(目的)
第一条 この法律は、我が国の産業技術力の強化に関し、国、地方公共団体、大学及び事業者の責務を明らかにするとともに、産業技術力の強化に関する施策の基本となる事項を定め、併せて産業技術力の強化を支援するための措置を講ずることにより、我が国産業の持続的な発展を図り、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「産業技術力」とは、産業活動において利用される技術に関する研究及び開発を行う能力並びにその成果の企業化を行う能力をいう。
(基本理念)
第三条 産業技術力の強化は、産業技術力が産業構造の変化、技術の進歩等の内外の経済的環境の変化に適確に対応して我が国産業の持続的な発展を図るための基盤であることにかんがみ、我が国産業の発展を支えてきた技術の改良に係る産業技術の水準の維持及び向上を図りつつ、国、地方公共団体、大学及び事業者の相互の密接な連携の下に、創造性のある研究及び開発を行うとともに、その成果の企業化を行う能力を強化することを基本として行われるものとする。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、産業技術力の強化に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
2 国の関係行政機関は、産業技術力の強化に関する施策の円滑な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、産業技術力の強化に関し、国の施策に準じた施策及びその地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(大学の責務等)
第六条 大学は、その活動が産業技術力の強化に資するものであることにかんがみ、人材の育成並びに研究及びその成果の普及に自主的かつ積極的に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、産業技術力の強化に関する施策で大学に係るものを策定し、及びこれを実施するに当たっては、研究者の自主性の尊重その他の大学における研究の特性に配慮しなければならない。
(事業者の責務)
第七条 事業者は、基本理念にのっとり、研究及び開発並びにその成果の企業化に積極的に努めるものとする。
(研究者等の確保、養成及び資質の向上)
第八条 国は、研究者及び技術者の創造性が十分に発揮されることにより、産業技術力の強化が図られることにかんがみ、研究者及び技術者の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。
(研究開発施設の整備等)
第九条 国は、産業技術力の強化の円滑な実施を図るため、研究及び開発を行うための施設及び設備の整備、研究材料の供給並びに技術に関する情報の流通の円滑化に必要な施策を講ずるものとする。
(研究開発に係る資金の重点化等)
第十条 国は、産業技術力の強化の効果的な実施を図るため、国の資金により行われる研究及び開発の適切な評価を行い、その結果を予算の配分へ反映させること等により、産業技術に関する研究及び開発に係る資金の重点化及び効率化の促進に必要な施策を講ずるものとする。
(連携の強化)
第十一条 国は、国及び地方公共団体の試験研究機関、大学並びに事業者が互いに補完することにより産業技術力の強化の効果的な実施が図られることにかんがみ、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(研究成果の移転の促進)
第十二条 国は、国及び地方公共団体の試験研究機関並びに大学における研究及び開発の成果が事業活動において活用されることが産業技術力の強化に重要であることにかんがみ、当該成果の事業者への移転の促進に必要な施策を講ずるものとする。
(受託研究等に係る資金の受入れ等の円滑化)
第十三条 国は、国立学校(国立学校設置法(昭和二十四年法律第百五十号)第二条第一項に規定する国立学校をいう。)において国以外の者から委託を受けて行う研究又は国以外の者と共同して行う研究の円滑な実施に資するため、国以外の者から提供されるこれらの研究に係る資金の受入れ及び使用を円滑に行うための措置を講じなければならない。
2 地方公共団体は、国の施策に準じて、その設置する公立学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第二条第二項に規定する公立学校をいう。)において当該地方公共団体以外の者から奨学を目的とする寄附金を受けて行う研究若しくは委託を受けて行う研究又は当該地方公共団体以外の者と共同して行う研究の円滑な実施に資するため、地方公共団体以外の者から提供されるこれらの研究に係る資金の受入れ及び使用を円滑に行うための措置を講じなければならない。
(大学等の研究成果を活用する事業者への支援)
第十四条 国は、産業技術力の強化を図るため、国立大学等(学校教育法第一条に規定する大学及び高等専門学校であって国が設置するもの並びに国立学校設置法第三章の三から第三章の六までに規定する機関をいう。)及び国の試験研究機関の研究者がその研究成果を活用する事業を実施する営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ねることが当該研究成果の事業者への移転の促進にとって重要な意義を有することに配慮しつつ、当該研究成果を活用する事業を実施する事業者に対する支援に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
2 地方公共団体は、国の施策に準じて、公立大学等(学校教育法第一条に規定する大学及び高等専門学校であって地方公共団体が設置するものをいう。)及び地方公共団体の試験研究機関における研究成果を活用する事業を実施する事業者に対する支援に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(特定大学技術移転事業を実施する者等の国有施設の無償使用)
