朕北海道廳官制改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年四月十八日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
內務大臣 子爵 芳川顯正
勅令第百三十九號
北海道廳官制
第一條 北海道廳ニ左ノ職員ヲ置ク
長官
事務官
支廳長
警視
技師
視學
警部
技手
通譯
第二條 長官ハ勅任トス
第三條 事務官ハ七人奏判トス但シ第一部長ニ充ツル事務官ハ勅任ト爲スコトヲ得
第四條 支廳長ハ奏任トス
第五條 警視ハ專任九人奏任トス
第六條 技師ハ專任十五人ヲ以テ定員トス
第七條 屬、視學、警部及通譯ハ判任トス
屬、警部ハ通シテ四百人、視學ハ八人、技手ハ百十五人、通譯ハ二人ヲ以テ定員トス
第八條 前各條ノ定員ノ外農事試驗ニ關スル職員ヲ置ク其ノ定員ハ專任技師三人及專任技手二人トス
第九條 長官ハ內務大臣ノ指揮監督ヲ承ケ各省ノ主務ニ付テハ各省大臣ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ執行シ北海道ノ拓地殖民ノ事務及部內ノ行政事務ヲ總理ス
第十條 長官ハ北海道ノ事務ニ付其ノ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ管內一般又ハ其ノ一部ニ廳令ヲ發スルコトヲ得
第十一條 長官ハ非常急變ノ場合ニ臨ミ兵力ヲ要シ又ハ警護ノ爲兵備ヲ要スルトキハ師團長ニ移牒シ出兵ヲ請フコトヲ得
第十二條 長官ハ所部ノ官吏ヲ指揮監督シ高等官ノ功過ハ內務大臣ニ具狀シ判任官以下ノ進退ハ之ヲ行フ
第十三條 長官ハ所部ノ高等官ノ懲戒ヲ內務大臣ニ具狀シ判任官以下ニ付テハ之ヲ行フ
第十四條 長官ハ支廳長ノ處分又ハ命令ノ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ權限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ處分又ハ命令ヲ取消シ又ハ停止スルコトヲ得
長官ハ行政事務ニ付其ノ部內ノ區長ヲ指揮監督シ其ノ處分ニ付テハ前項ノ例ニ依ル
第十五條 長官ハ廳中處務ノ細則ヲ設クルコトヲ得
第十六條 長官事故アルトキハ第一部長タル事務官其ノ職務ヲ代理ス
長官及第一部長タル事務官共ニ事故アルトキハ內務大臣ニ於テ他ノ事務官ノ一人ヲシテ長官ノ職務ヲ代理セシム
長官ハ道廳ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十七條 長官ハ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ支廳長又ハ區長ニ委任スルコトヲ得
第十八條 北海道廳ニ長官官房ヲ置キ左ノ事務ヲ掌ラシム
一 官吏ノ進退及身分ニ關スル事項
二 文書ノ往復及記錄編纂ニ關スル事項
三 官印廳印ノ管守ニ關スル事項
四 褒賞ニ關スル事項
第十九條 道廳ニ部ヲ置キ事務ヲ分掌セシムルコト左ノ如シ
第一部
一 支廳、戶長役場、郡町村總代人及區町村其ノ他公共組合ニ關スル事項
二 議員選擧、北海道會及北海道地方費ニ關スル事項
三 賑恤救濟ニ關スル事項
四 道廳ニ屬スル國庫費ノ會計ニ關スル事項
五 地方費經濟ニ屬スル收支出納ニ關スル事項
六 道廳所管ノ官有財產及物品ニ關スル事項
七 地方費經濟ニ屬スル財產及物品ニ關スル事項
八 外國人ニ關スル事項
九 他ノ主掌ニ屬セサル事項
第二部
一 敎育學藝ニ關スル事項
二 學事ノ視察ニ關スル事項
三 兵事ニ關スル事項
四 社寺及宗敎ニ關スル事項
五 民籍ニ關スル事項
第三部
一 農工商ニ關スル事項
二 水產漁獵ニ關スル事項
三 度量衡ニ關スル事項
第四部
一 高等警察ニ關スル事項
二 行政警察ニ關スル事項
三 衞生ニ關スル事項
第五部
一 殖民地ノ選定經畫其ノ他殖民ニ關スル事項
二 土地ノ處分及開墾ニ關スル事項
三 地籍ニ關スル事項
四 官有地管理ニ關スル事項
五 土地收用ニ關スル事項
六 森林原野ニ關スル事項
第六部
一 土木ニ關スル事項
二 水陸運輸ニ關スル事項
三 水面埋立ニ關スル事項
第二十條 部長ハ事務官ヲ以テ之ニ充ツ長官ノ命ヲ承ケ部下ノ官吏ヲ指揮監督シ所部ノ事務ヲ掌理ス
第二十一條 部長事故アルトキハ長官ニ於テ道廳官吏ノ一人ヲシテ其ノ事務ヲ代理セシム
第二十二條 第一部長タル事務官ハ長官ヲ佐ケ廳務ヲ整理シ各部ノ事務ヲ監督ス
第二十三條 部長ニ充テラレサル事務官ハ長官ノ命ヲ承ケ事務ヲ分掌ス
長官ハ事務官ノ一人ヲシテ審議立案ヲ掌ラシムルコトヲ得
第二十四條 道廳ニ警務長ヲ置キ第四部長タル事務官ヲ以テ之ニ充ツ
警務長ハ警察事務ノ執行ニ關シ長官ノ命ヲ承ケ警視、警部及巡査ヲ指揮監督ス
第二十五條 支廳長ハ長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ部內ニ執行シ部內ノ行政事務ヲ掌理シ部下ノ官吏ヲ指揮監督ス
第二十六條 支廳長ハ行政事務ニ付其ノ部內ノ町村長及戶長ヲ指揮監督ス
第二十七條 支廳長ハ町村長及戶長ノ處分成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ權限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ處分ヲ取消シ又ハ停止スルコトヲ得
第二十八條 支廳長ハ法律命令ニ依リ又ハ長官ヨリ委任セラレタル事件ニ付支廳令ヲ發スルコトヲ得
第二十九條 支廳長事故アルトキハ其ノ廳勤務ノ上席屬其ノ職務ヲ代理ス
第三十條 支廳長ハ其ノ廳ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第三十一條 警視ハ第四部ニ屬シ又ハ警察署長ト爲リ上官ノ指揮ヲ承ケ其ノ部署ノ事務ヲ掌理ス
第三十二條 各部ニ分課ヲ設クルコトヲ要スルトキハ長官之ヲ定メ內務大臣ニ報吿スヘシ
第三十三條 屬ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第三十四條 視學ハ上官ノ指揮ヲ承ケ學事ノ視察其ノ他學事ニ關スル庶務ニ從事ス
第三十五條 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察事務ヲ分掌シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第三十六條 通譯ハ上官ノ指揮ヲ承ケ翻譯通辯ニ從事ス
第三十七條 管內須要ノ地ニ道廳支廳ヲ置ク其ノ位置、名稱及管轄區域ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條 各郡區ニ警察署ヲ置ク但シ地方ノ必要ニ應シ別ニ區域ヲ定メテ警察署ヲ置クコトヲ得
長官必要アリト認ムルトキハ警察署ノ下ニ警察分署ヲ置クコトヲ得
警察署及警察分署ノ位置、名稱及管轄區域ハ長官之ヲ定ム
第三十九條 警察署長ハ警視ヲ以テ充ツル場合ヲ除クノ外警部ヲ以テ之ニ充テ警察分署長ハ警部ヲ以テ之ニ充ツ
警察署長及警察分署長ハ上官ノ指揮ヲ承ケ其ノ署主管ノ事務ヲ掌理シ部下ノ官吏ヲ指揮監督ス
第四十條 北海道廳ニ巡査ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査ニ關スル規程ハ別ニ定ムル所ニ依ル
附 則
從前ノ法律命令ニ於テ北海道郡區長ノ管掌ニ屬シタル事項ハ北海道廳支廳長ニ於テ處理スヘキモノトス
從前郡區長ノ兼掌シタル戶長ノ事務ハ支廳長ニ於テ之ヲ其ノ廳在勤屬ニ委任スルコトヲ得
北海道廳支廳長ノ發スル支廳令ニハ明治二十六年勅令第百九十九號中郡令ニ關スル規程ヲ適用ス
朕北海道庁官制改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年四月十八日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
内務大臣 子爵 芳川顕正
勅令第百三十九号
北海道庁官制
第一条 北海道庁ニ左ノ職員ヲ置ク
長官
事務官
支庁長
警視
技師
視学
警部
技手
通訳
第二条 長官ハ勅任トス
第三条 事務官ハ七人奏判トス但シ第一部長ニ充ツル事務官ハ勅任ト為スコトヲ得
第四条 支庁長ハ奏任トス
第五条 警視ハ専任九人奏任トス
第六条 技師ハ専任十五人ヲ以テ定員トス
第七条 属、視学、警部及通訳ハ判任トス
属、警部ハ通シテ四百人、視学ハ八人、技手ハ百十五人、通訳ハ二人ヲ以テ定員トス
第八条 前各条ノ定員ノ外農事試験ニ関スル職員ヲ置ク其ノ定員ハ専任技師三人及専任技手二人トス
第九条 長官ハ内務大臣ノ指揮監督ヲ承ケ各省ノ主務ニ付テハ各省大臣ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ執行シ北海道ノ拓地殖民ノ事務及部内ノ行政事務ヲ総理ス
第十条 長官ハ北海道ノ事務ニ付其ノ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ管内一般又ハ其ノ一部ニ庁令ヲ発スルコトヲ得
第十一条 長官ハ非常急変ノ場合ニ臨ミ兵力ヲ要シ又ハ警護ノ為兵備ヲ要スルトキハ師団長ニ移牒シ出兵ヲ請フコトヲ得
第十二条 長官ハ所部ノ官吏ヲ指揮監督シ高等官ノ功過ハ内務大臣ニ具状シ判任官以下ノ進退ハ之ヲ行フ
第十三条 長官ハ所部ノ高等官ノ懲戒ヲ内務大臣ニ具状シ判任官以下ニ付テハ之ヲ行フ
第十四条 長官ハ支庁長ノ処分又ハ命令ノ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ処分又ハ命令ヲ取消シ又ハ停止スルコトヲ得
長官ハ行政事務ニ付其ノ部内ノ区長ヲ指揮監督シ其ノ処分ニ付テハ前項ノ例ニ依ル
第十五条 長官ハ庁中処務ノ細則ヲ設クルコトヲ得
第十六条 長官事故アルトキハ第一部長タル事務官其ノ職務ヲ代理ス
長官及第一部長タル事務官共ニ事故アルトキハ内務大臣ニ於テ他ノ事務官ノ一人ヲシテ長官ノ職務ヲ代理セシム
長官ハ道庁ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十七条 長官ハ其ノ職権ニ属スル事務ノ一部ヲ支庁長又ハ区長ニ委任スルコトヲ得
第十八条 北海道庁ニ長官官房ヲ置キ左ノ事務ヲ掌ラシム
一 官吏ノ進退及身分ニ関スル事項
二 文書ノ往復及記録編纂ニ関スル事項
三 官印庁印ノ管守ニ関スル事項
四 褒賞ニ関スル事項
第十九条 道庁ニ部ヲ置キ事務ヲ分掌セシムルコト左ノ如シ
第一部
一 支庁、戸長役場、郡町村総代人及区町村其ノ他公共組合ニ関スル事項
二 議員選挙、北海道会及北海道地方費ニ関スル事項
三 賑恤救済ニ関スル事項
四 道庁ニ属スル国庫費ノ会計ニ関スル事項
五 地方費経済ニ属スル収支出納ニ関スル事項
六 道庁所管ノ官有財産及物品ニ関スル事項
七 地方費経済ニ属スル財産及物品ニ関スル事項
八 外国人ニ関スル事項
九 他ノ主掌ニ属セサル事項
第二部
一 教育学芸ニ関スル事項
二 学事ノ視察ニ関スル事項
三 兵事ニ関スル事項
四 社寺及宗教ニ関スル事項
五 民籍ニ関スル事項
第三部
一 農工商ニ関スル事項
二 水産漁猟ニ関スル事項
三 度量衡ニ関スル事項
第四部
一 高等警察ニ関スル事項
