朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ陸軍軍人服役令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年十二月九日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 男爵 石本新六
勅令第二百八十五號
陸軍軍人服役令
第一章 總則
第一條 陸軍現役豫備役後備役將校同相當官准士官下士兵卒及補充兵役ニ在ル者ノ服役ニ關シテハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 現役將校准士官下士兵卒ハ所屬部隊ノ兵籍ニ編入シ將校准士官ニ在リテハ現役定限年齡ニ滿ツル迄、下士兵卒ニ在リテハ現役期間滿ツル迄服役セシム但シ將校准士官ニ付特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三條 豫備役後備役將校准士官下士及歸休兵ハ戰時又ハ事變ノ際ニ在リテハ必要ニ應シ平時ニ在リテハ勤務演習ノ爲之ヲ召集ス
豫備役後備役下士及歸休兵ニ對シテハ每年一囘簡閱㸃呼ヲ爲ス
第四條 將校准士官下士ニシテ文官ニ任セラレ餘人ヲ以テ代フヘカラサル職務ニ在ル者及市町村長助役收入役其ノ他之ニ準スヘキ者ハ勤務演習ノ爲之ヲ召集シ又ハ其ノ簡閱㸃呼ヲ爲スコトナシ帝國議會、府縣會、郡會、市町村會其ノ他之ニ準スヘキモノノ議員其ノ開會中亦同シ
第五條 前條、第四十七條又ハ徵兵令第二十四條ノ場合ニ於テ餘人ヲ以テ代フヘカラサル職務ニ在ル者ニ付テハ當該官廳豫メ理由ヲ附シ內閣ニ具狀シ勤務演習及簡閱㸃呼免除ノ認可ヲ受クヘシ
第六條 豫備役後備役將校准士官下士兵卒又ハ補充兵役ニ在ル者ニシテ文官ニ任セラレ又ハ公吏ト爲リ餘人ヲ以テ代フヘカラサル職務ニ在ル者及運輸其ノ他ノ業務ニ從事シ戰役ニ關シ必要ナル職務ヲ執ル者ニ付テハ陸軍大臣上裁ヲ經テ充員召集及臨時召集ヲ猶豫スルコトヲ得
第七條 外國ニ旅行又ハ在留スル者ニ對シテハ勤務演習召集又ハ簡閱㸃呼ヲ爲ササルコトヲ得
第八條 待命休職停職將校准士官、豫備役後備役將校准士官下士兵卒、歸休兵及補充兵役ニ在ル者ハ之ヲ本籍所在師管ノ兵籍ニ編入シ將校准士官ニ在リテハ師團長、其ノ他ノ者ニ在リテハ聯隊區司令官ノ管轄ニ屬セシム
前項聯隊區司令官ニ關スル規定ハ警備隊司令官又ハ警備隊區司令官ニ之ヲ適用ス
第九條 將校准士官下士ノ服役期間ハ現役定限年齡ニ拘ラス戰時若ハ事變ノ際又ハ航海若ハ外國駐箚中之ヲ延長スルコトヲ得但シ之カ爲他ノ服役期間ノ終期ヲ變更スルコトナシ
第十條 將校准士官下士兵卒後備役期間滿了ノ後引續キ服役ヲ志願スルトキハ之ヲ許可スルコトヲ得
第十一條 豫備役後備役將校准士官下士服役期間滿了シタルトキハ別ニ辭令ヲ用井ス豫備役ノ者ハ後備役ニ入リ、後備役ノ者ハ將校准士官ニ在リテハ退役トシ下士ニ在リテハ第一國民兵役ニ入ル
下士ニシテ第一國民兵役ニ入リタル者ハ同時ニ其ノ官ヲ免セラレタルモノトス
第十二條 下士上等兵又ハ之ト同等階級ノ兵卒ニシテ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ其ノ官又ハ等級ヲ失フ
前項ノ規定ハ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未滿ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ニ之ヲ適用セス
第十三條 下士上等兵又ハ之ト同等階級ノ兵卒ニシテ前條ノ規定又ハ陸軍懲罰令ニ依リ其ノ官又ハ等級ヲ失ヒ又ハ免セラレタル者ハ步騎砲工輜重兵科、經理部及衞生部ノ下士計手ヲ除ク兵卒ニ在リテハ當該兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト爲シ其ノ他ノ者ニ在リテハ前兵科前兵科ナキ者ハ步兵科ノ一等卒ト爲ス
第十四條 士官候補生、主計候補生、見習醫官、見習藥劑官又ハ見習獸醫官ニシテ下士兵卒ト爲リタル者ハ前服役年月ヲ通算シ服役期間七年四月ニ滿タサル者ハ七年四月ニ滿ツル迄豫備役ニ、十七年四月ニ滿タサル者ハ十七年四月ニ滿ツル迄後備役ニ服セシメ後備役終ルノ後第一國民兵役ニ服セシム
第十五條 本令ノ服役期間ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外月ヲ以テ算シ最後ノ月ノ末日ヲ以テ滿了ス
