朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル砂鑛法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年三月二十四日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
農商務大臣 男爵 大浦兼武
法律第十三號
砂鑛法
第一條 本法ニ於テ砂鑛ト稱スルハ砂金、砂鐵及砂錫ヲ謂フ
金鑛ノ廢鑛又ハ鑛滓ニシテ主務大臣ニ於テ其ノ存在狀態砂金ト類似スト認メタルモノハ之ヲ砂金ト看做ス
第二條 本法ニ於テ砂鑛業ト稱スルハ砂鑛ノ採取及之ニ附屬スル事業ヲ謂フ
第三條 本法ニ於テ砂鑛區ト稱スルハ砂鑛權ノ登錄ヲ得タル土地ノ區域ヲ謂フ
第四條 砂鑛權者ハ砂鑛區內ニ於ケル各種ノ砂鑛ヲ採取スル權利ヲ有ス但シ第六條ノ砂金ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五條 砂鑛區鑛區ト重複スル場合ニ於テハ砂鑛權者及鑛業權者ハ其ノ採取及採掘又ハ試掘ニ付互ニ協議ヲ爲スヘシ
前項ノ協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ砂鑛權者又ハ鑛業權者ハ鑛山監督署長ノ裁決ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得違法ニ權利ヲ侵害セラレタリトスル者ハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第六條 金鑛ヲ目的トスル鑛業權者ハ其ノ採掘鑛區內ニ存スル砂金ヲ採取スル權利ヲ有ス但シ其ノ鑛區內ニ旣ニ存スル砂鑛區ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ鑛業權者ハ砂金ノ採取ニ關シ之ヲ砂鑛權者ト看做ス
第七條 砂鑛權ハ相續、讓渡、抵當權、滯納處分又ハ强制執行ノ目的タル外權利ノ目的タルコトヲ得ス
第八條 砂鑛權ヲ得ムトスル者ハ願書ニ砂鑛區圖ヲ添ヘテ主務大臣ニ出願スヘシ
第九條 砂鑛出願地他人ノ所有ニ係ルトキハ所有者ノ承諾ヲ受クヘシ
土地所有者ハ命令ノ定ムル期間內ニ於テ自ラ砂鑛權ノ出願ヲ爲ストキノ外前項ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ス
第十條 砂鑛出願人ハ名義ノ變更ヲ爲スコトヲ得但シ主務大臣ニ屆出ヲ爲スニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第十一條 砂鑛權者ハ砂鑛區ノ增減ヲ出願スルコトヲ得
抵當權ノ設定アル場合ニ於テ砂鑛區ノ減少ヲ出願セムトスルトキハ抵當權者ノ承諾ヲ受クヘシ
第十二條 土地所有者、地上權者、永小作權者又ハ土地ニ對シ使用ノ權利ヲ有スル者ハ其ノ土地ニ於テ砂鑛ヲ採取セムトスル者ニ對シ相當ノ補償金ヲ請求スルコトヲ得
第十三條 前條ノ請求權者ハ砂鑛權者ヲシテ補償金ニ付相當ノ擔保ヲ供セシムルコトヲ得
第十四條 砂鑛權者補償金ノ拂渡ヲ爲サス又ハ擔保ヲ供セサルトキハ第十二條ノ請求權者ハ砂鑛ノ採取ヲ拒ムコトヲ得
第十五條 補償金又ハ其ノ擔保ニ付協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ砂鑛權者ハ鑛山監督署長ノ裁決ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十六條 前條ノ裁決アリタルトキハ其ノ未タ確定セサルトキト雖砂鑛權者ハ裁決ニ依ル補償金ヲ供託シ又ハ擔保ヲ供託シテ砂鑛ヲ採取スルコトヲ得
