朕銀行條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十四年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年八月二十三日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
大藏大臣 伯爵 松方正義
法律第七十二號
銀行條例
第一條 公ニ開キタル店舖ニ於テ營業トシテ證券ノ割引ヲ爲シ又ハ爲替事業ヲ爲シ又ハ諸預リ及貸付ヲ併セ爲ス者ハ何等ノ名稱ヲ用井ルニ拘ラス總テ銀行トス
第二條 銀行ノ事業ヲ營マントスル者ハ其資本金額ヲ定メ地方長官ヲ經由シテ大藏大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三條 銀行ハ每半箇年營業ノ報吿書ヲ製シ地方長官ヲ經由シテ大藏大臣ニ送付スヘシ
第四條 銀行ハ每半箇年財產目錄貸借對照表ヲ製シ新聞紙其他ノ方法ヲ以テ之ヲ公吿スヘシ
第五條 銀行ハ一人又ハ一會社ニ對シ資本金高ノ十分ノ一ヲ超過スル金額ヲ貸付又ハ割引ノ爲ニ使用スルコトヲ得ス
資本金總額ノ拂込ヲ了ラサル銀行ニ於テハ一人又ハ一會社ニ對シ其拂込高ノ十分ノ一ヲ超過スル金額ヲ貸付又ハ割引ノ爲ニ使用スルコトヲ得ス
第六條 銀行ノ營業時間ハ午前第十時ヨリ午後第四時マテトス但營業ノ都合ニ依リ之ヲ增加スルコトヲ得
第七條 銀行ノ休日ハ大祭日、祝日、日曜日及銀行營業地ニ行ハルヽ定例ノ休日トス但止ヲ得サル事故アルトキハ地方長官ニ屆出テ豫メ新聞紙其他ノ方法ヲ以テ公吿シタル上休業スルコトヲ得
第八條 大藏大臣ハ何時タリトモ地方長官又ハ其他ノ官吏ニ命シテ銀行ノ業務ノ實況及財產ノ現況ヲ檢査セシムルコトヲ得
第九條 第二條ノ規定ニ違反シ大藏大臣ノ認可ヲ受ケスシテ銀行ノ事業ヲ營ミタル者ハ商法第二百五十六條ノ例ニ依テ處分ス
第十條 銀行ニ於テ第三條ノ報吿若ハ第四條ノ公吿ヲ爲サス又ハ其報吿中若ハ公吿中ニ詐僞ノ陳述ヲ爲シ若ハ事實ヲ隱蔽シタルトキハ商法第二百六十二條ノ例ニ依テ處分ス
第八條ノ檢査ヲ受ルコトヲ拒ミタルトキハ商法第二百五十八條ノ例ニ依テ處分ス
第十一條 此條例ハ日本銀行橫濱正金銀行國立銀行ニ適用セス
朕銀行条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十四年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年八月二十三日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
大蔵大臣 伯爵 松方正義
法律第七十二号
銀行条例
第一条 公ニ開キタル店舗ニ於テ営業トシテ証券ノ割引ヲ為シ又ハ為替事業ヲ為シ又ハ諸預リ及貸付ヲ併セ為ス者ハ何等ノ名称ヲ用井ルニ拘ラス総テ銀行トス
第二条 銀行ノ事業ヲ営マントスル者ハ其資本金額ヲ定メ地方長官ヲ経由シテ大蔵大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第三条 銀行ハ毎半箇年営業ノ報告書ヲ製シ地方長官ヲ経由シテ大蔵大臣ニ送付スヘシ
第四条 銀行ハ毎半箇年財産目録貸借対照表ヲ製シ新聞紙其他ノ方法ヲ以テ之ヲ公告スヘシ
第五条 銀行ハ一人又ハ一会社ニ対シ資本金高ノ十分ノ一ヲ超過スル金額ヲ貸付又ハ割引ノ為ニ使用スルコトヲ得ス
資本金総額ノ払込ヲ了ラサル銀行ニ於テハ一人又ハ一会社ニ対シ其払込高ノ十分ノ一ヲ超過スル金額ヲ貸付又ハ割引ノ為ニ使用スルコトヲ得ス
第六条 銀行ノ営業時間ハ午前第十時ヨリ午後第四時マテトス但営業ノ都合ニ依リ之ヲ増加スルコトヲ得
第七条 銀行ノ休日ハ大祭日、祝日、日曜日及銀行営業地ニ行ハルヽ定例ノ休日トス但止ヲ得サル事故アルトキハ地方長官ニ届出テ予メ新聞紙其他ノ方法ヲ以テ公告シタル上休業スルコトヲ得
第八条 大蔵大臣ハ何時タリトモ地方長官又ハ其他ノ官吏ニ命シテ銀行ノ業務ノ実況及財産ノ現況ヲ検査セシムルコトヲ得
第九条 第二条ノ規定ニ違反シ大蔵大臣ノ認可ヲ受ケスシテ銀行ノ事業ヲ営ミタル者ハ商法第二百五十六条ノ例ニ依テ処分ス
第十条 銀行ニ於テ第三条ノ報告若ハ第四条ノ公告ヲ為サス又ハ其報告中若ハ公告中ニ詐偽ノ陳述ヲ為シ若ハ事実ヲ隠蔽シタルトキハ商法第二百六十二条ノ例ニ依テ処分ス
第八条ノ検査ヲ受ルコトヲ拒ミタルトキハ商法第二百五十八条ノ例ニ依テ処分ス
第十一条 此条例ハ日本銀行横浜正金銀行国立銀行ニ適用セス