第十六條 本令中將校ニ關スル規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外將校相當官ニ之ヲ適用ス
第二章 將校ノ服役
第十七條 將校ノ現役定限年齡ハ左ノ如シ
大將 六十五歲
中將 六十二歲
少將 五十八歲
大佐 五十五歲
中佐 五十三歲
少佐 五十歲
大尉 四十八歲
中少尉 四十五歲
元帥タル大將ノ現役定限年齡ハ之ヲ定メス
第十八條 將校相當官ノ現役定限年齡ハ左ノ如シ
主計總監
軍醫總監
六十二歲
主計監
軍醫監
六十歲
一等主計正
一等軍醫正
一等藥劑正
一等獸醫正
五十六歲
二等主計正
二等軍醫正
二等藥劑正
二等獸醫正
五十四歲
三等主計正
三等軍軍正
三等藥劑正
三等獸醫正
五十二歲
一等主計
一等軍醫
一等藥劑官
一等獸醫
一二等樂長
五十歲
二三等主計
二三等軍醫
二三等藥劑官
二三等獸醫
四十七歲
第十九條 現役將校ニシテ現役定限年齡ニ滿タサルモ退職恩給ヲ受クヘキ服役年數ニ達シ現役ニ堪ヘサル者ハ將官ニ在リテハ上諭ニ依リ上長官又ハ士官ニ在リテハ陸軍大臣旨ヲ諭シテ現役ヲ退カシムルコトアルヘシ
第二十條 豫備役將校ノ服役期間ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ノ翌年三月三十一日ヲ以テ滿了ス
第二十一條 後備役將校ノ服役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
第二十二條 現役將校准士官ニシテ服役延期中進級シタル者、明治二十三年勅令第二十四號ニ依リ進級シタル者及豫備役後備役將校准士官ニシテ進級シタル者ノ服役期間ハ前官ノ現役定限年齡ニ依ル但シ豫備役後備役特務曹長憲兵特務曹長ヲ除クニシテ少尉ニ進級シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十三條 待命、休職、停職、豫備役及後備役將校外國ニ旅行又ハ在留セムトスルトキハ目的、國名及期間ヲ具シ陸軍大臣ノ許可ヲ受クヘシ
第三章 准士官ノ服役
第二十四條 准士官ノ現役定限年齡ハ左ノ如シ
一 步、騎、砲、工、輜重兵科特務曹長 四十歲
二 其ノ他ノ准士官 四十八歲
第二十五條 現役准士官ニシテ現役定限年齡ニ滿タサルモ退職恩給ヲ受クヘキ服役年數ニ達シ現役ニ堪ヘサル者ハ特務曹長ニ在リテハ所管長官、其ノ他ノ者ニ在リテハ陸軍大臣旨ヲ諭シテ現役ヲ退カシムルコトヲ得
第二十六條 第二十四條第一號ニ該當スル者現役定限年齡ニ滿チ現役ヲ退キタルトキハ豫備役ニ服セシム但シ豫備役期間ニ滿チタル者ニ在リテハ之ヲ後備役ニ服セシム
第二十七條 第二十四條第一號ニ該當スル者ノ豫備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ十一年目ノ三月三十一日トス
第二十八條 第二十四條第二號ニ該當スル者ノ豫備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ノ翌年三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
第二十九條 第二十三條ノ規定ハ准士官ニ之ヲ準用ス
第四章 下士ノ服役
第一款 通則
第三十條 下士ノ服役ハ分チテ現役豫備役及後備役トス其ノ服役ヲ終リタル者ハ第一國民兵役ニ服セシム
第三十一條 志願ニ依リ下士ニ任セラレタル者ノ服役期間ハ第四十二條又ハ第四十三條ノ規定ニ拘ラス四十五歲ニ達スル年ノ三月三十一日ヲ以テ限トス
第三十二條 下士ニシテ現役ヲ離ルルトキ前條又ハ第四十三條ノ規定ニ依ル服役期間ニ滿チタル者又ハ服役ノ全部若ハ兵役ヲ免セラレタル者ハ別ニ辭令ヲ用井ス其ノ官ヲ免セラレタルモノトス
第二款 現役
第三十三條 憲兵科及軍樂部下士ヲ除クノ外隊附敎導隊及生徒隊ヲ含ム以下同シ現役下士ハ營內ニ居住セシムルヲ例トス但シ砲兵諸工長、經理部衞生部獸醫部下士及懲治隊附下士ハ人員ヲ限リ營外ニ居住セシム
警備隊附現役下士ニシテ其ノ警備隊區ニ本籍ヲ有スル者ハ之ニ外泊ヲ許スコトヲ得
隊附ニ非サル現役下士ト雖必要ニ應シ營內ニ居住セシムルコトヲ得
第三十四條 現役下士ノ服役期間ハ左ノ如シ
一 憲兵科下士ハ前服役年月ヲ通算シ六年
二 步騎砲工輜重兵科下士砲兵諸工長ヲ除ク、縫靴工長及衞生部下士ハ徵集年ノ十二月ヨリ起算シ四年但シ警備隊附下士ニシテ警備隊區ヨリ徵集シタル者ニ在リテハ入隊ノ月ヨリ起算シ三年
三 砲兵諸工長及獸醫部下士ハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ三年
