第一條 此ノ法律ニ於テ砂鑛トハ砂金、砂錫及砂鐵ヲ謂フ
第二條 砂鑛ヲ採取セムト欲スル者ハ所轄鑛山監督署長ヲ經由シ農商務大臣ノ許可ヲ受クヘシ
第三條 帝國臣民ニ非サレハ採取人トナリ又ハ採取業ニ關スル組合員又ハ會社員トナルコトヲ得ス
採取人未成年、瘋癲、白痴又ハ瘖瘂ナルトキハ後見人ヲ立ツヘシ
農商務省鑛山局及鑛山監督署ノ官吏ハ在職中採取人トナリ又ハ採取業ニ關スル組合員又ハ會社員トナルコトヲ得ス
第四條 採取區域內ノ土地他人ノ所有ニ係ルトキハ所有者又ハ關係人ノ承諾ヲ受クヘシ
土地所有者又ハ關係人ハ自ラ採取ヲ出願スルトキノ外前項ノ承諾ヲ拒ムコトヲ得ス但シ承諾ヲ與フルトキハ相當ノ砂鑛採取料ヲ要求スルコトヲ得
第五條 採取ノ事業公益ヲ害スト認ムルトキハ農商務大臣ハ其ノ出願ヲ許可セス
第六條 採取ノ事業公益ニ害アルトキハ農商務大臣ハ既ニ與ヘタル許可ヲ取消スコトヲ得
第七條 採取業上ニ危險ノ虞アリ又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ所轄鑛山監督署長ハ採取人ニ其ノ豫防ヲ命シ又ハ採取業ヲ停止スヘシ
所轄鑛山監督署長ニ於テ採取業ヲ停止セムトスルトキハ其ノ猶豫シ難キ場合ヲ除クノ外ハ農商務大臣ノ認可ヲ經ヘシ
採取業ヲ停止シタル後其ノ事故止ミタルトキハ所轄鑛山監督署長ハ其ノ停止ヲ解クヘシ
第八條 採取人前條ニ依リ命セラレタル豫防ヲ怠ルトキハ農商務大臣ハ既ニ與ヘタル許可ヲ取消スコトヲ得
第九條 採取人正當ノ理由ナクシテ一箇年以上休業シ又ハ採取ノ許可ヲ受ケタル日ヨリ一箇年以內ニ採取ニ著手セサルトキハ農商務大臣ハ其ノ許可ヲ取消スコトヲ得
第十條 詐僞又ハ錯誤ニ由リ採取ノ許可ヲ得タルコトヲ發見シタルトキハ農商務大臣ハ其ノ許可ヲ取消スヘシ若其ノ許可ニ付利害ノ關係ヲ有スル者ニ於テ之ヲ發見シタルトキハ許可ノ日ヨリ三十日以內ニ其ノ許可ノ取消ヲ農商務大臣ニ請求スルコトヲ得
第十一條 第六條第八條第九條及第十條ノ處分ニ不服アルトキハ其ノ達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十二條 採取許可取消ノ處分ヲ受ケタル採取人ハ同一區域ニ付一箇年間採取ノ出願ヲ爲スコトヲ得ス
第十三條 左ノ場合ニ於テ採取人他人ノ土地ヲ使用スルコトヲ必要トシ其ノ貸渡ヲ請求シタルトキハ其ノ土地所有者又ハ關係人ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第十四條 採取人ハ使用スル土地ニ對シ其ノ土地所有者ニ相當ノ借地料ヲ仕拂フヘシ
其ノ質入トナリタル土地ニ對スル借地料ハ質取主ニ於テ之ヲ受領スルモノトス
土地使用ニ依リ貸渡人又ハ關係人ニ損害ヲ加フルトキハ採取人ハ之ニ對シ相當ノ賠償ヲ爲スヘシ
第十五條 採取人借地料ノ仕拂ヲ延滯シタルトキハ土地所有者ハ其ノ土地ヲ取戾スコトヲ得
第十六條 第十三條ノ場合ニ於テ採取人五箇年以上土地ヲ使用スルトキハ其ノ土地所有者ハ土地ノ買取ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ採取人ハ其ノ買取ヲ拒ムコトヲ得ス
第十七條 採取人ノ請求ニ依リ土地ヲ分割シテ賣渡シ又ハ貸渡シタルカ爲殘地ノ利用ヲ害スルトキハ土地所有者ハ採取人ニ對シ其ノ土地全部ノ買取若ハ借受ヲ請求スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ採取人ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第十八條 土地所有者又ハ關係人ト採取人トノ間ニ於テ土地貸渡、採取料、借地料、損害賠償金又ハ土地賣買代金ニ付協議調ハサルトキハ所轄鑛山監督署長ニ其ノ判定ヲ請求スルコトヲ得
所轄鑛山監督署長ノ判定ニ不服アルトキハ其ノ判定ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ土地貸渡ニ就テハ農商務大臣ニ其ノ裁定ヲ請求シ採取料、借地料、損害賠償金若ハ土地賣買代金ニ就テハ裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項農商務大臣ノ裁定ニ對シテハ他ニ出訴スルコトヲ得ス
第十九條 所轄鑛山監督署長ノ判定又ハ農商務大臣ノ裁定請求ノ爲ニ要スル費用ハ民事訴訟費用ノ例ニ依リ負擔スヘキモノトス
第二十條 採取人ハ土地所有者又ハ關係人ニ於テ所轄鑛山監督署長ノ判定シタル採取料、借地料、損害賠償金又ハ土地賣買代金ニ不服アルモ其ノ金額ヲ土地所有者又ハ關係人ニ渡シ若之ヲ受ケサルトキハ其ノ金額ヲ供託所ニ預置キ土地ヲ使用スルコトヲ得
第二十一條 許可ヲ得スシテ採取ヲ爲シタル者又ハ詐僞ニ由リテ許可ヲ得タル者ハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス