土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律
法令番号: 法律第五十七号
公布年月日: 平成12年5月8日
法令の形式: 法律
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十二年五月八日
内閣総理大臣 森喜朗
法律第五十七号
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
土砂災害防止対策基本指針等(第三条―第五条)
第三章
土砂災害警戒区域(第六条・第七条)
第四章
土砂災害特別警戒区域(第八条―第二十五条)
第五章
雑則(第二十六条―第二十八条)
第六章
罰則(第二十九条―第三十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれがある土地の区域において一定の開発行為を制限するほか、建築物の構造の規制に関する所要の措置を定めること等により、土砂災害の防止のための対策の推進を図り、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、「土砂災害」とは、急傾斜地の崩壊(傾斜度が三十度以上である土地が崩壊する自然現象をいう。)、土石流(山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象をいう。)又は地滑り(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象をいう。)(以下「急傾斜地の崩壊等」と総称する。)を発生原因として国民の生命又は身体に生ずる被害をいう。
第二章 土砂災害防止対策基本指針等
(土砂災害防止対策基本指針)
第三条 国土交通大臣は、土砂災害の防止のための対策の推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に関する基本的な事項
二 次条第一項の基礎調査の実施について指針となるべき事項
三 第六条第一項の土砂災害警戒区域及び第八条第一項の土砂災害特別警戒区域の指定について指針となるべき事項
四 第八条第一項の土砂災害特別警戒区域内の建築物の移転その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に関し指針となるべき事項
3 国土交通大臣は、基本指針を定めようとするときは、あらかじめ、総務大臣及び農林水産大臣に協議するとともに、社会資本整備審議会の意見を聴かなければならない。
4 国土交通大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本指針の変更について準用する。
(基礎調査)
第四条 都道府県は、基本指針に基づき、おおむね五年ごとに、第六条第一項の土砂災害警戒区域及び第八条第一項の土砂災害特別警戒区域の指定その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に必要な基礎調査として、急傾斜地の崩壊等のおそれがある土地に関する地形、地質、降水等の状況及び土砂災害の発生のおそれがある土地の利用の状況その他の事項に関する調査(以下「基礎調査」という。)を行うものとする。
2 都道府県は、基礎調査の結果を、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長に通知しなければならない。
3 国土交通大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、都道府県に対し、基礎調査の結果について必要な報告を求めることができる。
(基礎調査のための土地の立入り等)
第五条 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、基礎調査のためにやむを得ない必要があるときは、その必要な限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用することができる。
2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない。
3 第一項の規定により宅地又は垣、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。
5 第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
6 第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見を聴かなければならない。
7 土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項に規定する立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。
8 都道府県は、第一項に規定する立入り又は一時使用により損失を受けた者がある場合においては、その者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
9 前項に規定する損失の補償については、都道府県と損失を受けた者とが協議しなければならない。
10 前項に規定する協議が成立しない場合においては、都道府県は、自己の見積もった金額を損失を受けた者に支払わなければならない。この場合において、当該金額について不服のある者は、政令で定めるところにより、補償金の支払を受けた日から三十日以内に、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
第三章 土砂災害警戒区域
(土砂災害警戒区域)
第六条 都道府県知事は、基本指針に基づき、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。
2 前項に規定する指定(以下この条において「指定」という。)は、第二条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域及びその発生原因となる自然現象の種類を定めてするものとする。
3 都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨並びに指定の区域及び土砂災害の発生原因となる自然現象の種類を公示しなければならない。
