原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第40号
公布年月日: 平成26年5月21日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

東京電力福島第一原発の廃炉は、溶融燃料の取り出しや汚染水処理など、完了まで長期を要する困難な事業である。そのため、国が前面に出て、研究開発や技術指導、監視機能を強化する新体制の構築が必要となっている。廃炉と賠償の関連性を考慮し、東電に賠償円滑化のための資金援助を行い、経営を監督している原子力損害賠償支援機構が、福島第一原発の廃炉に関する技術支援等を総合的に行うことが適切である。このため、同機構を改組して事故炉の廃炉関係業務を追加し、廃炉を着実に進める体制を構築することを目的として本法律案を提出する。

参照した発言:
第186回国会 衆議院 経済産業委員会 第7号

審議経過

第186回国会

衆議院
(平成26年4月4日)
(平成26年4月9日)
(平成26年4月11日)
(平成26年4月16日)
(平成26年4月17日)
参議院
(平成26年4月18日)
(平成26年4月22日)
(平成26年4月24日)
(平成26年5月13日)
(平成26年5月14日)
原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十六年五月二十一日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第四十号
原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律
原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
原子力損害賠償・廃炉等支援機構法
目次中「第三章 運営委員会(第十四条―第二十二条)」を
第三章
運営委員会及び廃炉等技術委員会
第一節
運営委員会(第十四条―第二十二条)
第二節
廃炉等技術委員会(第二十二条の二―第二十二条の七)
に、「実施」を「実施等」に、「第五十五条」を「第五十五条の二」に改める。
第一条中「原子力損害賠償支援機構」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改め、「原子力事業者をいう。」の下に「以下この条及び」を、「確保を」の下に「図るとともに、原子力事業者が設置した発電用原子炉施設(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十三条の三の五第二項第五号に規定する発電用原子炉施設をいう。以下この条において同じ。)又は実用再処理施設(第三十八条第一項第二号に規定する実用再処理施設をいう。以下この条において同じ。)が原子炉等規制法第六十四条の二第一項の規定により特定原子力施設として指定された場合において、当該原子力事業者が廃炉等(当該指定に係る発電用原子炉施設に係る実用発電用原子炉(第三十八条第一項第一号に規定する実用発電用原子炉をいう。)の廃止(放射性物質によって汚染された水に係る措置を含む。)又は当該指定に係る実用再処理施設に係る再処理(原子炉等規制法第二条第十項に規定する再処理をいう。第三十八条第一項第二号において同じ。)の事業の廃止をいう。以下同じ。)を実施するために必要な技術に関する研究及び開発、助言、指導及び勧告その他の業務を行うことにより、廃炉等の適正かつ着実な実施の確保を」を加える。
第二条中「原子力損害賠償支援機構」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改め、同条に次の一項を加える。
2 国は、廃炉等に関し前項の措置を講ずるに当たっては、放射性物質によって汚染された水による環境への悪影響の防止その他の環境の保全について特に配慮しなければならない。
第三条及び第六条中「原子力損害賠償支援機構」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改める。
第十条第二項第五号中「運営委員会」の下に「及び廃炉等技術委員会」を加える。
第三章の章名を次のように改める。
第三章 運営委員会及び廃炉等技術委員会
第三章中第十四条の前に次の節名を付する。
第一節 運営委員会
第十六条第一項中「八人」を「十人」に改め、「理事長」の下に「、副理事長」を加える。
第二十条中「理事長」の下に「、副理事長」を加える。
第三章に次の一節を加える。
第二節 廃炉等技術委員会
(設置)
第二十二条の二 機構に、廃炉等技術委員会を置く。
(権限)
第二十二条の三 この法律で別に定めるもののほか、次に掲げる事項は、廃炉等技術委員会の議決を経なければならない。
一 廃炉等を実施するために必要な技術に関する研究及び開発に関する業務を実施するための方針(第三十六条の二において「廃炉等技術研究開発業務実施方針」という。)の作成又は変更
二 その他廃炉等技術委員会が特に必要と認める事項
(組織)
第二十二条の四 廃炉等技術委員会は、委員八人以内及び機構の役員(監事を除く。)のうちから理事長が指名する者四人以内をもって組織する。
2 廃炉等技術委員会に委員長一人を置き、委員のうちから、委員の互選によってこれを定める。
3 委員長は、廃炉等技術委員会の会務を総理する。
4 廃炉等技術委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第二十二条の五 委員は、原子力工学、土木工学その他の廃炉等を実施するために必要な技術に関して専門的な知識と経験を有する者のうちから、機構の理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。
(議決の方法)
第二十二条の六 廃炉等技術委員会は、委員長又は第二十二条の四第四項に規定する委員長の職務を代理する者のほか、委員及び同条第一項の規定により指名された者の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 廃炉等技術委員会の議事は、出席した委員及び第二十二条の四第一項の規定により指名された者の過半数をもって決する。可否同数のときは、委員長が決する。
(準用)
第二十二条の七 第十八条、第十九条、第二十一条及び第二十二条の規定は、廃炉等技術委員会の委員について準用する。
第二十三条中「理事長一人」の下に「、副理事長一人」を加え、「四人」を「六人」に改める。
第二十四条中第四項を第五項とし、第三項を第四項とし、同条第二項中「理事長を」を「理事長及び副理事長を」に、「に事故」を「及び副理事長に事故」に、「が欠員」を「及び副理事長が欠員」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 副理事長は、理事長の定めるところにより、機構を代表し、理事長を補佐して機構の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
第二十五条第二項中「理事は」を「副理事長及び理事は」に改める。
第三十条中「理事長」の下に「、副理事長」を、「の委員」の下に「、廃炉等技術委員会の委員」を加える。
第三十一条中「理事長」の下に「、副理事長」を加える。
第三十五条第四号中「前三号」を「前各号」に改め、同号を同条第七号とし、同条第三号の次に次の三号を加える。
四 廃炉等を実施するために必要な技術に関する研究及び開発
五 廃炉等の適正かつ着実な実施の確保を図るための助言、指導及び勧告
六 廃炉等に関する情報の提供
第三十五条の次に次の一条を加える。
