朕陸軍軍人服役令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年十一月三十日
內閣總理大臣 男爵 田中義一
陸軍大臣 白川義則
勅令第三百三十二號
陸軍武官服役令
第一章 總則
第一條 現役ノ將校、准士官及下士ハ所屬部隊ノ兵籍ニ之ヲ編入シ將校及准士官ニ在リテハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外現役定限年齡ニ滿ツル日迄、下士ニ在リテハ現役期間滿ツル日迄之ヲ服役セシム
第二條 待命、休職又ハ停職ノ將校及准士官竝ニ豫備役又ハ後備役ノ將校、准士官及下士ハ之ヲ本籍所在ノ師管ノ兵籍ニ編入シ將校及准士官ニ在リテハ師團長、下士ニ在リテハ聯隊區司令官ノ管轄ニ屬セシム
第三條 將校、准士官及下士ノ服役期間ハ戰時又ハ事變ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ之ヲ延長スルコトヲ得但シ之ガ爲他ノ服役ノ終期ヲ變更スルコトナシ
兵役法施行令第三十六條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ服役期間ヲ延長スル場合ニ之ヲ準用ス
第四條 本令ニ規定スル服役期間ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外月ヲ以テ之ヲ計算シ最後ノ月ノ末日ヲ以テ滿了ス
第五條 本令中將校ニ關スル規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外將校相當官ニ之ヲ適用ス
第二章 將校及准士官ノ服役
第六條 將校及准士官ノ服役ハ之ヲ現役、豫備役及後備役ニ分チ其ノ轉役ニ關シテハ本令ニ定ムルモノノ外陸軍將校分限令其ノ他陸軍將校及准士官ノ分限ニ關スル規定ノ定ムル所ニ依ル
第七條 將校同相當官ノ現役定限年齡左ノ如シ
【表】
元帥タル大將ノ現役定限年齡ハ之ヲ定メズ
第八條 豫備役將校ノ服役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ノ翌年三月三十一日トス
幹部候補生ヨリ豫備役士官ト爲リタル者ノ豫備役期間ノ終期ハ前項ノ規定ニ拘ラズ年齡四十五年ニ滿ツル年ノ翌年三月三十一日トス
第九條 後備役將校ノ服役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
前條第二項ニ規定スル者ノ後備役期間ノ終期ハ豫備役期間滿了ノ年ヨリ起算シ五年目ノ三月三十一日トス
第十條 准士官ノ現役定限年齡左ノ如シ
一 步、騎、砲、工、航空及輜重兵科ノ特務曹長 四十年
二 其ノ他ノ准士官 四十八年
第十一條 前條第一號ニ揭グル者現役定限年齡ニ滿チ現役ヲ退キタルトキハ之ヲ豫備役ニ服セシム但シ豫備役期間ニ滿チタル者ニ在リテハ之ヲ後備役ニ服セシム
第十二條 第十條第一號ニ揭グル者ノ豫備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ十一年目ノ三月三十一日トス
第十三條 第十條第二號ニ揭グル者ノ豫備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ノ翌年三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齡ニ滿ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