四 計手ハ計手ニ任セラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ二年
五 軍樂部下士ハ樂手補ヲ命セラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ五年
六 豫備役後備役下士ニシテ再ヒ現役ニ服シタル者竝歸休又ハ豫備役後備役ノ上等兵及之ト同等階級ノ兵卒ニシテ現役下士ト爲リタル者ハ前各號ノ規定ニ拘ラス再入隊年ノ十二月ヨリ起算シ二年
七 志願ニ依ラスシテ兵卒ヨリ下士ニ任セラレタル者ハ前各號ノ規定ニ拘ラス徵集年ノ十二月ヨリ起算シ三年
第三十五條 下士ノ現役定限年齡ハ左ノ如シ
一 步、騎、砲、工、輜重兵科ノ隊附下士砲兵諸工長ヲ除ク 四十歲
二 其ノ他ノ下士 四十五歲
第三十六條 下士現役期間滿了ノ後再服役ヲ志願スルトキハ現役定限年齡ニ滿ツル迄數次之ヲ許可スルコトヲ得
第三十七條 現役中本人ニ依ルニ非サレハ一家ノ生計ヲ營ミ難キ事故ヲ生シタルトキハ本人ノ願ニ依リ現役ヲ免スルコトヲ得
第三十八條 現役中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ現役ニ堪ヘサル者ハ現役ヲ、現役豫備役及後備役ニ堪ヘサル者ハ現役豫備役及後備役ヲ、永久服役ニ堪ヘサル者ハ兵役ヲ免ス
前項ノ規定ニ依リ現役豫備役及後備役ヲ免セラレタル者ハ第一國民兵役ニ服セシム
第三十九條 憲兵科下士ニシテ素行修マラサル者ハ其ノ現役ヲ免ス
第四十條 下士ニシテ現役中六年未滿ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ逃亡シタル者ニ付テハ其ノ刑期中又ハ逃亡中ノ期間ハ之ヲ現役期間ニ算入セス
前項ニ該當スル者ノ服役期間ハ其ノ起算ノ月ノ初日ヨリ起算シ日ヲ以テ之ヲ算ス
第三款 豫備役及後備役
第四十一條 下士ニシテ現役ヲ離ルルトキ第四十二條ノ期間ニ滿タサル者ハ豫備役ニ、第四十三條ノ期間ニ滿タサル者ハ後備役ニ服セシム
第四十二條 豫備役下士ノ服役期間ノ終期ハ志願ニ依ラスシテ兵卒ヨリ下士ニ任セラレタル者ニ在リテハ徵集年ノ十二月ヨリ、其ノ他ノ者ニ在リテハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ七年四月ニ滿ツル日トス
第四十三條 後備役下士ノ服役期間ノ終期ハ前條起算ノ月ヨリ十七年四月ニ滿ツル日トス
第四十四條 豫備役後備役下士現役ヲ志願スルトキハ之ヲ許可スルコトヲ得
第四十五條 豫備役後備役下士犯罪ノ爲又ハ正當ノ事由ナクシテ召集ニ應セス若ハ其ノ期ニ後レ又ハ召集中職役ヲ離レタルトキハ其ノ年ハ之ヲ服役期間ニ算入セス
第四十六條 豫備役後備役下士在鄕中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
豫備役後備役下士部隊編入中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ豫備役後備役ニ堪ヘサルトキハ第一國民兵役ニ服セシメ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
第五章 兵卒ノ服役
第一款 通則
第四十七條 徵兵令第七條、第十六條、第二十四條、第二十九條第一項但書及第三項ノ規定ハ憲兵上等兵、樂手補、第十三條ノ規定ニ依リ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト爲リタル者及第十四條ノ兵卒ニ之ヲ準用ス
第四十八條 憲兵上等兵及樂手補ノ服役ハ分チテ現役豫備役及後備役トシ現役ヲ終リタル者ハ豫備役ニ、豫備役ヲ終リタル者ハ後備役ニ、後備役ヲ終リタル者ハ第一國民兵役ニ服セシム
第四十九條 第十三條ノ規定ニ依リ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト爲リタル者ハ前服役年月ヲ通算シ服役期間三年ニ滿タサル者ハ三年ニ滿ツル迄現役ニ、七年四月ニ滿タサル者ハ七年四月ニ滿ツル迄豫備役ニ、十七年四月ニ滿タサル者ハ十七年四月ニ滿ツル迄後備役ニ服セシメ十七年四月ヲ過クル者ハ第一國民兵役ニ服セシム
第二款 現役
第五十條 現役兵ハ營內ニ居住セシムルヲ例トス但シ憲兵上等兵及樂手補ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五十一條 憲兵上等兵ノ現役期間ハ前服役年月ヲ通算シ六年トス