5 都道府県知事は、前項に規定する公示をしたときは、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければならない。
6 前三項の規定は、指定の解除について準用する。
(警戒避難体制の整備等)
第七条 市町村防災会議(市町村防災会議を設置しない市町村にあっては、当該市町村の長)は、警戒区域の指定があったときは、市町村地域防災計画(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)による市町村地域防災計画をいう。)において、当該警戒区域ごとに、土砂災害に関する情報の収集及び伝達、予報又は警報の発令及び伝達、避難、救助その他当該警戒区域における土砂災害を防止するために必要な警戒避難体制に関する事項について定めるものとする。
2 警戒区域をその区域に含む市町村の長は、前項に規定する市町村地域防災計画に基づき、土砂災害に関する情報の伝達方法、急傾斜地の崩壊等のおそれがある場合の避難地に関する事項その他警戒区域における円滑な警戒避難が行われるために必要な事項について住民に周知させるよう努めるものとする。
第四章 土砂災害特別警戒区域
(土砂災害特別警戒区域)
第八条 都道府県知事は、基本指針に基づき、警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為の制限及び居室(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第四号に規定する居室をいう。以下同じ。)を有する建築物の構造の規制をすべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
2 前項に規定する指定(以下この条において「指定」という。)は、第二条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域並びにその発生原因となる自然現象の種類及び当該自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に関する事項(土砂災害の発生を防止するために行う建築物の構造の規制に必要な事項として政令で定めるものに限る。)を定めてするものとする。
3 都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨並びに指定の区域、土砂災害の発生原因となる自然現象の種類及び第二項に規定する政令で定める事項を公示しなければならない。
5 都道府県知事は、前項に規定する公示をしたときは、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければらならない。
6 指定は、第四項に規定する公示によってその効力を生ずる。
7 関係のある市町村の長は、第五項の図書を当該市町村の事務所において、一般の縦覧に供しなければならない。
8 都道府県知事は、土砂災害の防止に関する工事の実施等により、特別警戒区域の全部又は一部について指定の事由がなくなったと認めるときは、当該特別警戒区域の全部又は一部について指定を解除するものとする。
9 第三項から第六項までの規定は、前項に規定する解除について準用する。
(特定開発行為の制限)
第九条 特別警戒区域内において、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第十二項の開発行為で当該開発行為をする土地の区域内において建築が予定されている建築物(当該区域が特別警戒区域の内外にわたる場合においては、特別警戒区域外において建築が予定されている建築物を除く。以下「予定建築物」という。)の用途が制限用途であるもの(以下「特定開発行為」という。)をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為その他の政令で定める行為については、この限りでない。
2 前項の制限用途とは、予定建築物の用途で、住宅(自己の居住の用に供するものを除く。)並びに高齢者、障害者、乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、学校及び医療施設(政令で定めるものに限る。)以外の用途でないものをいう。
(申請の手続)
第十条 前条第一項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を提出しなければならない。
一 特定開発行為をする土地の区域(以下「開発区域」という。)の位置、区域及び規模
二 予定建築物(前条第一項の制限用途のものに限る。以下「特定予定建築物」という。)の用途及びその敷地の位置
三 特定予定建築物における土砂災害を防止するため自ら施行しようとする工事(以下「対策工事」という。)の計画
四 対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画
五 その他国土交通省令で定める事項
2 前項の申請書には、国土交通省令で定める図書を添付しなければならない。
(許可の基準)
第十一条 都道府県知事は、第九条第一項の許可の申請があったときは、前条第一項第三号及び第四号に規定する工事(以下「対策工事等」という。)の計画が、特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な措置を政令で定める技術的基準に従い講じたものであり、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、その許可をしなければならない。
(許可の条件)
第十二条 都道府県知事は、第九条第一項の許可に、対策工事等の施行に伴う災害を防止するために必要な条件を付することができる。
(既着手の場合の届出等)
第十三条 特別警戒区域の指定の際当該特別警戒区域内において既に特定開発行為(第九条第一項ただし書に規定する政令で定める行為を除く。)に着手している者は、その指定の日から起算して二十一日以内に、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、前項に規定する届出があった場合において、当該届出に係る開発区域(特別警戒区域内のものに限る。)における土砂災害を防止するために必要があると認めるときは、当該届出をした者に対して、予定建築物の用途の変更その他の必要な助言又は勧告をすることができる。
(許可の特例)
第十四条 国又は地方公共団体が行う特定開発行為については、国又は地方公共団体と都道府県知事との協議が成立することをもって第九条第一項の許可を受けたものとみなす。