第十七條 鑛業法第三章ハ砂鑛業ニ關シ之ヲ準用ス但シ同法第五十六條ニ依ル土地ノ使用ハ左ノ場合ニ限ル
一 洗鑛
二 製鍊所ノ建設
三 洗滌用水路及溜池ノ開設
四 砂鑛原料ノ置場
第十八條 當該官吏砂鑛業取締ノ爲必要アリト認ムルトキハ工場其ノ他ノ場所ニ臨檢スルコトヲ得
當該官吏臨檢ノ際砂鑛業ニ關スル犯罪アリト認ムルトキハ搜索ヲ爲シ又ハ犯罪ノ事實ヲ證明スヘキ物件ノ差押ヲ爲スコトヲ得
臨檢、搜索及差押ニ關シテハ間接國稅犯則者處分法ヲ準用ス
第十九條 權利ヲ有セスシテ砂鑛業ヲ爲シ又ハ詐僞ノ所爲ヲ以テ砂鑛採取ノ許可ヲ受ケタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十條 第二十三條ニ於テ準用シタル鑛業法第十條第三項又ハ同法第七十二條ノ命令ニ違反シタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條 砂鑛權ノ出願又ハ砂鑛業ノ爲ニ他人ノ土地ニ立入リテ測量又ハ檢査ヲ爲ス場合ニ於テ鑛山監督署長ノ許可ヲ受ケスシテ障害物ヲ除去シタル者ハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス
當該官吏ノ訊問ニ對シ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ當該官吏ノ職務執行ヲ拒ミ之ヲ忌避シ又ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ罰前項ニ同シ
第二十二條 明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
第二十三條 鑛業法第五條、第六條、第七條第一項第二項、第十條、第十二條、第十五條、第十六條、第十九條、第二十條、第二十七條、第三十二條、第三十三條第一項第二項、第三十五條、第三十八條乃至第四十三條、第四十九條、第七十二條、第七十四條、第八十七條乃至第八十九條、第九十一條乃至第九十三條、第百三條及第百四條ノ規定ハ砂鑛業ニ關シテ之ヲ準用ス
附 則
第二十四條 本法ハ明治四十二年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
砂鑛採取法ハ之ヲ廢止ス
第二十五條 砂鑛採取法ニ依ル砂鑛採取ノ許可ハ之ヲ砂鑛權ノ登錄ト看做ス
第二十六條 本法施行前ニ金鑛ヲ目的トスル鑛業ノ出願ヲ爲シタル者第一條第二項ノ砂金ノミヲ採取セムトスルトキハ命令ノ定ムル期間內ニ之ヲ鑛山監督署長ニ屆出ツヘシ
前項ノ屆出アリタルトキハ鑛業ノ出願ハ願書發送ノ日時ニ於テ砂鑛權ノ出願ニ代リタルモノト看做ス
第二十七條 本法施行前設定シタル鑛業權ニシテ第一條第二項ノ砂金ノミヲ目的トスルモノニ付テハ命令ノ定ムル期間內ニ其ノ鑛區ニ付砂鑛權設定ノ登錄ヲ申請スヘシ其ノ登錄アリタルトキハ鑛業權ノ上ニ現ニ存スル權利義務ハ砂鑛權ノ上ニ存續ス
前項ノ鑛業權ニ關シテハ砂鑛權ノ登錄アル迄仍鑛業法ヲ適用ス
第一項ノ鑛業權ニシテ鑛業財團ヲ組成スルモノニ付テハ砂鑛權ノ登錄アリタル後ト雖其ノ財團ノ關係ニ於テハ之ヲ鑛業權ト看做ス
第二十八條 本法施行前砂鑛採取法ニ依リ又ハ本法第一條第二項ノ砂金ニ關シ鑛業法ニ依リテ爲シタル處分、手續其ノ他ノ行爲ハ本法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス
第二十九條 本法施行前砂鑛採取法ニ依リ又ハ本法第一條第二項ノ砂金ニ關シ鑛業法ニ依リテ爲シタル處分ニ對スル訴願、訴訟、判定、裁定又ハ裁決ニ關シテハ各砂鑛採取法又ハ鑛業法ノ規定ニ依ル