第五十二條 輜重輸卒ノ現役期間ハ二年四月トシ三月間在營ノ後歸休セシム
戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項ノ在營期間ヲ伸縮スルコトヲ得
第五十三條 樂手補ノ現役期間ハ樂手補ヲ命セラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ五年トス
第五十四條 兵卒ノ現役定限年齡ハ四十歲トス
第五十五條 現役兵現役期間又ハ在營期間滿了ノ後引續キ現役又ハ在營ヲ志願スルトキハ現役定限年齡ニ滿ツル迄數次之ヲ許可スルコトヲ得
第五十六條 現役中本人ニ依ルニ非サレハ家族自活シ能ハサル事故ヲ生シタルトキハ家族ノ願ニ依リ現役ヲ免スルコトヲ得但シ本人其ノ自活シ能ハサル事故ヲ作爲シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五十七條 第三十八條ノ規定ハ在營中ノ現役兵ニ之ヲ準用ス
第五十八條 第四十條ノ規定ハ憲兵上等兵、樂手補及第十三條ノ規定ニ依リ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト爲リタル者ニ之ヲ準用ス
第五十九條 徵兵令第十五條ノ規定ニ依ル歸休ハ警備隊ノ兵卒ニ在リテハ槪ネ八月以上、其ノ他ノ者ニ在リテハ槪ネ二年以上在營シタル者ニ付之ヲ命ス
前項ノ規定ニ依リ歸休ヲ命スヘキ人員ハ陸軍大臣上裁ヲ經テ之ヲ定ム
第六十條 現役步兵科兵卒、電信隊附工兵科兵卒及衞生部兵卒ニシテ勤務ヲ習得シタル者ハ服役二年ノ終ニ於テ之ヲ歸休セシム
戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラス在營ノ期間ヲ伸縮シ又ハ所要ノ人員ヲ限リ歸休セシメサルコトヲ得
第六十一條 歸休兵ハ第三條ニ規定スルモノノ外臨時現役兵ノ闕員ヲ補充スル爲之ヲ召集ス
第六十二條 歸休兵傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
第三款 豫備役及後備役
第六十三條 兵卒ニシテ現役ヲ離ルルトキ第六十四條ノ期間ニ滿タサル者ハ豫備役ニ、第六十五條ノ期間ニ滿タサル者ハ後備役ニ、第六十五條ノ期間ヲ過クル者ハ第一國民兵役ニ服セシム
第五十六條又ハ第五十七條ノ規定ニ依リ現役ヲ免セラレタル看護卒ニシテ其ノ第一期ノ敎育ヲ終ラサル者ハ前兵科ノ兵卒ト爲ス
第六十四條 豫備役兵卒ノ服役期間ノ終期ハ前服役年月ヲ通算シ七年四月ニ滿ツル日トス
第六十五條 後備役兵卒ノ服役期間ノ終期ハ前服役年月ヲ通算シ十七年四月ニ滿ツル日トス
第六十六條 第四十六條ノ規定ハ豫備役後備役兵卒ニ之ヲ準用ス
第四款 補充兵役
第六十七條 第五十六條又ハ第五十七條ノ規定ニ依リ現役ヲ免セラレタル者ニシテ第一期ノ敎育ヲ終ラサル者ハ補充兵役ニ服セシム其ノ服役期間ノ終期ハ前服役年月ヲ通算シ十二年四月ニ滿ツル日トス
前項ノ規定ハ第六十三條第二項ノ場合ニ之ヲ適用セス
第六十八條 補充兵役ニ在ル者在鄕中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
補充兵役ニ在ル者部隊編入中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ補充兵役ニ堪ヘサルトキハ第一國民兵役ニ服セシメ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
附 則
第六十九條 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第七十條 陸軍服役條例及明治四十年勅令第三百三十二號ハ之ヲ廢止ス
第七十一條 本令ノ適用ニ付テハ舊刑法ノ禁錮以上ノ刑又ハ舊陸軍刑法若ハ舊海軍刑法ノ重罪ノ刑若ハ剝官ヲ附加スヘキ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ第十二條第一項ノ刑ニ、舊刑法舊陸軍刑法又ハ舊海軍刑法ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ハ第四十條又ハ第五十八條ノ刑ニ處セラレタル者ト看做ス
第七十二條 本令施行ノ際現役將校准士官ニシテ現役定限年齡ニ滿チ留任中ノ者ハ從前ノ規定ニ依リ其ノ期間仍之ヲ留任セシム
第七十三條 本令施行ノ際現役、豫備役又ハ後備役ニ在ル將校准士官下士兵卒ニシテ現役定限年齡又ハ服役期間ヲ過クル者ノ現役定限年齡又ハ服役期間ハ仍從前ノ規定ニ依ル