第十五条 国は、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(平成十年法律第五十二号。以下の条において「大学等技術移転促進法」という。)第五条第二項の承認事業者が国立大学等(学校教育法第一条に規定する大学及び高等専門学校であって国が設置するもの並びに国立学校設置法第三章の三に規定する大学共同利用機関をいう。以下この項及び次項において同じ。)の施設を大学等技術移転促進法第二条第一項の特定大学技術移転事業の用に供する場合であって、当該国立大学等の施設を使用して行うことが当該国立大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転を通じた産業技術力の強化を図るため特に必要であると認めるときは、当該承認事業者に対し、当該国立大学等の施設を無償で使用させることができる。
2 国は、大学等技術移転促進法第十二条第二項の認定事業者が国立大学等の施設を同条第一項に規定する事業の用に供する場合であって、産業技術力の強化を図るため特に必要であると認めるときは、当該認定事業者に対し、当該国立大学等の施設を無償で使用させることができる。
3 国は、大学等技術移転促進法第十三条第一項の認定を受けた者が同項の特定試験研究機関の施設を同項に規定する事業の用に供する場合であって、産業技術力の強化を図るため特に必要であると認めるときは、当該認定を受けた者に対し、当該特定試験研究機関の施設を無償で使用させることができる。
(特許料等の特例)
第十六条 特許庁長官は、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百七条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料を納付すべき者が次に掲げる者であるときは、政令で定めるところにより、特許料を軽減し若しくは免除し、又はその納付を猶予することができる。
一 その特許発明(職務発明(特許法第三十五条第一項に規定するものをいう。以下同じ。)に限る。)の発明者である学校教育法第一条に規定する大学(以下この条において単に「大学」という。)の学長、副学長、学部長、教授、助教授、講師若しくは助手、同法第一条に規定する高等専門学校(以下この条において単に「高等専門学校」という。)の校長、教授、助教授、講師若しくは助手又は国立学校設置法第三章の三に規定する大学共同利用機関(これに置かれる研究所で政令で定めるものを含む。)の長若しくはその職員のうち専ら研究に従事する者(以下この条において「研究者」という。)
二 その特許発明が大学又は高等専門学校の研究者がした職務発明である場合において、その研究者から特許を受ける権利を承継した当該大学又は高等専門学校を設置する者
2 特許庁長官は、自己の特許出願について出願審査の請求をする者が次に掲げる者であるときは、政令で定めるところにより、特許法第百九十五条第二項の規定により納付すべき出願審査の請求の手数料を軽減し、又は免除することができる。
一 その発明(職務発明に限る。)の発明者である研究者
二 その発明が大学又は高等専門学校の研究者がした職務発明である場合において、その研究者から特許を受ける権利を承継した当該大学又は高等専門学校を設置する者
第十七条 特許庁長官は、特許法第百七条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料を納付すべき者が次に掲げる者であって産業技術力の強化を図るため特に必要なものとして政令で定める要件に該当する者であるときは、政令で定めるところにより、特許料を軽減し若しくは免除し、又はその納付を猶予することができる。
二 その特許発明が従業者等(特許法第三十五条第一項に規定するものをいう。以下この条において同じ。)がした職務発明であって、契約、勤務規則その他の定めによりあらかじめ使用者等(同項に規定するものをいう。以下この条において同じ。)に特許を受ける権利を承継させることが定められている場合において、その従業者等から特許を受ける権利を承継した使用者等
2 特許庁長官は、自己の特許出願について出願審査の請求をする者が次に掲げる者であって産業技術力の強化を図るため特に必要なものとして政令で定める要件に該当する者であるときは、政令で定めるところにより、特許法第百九十五条第二項の規定により納付すべき出願審査の請求の手数料を軽減し、又は免除することができる。
二 その発明が従業者等がした職務発明であって、契約、勤務規則その他の定めによりあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を承継させることが定められている場合において、その従業者等から特許を受ける権利を承継した使用者等
(新エネルギー・産業技術総合開発機構の業務)
第十八条 新エネルギー・産業技術総合開発機構(次条において「機構」という。)は、石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律(昭和五十五年法律第七十一号。次条において「石油代替エネルギー法」という。)第三十九条第一項及び第二項に規定する業務のほか、産業技術力の強化を図るため、次の業務を行う。
一 産業技術(産業技術に関する研究開発体制の整備等に関する法律(昭和六十三年法律第三十三号。次条において「研究開発体制整備法」という。)第三条第一項第一号に規定するものをいう。次号において同じ。)に関する研究及び開発を助成すること。
二 産業技術に係る技術者の養成及び資質の向上を図るための研修を行うこと。
(石油代替エネルギー法等の特例)
第十九条 前条の規定により機構の業務が行われる場合には、石油代替エネルギー法第四十一条第一項中「第三十九条第一項」とあるのは「第三十九条第一項及び産業技術力強化法第十八条」と、石油代替エネルギー法第五十二条中「政令」とあるのは「政令並びに産業技術力強化法」と、石油代替エネルギー法第五十三条第二項及び第五十四条第一項中「この法律」とあるのは「この法律又は産業技術力強化法」と、石油代替エネルギー法第五十九条第三号中「第三十九条第一項」とあるのは「第三十九条第一項及び産業技術力強化法第十八条」とし、研究開発体制整備法第六条第一項中「第四条第一号、第二号及び第四号に掲げる業務」とあるのは「第四条第一号、第二号及び第四号に掲げる業務並びに産業技術力強化法第十八条第一号及び第二号に掲げる業務」とする。