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル砂鉱法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十二年三月二十四日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
農商務大臣 男爵 大浦兼武
法律第十三号
砂鉱法
第一条 本法ニ於テ砂鉱ト称スルハ砂金、砂鉄及砂錫ヲ謂フ
金鉱ノ廃鉱又ハ鉱滓ニシテ主務大臣ニ於テ其ノ存在状態砂金ト類似スト認メタルモノハ之ヲ砂金ト看做ス
第二条 本法ニ於テ砂鉱業ト称スルハ砂鉱ノ採取及之ニ附属スル事業ヲ謂フ
第三条 本法ニ於テ砂鉱区ト称スルハ砂鉱権ノ登録ヲ得タル土地ノ区域ヲ謂フ
第四条 砂鉱権者ハ砂鉱区内ニ於ケル各種ノ砂鉱ヲ採取スル権利ヲ有ス但シ第六条ノ砂金ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第五条 砂鉱区鉱区ト重複スル場合ニ於テハ砂鉱権者及鉱業権者ハ其ノ採取及採掘又ハ試掘ニ付互ニ協議ヲ為スヘシ
前項ノ協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ為スコト能ハサルトキハ砂鉱権者又ハ鉱業権者ハ鉱山監督署長ノ裁決ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ訴願ヲ提起スルコトヲ得違法ニ権利ヲ侵害セラレタリトスル者ハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第六条 金鉱ヲ目的トスル鉱業権者ハ其ノ採掘鉱区内ニ存スル砂金ヲ採取スル権利ヲ有ス但シ其ノ鉱区内ニ既ニ存スル砂鉱区ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ鉱業権者ハ砂金ノ採取ニ関シ之ヲ砂鉱権者ト看做ス
第七条 砂鉱権ハ相続、譲渡、抵当権、滞納処分又ハ強制執行ノ目的タル外権利ノ目的タルコトヲ得ス
第八条 砂鉱権ヲ得ムトスル者ハ願書ニ砂鉱区図ヲ添ヘテ主務大臣ニ出願スヘシ
第九条 砂鉱出願地他人ノ所有ニ係ルトキハ所有者ノ承諾ヲ受クヘシ
土地所有者ハ命令ノ定ムル期間内ニ於テ自ラ砂鉱権ノ出願ヲ為ストキノ外前項ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ス
第十条 砂鉱出願人ハ名義ノ変更ヲ為スコトヲ得但シ主務大臣ニ届出ヲ為スニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第十一条 砂鉱権者ハ砂鉱区ノ増減ヲ出願スルコトヲ得
抵当権ノ設定アル場合ニ於テ砂鉱区ノ減少ヲ出願セムトスルトキハ抵当権者ノ承諾ヲ受クヘシ
第十二条 土地所有者、地上権者、永小作権者又ハ土地ニ対シ使用ノ権利ヲ有スル者ハ其ノ土地ニ於テ砂鉱ヲ採取セムトスル者ニ対シ相当ノ補償金ヲ請求スルコトヲ得
第十三条 前条ノ請求権者ハ砂鉱権者ヲシテ補償金ニ付相当ノ担保ヲ供セシムルコトヲ得
第十四条 砂鉱権者補償金ノ払渡ヲ為サス又ハ担保ヲ供セサルトキハ第十二条ノ請求権者ハ砂鉱ノ採取ヲ拒ムコトヲ得
第十五条 補償金又ハ其ノ担保ニ付協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ為スコト能ハサルトキハ砂鉱権者ハ鉱山監督署長ノ裁決ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ不服アル者ハ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十六条 前条ノ裁決アリタルトキハ其ノ未タ確定セサルトキト雖砂鉱権者ハ裁決ニ依ル補償金ヲ供託シ又ハ担保ヲ供託シテ砂鉱ヲ採取スルコトヲ得