第七十四條 本令施行ノ際現役ニ在ル砲兵諸工長、計手、獸醫部下士、軍樂部下士及樂手補ノ服役期間ハ仍從前ノ規定ニ依ル
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ陸軍軍人服役令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十四年十二月九日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 男爵 石本新六
勅令第二百八十五号
陸軍軍人服役令
第一章 総則
第一条 陸軍現役予備役後備役将校同相当官准士官下士兵卒及補充兵役ニ在ル者ノ服役ニ関シテハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 現役将校准士官下士兵卒ハ所属部隊ノ兵籍ニ編入シ将校准士官ニ在リテハ現役定限年齢ニ満ツル迄、下士兵卒ニ在リテハ現役期間満ツル迄服役セシム但シ将校准士官ニ付特ニ規定アル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第三条 予備役後備役将校准士官下士及帰休兵ハ戦時又ハ事変ノ際ニ在リテハ必要ニ応シ平時ニ在リテハ勤務演習ノ為之ヲ召集ス
予備役後備役下士及帰休兵ニ対シテハ毎年一回簡閲点呼ヲ為ス
第四条 将校准士官下士ニシテ文官ニ任セラレ余人ヲ以テ代フヘカラサル職務ニ在ル者及市町村長助役収入役其ノ他之ニ準スヘキ者ハ勤務演習ノ為之ヲ召集シ又ハ其ノ簡閲点呼ヲ為スコトナシ帝国議会、府県会、郡会、市町村会其ノ他之ニ準スヘキモノノ議員其ノ開会中亦同シ
第五条 前条、第四十七条又ハ徴兵令第二十四条ノ場合ニ於テ余人ヲ以テ代フヘカラサル職務ニ在ル者ニ付テハ当該官庁予メ理由ヲ附シ内閣ニ具状シ勤務演習及簡閲点呼免除ノ認可ヲ受クヘシ
第六条 予備役後備役将校准士官下士兵卒又ハ補充兵役ニ在ル者ニシテ文官ニ任セラレ又ハ公吏ト為リ余人ヲ以テ代フヘカラサル職務ニ在ル者及運輸其ノ他ノ業務ニ従事シ戦役ニ関シ必要ナル職務ヲ執ル者ニ付テハ陸軍大臣上裁ヲ経テ充員召集及臨時召集ヲ猶予スルコトヲ得
第七条 外国ニ旅行又ハ在留スル者ニ対シテハ勤務演習召集又ハ簡閲点呼ヲ為ササルコトヲ得
第八条 待命休職停職将校准士官、予備役後備役将校准士官下士兵卒、帰休兵及補充兵役ニ在ル者ハ之ヲ本籍所在師管ノ兵籍ニ編入シ将校准士官ニ在リテハ師団長、其ノ他ノ者ニ在リテハ連隊区司令官ノ管轄ニ属セシム
前項連隊区司令官ニ関スル規定ハ警備隊司令官又ハ警備隊区司令官ニ之ヲ適用ス
第九条 将校准士官下士ノ服役期間ハ現役定限年齢ニ拘ラス戦時若ハ事変ノ際又ハ航海若ハ外国駐箚中之ヲ延長スルコトヲ得但シ之カ為他ノ服役期間ノ終期ヲ変更スルコトナシ
第十条 将校准士官下士兵卒後備役期間満了ノ後引続キ服役ヲ志願スルトキハ之ヲ許可スルコトヲ得
第十一条 予備役後備役将校准士官下士服役期間満了シタルトキハ別ニ辞令ヲ用井ス予備役ノ者ハ後備役ニ入リ、後備役ノ者ハ将校准士官ニ在リテハ退役トシ下士ニ在リテハ第一国民兵役ニ入ル
下士ニシテ第一国民兵役ニ入リタル者ハ同時ニ其ノ官ヲ免セラレタルモノトス
第十二条 下士上等兵又ハ之ト同等階級ノ兵卒ニシテ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ハ其ノ官又ハ等級ヲ失フ
前項ノ規定ハ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未満ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ニ之ヲ適用セス
第十三条 下士上等兵又ハ之ト同等階級ノ兵卒ニシテ前条ノ規定又ハ陸軍懲罰令ニ依リ其ノ官又ハ等級ヲ失ヒ又ハ免セラレタル者ハ歩騎砲工輜重兵科、経理部及衛生部ノ下士計手ヲ除ク兵卒ニ在リテハ当該兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト為シ其ノ他ノ者ニ在リテハ前兵科前兵科ナキ者ハ歩兵科ノ一等卒ト為ス
第十四条 士官候補生、主計候補生、見習医官、見習薬剤官又ハ見習獣医官ニシテ下士兵卒ト為リタル者ハ前服役年月ヲ通算シ服役期間七年四月ニ満タサル者ハ七年四月ニ満ツル迄予備役ニ、十七年四月ニ満タサル者ハ十七年四月ニ満ツル迄後備役ニ服セシメ後備役終ルノ後第一国民兵役ニ服セシム
第十五条 本令ノ服役期間ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外月ヲ以テ算シ最後ノ月ノ末日ヲ以テ満了ス