第十四條 待命、休職、停職、豫備役又ハ後備役ノ將校帝國外ノ地ニ旅行シ又ハ在留セントスルトキハ目的、國名及期間ヲ具シ陸軍大臣ニ申告スベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ但シ官廳ノ命ニ依リ旅行シ又ハ在留スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ニ揭グル者前項ニ規定スル申告ヲ爲サズ又ハ虛僞ノ申告ヲ爲シタルトキハ陸軍大臣之ヲ召還スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ准士官ニ之ヲ準用ス
第三章 下士ノ服役
第十五條 下士ノ服役ハ之ヲ現役、豫備役及後備役ニ分チ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外現役ヲ終リタル者ハ之ヲ豫備役ニ、豫備役ヲ終リタル者ハ之ヲ後備役ニ服セシム
第十六條 下士ノ現役期間左ノ如シ
一 憲兵科下士ハ前服役年月ヲ通算シ六年
二 步、騎、砲、工、航空及輜重兵科ノ下士(砲、工兵諸工長ヲ除ク)竝ニ經理部及衞生部ノ下士ハ前服役年月ヲ通算シ四年但シ陸軍補充令第六十七條ノ規定ニ依リ下士ト爲リタル者ハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ三年
三 砲、工兵諸工長ハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ三年
四 獸醫部下士ハ前服役年月ヲ通算シ五年
五 軍樂部下士ハ樂手補ヲ命ゼラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ五年
六 豫備役又ハ後備役ノ下士ニシテ再ビ現役ニ服シタル者竝ニ歸休中、豫備役又ハ後備兵役ノ上等兵及之ト同等級ノ兵卒ニシテ現役下士ト爲リタル者ハ前各號ノ規定ニ拘ラズ再ビ現役ニ服シタル年又ハ現役下士ト爲リタル年ノ十二月ヨリ起算シ二年
第十七條 下士ノ現役定限年齡左ノ如シ
一 步、騎、砲、工、航空及輜重兵科ノ隊附下士(砲、工兵諸工長ヲ除ク) 四十年
二 其ノ他ノ下士 四十五年
第十八條 下士現役期間滿了ノ後再ビ現役ニ服スルコトヲ志願スルトキハ現役定限年齡ニ滿ツル日迄數次之ヲ許可スルコトヲ得
第十九條 隊附(敎導隊、學生隊、練習生隊、練習隊及生徒隊竝ニ陸軍士官學校ノ學生部及馬術部附ヲ含ム以下之ニ同ジ)現役下士ハ之ヲ營內ニ居住セシム但シ陸軍大臣ハ人員ヲ限リ之ヲ營外ニ居住セシムルコトヲ得
隊附ニ非ザル現役下士ト雖モ陸軍大臣ハ必要ニ應ジ之ヲ營內ニ居住セシムルコトヲ得
第二十條 現役中本人ニ依ルニ非ザレバ一家ノ生計ヲ營ミ難キ事故ヲ生ジタルトキハ本人ノ願ニ依リ現役ヲ免ズルコトヲ得
第二十一條 現役中疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ現役ニ堪ヘザル者ハ現役ヲ、現役、豫備役及後備役ニ堪ヘザル者ハ現役、豫備役及後備役ヲ、永久服役ニ堪ヘザル者ハ兵役ヲ免ズ
第二十二條 前服役期間ヲ通算シ服役四年以上ノ現役下士ニシテ成績不良ノ者ハ之ヲ現役滿期ト爲スコトヲ得
第二十三條 下士現役ヲ離ルルトキ第二十四條ニ規定スル期間ニ滿チザルトキハ之ヲ豫備役ニ、第二十五條ニ規定スル期間ニ滿チザルトキハ之ヲ後備役ニ服セシム
第二十四條 下士ノ豫備役期間ノ終期ハ任官ノ年ヨリ起算シ九年目ノ三月三十一日トス
陸軍補充令第八十條第一項第四號ニ揭グル者ノ豫備役期間ノ終期ハ前項ノ規定ニ拘ラズ年齡三十五年ニ滿ツル年ノ翌年三月三十一日トス
第二十五條 下士ノ後備役期間ノ終期ハ前條第一項ニ規定スル豫備役期間滿了ノ年ヨリ起算シ十一年目ノ三月三十一日トス
陸軍補充令第八十條第一項第四號ニ揭グル者ノ後備役期間ノ終期ハ前項ノ規定ニ拘ラズ年齡四十八年ニ滿ツル年ノ翌年三月三十一日トス