第十七条 鉱業法第三章ハ砂鉱業ニ関シ之ヲ準用ス但シ同法第五十六条ニ依ル土地ノ使用ハ左ノ場合ニ限ル
一 洗鉱
二 製錬所ノ建設
三 洗滌用水路及溜池ノ開設
四 砂鉱原料ノ置場
第十八条 当該官吏砂鉱業取締ノ為必要アリト認ムルトキハ工場其ノ他ノ場所ニ臨検スルコトヲ得
当該官吏臨検ノ際砂鉱業ニ関スル犯罪アリト認ムルトキハ捜索ヲ為シ又ハ犯罪ノ事実ヲ証明スヘキ物件ノ差押ヲ為スコトヲ得
臨検、捜索及差押ニ関シテハ間接国税犯則者処分法ヲ準用ス
第十九条 権利ヲ有セスシテ砂鉱業ヲ為シ又ハ詐偽ノ所為ヲ以テ砂鉱採取ノ許可ヲ受ケタル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十条 第二十三条ニ於テ準用シタル鉱業法第十条第三項又ハ同法第七十二条ノ命令ニ違反シタル者ハ百円以下ノ罰金ニ処ス
第二十一条 砂鉱権ノ出願又ハ砂鉱業ノ為ニ他人ノ土地ニ立入リテ測量又ハ検査ヲ為ス場合ニ於テ鉱山監督署長ノ許可ヲ受ケスシテ障害物ヲ除去シタル者ハ五十円以下ノ罰金ニ処ス
当該官吏ノ訊問ニ対シ虚偽ノ答弁ヲ為シ又ハ当該官吏ノ職務執行ヲ拒ミ之ヲ忌避シ又ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ罰前項ニ同シ
第二十二条 明治三十三年法律第五十二号ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
第二十三条 鉱業法第五条、第六条、第七条第一項第二項、第十条、第十二条、第十五条、第十六条、第十九条、第二十条、第二十七条、第三十二条、第三十三条第一項第二項、第三十五条、第三十八条乃至第四十三条、第四十九条、第七十二条、第七十四条、第八十七条乃至第八十九条、第九十一条乃至第九十三条、第百三条及第百四条ノ規定ハ砂鉱業ニ関シテ之ヲ準用ス
附 則
第二十四条 本法ハ明治四十二年七月一日ヨリ之ヲ施行ス
砂鉱採取法ハ之ヲ廃止ス
第二十五条 砂鉱採取法ニ依ル砂鉱採取ノ許可ハ之ヲ砂鉱権ノ登録ト看做ス
第二十六条 本法施行前ニ金鉱ヲ目的トスル鉱業ノ出願ヲ為シタル者第一条第二項ノ砂金ノミヲ採取セムトスルトキハ命令ノ定ムル期間内ニ之ヲ鉱山監督署長ニ届出ツヘシ
前項ノ届出アリタルトキハ鉱業ノ出願ハ願書発送ノ日時ニ於テ砂鉱権ノ出願ニ代リタルモノト看做ス
第二十七条 本法施行前設定シタル鉱業権ニシテ第一条第二項ノ砂金ノミヲ目的トスルモノニ付テハ命令ノ定ムル期間内ニ其ノ鉱区ニ付砂鉱権設定ノ登録ヲ申請スヘシ其ノ登録アリタルトキハ鉱業権ノ上ニ現ニ存スル権利義務ハ砂鉱権ノ上ニ存続ス
前項ノ鉱業権ニ関シテハ砂鉱権ノ登録アル迄仍鉱業法ヲ適用ス
第一項ノ鉱業権ニシテ鉱業財団ヲ組成スルモノニ付テハ砂鉱権ノ登録アリタル後ト雖其ノ財団ノ関係ニ於テハ之ヲ鉱業権ト看做ス
第二十八条 本法施行前砂鉱採取法ニ依リ又ハ本法第一条第二項ノ砂金ニ関シ鉱業法ニ依リテ為シタル処分、手続其ノ他ノ行為ハ本法中之ニ相当スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ為シタルモノト看做ス
第二十九条 本法施行前砂鉱採取法ニ依リ又ハ本法第一条第二項ノ砂金ニ関シ鉱業法ニ依リテ為シタル処分ニ対スル訴願、訴訟、判定、裁定又ハ裁決ニ関シテハ各砂鉱採取法又ハ鉱業法ノ規定ニ依ル