第十六条 本令中将校ニ関スル規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外将校相当官ニ之ヲ適用ス
第二章 将校ノ服役
第十七条 将校ノ現役定限年齢ハ左ノ如シ
大将 六十五歳
中将 六十二歳
少将 五十八歳
大佐 五十五歳
中佐 五十三歳
少佐 五十歳
大尉 四十八歳
中少尉 四十五歳
元帥タル大将ノ現役定限年齢ハ之ヲ定メス
第十八条 将校相当官ノ現役定限年齢ハ左ノ如シ
主計総監
軍医総監
六十二歳
主計監
軍医監
六十歳
一等主計正
一等軍医正
一等薬剤正
一等獣医正
五十六歳
二等主計正
二等軍医正
二等薬剤正
二等獣医正
五十四歳
三等主計正
三等軍軍正
三等薬剤正
三等獣医正
五十二歳
一等主計
一等軍医
一等薬剤官
一等獣医
一二等楽長
五十歳
二三等主計
二三等軍医
二三等薬剤官
二三等獣医
四十七歳
第十九条 現役将校ニシテ現役定限年齢ニ満タサルモ退職恩給ヲ受クヘキ服役年数ニ達シ現役ニ堪ヘサル者ハ将官ニ在リテハ上諭ニ依リ上長官又ハ士官ニ在リテハ陸軍大臣旨ヲ諭シテ現役ヲ退カシムルコトアルヘシ
第二十条 予備役将校ノ服役期間ハ現役定限年齢ニ満ツル年ノ翌年三月三十一日ヲ以テ満了ス
第二十一条 後備役将校ノ服役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
第二十二条 現役将校准士官ニシテ服役延期中進級シタル者、明治二十三年勅令第二十四号ニ依リ進級シタル者及予備役後備役将校准士官ニシテ進級シタル者ノ服役期間ハ前官ノ現役定限年齢ニ依ル但シ予備役後備役特務曹長憲兵特務曹長ヲ除クニシテ少尉ニ進級シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十三条 待命、休職、停職、予備役及後備役将校外国ニ旅行又ハ在留セムトスルトキハ目的、国名及期間ヲ具シ陸軍大臣ノ許可ヲ受クヘシ
第三章 准士官ノ服役
第二十四条 准士官ノ現役定限年齢ハ左ノ如シ
一 歩、騎、砲、工、輜重兵科特務曹長 四十歳
二 其ノ他ノ准士官 四十八歳
第二十五条 現役准士官ニシテ現役定限年齢ニ満タサルモ退職恩給ヲ受クヘキ服役年数ニ達シ現役ニ堪ヘサル者ハ特務曹長ニ在リテハ所管長官、其ノ他ノ者ニ在リテハ陸軍大臣旨ヲ諭シテ現役ヲ退カシムルコトヲ得
第二十六条 第二十四条第一号ニ該当スル者現役定限年齢ニ満チ現役ヲ退キタルトキハ予備役ニ服セシム但シ予備役期間ニ満チタル者ニ在リテハ之ヲ後備役ニ服セシム
第二十七条 第二十四条第一号ニ該当スル者ノ予備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ十一年目ノ三月三十一日トス
第二十八条 第二十四条第二号ニ該当スル者ノ予備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ノ翌年三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
第二十九条 第二十三条ノ規定ハ准士官ニ之ヲ準用ス
第四章 下士ノ服役
第一款 通則
第三十条 下士ノ服役ハ分チテ現役予備役及後備役トス其ノ服役ヲ終リタル者ハ第一国民兵役ニ服セシム
第三十一条 志願ニ依リ下士ニ任セラレタル者ノ服役期間ハ第四十二条又ハ第四十三条ノ規定ニ拘ラス四十五歳ニ達スル年ノ三月三十一日ヲ以テ限トス
第三十二条 下士ニシテ現役ヲ離ルルトキ前条又ハ第四十三条ノ規定ニ依ル服役期間ニ満チタル者又ハ服役ノ全部若ハ兵役ヲ免セラレタル者ハ別ニ辞令ヲ用井ス其ノ官ヲ免セラレタルモノトス
第二款 現役
第三十三条 憲兵科及軍楽部下士ヲ除クノ外隊附教導隊及生徒隊ヲ含ム以下同シ現役下士ハ営内ニ居住セシムルヲ例トス但シ砲兵諸工長、経理部衛生部獣医部下士及懲治隊附下士ハ人員ヲ限リ営外ニ居住セシム
警備隊附現役下士ニシテ其ノ警備隊区ニ本籍ヲ有スル者ハ之ニ外泊ヲ許スコトヲ得
隊附ニ非サル現役下士ト雖必要ニ応シ営内ニ居住セシムルコトヲ得
第三十四条 現役下士ノ服役期間ハ左ノ如シ
一 憲兵科下士ハ前服役年月ヲ通算シ六年
二 歩騎砲工輜重兵科下士砲兵諸工長ヲ除ク、縫靴工長及衛生部下士ハ徴集年ノ十二月ヨリ起算シ四年但シ警備隊附下士ニシテ警備隊区ヨリ徴集シタル者ニ在リテハ入隊ノ月ヨリ起算シ三年
三 砲兵諸工長及獣医部下士ハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ三年