(許可又は不許可の通知)
第十五条 都道府県知事は、第九条第一項の許可の申請があったときは、遅滞なく、許可又は不許可の処分をしなければならない。
2 前項の処分をするには、文書をもって当該申請をした者に通知しなければならない。
(変更の許可等)
第十六条 第九条第一項の許可(この項の規定による許可を含む。)を受けた者は、第十条第一項第二号から第四号までに掲げる事項の変更をしようとする場合においては、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、変更後の予定建築物の用途が第九条第一項の制限用途以外のものであるとき、又は国土交通省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。
2 前項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
3 第九条第一項の許可を受けた者は、第一項ただし書に該当する変更をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
4 第十一条、第十二条及び前二条の規定は、第一項の許可について準用する。
5 第一項の許可又は第三項に規定する届出の場合における次条から第十九条までの規定の適用については、第一項の許可又は第三項に規定する届出に係る変更後の内容を第九条第一項の許可の内容とみなす。
(工事完了の検査等)
第十七条 第九条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る対策工事等のすべてを完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、前項に規定する届出があったときは、遅滞なく、当該対策工事等が第十一条に規定する政令で定める技術的基準に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該対策工事等が当該政令で定める技術的基準に適合していると認めたときは、国土交通省令で定める様式の検査済証を当該届出をした者に交付しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定により検査済証を交付したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、当該対策工事等が完了した旨を公告しなければならない。
(建築制限)
第十八条 第九条第一項の許可を受けた開発区域(特別警戒区域内のものに限る。)内の土地においては、前条第三項に規定する公告があるまでの間は、第九条第一項の制限用途の建築物を建築してはならない。
(特定開発行為の廃止)
第十九条 第九条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る対策工事等を廃止したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(監督処分)
第二十条 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な限度において、第九条第一項若しくは第十六条第一項の許可を取り消し、若しくはその許可に付した条件を変更し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて必要な措置をとることを命ずることができる。
一 第九条第一項又は第十六条第一項の規定に違反して、特定開発行為をした者
二 第九条第一項又は第十六条第一項の許可に付した条件に違反した者
三 特別警戒区域で行われる又は行われた特定開発行為(当該特別警戒区域の指定の際当該特別警戒区域内において既に着手している行為を除く。)であって、特定予定建築物の土砂災害を防止するために必要な措置を第十一条に規定する政令で定める技術的基準に従って講じていないものに関する工事の注文主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。)又は請負契約によらないで自らその工事をしている者若しくはした者
四 詐欺その他不正な手段により第九条第一項又は第十六条第一項の許可を受けた者
2 前項の規定により必要な措置をとることを命じようとする場合において、過失がなくて当該措置を命ずべき者を確知することができないときは、都道府県知事は、その者の負担において、当該措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該措置を行うべき旨及びその期限までに当該措置を行わないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が当該措置を行う旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
4 前項の標識は、第一項の規定による命令に係る土地又は建築物若しくは建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、同項の規定による命令に係る土地又は建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
(立入検査)
第二十一条 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、第九条第一項、第十六条第一項、第十七条第二項、第十八条又は前条第一項の規定による権限を行うため必要がある場合においては、当該土地に立ち入り、当該土地又は当該土地において行われている対策工事等の状況を検査することができる。
2 第五条第五項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(報告の徴収等)
第二十二条 都道府県知事は、第九条第一項又は第十六条第一項の許可を受けた者に対し、当該許可に係る土地又は当該許可に係る対策工事等の状況について報告若しくは資料の提出を求め、又は当該土地における土砂災害を防止するために必要な助言若しくは勧告をすることができる。
(特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造耐力に関する基準)
