收價格ニ付協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十七條 左ニ揭クル場合ニ於テハ免許ヲ取消スコトヲ得
一 法令又ハ法令ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ
二 免許、許可若ハ認可ノ條件ニ違反シタルトキ
第十八條 工事竣功前免許ノ效力消滅シタル場合ニ於テハ地方長官ハ免許ヲ受ケタル者ニ對シ原狀ノ囘復其ノ他必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
第十九條 前二條ノ場合ニ於テ同一路線ニ當リ運河ノ開設ヲ免許セラレタル者ハ運河及附屬物件ヲ買收スルコトヲ得
前項ノ買收價格ニ付協議調ハサルトキハ第十六條第二項ノ規定ニ依ル
本條ノ規定ハ運河財團ニ屬スルモノニハ之ヲ適用セス
附 則
第二十條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十一條 本法施行前免許ヲ受ケタル運河ニ關シ本法ヲ適用スヘキ範圍ハ內務大臣之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル運河法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正二年四月八日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
内務大臣 原敬
逓信大臣 元田肇
法律第十六号
運河法
第一条 一般運送ノ用ニ供スル目的ヲ以テ運河ヲ開設セムトスル者ハ内務大臣ノ免許ヲ受クヘシ
第二条 免許ヲ受ケタル者ハ内務大臣ノ指定シタル期限内ニ工事設計ノ認可ヲ地方長官ニ申請スヘシ
第三条 国、公共団体又ハ行政庁ノ許可ヲ受ケタル者ニ於テ運河ニ接続若ハ接近シ又ハ之ヲ横断シテ河川、溝渠、道路、橋梁、鉄道、軌道其ノ他公共ノ用ニ供スルモノヲ造設スルモ免許ヲ受ケタル者ハ運河ノ効用ニ妨ナキ限リ之ヲ拒ムコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ内務大臣又ハ地方長官ハ公益上必要ト認ムルトキハ免許ヲ受ケタル者ニ命シ接続、横断ノ場所ニ於ケル設備ヲ共用ニ供セシメ又ハ之ヲ変更セシムルコトヲ得
第四条 前条第一項ノ場合ニ於テ運河ノ効用ニ妨アリヤ否ニ付争アルトキ又ハ同条第二項ノ場合ニ於テ設備ノ共用若ハ変更ニ要スル費用ノ負担ニ付協議調ハサルトキハ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第五条 工事カ其ノ設計又ハ免許、許可若ハ認可ノ条件ニ違反スルトキハ地方長官ハ其ノ改築、除却又ハ停止ヲ命スルコトヲ得
第六条 工事ノ全部又ハ一部竣功シ運送ヲ開始セムトスルトキハ地方長官ノ許可ヲ受クヘシ
第七条 免許ヲ受ケタル者ハ通航料其ノ他運河使用ニ関スル規程ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受クヘシ
地方長官ニ於テ公益上必要ト認ムルトキハ前項ノ規程ノ変更ヲ命スルコトヲ得
第八条 内務大臣又ハ地方長官ハ免許ヲ受ケタル者ヨリ事業ノ報告ヲ徴シ又ハ其ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
第九条 内務大臣又ハ地方長官ハ免許ヲ受ケタル者ニ対シ運河及附属物件ノ維持修繕ヲ命シ其ノ他公益上必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
第十条 運河及附属物件ハ免許ノ効力存続スル間及其ノ効力消滅後一年間ハ内務大臣ノ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ譲渡シ又ハ担保ニ供スルコトヲ得ス
第十一条 株式会社又ハ株式合資会社カ事業経営者タル場合ニ於テハ株式ノ第一回払込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得
第十二条 左ニ掲クルモノヲ以テ運河用地トス
一 水路用地及運河ニ属スル道路、橋梁、堤防、護岸、物揚場、繋船場ノ築設ニ要スル土地
二 運河用通信、信号ニ要スル土地
三 上屋、倉庫等ノ建設ニ要スル土地
四 運河ニ要スル船舶、器具、機械ヲ修理製作スル工場ノ建設ニ要スル土地
五 職務上常住ヲ要スル運河従事員ノ舎宅及従事員ノ駐在所等ノ建設ニ要スル土地
前項第三号乃至第五号ニ掲クル土地ハ運河ニ沿ヒタルモノニ限ル
第十三条 明治四十二年法律第二十八号ハ運河ノ抵当ニ之ヲ準用ス
第十四条 運河財団ハ左ニ掲クルモノニシテ運河財団ノ所有者ニ属スルモノヲ以テ之ヲ組成ス
一 水路其ノ他ノ運河用地及其ノ上ニ存スル工作物並之ニ属スル器具、機械
二 工場、上屋、倉庫、事務所、舎宅及其ノ敷地並之ニ属スル器具、機械
三 運河用通信、信号ニ要スル工作物及其ノ敷地並之ニ属スル器具、機械
四 前三号ニ掲クル工作物ヲ所有シ又ハ使用スル為他人ノ不動産ノ上ニ存スル地上権、登記シタル賃借権及前三号ニ掲クル土地ノ為ニ存スル地役権
五 運河ニ要スル船舶並之ニ属スル器具、機械
六 運河ノ維持修繕ニ要スル材料及器具、機械
第十五条 国又ハ公共団体ハ免許ノ効力消滅シタル後運河開設ニ要シタル費用ヲ支払ヒ其ノ運河及附属物件ヲ買収スルコトヲ得但シ運河及附属物件ニシテ開設当時ニ比シ価格ヲ減損シタルモノアルトキハ開設ニ要シタル費用ヨリ之ヲ控除ス
前項費用ノ範囲及金額ニ付協議調ハサルトキハ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十六条 国又ハ公共団体ニ於テ必要ト認ムルトキハ免許年限ノ満了前ト雖運河及附属物件ヲ買収スルコトヲ得
前項ノ買収価格ニ付協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徴シ地方長官之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十七条 左ニ掲クル場合ニ於テハ免許ヲ取消スコトヲ得
一 法令又ハ法令ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ
二 免許、許可若ハ認可ノ条件ニ違反シタルトキ
第十八条 工事竣功前免許ノ効力消滅シタル場合ニ於テハ地方長官ハ免許ヲ受ケタル者ニ対シ原状ノ回復其ノ他必要ナル措置ヲ命スルコトヲ得
第十九条 前二条ノ場合ニ於テ同一路線ニ当リ運河ノ開設ヲ免許セラレタル者ハ運河及附属物件ヲ買収スルコトヲ得
前項ノ買収価格ニ付協議調ハサルトキハ第十六条第二項ノ規定ニ依ル
本条ノ規定ハ運河財団ニ属スルモノニハ之ヲ適用セス
附 則
第二十条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十一条 本法施行前免許ヲ受ケタル運河ニ関シ本法ヲ適用スヘキ範囲ハ内務大臣之ヲ定ム