四 計手ハ計手ニ任セラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ二年
五 軍楽部下士ハ楽手補ヲ命セラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ五年
六 予備役後備役下士ニシテ再ヒ現役ニ服シタル者並帰休又ハ予備役後備役ノ上等兵及之ト同等階級ノ兵卒ニシテ現役下士ト為リタル者ハ前各号ノ規定ニ拘ラス再入隊年ノ十二月ヨリ起算シ二年
七 志願ニ依ラスシテ兵卒ヨリ下士ニ任セラレタル者ハ前各号ノ規定ニ拘ラス徴集年ノ十二月ヨリ起算シ三年
第三十五条 下士ノ現役定限年齢ハ左ノ如シ
一 歩、騎、砲、工、輜重兵科ノ隊附下士砲兵諸工長ヲ除ク 四十歳
二 其ノ他ノ下士 四十五歳
第三十六条 下士現役期間満了ノ後再服役ヲ志願スルトキハ現役定限年齢ニ満ツル迄数次之ヲ許可スルコトヲ得
第三十七条 現役中本人ニ依ルニ非サレハ一家ノ生計ヲ営ミ難キ事故ヲ生シタルトキハ本人ノ願ニ依リ現役ヲ免スルコトヲ得
第三十八条 現役中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ現役ニ堪ヘサル者ハ現役ヲ、現役予備役及後備役ニ堪ヘサル者ハ現役予備役及後備役ヲ、永久服役ニ堪ヘサル者ハ兵役ヲ免ス
前項ノ規定ニ依リ現役予備役及後備役ヲ免セラレタル者ハ第一国民兵役ニ服セシム
第三十九条 憲兵科下士ニシテ素行修マラサル者ハ其ノ現役ヲ免ス
第四十条 下士ニシテ現役中六年未満ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ又ハ逃亡シタル者ニ付テハ其ノ刑期中又ハ逃亡中ノ期間ハ之ヲ現役期間ニ算入セス
前項ニ該当スル者ノ服役期間ハ其ノ起算ノ月ノ初日ヨリ起算シ日ヲ以テ之ヲ算ス
第三款 予備役及後備役
第四十一条 下士ニシテ現役ヲ離ルルトキ第四十二条ノ期間ニ満タサル者ハ予備役ニ、第四十三条ノ期間ニ満タサル者ハ後備役ニ服セシム
第四十二条 予備役下士ノ服役期間ノ終期ハ志願ニ依ラスシテ兵卒ヨリ下士ニ任セラレタル者ニ在リテハ徴集年ノ十二月ヨリ、其ノ他ノ者ニ在リテハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ七年四月ニ満ツル日トス
第四十三条 後備役下士ノ服役期間ノ終期ハ前条起算ノ月ヨリ十七年四月ニ満ツル日トス
第四十四条 予備役後備役下士現役ヲ志願スルトキハ之ヲ許可スルコトヲ得
第四十五条 予備役後備役下士犯罪ノ為又ハ正当ノ事由ナクシテ召集ニ応セス若ハ其ノ期ニ後レ又ハ召集中職役ヲ離レタルトキハ其ノ年ハ之ヲ服役期間ニ算入セス
第四十六条 予備役後備役下士在郷中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
予備役後備役下士部隊編入中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ予備役後備役ニ堪ヘサルトキハ第一国民兵役ニ服セシメ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
第五章 兵卒ノ服役
第一款 通則
第四十七条 徴兵令第七条、第十六条、第二十四条、第二十九条第一項但書及第三項ノ規定ハ憲兵上等兵、楽手補、第十三条ノ規定ニ依リ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト為リタル者及第十四条ノ兵卒ニ之ヲ準用ス
第四十八条 憲兵上等兵及楽手補ノ服役ハ分チテ現役予備役及後備役トシ現役ヲ終リタル者ハ予備役ニ、予備役ヲ終リタル者ハ後備役ニ、後備役ヲ終リタル者ハ第一国民兵役ニ服セシム
第四十九条 第十三条ノ規定ニ依リ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト為リタル者ハ前服役年月ヲ通算シ服役期間三年ニ満タサル者ハ三年ニ満ツル迄現役ニ、七年四月ニ満タサル者ハ七年四月ニ満ツル迄予備役ニ、十七年四月ニ満タサル者ハ十七年四月ニ満ツル迄後備役ニ服セシメ十七年四月ヲ過クル者ハ第一国民兵役ニ服セシム
第二款 現役
第五十条 現役兵ハ営内ニ居住セシムルヲ例トス但シ憲兵上等兵及楽手補ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五十一条 憲兵上等兵ノ現役期間ハ前服役年月ヲ通算シ六年トス