第二十三条 特別警戒区域における土砂災害の発生を防止するため、建築基準法第二十条に基づく政令においては、居室を有する建築物の構造が当該土砂災害の発生原因となる自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に対して安全なものとなるよう建築物の構造耐力に関する基準を定めるものとする。
(特別警戒区域内における居室を有する建築物に対する建築基準法の適用)
第二十四条 特別警戒区域(建築基準法第六条第一項第四号の区域を除く。)内における居室を有する建築物(同項第一号から第三号までに掲げるものを除く。)については、同項第四号の規定に基づき都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内における建築物とみなして、同法第六条から第七条の五まで、第十八条、第八十九条、第九十一条及び第九十三条の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。
(移転等の勧告)
第二十五条 都道府県知事は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には特別警戒区域内に存する居室を有する建築物に損壊が生じ、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれが大きいと認めるときは、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対し、当該建築物の移転その他土砂災害を防止し、又は軽減するために必要な措置をとることを勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、土地の取得についてのあっせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第五章 雑則
(費用の補助)
第二十六条 国は、都道府県に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、基礎調査に要する費用の一部を補助することができる。
(資金の確保等)
第二十七条 国及び都道府県は、第二十五条第一項に規定する勧告に基づく建築物の移転等が円滑に行われるために必要な資金の確保、融通又はそのあっせんに努めるものとする。
(緊急時の指示)
第二十八条 国土交通大臣は、土砂災害が発生し、又は発生するおそれがあると認められる場合において、土砂災害を防止し、又は軽減するため緊急の必要があると認められるときは、都道府県知事に対し、この法律の規定により都道府県知事が行う事務のうち政令で定めるものに関し、必要な指示をすることができる。
第六章 罰則
第二十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第九条第一項又は第十六条第一項の規定に違反して、特定開発行為をした者
二 第十八条の規定に違反して、第九条第一項の制限用途の建築物を建築した者
三 第二十条第一項の規定による都道府県知事の命令に違反した者
第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第五条第七項の規定に違反して、土地の立入り又は一時使用を拒み、又は妨げた者
二 第二十一条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第三十一条 第二十二条の規定による報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
第三十三条 第十三条第一項、第十六条第三項又は第十九条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十三年四月一日から施行する。
(住宅金融公庫法の一部改正)
第二条 住宅金融公庫法(昭和二十五年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
第十七条第七項中「又は変更された」を「若しくは変更された」に、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第九条第三項」を「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)第二十五条第一項」に改め、同条第八項中「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」の下に「(昭和四十四年法律第五十七号)」を加える。
(住宅金融公庫法の一部改正に伴う経過措置)
第三条 この法律の施行前になされた附則第五条の規定による改正前の急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第九条第三項の規定による勧告に基づき住宅部分を有する家屋を移転し、又は除却する場合における住宅金融公庫の当該家屋に係る資金の貸付けについては、なお従前の例による。
(都市計画法の一部改正)
第四条 都市計画法の一部を次のように改正する。
第三十三条第一項第八号中「地すべり防止区域」の下に「、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)第八条第一項の土砂災害特別警戒区域」を加える。
(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の一部改正)
第五条 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の一部を次のように改正する。
目次中「第二十条の二」を「第二十条」に改める。
第一条中「防止し、及びその崩壊に対しての警戒避難体制を整備する等の措置」を「防止するために必要な措置」に改める。
第九条第三項中「行なつた」を「行つた」に改め、「、被害を受けるおそれが著しいと認められる家屋の移転」を削る。
第十九条を次のように改める。
第十九条 削除
第二十条を削り、第二十条の二を第二十条とする。
第二十四条の見出し中「家屋の移転者等」を「勧告等を受けた者」に改める。
(国土交通省設置法の一部改正)
第六条 国土交通省設置法(平成十一年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第十三条第一項第三号中「治山治水緊急措置法(昭和三十五年法律第二十一号)」の下に「、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)」を加える。
内閣総理大臣 森喜朗