第二十六條 豫備役又ハ後備役ノ下士在鄕中疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ永久服役ニ堪ヘザルトキハ兵役ヲ免ズ
豫備役下士召集ノ際、部隊編入中又ハ衞戍病院收容中疾病其ノ他身體又ハ精神ノ異常ニ因リ豫備役及後備役ニ堪ヘザルトキハ豫備役及後備役ヲ、永久服役ニ堪ヘザルトキハ兵役ヲ免ズ後備役下士ノ後備役免除又ハ兵役免除ニ付亦同ジ
第二十七條 下士ニシテ服役ヲ終リタル日ニ於テ年齡四十年未滿ノ者ハ年齡四十年ニ滿ツル日迄引續キ之ヲ第一國民兵役ニ服セシム
第二十八條 下士ニシテ服役ヲ終リタル日ニ於テ年齡四十年以上四十五年未滿ノ者ハ其ノ翌日ヲ以テ服役ヲ免ズ
第二十九條 下士ニシテ服役中年齡四十五年ニ達スル者ハ服役ノ期間ニ拘ラズ四十五年ニ達スル年ノ三月三十一日ヲ以テ服役ヲ免ズ
第三十條 現役下士ニシテ第二十一條ノ規定ニ依リ現役、豫備役及後備役ヲ免ゼラレタル者、豫備役下士ニシテ第二十六條ノ規定ニ依リ豫備役及後備役ヲ免ゼラレタル者又ハ後備役下士ニシテ第二十六條ノ規定ニ依リ後備役ヲ免ゼラレタル者年齡四十年未滿ノ者ナルトキハ年齡四十年ニ滿ツル日迄之ヲ第一國民兵役ニ服セシム
第三十一條 元下士ニシテ志願ニ依リ國民軍ニ編入セラレタル者ハ當該期間第一國民兵役ニ在ル者ト看做ス
第四章 召集
第三十二條 豫備役又ハ後備役ノ將校、准士官及下士ハ戰時又ハ事變ノ際ニ在リテハ必要ニ應ジ之ヲ召集ス平常ニ在リテハ勤務演習ノ爲之ヲ召集スルコトヲ得
豫備役又ハ後備役ノ下士ニ對シテハ每年一囘簡閱點呼ヲ行フコトヲ得
第三十三條 兵役法第五十六條、第五十九條及第六十一條乃至第六十三條竝ニ兵役法施行令第四章及第百四十三條ノ規定ハ第二項ニ規定スル場合ヲ除クノ外將校、准士官及下士ノ召集又ハ下士ノ簡閱點呼ニ之ヲ準用ス
將官同相當官ニ對スル召集ノ令達ハ師團長直ニ之ヲ行フ
第五章 雜則
第三十四條 豫備役ノ將校及准士官豫備役ヲ終リ後備役ニ入ル場合、後備役ノ將校及准士官後備役ヲ終リ退役ト爲ル場合、豫備役下士豫備役ヲ終リ後備役ニ入ル場合及後備役下士後備役ヲ終リ第一國民兵役ニ入ル場合ニ於テハ辭令ヲ用フルコトナシ
第三十五條 下士左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ別ニ辭令ヲ用ヒズ其ノ官ヲ免ゼラレタルモノトス
一 第一國民兵役ヲ終リタルトキ
二 兵役ヲ免ゼラレタルトキ
三 年齡四十年ヲ過ギ服役ヲ免ゼラレタルトキ
第三十六條 下士ニシテ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ學生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者ハ當該兵籍ニ編入セラレタル日ヲ以テ下士ノ身分及服役ヲ免ズ
第三十七條 下士ニシテ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ學生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者當該學生生徒ヲ免ゼラレタルトキハ第三十九條ノ規定ニ依リ兵卒ト爲ル者ヲ除クノ外其ノ日ヲ以テ前條ノ規定ニ依リ免ゼラレタル下士ノ身分ニ復ス但シ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ學生生徒トシテ有シタル階級ガ前官等ヨリ上級ナルトキハ當該學生生徒トシテ有シタル階級相當ノ官等ニ任ズ
前項ニ揭グル者ハ當該學生生徒ヲ免ゼラレタル日ヲ以テ現役ヲ離レタル者ト看做シ第二十三條ノ規定ヲ適用ス
第二十一條及第二十六條ノ規定ハ第一項ニ揭グル者ニ之ヲ準用ス
第三十八條 下士ニシテ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者ハ其ノ官ヲ失フ