第五十二条 輜重輸卒ノ現役期間ハ二年四月トシ三月間在営ノ後帰休セシム
戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項ノ在営期間ヲ伸縮スルコトヲ得
第五十三条 楽手補ノ現役期間ハ楽手補ヲ命セラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ五年トス
第五十四条 兵卒ノ現役定限年齢ハ四十歳トス
第五十五条 現役兵現役期間又ハ在営期間満了ノ後引続キ現役又ハ在営ヲ志願スルトキハ現役定限年齢ニ満ツル迄数次之ヲ許可スルコトヲ得
第五十六条 現役中本人ニ依ルニ非サレハ家族自活シ能ハサル事故ヲ生シタルトキハ家族ノ願ニ依リ現役ヲ免スルコトヲ得但シ本人其ノ自活シ能ハサル事故ヲ作為シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五十七条 第三十八条ノ規定ハ在営中ノ現役兵ニ之ヲ準用ス
第五十八条 第四十条ノ規定ハ憲兵上等兵、楽手補及第十三条ノ規定ニ依リ一等卒又ハ之ト同等階級ノ兵卒ト為リタル者ニ之ヲ準用ス
第五十九条 徴兵令第十五条ノ規定ニ依ル帰休ハ警備隊ノ兵卒ニ在リテハ概ネ八月以上、其ノ他ノ者ニ在リテハ概ネ二年以上在営シタル者ニ付之ヲ命ス
前項ノ規定ニ依リ帰休ヲ命スヘキ人員ハ陸軍大臣上裁ヲ経テ之ヲ定ム
第六十条 現役歩兵科兵卒、電信隊附工兵科兵卒及衛生部兵卒ニシテ勤務ヲ習得シタル者ハ服役二年ノ終ニ於テ之ヲ帰休セシム
戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラス在営ノ期間ヲ伸縮シ又ハ所要ノ人員ヲ限リ帰休セシメサルコトヲ得
第六十一条 帰休兵ハ第三条ニ規定スルモノノ外臨時現役兵ノ闕員ヲ補充スル為之ヲ召集ス
第六十二条 帰休兵傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
第三款 予備役及後備役
第六十三条 兵卒ニシテ現役ヲ離ルルトキ第六十四条ノ期間ニ満タサル者ハ予備役ニ、第六十五条ノ期間ニ満タサル者ハ後備役ニ、第六十五条ノ期間ヲ過クル者ハ第一国民兵役ニ服セシム
第五十六条又ハ第五十七条ノ規定ニ依リ現役ヲ免セラレタル看護卒ニシテ其ノ第一期ノ教育ヲ終ラサル者ハ前兵科ノ兵卒ト為ス
第六十四条 予備役兵卒ノ服役期間ノ終期ハ前服役年月ヲ通算シ七年四月ニ満ツル日トス
第六十五条 後備役兵卒ノ服役期間ノ終期ハ前服役年月ヲ通算シ十七年四月ニ満ツル日トス
第六十六条 第四十六条ノ規定ハ予備役後備役兵卒ニ之ヲ準用ス
第四款 補充兵役
第六十七条 第五十六条又ハ第五十七条ノ規定ニ依リ現役ヲ免セラレタル者ニシテ第一期ノ教育ヲ終ラサル者ハ補充兵役ニ服セシム其ノ服役期間ノ終期ハ前服役年月ヲ通算シ十二年四月ニ満ツル日トス
前項ノ規定ハ第六十三条第二項ノ場合ニ之ヲ適用セス
第六十八条 補充兵役ニ在ル者在郷中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
補充兵役ニ在ル者部隊編入中傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ補充兵役ニ堪ヘサルトキハ第一国民兵役ニ服セシメ永久服役ニ堪ヘサルトキハ兵役ヲ免ス
附 則
第六十九条 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第七十条 陸軍服役条例及明治四十年勅令第三百三十二号ハ之ヲ廃止ス
第七十一条 本令ノ適用ニ付テハ旧刑法ノ禁錮以上ノ刑又ハ旧陸軍刑法若ハ旧海軍刑法ノ重罪ノ刑若ハ剥官ヲ附加スヘキ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ハ第十二条第一項ノ刑ニ、旧刑法旧陸軍刑法又ハ旧海軍刑法ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ハ第四十条又ハ第五十八条ノ刑ニ処セラレタル者ト看做ス
第七十二条 本令施行ノ際現役将校准士官ニシテ現役定限年齢ニ満チ留任中ノ者ハ従前ノ規定ニ依リ其ノ期間仍之ヲ留任セシム
第七十三条 本令施行ノ際現役、予備役又ハ後備役ニ在ル将校准士官下士兵卒ニシテ現役定限年齢又ハ服役期間ヲ過クル者ノ現役定限年齢又ハ服役期間ハ仍従前ノ規定ニ依ル
第七十四条 本令施行ノ際現役ニ在ル砲兵諸工長、計手、獣医部下士、軍楽部下士及楽手補ノ服役期間ハ仍従前ノ規定ニ依ル