朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル北海道會法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年三月二十七日
內閣總理大臣 侯爵 伊藤博文
大藏大臣 子爵 渡邊國武
內務大臣 文學博士 男爵 末松謙澄
法律第二號
北海道會法
第一條 北海道會ハ各選擧區ヨリ選擧スル議員ヲ以テ之ヲ組織ス
選擧區、議員定數及各選擧區ヨリ選出スヘキ議員ノ數ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 北海道會議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ三年トス
第三條 議員中定員三分ノ一以上闕員アルトキハ三箇月以內ニ補闕選擧ヲ行フヘシ
闕員定員ノ三分ノ一以下ノ場合ト雖內務大臣又ハ北海道廳長官ニ於テ臨時補闕ヲ必要ト認ムルトキハ其ノ補闕選擧ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
第四條 帝國臣民タル男子年齡滿二十五年以上ニシテ北海道內ニ三年以來住所ヲ有シ且北海道內ニ於テ三年以來直接國稅年額三圓以上ヲ納ムル者若ハ北海道內ニ於テ三年以來土地四町步以上ヲ所有スル者ハ北海道會議員ノ選擧權ヲ有ス
帝國臣民タル男子年齡滿二十五年以上ニシテ北海道內ニ三年以來住所ヲ有シ且北海道內ニ於テ三年以來直接國稅年額十圓以上ヲ納ムル者若ハ北海道內ニ於テ三年以來土地十五町步以上ヲ所有スル者ハ北海道會議員ノ被選擧權ヲ有ス
家督相續ニ因リ財產ヲ取得シタル者ハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト看做ス
家督相續ニ因リ土地ヲ取得シタルトキハ被相續人ノ所有シタル期間ヲ相續人ノ所有シタル期間ニ通算ス
土地所有ノ期間ハ所有權ノ登記ヲ爲シタル日ヨリ之ヲ起算ス
本條ニ於テ土地ト稱スルハ耕地、宅地及海產干場ヲ謂フ
第五條 左ニ揭クル者ハ選擧權及被選擧權ヲ有セス
一 禁治產者及準禁治產者
二 身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨償ヲ終ヘサル者及家資分散又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
三 剝奪公權者及停止公權者
四 禁錮以上ノ刑ノ宣吿ヲ受ケタルトキヨリ其ノ裁判確定ニ至ル迄ノ者
五 租稅滯納處分中ノ者
六 公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後三年ヲ經サル者
第六條 陸海軍軍人ニシテ現役中ノ者及戰時若ハ事變ニ際シ召集中ノ者又ハ官立公立私立學校ノ學生生徒亦前條ニ同シ
第七條 左ニ揭クル者ハ北海道會議員ノ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサル者亦同シ
一 北海道廳ノ官吏
二 檢事、警察官吏及收稅官吏
三 神官、神職、僧侶其ノ他諸宗敎師
四 小學校敎員
前項ノ外ノ官吏ニシテ當選シ之ニ應セムトスルトキハ所屬長官ノ許可ヲ受クヘシ
選擧事務ニ關係アル官吏吏員ハ其ノ關係區域內ニ於テ被選擧權ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサル者亦同シ
北海道廳ノ爲請負ヲ爲ス者又ハ北海道廳ノ爲請負ヲ爲ス法人ノ役員ハ北海道會議員ノ被選擧權ヲ有セス
北海道會議員ハ衆議院議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第八條 北海道會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選擧權ノ有無ハ北海道廳長官之ヲ決定シ及之ヲ吿示ス
前項北海道廳長官ノ決定ヲ違法ナリトスル者ハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
北海道會議員ハ其ノ被選擧權ヲ有セストスル決定確定シ又ハ判決アル迄ハ其ノ職ヲ失ハス
第九條 北海道會議員ノ選擧ニ關シ本法ニ規定ナキ事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十條 北海道會ハ法律勅令ニ別段ノ規定アルモノノ外北海道地方費ノ歲入出豫算及北海道地方稅ノ課目課率ヲ議決ス
北海道地方費ノ決算ハ年度終了後第二次ノ通常會ニ報吿スヘシ
第十一條 北海道廳長官ハ北海道會ノ議決ニ付スヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發ス
第十二條 北海道會ノ權限ニ屬スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ北海道廳長官ハ專決處分シ次ノ會期ニ於テ其ノ處分ヲ北海道會ニ報吿スヘシ
第十三條 北海道會ノ權限ニ屬スル事項ハ其ノ議決ニ依リ北海道廳長官ニ於テ之ヲ專決處分スルコトヲ得
第十四條 府縣制第四十條、第四十四條乃至第六十四條、第八十二條乃至第八十五條、第九十四條、第九十六條、第百二十八條及第百三十一條ノ規定ハ之ヲ本法ニ準用ス但シ其ノ規定中府縣參事會ノ職務ハ北海道廳長官之ヲ行フ
第十五條 本法ニ定ムル直接國稅ノ種類ハ內務大臣及大藏大臣之ヲ吿示ス
第十六條 島嶼ニ關シ本法ノ規定ヲ適用シ難キモノハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
附 則
第十七條 本法ハ明治三十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八條 本法施行後三箇年間ハ第四條第一項及第二項ノ要件中納稅及土地所有ニ關スル三年ノ制限ハ之ヲ一年トス
第十九條 本法施行ノ際北海道會ノ權限ニ屬スル事項ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間北海道廳長官之ヲ行フ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル北海道会法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年三月二十七日
内閣総理大臣 侯爵 伊藤博文
大蔵大臣 子爵 渡辺国武
内務大臣 文学博士 男爵 末松謙澄
法律第二号
北海道会法
第一条 北海道会ハ各選挙区ヨリ選挙スル議員ヲ以テ之ヲ組織ス
選挙区、議員定数及各選挙区ヨリ選出スヘキ議員ノ数ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 北海道会議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ三年トス
第三条 議員中定員三分ノ一以上闕員アルトキハ三箇月以内ニ補闕選挙ヲ行フヘシ
闕員定員ノ三分ノ一以下ノ場合ト雖内務大臣又ハ北海道庁長官ニ於テ臨時補闕ヲ必要ト認ムルトキハ其ノ補闕選挙ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ残任期間在任ス
第四条 帝国臣民タル男子年齢満二十五年以上ニシテ北海道内ニ三年以来住所ヲ有シ且北海道内ニ於テ三年以来直接国税年額三円以上ヲ納ムル者若ハ北海道内ニ於テ三年以来土地四町歩以上ヲ所有スル者ハ北海道会議員ノ選挙権ヲ有ス
帝国臣民タル男子年齢満二十五年以上ニシテ北海道内ニ三年以来住所ヲ有シ且北海道内ニ於テ三年以来直接国税年額十円以上ヲ納ムル者若ハ北海道内ニ於テ三年以来土地十五町歩以上ヲ所有スル者ハ北海道会議員ノ被選挙権ヲ有ス
家督相続ニ因リ財産ヲ取得シタル者ハ其ノ財産ニ付被相続人ノ為シタル納税ヲ以テ其ノ者ノ納税シタルモノト看做ス
家督相続ニ因リ土地ヲ取得シタルトキハ被相続人ノ所有シタル期間ヲ相続人ノ所有シタル期間ニ通算ス
土地所有ノ期間ハ所有権ノ登記ヲ為シタル日ヨリ之ヲ起算ス
本条ニ於テ土地ト称スルハ耕地、宅地及海産干場ヲ謂フ
第五条 左ニ掲クル者ハ選挙権及被選挙権ヲ有セス
一 禁治産者及準禁治産者
二 身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁償ヲ終ヘサル者及家資分散又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復権ノ決定確定スルニ至ル迄ノ者
三 剥奪公権者及停止公権者
四 禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキヨリ其ノ裁判確定ニ至ル迄ノ者
五 租税滞納処分中ノ者
六 公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後三年ヲ経サル者
第六条 陸海軍軍人ニシテ現役中ノ者及戦時若ハ事変ニ際シ召集中ノ者又ハ官立公立私立学校ノ学生生徒亦前条ニ同シ
第七条 左ニ掲クル者ハ北海道会議員ノ被選挙権ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ経過セサル者亦同シ
一 北海道庁ノ官吏
二 検事、警察官吏及収税官吏
三 神官、神職、僧侶其ノ他諸宗教師
四 小学校教員
前項ノ外ノ官吏ニシテ当選シ之ニ応セムトスルトキハ所属長官ノ許可ヲ受クヘシ
選挙事務ニ関係アル官吏吏員ハ其ノ関係区域内ニ於テ被選挙権ヲ有セス其ノ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ経過セサル者亦同シ
北海道庁ノ為請負ヲ為ス者又ハ北海道庁ノ為請負ヲ為ス法人ノ役員ハ北海道会議員ノ被選挙権ヲ有セス
北海道会議員ハ衆議院議員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第八条 北海道会議員ニシテ被選挙権ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選挙権ノ有無ハ北海道庁長官之ヲ決定シ及之ヲ告示ス
前項北海道庁長官ノ決定ヲ違法ナリトスル者ハ行政訴訟ヲ提起スルコトヲ得
北海道会議員ハ其ノ被選挙権ヲ有セストスル決定確定シ又ハ判決アル迄ハ其ノ職ヲ失ハス
第九条 北海道会議員ノ選挙ニ関シ本法ニ規定ナキ事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十条 北海道会ハ法律勅令ニ別段ノ規定アルモノノ外北海道地方費ノ歳入出予算及北海道地方税ノ課目課率ヲ議決ス
北海道地方費ノ決算ハ年度終了後第二次ノ通常会ニ報告スヘシ
第十一条 北海道庁長官ハ北海道会ノ議決ニ付スヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ発ス
第十二条 北海道会ノ権限ニ属スル事件ニシテ臨時急施ヲ要シ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ北海道庁長官ハ専決処分シ次ノ会期ニ於テ其ノ処分ヲ北海道会ニ報告スヘシ
第十三条 北海道会ノ権限ニ属スル事項ハ其ノ議決ニ依リ北海道庁長官ニ於テ之ヲ専決処分スルコトヲ得
第十四条 府県制第四十条、第四十四条乃至第六十四条、第八十二条乃至第八十五条、第九十四条、第九十六条、第百二十八条及第百三十一条ノ規定ハ之ヲ本法ニ準用ス但シ其ノ規定中府県参事会ノ職務ハ北海道庁長官之ヲ行フ
第十五条 本法ニ定ムル直接国税ノ種類ハ内務大臣及大蔵大臣之ヲ告示ス
第十六条 島嶼ニ関シ本法ノ規定ヲ適用シ難キモノハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
附 則
第十七条 本法ハ明治三十四年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第十八条 本法施行後三箇年間ハ第四条第一項及第二項ノ要件中納税及土地所有ニ関スル三年ノ制限ハ之ヲ一年トス
第十九条 本法施行ノ際北海道会ノ権限ニ属スル事項ニシテ急施ヲ要スルモノハ其ノ成立ニ至ル迄ノ間北海道庁長官之ヲ行フ