前項ノ規定ハ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未滿ノ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ニ之ヲ適用セズ
第三十九條 下士ニシテ左ニ揭グル者ハ之ヲ當該兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等級ノ兵卒ト爲ス但シ當該兵科部ニ一等卒又ハ之ト同等級ノ階級ナキトキハ原兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等級ノ兵卒ト爲シ原兵科ナキトキハ步兵科ノ一等卒ト爲ス
一 前條第一項ノ規定ニ依リ官ヲ失ヒタル者
二 陸軍懲罰令ニ依リ免官セラレタル者
三 陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ學生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者ニシテ軍紀ヲ紊リ若ハ屢法則ヲ犯シタルニ因リ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ見込ナキニ因リ當該學生生徒ヲ免ゼラレタル者
第四十條 志願ニ依ラズシテ兵卒ヨリ下士ニ任ゼラレタル者ノ服役ニ關シテハ兵役法及兵役法施行令ノ定ムル所ニ依ル
前項ニ揭グル者ニシテ志願ニ依リ下士トシテ更ニ現役ニ服スル者ハ之ヲ志願ニ依リ下士ニ任ゼラレタル者ト看做ス
第四十一條 幹部候補生ヨリ下士ニ任ゼラレタル者ノ豫備役及後備役ノ期間ハ第二十四條及第二十五條ノ規定ニ拘ラズ入營ノ月ノ一日ヨリ起算シ豫備役ニ在リテハ七年四月、後備役ニ在リテハ十七年四月ニ滿ツル日迄トス
前項ニ揭グル者戰時又ハ事變ノ際ニ於テ將校ト爲リタルトキハ第八條第二項及第九條第二項ノ規定ニ準ジ服役セシム
附 則
本令ハ昭和二年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
大正十年勅令第四百四十二號ハ之ヲ廢止ス
本令施行前一年志願兵又ハ一年現役兵トシテ現役ヲ終リタル者ニシテ豫備役ノ將校又ハ下士ニ任ゼラレタル者ノ豫備役及後備役ノ期間ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
朕陸軍軍人服役令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和二年十一月三十日
内閣総理大臣 男爵 田中義一
陸軍大臣 白川義則
勅令第三百三十二号
陸軍武官服役令
第一章 総則
第一条 現役ノ将校、准士官及下士ハ所属部隊ノ兵籍ニ之ヲ編入シ将校及准士官ニ在リテハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外現役定限年齢ニ満ツル日迄、下士ニ在リテハ現役期間満ツル日迄之ヲ服役セシム
第二条 待命、休職又ハ停職ノ将校及准士官並ニ予備役又ハ後備役ノ将校、准士官及下士ハ之ヲ本籍所在ノ師管ノ兵籍ニ編入シ将校及准士官ニ在リテハ師団長、下士ニ在リテハ連隊区司令官ノ管轄ニ属セシム
第三条 将校、准士官及下士ノ服役期間ハ戦時又ハ事変ノ際其ノ他必要アル場合ニ於テハ之ヲ延長スルコトヲ得但シ之ガ為他ノ服役ノ終期ヲ変更スルコトナシ
兵役法施行令第三十六条ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ服役期間ヲ延長スル場合ニ之ヲ準用ス
第四条 本令ニ規定スル服役期間ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外月ヲ以テ之ヲ計算シ最後ノ月ノ末日ヲ以テ満了ス