(報告)
第三十五条の二 機構は、毎事業年度、主務省令で定めるところにより、廃炉等を実施するために必要な技術に関する研究及び開発の内容及び成果、助言、指導及び勧告の内容その他の廃炉等に係る業務の実施の状況について主務大臣に報告しなければならない。
2 主務大臣は、前項の報告を受けたときは、速やかに、これを公表しなければならない。
第三十六条の次に次の一条を加える。
(廃炉等技術研究開発業務実施方針)
第三十六条の二 機構は、廃炉等技術研究開発業務実施方針を定めなければならない。
2 機構は、廃炉等技術研究開発業務実施方針を定めようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
第三十八条第一項第一号中「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下この号及び次号において「原子炉等規制法」という。)」を「原子炉等規制法」に改め、同項第二号中「(原子炉等規制法第二条第十項に規定する再処理をいう。)」を削る。
第四十一条に次の一項を加える。
3 廃炉等を実施する原子力事業者が第一項の規定による申込みを行う場合には、前項の書類のほか、次に掲げる事項を記載した書類を提出しなければならない。
一 廃炉等の実施の状況
二 廃炉等の実施に必要な経費の見通し及び廃炉等を適正かつ着実に実施するための体制の整備に関する事項
第四十三条第二項中「事項」の下に「(当該原子力事業者が廃炉等を実施する場合には、当該事項及び同条第三項各号に掲げる事項)」を加える。
第四十五条第二項第一号中「事項」の下に「(原子力事業者が廃炉等を実施する場合には、当該事項及び同条第三項各号に掲げる事項)」を加える。
第五章第四節の節名を次のように改める。
第四節 損害賠償の円滑な実施等に資するための相談その他の業務
第五章第四節中第五十五条の次に次の一条を加える。
(機構による廃炉等の実施)
第五十五条の二 機構は、廃炉等技術委員会の議決を経て、廃炉等を実施する原子力事業者の委託を受けて、当該原子力事業者に係る廃炉等の一部を実施することができる。
第五十九条第三項中「第三十五条第二号及び第三号」を「第三十五条第二号から第六号まで」に改める。
第六十条の見出し及び同条第一項中「原子力損害賠償支援機構債」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構債」に改める。
第七十三条中「第二十一条(」の下に「第二十二条の七及び」を加える。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次条第二項、第三項及び第六項の規定は、公布の日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現にその名称中に原子力損害賠償・廃炉等支援機構という文字を用いている者については、この法律による改正後の原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下「新法」という。)第六条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
2 原子力損害賠償支援機構は、この法律の施行の日(以下この条において「施行日」という。)までに、必要な定款の変更をし、主務大臣の認可を受けるものとする。
3 前項の認可があったときは、同項に規定する定款の変更は、施行日にその効力を生ずる。
4 この法律による改正前の原子力損害賠償支援機構法第六十条第一項の規定により原子力損害賠償支援機構が発行した原子力損害賠償支援機構債は、新法の規定の適用については、新法第六十条第一項の規定による原子力損害賠償・廃炉等支援機構債とみなす。
5 施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
6 前各項に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に起因する放射性物質によって汚染された水の流出への対処)
第三条 国は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下この条において「原子力発電所」という。)の事故に起因する放射性物質によって汚染された水(以下この条において「放射性汚染水」という。)の原子力発電所からの流出を制御していくことが喫緊の課題であることに鑑み、当該流出の制御に関し、放射性汚染水に係る正確な情報が適時に提供され、かつ、廃炉等(新法第一条に規定する廃炉等をいう。)を実施するために必要な技術に関する国内外の知見が活用されることにより、国内外の不安が早期に解消されるよう、万全の措置を講ずるものとする。
(国立国会図書館法等の一部改正)
第四条 次に掲げる法律の規定中
原子力損害賠償支援機構
原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)
原子力損害賠償・廃炉等支援機構
原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)
に改める。
一 国立国会図書館法(昭和二十三年法律第五号)別表第一
二 行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)別表
三 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)別表第一
四 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)別表第二
五 消費税法(昭和六十三年法律第百八号)別表第三第一号の表
六 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号)別表第一
七 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十九号)別表
八 公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)別表第一
(地方税法等の一部改正)
第五条 次に掲げる法律の規定中「原子力損害賠償支援機構」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改める。
一 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第七十二条の五第一項第五号
二 東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律(平成二十五年法律第九十七号)第二条
(特別会計に関する法律の一部改正)
第六条 特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。
第八十五条第七項中「原子力損害賠償支援機構法」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」に改め、同項第二号中「原子力損害賠償支援機構」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改める。
第八十八条第三項第二号ト及び第九十一条の二中「原子力損害賠償支援機構」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改める。
内閣総理大臣 安倍晋三
総務大臣 新藤義孝
法務大臣 谷垣禎一
財務大臣 麻生太郎
文部科学大臣 下村博文
経済産業大臣 茂木敏充