大蔵大臣 宮澤喜一
建設大臣 中山正暉
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十二年五月八日
内閣総理大臣 森喜朗
法律第五十七号
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
土砂災害防止対策基本指針等(第三条―第五条)
第三章
土砂災害警戒区域(第六条・第七条)
第四章
土砂災害特別警戒区域(第八条―第二十五条)
第五章
雑則(第二十六条―第二十八条)
第六章
罰則(第二十九条―第三十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれがある土地の区域において一定の開発行為を制限するほか、建築物の構造の規制に関する所要の措置を定めること等により、土砂災害の防止のための対策の推進を図り、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、「土砂災害」とは、急傾斜地の崩壊(傾斜度が三十度以上である土地が崩壊する自然現象をいう。)、土石流(山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象をいう。)又は地滑り(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象をいう。)(以下「急傾斜地の崩壊等」と総称する。)を発生原因として国民の生命又は身体に生ずる被害をいう。
第二章 土砂災害防止対策基本指針等
(土砂災害防止対策基本指針)
第三条 国土交通大臣は、土砂災害の防止のための対策の推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に関する基本的な事項
二 次条第一項の基礎調査の実施について指針となるべき事項
三 第六条第一項の土砂災害警戒区域及び第八条第一項の土砂災害特別警戒区域の指定について指針となるべき事項
四 第八条第一項の土砂災害特別警戒区域内の建築物の移転その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に関し指針となるべき事項
3 国土交通大臣は、基本指針を定めようとするときは、あらかじめ、総務大臣及び農林水産大臣に協議するとともに、社会資本整備審議会の意見を聴かなければならない。
4 国土交通大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本指針の変更について準用する。
(基礎調査)
第四条 都道府県は、基本指針に基づき、おおむね五年ごとに、第六条第一項の土砂災害警戒区域及び第八条第一項の土砂災害特別警戒区域の指定その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に必要な基礎調査として、急傾斜地の崩壊等のおそれがある土地に関する地形、地質、降水等の状況及び土砂災害の発生のおそれがある土地の利用の状況その他の事項に関する調査(以下「基礎調査」という。)を行うものとする。
2 都道府県は、基礎調査の結果を、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長に通知しなければならない。
3 国土交通大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、都道府県に対し、基礎調査の結果について必要な報告を求めることができる。
(基礎調査のための土地の立入り等)
第五条 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、基礎調査のためにやむを得ない必要があるときは、その必要な限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用することができる。
2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない。
3 第一項の規定により宅地又は垣、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。
5 第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
6 第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見を聴かなければならない。
7 土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項に規定する立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。
8 都道府県は、第一項に規定する立入り又は一時使用により損失を受けた者がある場合においては、その者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
9 前項に規定する損失の補償については、都道府県と損失を受けた者とが協議しなければならない。
10 前項に規定する協議が成立しない場合においては、都道府県は、自己の見積もった金額を損失を受けた者に支払わなければならない。この場合において、当該金額について不服のある者は、政令で定めるところにより、補償金の支払を受けた日から三十日以内に、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
第三章 土砂災害警戒区域
(土砂災害警戒区域)
第六条 都道府県知事は、基本指針に基づき、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。
2 前項に規定する指定(以下この条において「指定」という。)は、第二条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域及びその発生原因となる自然現象の種類を定めてするものとする。
3 都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨並びに指定の区域及び土砂災害の発生原因となる自然現象の種類を公示しなければならない。
5 都道府県知事は、前項に規定する公示をしたときは、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければならない。
6 前三項の規定は、指定の解除について準用する。