第五条 本令中将校ニ関スル規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外将校相当官ニ之ヲ適用ス
第二章 将校及准士官ノ服役
第六条 将校及准士官ノ服役ハ之ヲ現役、予備役及後備役ニ分チ其ノ転役ニ関シテハ本令ニ定ムルモノノ外陸軍将校分限令其ノ他陸軍将校及准士官ノ分限ニ関スル規定ノ定ムル所ニ依ル
第七条 将校同相当官ノ現役定限年齢左ノ如シ
【表】
元帥タル大将ノ現役定限年齢ハ之ヲ定メズ
第八条 予備役将校ノ服役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ノ翌年三月三十一日トス
幹部候補生ヨリ予備役士官ト為リタル者ノ予備役期間ノ終期ハ前項ノ規定ニ拘ラズ年齢四十五年ニ満ツル年ノ翌年三月三十一日トス
第九条 後備役将校ノ服役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
前条第二項ニ規定スル者ノ後備役期間ノ終期ハ予備役期間満了ノ年ヨリ起算シ五年目ノ三月三十一日トス
第十条 准士官ノ現役定限年齢左ノ如シ
一 歩、騎、砲、工、航空及輜重兵科ノ特務曹長 四十年
二 其ノ他ノ准士官 四十八年
第十一条 前条第一号ニ掲グル者現役定限年齢ニ満チ現役ヲ退キタルトキハ之ヲ予備役ニ服セシム但シ予備役期間ニ満チタル者ニ在リテハ之ヲ後備役ニ服セシム
第十二条 第十条第一号ニ掲グル者ノ予備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ十一年目ノ三月三十一日トス
第十三条 第十条第二号ニ掲グル者ノ予備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ノ翌年三月三十一日、後備役期間ノ終期ハ現役定限年齢ニ満ツル年ヨリ起算シ六年目ノ三月三十一日トス
第十四条 待命、休職、停職、予備役又ハ後備役ノ将校帝国外ノ地ニ旅行シ又ハ在留セントスルトキハ目的、国名及期間ヲ具シ陸軍大臣ニ申告スベシ之ヲ変更セントスルトキ亦同ジ但シ官庁ノ命ニ依リ旅行シ又ハ在留スル者ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ニ掲グル者前項ニ規定スル申告ヲ為サズ又ハ虚偽ノ申告ヲ為シタルトキハ陸軍大臣之ヲ召還スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ准士官ニ之ヲ準用ス
第三章 下士ノ服役
第十五条 下士ノ服役ハ之ヲ現役、予備役及後備役ニ分チ本令中別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外現役ヲ終リタル者ハ之ヲ予備役ニ、予備役ヲ終リタル者ハ之ヲ後備役ニ服セシム
第十六条 下士ノ現役期間左ノ如シ
一 憲兵科下士ハ前服役年月ヲ通算シ六年
二 歩、騎、砲、工、航空及輜重兵科ノ下士(砲、工兵諸工長ヲ除ク)並ニ経理部及衛生部ノ下士ハ前服役年月ヲ通算シ四年但シ陸軍補充令第六十七条ノ規定ニ依リ下士ト為リタル者ハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ三年
三 砲、工兵諸工長ハ任官年ノ十二月ヨリ起算シ三年
四 獣医部下士ハ前服役年月ヲ通算シ五年
五 軍楽部下士ハ楽手補ヲ命ゼラレタル年ノ十二月ヨリ起算シ五年
六 予備役又ハ後備役ノ下士ニシテ再ビ現役ニ服シタル者並ニ帰休中、予備役又ハ後備兵役ノ上等兵及之ト同等級ノ兵卒ニシテ現役下士ト為リタル者ハ前各号ノ規定ニ拘ラズ再ビ現役ニ服シタル年又ハ現役下士ト為リタル年ノ十二月ヨリ起算シ二年
第十七条 下士ノ現役定限年齢左ノ如シ