二 行政警察ニ関スル事項
三 衛生ニ関スル事項
第五部
一 殖民地ノ選定経画其ノ他殖民ニ関スル事項
二 土地ノ処分及開墾ニ関スル事項
三 地籍ニ関スル事項
四 官有地管理ニ関スル事項
五 土地収用ニ関スル事項
六 森林原野ニ関スル事項
第六部
一 土木ニ関スル事項
二 水陸運輸ニ関スル事項
三 水面埋立ニ関スル事項
第二十条 部長ハ事務官ヲ以テ之ニ充ツ長官ノ命ヲ承ケ部下ノ官吏ヲ指揮監督シ所部ノ事務ヲ掌理ス
第二十一条 部長事故アルトキハ長官ニ於テ道庁官吏ノ一人ヲシテ其ノ事務ヲ代理セシム
第二十二条 第一部長タル事務官ハ長官ヲ佐ケ庁務ヲ整理シ各部ノ事務ヲ監督ス
第二十三条 部長ニ充テラレサル事務官ハ長官ノ命ヲ承ケ事務ヲ分掌ス
長官ハ事務官ノ一人ヲシテ審議立案ヲ掌ラシムルコトヲ得
第二十四条 道庁ニ警務長ヲ置キ第四部長タル事務官ヲ以テ之ニ充ツ
警務長ハ警察事務ノ執行ニ関シ長官ノ命ヲ承ケ警視、警部及巡査ヲ指揮監督ス
第二十五条 支庁長ハ長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ部内ニ執行シ部内ノ行政事務ヲ掌理シ部下ノ官吏ヲ指揮監督ス
第二十六条 支庁長ハ行政事務ニ付其ノ部内ノ町村長及戸長ヲ指揮監督ス
第二十七条 支庁長ハ町村長及戸長ノ処分成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ処分ヲ取消シ又ハ停止スルコトヲ得
第二十八条 支庁長ハ法律命令ニ依リ又ハ長官ヨリ委任セラレタル事件ニ付支庁令ヲ発スルコトヲ得
第二十九条 支庁長事故アルトキハ其ノ庁勤務ノ上席属其ノ職務ヲ代理ス
第三十条 支庁長ハ其ノ庁ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第三十一条 警視ハ第四部ニ属シ又ハ警察署長ト為リ上官ノ指揮ヲ承ケ其ノ部署ノ事務ヲ掌理ス
第三十二条 各部ニ分課ヲ設クルコトヲ要スルトキハ長官之ヲ定メ内務大臣ニ報告スヘシ
第三十三条 属ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第三十四条 視学ハ上官ノ指揮ヲ承ケ学事ノ視察其ノ他学事ニ関スル庶務ニ従事ス
第三十五条 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察事務ヲ分掌シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第三十六条 通訳ハ上官ノ指揮ヲ承ケ翻訳通弁ニ従事ス
第三十七条 管内須要ノ地ニ道庁支庁ヲ置ク其ノ位置、名称及管轄区域ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八条 各郡区ニ警察署ヲ置ク但シ地方ノ必要ニ応シ別ニ区域ヲ定メテ警察署ヲ置クコトヲ得
長官必要アリト認ムルトキハ警察署ノ下ニ警察分署ヲ置クコトヲ得
警察署及警察分署ノ位置、名称及管轄区域ハ長官之ヲ定ム
第三十九条 警察署長ハ警視ヲ以テ充ツル場合ヲ除クノ外警部ヲ以テ之ニ充テ警察分署長ハ警部ヲ以テ之ニ充ツ
警察署長及警察分署長ハ上官ノ指揮ヲ承ケ其ノ署主管ノ事務ヲ掌理シ部下ノ官吏ヲ指揮監督ス
第四十条 北海道庁ニ巡査ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査ニ関スル規程ハ別ニ定ムル所ニ依ル
附 則
従前ノ法律命令ニ於テ北海道郡区長ノ管掌ニ属シタル事項ハ北海道庁支庁長ニ於テ処理スヘキモノトス
従前郡区長ノ兼掌シタル戸長ノ事務ハ支庁長ニ於テ之ヲ其ノ庁在勤属ニ委任スルコトヲ得
北海道庁支庁長ノ発スル支庁令ニハ明治二十六年勅令第百九十九号中郡令ニ関スル規程ヲ適用ス