(警戒避難体制の整備等)
第七条 市町村防災会議(市町村防災会議を設置しない市町村にあっては、当該市町村の長)は、警戒区域の指定があったときは、市町村地域防災計画(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)による市町村地域防災計画をいう。)において、当該警戒区域ごとに、土砂災害に関する情報の収集及び伝達、予報又は警報の発令及び伝達、避難、救助その他当該警戒区域における土砂災害を防止するために必要な警戒避難体制に関する事項について定めるものとする。
2 警戒区域をその区域に含む市町村の長は、前項に規定する市町村地域防災計画に基づき、土砂災害に関する情報の伝達方法、急傾斜地の崩壊等のおそれがある場合の避難地に関する事項その他警戒区域における円滑な警戒避難が行われるために必要な事項について住民に周知させるよう努めるものとする。
第四章 土砂災害特別警戒区域
(土砂災害特別警戒区域)
第八条 都道府県知事は、基本指針に基づき、警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為の制限及び居室(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第四号に規定する居室をいう。以下同じ。)を有する建築物の構造の規制をすべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
2 前項に規定する指定(以下この条において「指定」という。)は、第二条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域並びにその発生原因となる自然現象の種類及び当該自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に関する事項(土砂災害の発生を防止するために行う建築物の構造の規制に必要な事項として政令で定めるものに限る。)を定めてするものとする。
3 都道府県知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係のある市町村の長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨並びに指定の区域、土砂災害の発生原因となる自然現象の種類及び第二項に規定する政令で定める事項を公示しなければならない。
5 都道府県知事は、前項に規定する公示をしたときは、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければらならない。
6 指定は、第四項に規定する公示によってその効力を生ずる。
7 関係のある市町村の長は、第五項の図書を当該市町村の事務所において、一般の縦覧に供しなければならない。
8 都道府県知事は、土砂災害の防止に関する工事の実施等により、特別警戒区域の全部又は一部について指定の事由がなくなったと認めるときは、当該特別警戒区域の全部又は一部について指定を解除するものとする。
9 第三項から第六項までの規定は、前項に規定する解除について準用する。
(特定開発行為の制限)
第九条 特別警戒区域内において、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第十二項の開発行為で当該開発行為をする土地の区域内において建築が予定されている建築物(当該区域が特別警戒区域の内外にわたる場合においては、特別警戒区域外において建築が予定されている建築物を除く。以下「予定建築物」という。)の用途が制限用途であるもの(以下「特定開発行為」という。)をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為その他の政令で定める行為については、この限りでない。
2 前項の制限用途とは、予定建築物の用途で、住宅(自己の居住の用に供するものを除く。)並びに高齢者、障害者、乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、学校及び医療施設(政令で定めるものに限る。)以外の用途でないものをいう。
(申請の手続)
第十条 前条第一項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を提出しなければならない。
一 特定開発行為をする土地の区域(以下「開発区域」という。)の位置、区域及び規模
二 予定建築物(前条第一項の制限用途のものに限る。以下「特定予定建築物」という。)の用途及びその敷地の位置
三 特定予定建築物における土砂災害を防止するため自ら施行しようとする工事(以下「対策工事」という。)の計画
四 対策工事以外の特定開発行為に関する工事の計画
五 その他国土交通省令で定める事項
2 前項の申請書には、国土交通省令で定める図書を添付しなければならない。
(許可の基準)
第十一条 都道府県知事は、第九条第一項の許可の申請があったときは、前条第一項第三号及び第四号に規定する工事(以下「対策工事等」という。)の計画が、特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な措置を政令で定める技術的基準に従い講じたものであり、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、その許可をしなければならない。
(許可の条件)
第十二条 都道府県知事は、第九条第一項の許可に、対策工事等の施行に伴う災害を防止するために必要な条件を付することができる。
(既着手の場合の届出等)
第十三条 特別警戒区域の指定の際当該特別警戒区域内において既に特定開発行為(第九条第一項ただし書に規定する政令で定める行為を除く。)に着手している者は、その指定の日から起算して二十一日以内に、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、前項に規定する届出があった場合において、当該届出に係る開発区域(特別警戒区域内のものに限る。)における土砂災害を防止するために必要があると認めるときは、当該届出をした者に対して、予定建築物の用途の変更その他の必要な助言又は勧告をすることができる。
(許可の特例)
第十四条 国又は地方公共団体が行う特定開発行為については、国又は地方公共団体と都道府県知事との協議が成立することをもって第九条第一項の許可を受けたものとみなす。
(許可又は不許可の通知)
第十五条 都道府県知事は、第九条第一項の許可の申請があったときは、遅滞なく、許可又は不許可の処分をしなければならない。
2 前項の処分をするには、文書をもって当該申請をした者に通知しなければならない。
(変更の許可等)
第十六条 第九条第一項の許可(この項の規定による許可を含む。)を受けた者は、第十条第一項第二号から第四号までに掲げる事項の変更をしようとする場合においては、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、変更後の予定建築物の用途が第九条第一項の制限用途以外のものであるとき、又は国土交通省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。
2 前項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
3 第九条第一項の許可を受けた者は、第一項ただし書に該当する変更をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
4 第十一条、第十二条及び前二条の規定は、第一項の許可について準用する。
5 第一項の許可又は第三項に規定する届出の場合における次条から第十九条までの規定の適用については、第一項の許可又は第三項に規定する届出に係る変更後の内容を第九条第一項の許可の内容とみなす。
(工事完了の検査等)
第十七条 第九条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る対策工事等のすべてを完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、前項に規定する届出があったときは、遅滞なく、当該対策工事等が第十一条に規定する政令で定める技術的基準に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該対策工事等が当該政令で定める技術的基準に適合していると認めたときは、国土交通省令で定める様式の検査済証を当該届出をした者に交付しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の規定により検査済証を交付したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、当該対策工事等が完了した旨を公告しなければならない。
(建築制限)
第十八条 第九条第一項の許可を受けた開発区域(特別警戒区域内のものに限る。)内の土地においては、前条第三項に規定する公告があるまでの間は、第九条第一項の制限用途の建築物を建築してはならない。
(特定開発行為の廃止)
第十九条 第九条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る対策工事等を廃止したときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(監督処分)
第二十条 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、特定予定建築物における土砂災害を防止するために必要な限度において、第九条第一項若しくは第十六条第一項の許可を取り消し、若しくはその許可に付した条件を変更し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて必要な措置をとることを命ずることができる。
一 第九条第一項又は第十六条第一項の規定に違反して、特定開発行為をした者
二 第九条第一項又は第十六条第一項の許可に付した条件に違反した者
三 特別警戒区域で行われる又は行われた特定開発行為(当該特別警戒区域の指定の際当該特別警戒区域内において既に着手している行為を除く。)であって、特定予定建築物の土砂災害を防止するために必要な措置を第十一条に規定する政令で定める技術的基準に従って講じていないものに関する工事の注文主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。)又は請負契約によらないで自らその工事をしている者若しくはした者
四 詐欺その他不正な手段により第九条第一項又は第十六条第一項の許可を受けた者
2 前項の規定により必要な措置をとることを命じようとする場合において、過失がなくて当該措置を命ずべき者を確知することができないときは、都道府県知事は、その者の負担において、当該措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該措置を行うべき旨及びその期限までに当該措置を行わないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が当該措置を行う旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
4 前項の標識は、第一項の規定による命令に係る土地又は建築物若しくは建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、同項の規定による命令に係る土地又は建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
(立入検査)
第二十一条 都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者は、第九条第一項、第十六条第一項、第十七条第二項、第十八条又は前条第一項の規定による権限を行うため必要がある場合においては、当該土地に立ち入り、当該土地又は当該土地において行われている対策工事等の状況を検査することができる。
2 第五条第五項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(報告の徴収等)
第二十二条 都道府県知事は、第九条第一項又は第十六条第一項の許可を受けた者に対し、当該許可に係る土地又は当該許可に係る対策工事等の状況について報告若しくは資料の提出を求め、又は当該土地における土砂災害を防止するために必要な助言若しくは勧告をすることができる。
(特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造耐力に関する基準)
第二十三条 特別警戒区域における土砂災害の発生を防止するため、建築基準法第二十条に基づく政令においては、居室を有する建築物の構造が当該土砂災害の発生原因となる自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に対して安全なものとなるよう建築物の構造耐力に関する基準を定めるものとする。
(特別警戒区域内における居室を有する建築物に対する建築基準法の適用)
第二十四条 特別警戒区域(建築基準法第六条第一項第四号の区域を除く。)内における居室を有する建築物(同項第一号から第三号までに掲げるものを除く。)については、同項第四号の規定に基づき都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内における建築物とみなして、同法第六条から第七条の五まで、第十八条、第八十九条、第九十一条及び第九十三条の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。
(移転等の勧告)
第二十五条 都道府県知事は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には特別警戒区域内に存する居室を有する建築物に損壊が生じ、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれが大きいと認めるときは、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対し、当該建築物の移転その他土砂災害を防止し、又は軽減するために必要な措置をとることを勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、土地の取得についてのあっせんその他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第五章 雑則
(費用の補助)
第二十六条 国は、都道府県に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、基礎調査に要する費用の一部を補助することができる。
(資金の確保等)
第二十七条 国及び都道府県は、第二十五条第一項に規定する勧告に基づく建築物の移転等が円滑に行われるために必要な資金の確保、融通又はそのあっせんに努めるものとする。
(緊急時の指示)
第二十八条 国土交通大臣は、土砂災害が発生し、又は発生するおそれがあると認められる場合において、土砂災害を防止し、又は軽減するため緊急の必要があると認められるときは、都道府県知事に対し、この法律の規定により都道府県知事が行う事務のうち政令で定めるものに関し、必要な指示をすることができる。
第六章 罰則
第二十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第九条第一項又は第十六条第一項の規定に違反して、特定開発行為をした者
二 第十八条の規定に違反して、第九条第一項の制限用途の建築物を建築した者
三 第二十条第一項の規定による都道府県知事の命令に違反した者
第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第五条第七項の規定に違反して、土地の立入り又は一時使用を拒み、又は妨げた者
二 第二十一条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第三十一条 第二十二条の規定による報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
第三十三条 第十三条第一項、第十六条第三項又は第十九条の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十三年四月一日から施行する。
(住宅金融公庫法の一部改正)
第二条 住宅金融公庫法(昭和二十五年法律第百五十六号)の一部を次のように改正する。
第十七条第七項中「又は変更された」を「若しくは変更された」に、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第九条第三項」を「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)第二十五条第一項」に改め、同条第八項中「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」の下に「(昭和四十四年法律第五十七号)」を加える。
(住宅金融公庫法の一部改正に伴う経過措置)
第三条 この法律の施行前になされた附則第五条の規定による改正前の急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第九条第三項の規定による勧告に基づき住宅部分を有する家屋を移転し、又は除却する場合における住宅金融公庫の当該家屋に係る資金の貸付けについては、なお従前の例による。
(都市計画法の一部改正)
第四条 都市計画法の一部を次のように改正する。
第三十三条第一項第八号中「地すべり防止区域」の下に「、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)第八条第一項の土砂災害特別警戒区域」を加える。
(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の一部改正)
第五条 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の一部を次のように改正する。
目次中「第二十条の二」を「第二十条」に改める。
第一条中「防止し、及びその崩壊に対しての警戒避難体制を整備する等の措置」を「防止するために必要な措置」に改める。
第九条第三項中「行なつた」を「行つた」に改め、「、被害を受けるおそれが著しいと認められる家屋の移転」を削る。
第十九条を次のように改める。
第十九条 削除
第二十条を削り、第二十条の二を第二十条とする。
第二十四条の見出し中「家屋の移転者等」を「勧告等を受けた者」に改める。
(国土交通省設置法の一部改正)
第六条 国土交通省設置法(平成十一年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第十三条第一項第三号中「治山治水緊急措置法(昭和三十五年法律第二十一号)」の下に「、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成十二年法律第五十七号)」を加える。
内閣総理大臣 森喜朗
大蔵大臣 宮沢喜一
建設大臣 中山正暉