一 歩、騎、砲、工、航空及輜重兵科ノ隊附下士(砲、工兵諸工長ヲ除ク) 四十年
二 其ノ他ノ下士 四十五年
第十八条 下士現役期間満了ノ後再ビ現役ニ服スルコトヲ志願スルトキハ現役定限年齢ニ満ツル日迄数次之ヲ許可スルコトヲ得
第十九条 隊附(教導隊、学生隊、練習生隊、練習隊及生徒隊並ニ陸軍士官学校ノ学生部及馬術部附ヲ含ム以下之ニ同ジ)現役下士ハ之ヲ営内ニ居住セシム但シ陸軍大臣ハ人員ヲ限リ之ヲ営外ニ居住セシムルコトヲ得
隊附ニ非ザル現役下士ト雖モ陸軍大臣ハ必要ニ応ジ之ヲ営内ニ居住セシムルコトヲ得
第二十条 現役中本人ニ依ルニ非ザレバ一家ノ生計ヲ営ミ難キ事故ヲ生ジタルトキハ本人ノ願ニ依リ現役ヲ免ズルコトヲ得
第二十一条 現役中疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ現役ニ堪ヘザル者ハ現役ヲ、現役、予備役及後備役ニ堪ヘザル者ハ現役、予備役及後備役ヲ、永久服役ニ堪ヘザル者ハ兵役ヲ免ズ
第二十二条 前服役期間ヲ通算シ服役四年以上ノ現役下士ニシテ成績不良ノ者ハ之ヲ現役満期ト為スコトヲ得
第二十三条 下士現役ヲ離ルルトキ第二十四条ニ規定スル期間ニ満チザルトキハ之ヲ予備役ニ、第二十五条ニ規定スル期間ニ満チザルトキハ之ヲ後備役ニ服セシム
第二十四条 下士ノ予備役期間ノ終期ハ任官ノ年ヨリ起算シ九年目ノ三月三十一日トス
陸軍補充令第八十条第一項第四号ニ掲グル者ノ予備役期間ノ終期ハ前項ノ規定ニ拘ラズ年齢三十五年ニ満ツル年ノ翌年三月三十一日トス
第二十五条 下士ノ後備役期間ノ終期ハ前条第一項ニ規定スル予備役期間満了ノ年ヨリ起算シ十一年目ノ三月三十一日トス
陸軍補充令第八十条第一項第四号ニ掲グル者ノ後備役期間ノ終期ハ前項ノ規定ニ拘ラズ年齢四十八年ニ満ツル年ノ翌年三月三十一日トス
第二十六条 予備役又ハ後備役ノ下士在郷中疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ永久服役ニ堪ヘザルトキハ兵役ヲ免ズ
予備役下士召集ノ際、部隊編入中又ハ衛戍病院収容中疾病其ノ他身体又ハ精神ノ異常ニ因リ予備役及後備役ニ堪ヘザルトキハ予備役及後備役ヲ、永久服役ニ堪ヘザルトキハ兵役ヲ免ズ後備役下士ノ後備役免除又ハ兵役免除ニ付亦同ジ
第二十七条 下士ニシテ服役ヲ終リタル日ニ於テ年齢四十年未満ノ者ハ年齢四十年ニ満ツル日迄引続キ之ヲ第一国民兵役ニ服セシム
第二十八条 下士ニシテ服役ヲ終リタル日ニ於テ年齢四十年以上四十五年未満ノ者ハ其ノ翌日ヲ以テ服役ヲ免ズ
第二十九条 下士ニシテ服役中年齢四十五年ニ達スル者ハ服役ノ期間ニ拘ラズ四十五年ニ達スル年ノ三月三十一日ヲ以テ服役ヲ免ズ
第三十条 現役下士ニシテ第二十一条ノ規定ニ依リ現役、予備役及後備役ヲ免ゼラレタル者、予備役下士ニシテ第二十六条ノ規定ニ依リ予備役及後備役ヲ免ゼラレタル者又ハ後備役下士ニシテ第二十六条ノ規定ニ依リ後備役ヲ免ゼラレタル者年齢四十年未満ノ者ナルトキハ年齢四十年ニ満ツル日迄之ヲ第一国民兵役ニ服セシム
第三十一条 元下士ニシテ志願ニ依リ国民軍ニ編入セラレタル者ハ当該期間第一国民兵役ニ在ル者ト看做ス
第四章 召集
第三十二条 予備役又ハ後備役ノ将校、准士官及下士ハ戦時又ハ事変ノ際ニ在リテハ必要ニ応ジ之ヲ召集ス平常ニ在リテハ勤務演習ノ為之ヲ召集スルコトヲ得
予備役又ハ後備役ノ下士ニ対シテハ毎年一回簡閲点呼ヲ行フコトヲ得
第三十三条 兵役法第五十六条、第五十九条及第六十一条乃至第六十三条並ニ兵役法施行令第四章及第百四十三条ノ規定ハ第二項ニ規定スル場合ヲ除クノ外将校、准士官及下士ノ召集又ハ下士ノ簡閲点呼ニ之ヲ準用ス
将官同相当官ニ対スル召集ノ令達ハ師団長直ニ之ヲ行フ
第五章 雑則
第三十四条 予備役ノ将校及准士官予備役ヲ終リ後備役ニ入ル場合、後備役ノ将校及准士官後備役ヲ終リ退役ト為ル場合、予備役下士予備役ヲ終リ後備役ニ入ル場合及後備役下士後備役ヲ終リ第一国民兵役ニ入ル場合ニ於テハ辞令ヲ用フルコトナシ
第三十五条 下士左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ別ニ辞令ヲ用ヒズ其ノ官ヲ免ゼラレタルモノトス
一 第一国民兵役ヲ終リタルトキ
二 兵役ヲ免ゼラレタルトキ
三 年齢四十年ヲ過ギ服役ヲ免ゼラレタルトキ
第三十六条 下士ニシテ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ学生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者ハ当該兵籍ニ編入セラレタル日ヲ以テ下士ノ身分及服役ヲ免ズ
第三十七条 下士ニシテ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ学生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者当該学生生徒ヲ免ゼラレタルトキハ第三十九条ノ規定ニ依リ兵卒ト為ル者ヲ除クノ外其ノ日ヲ以テ前条ノ規定ニ依リ免ゼラレタル下士ノ身分ニ復ス但シ陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ学生生徒トシテ有シタル階級ガ前官等ヨリ上級ナルトキハ当該学生生徒トシテ有シタル階級相当ノ官等ニ任ズ
前項ニ掲グル者ハ当該学生生徒ヲ免ゼラレタル日ヲ以テ現役ヲ離レタル者ト看做シ第二十三条ノ規定ヲ適用ス
第二十一条及第二十六条ノ規定ハ第一項ニ掲グル者ニ之ヲ準用ス
第三十八条 下士ニシテ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタル者ハ其ノ官ヲ失フ
前項ノ規定ハ陸軍刑法又ハ海軍刑法ニ依リ一年未満ノ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ニ之ヲ適用セズ
第三十九条 下士ニシテ左ニ掲グル者ハ之ヲ当該兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等級ノ兵卒ト為ス但シ当該兵科部ニ一等卒又ハ之ト同等級ノ階級ナキトキハ原兵科部ノ一等卒又ハ之ト同等級ノ兵卒ト為シ原兵科ナキトキハ歩兵科ノ一等卒ト為ス
一 前条第一項ノ規定ニ依リ官ヲ失ヒタル者
二 陸軍懲罰令ニ依リ免官セラレタル者
三 陸軍ノ諸生徒又ハ海軍ノ学生生徒ノ兵籍ニ編入セラレタル者ニシテ軍紀ヲ紊リ若ハ屡法則ヲ犯シタルニ因リ又ハ品行不正ニシテ改悛ノ見込ナキニ因リ当該学生生徒ヲ免ゼラレタル者
第四十条 志願ニ依ラズシテ兵卒ヨリ下士ニ任ゼラレタル者ノ服役ニ関シテハ兵役法及兵役法施行令ノ定ムル所ニ依ル
前項ニ掲グル者ニシテ志願ニ依リ下士トシテ更ニ現役ニ服スル者ハ之ヲ志願ニ依リ下士ニ任ゼラレタル者ト看做ス
第四十一条 幹部候補生ヨリ下士ニ任ゼラレタル者ノ予備役及後備役ノ期間ハ第二十四条及第二十五条ノ規定ニ拘ラズ入営ノ月ノ一日ヨリ起算シ予備役ニ在リテハ七年四月、後備役ニ在リテハ十七年四月ニ満ツル日迄トス
前項ニ掲グル者戦時又ハ事変ノ際ニ於テ将校ト為リタルトキハ第八条第二項及第九条第二項ノ規定ニ準ジ服役セシム
附 則
本令ハ昭和二年十二月一日ヨリ之ヲ施行ス
大正十年勅令第四百四十二号ハ之ヲ廃止ス
本令施行前一年志願兵又ハ一年現役兵トシテ現役ヲ終リタル者ニシテ予備役ノ将校又ハ下士ニ任ゼラレタル者ノ予備役及後備役ノ期間ニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル