総務庁設置法をここに公布する。
御名御璽
昭和五十八年十二月二日
内閣総理大臣 中曽根康弘
法律第七十九号
総務庁設置法
(目的)
第一条 この法律は、総務庁の所掌事務の範囲及び権限を明確に定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するに足る組織を定めることを目的とする。
(設置)
第二条 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、総理府の外局として、総務庁を設置する。
(任務)
第三条 総務庁は、行政の総合的かつ効率的な実施に寄与するため、人事行政に関する事務、行政機関の機構、定員及び運営に関する事務その他特定の施策及び事務の総合調整に関する事務で他の行政機関の所掌に属しないもの並びに行政機関の業務の監察、恩給及び統計に関する事務を一体的に遂行することを主たる任務とする。
(所掌事務及び権限)
第四条 総務庁の所掌事務の範囲は、次のとおりとし、その権限の行使は、その範囲内で法律(法律に基づく命令を含む。)に従つてなされなければならない。
一 国家公務員に関する制度に関し調査し、研究し、及び企画すること。
二 各行政機関が行う国家公務員等の人事管理に関する方針、計画等に関し、その統一保持上必要な総合調整を行うこと。
三 一般職の国家公務員の能率、厚生、服務その他の人事行政(人事院の所掌に属するものを除く。)に関する事務を行うこと。
四 国家公務員等の退職手当に関する事務を行うこと。
五 特別職の国家公務員の給与制度に関する事務を行うこと。
六 前各号に掲げるもののほか、国家公務員等の人事行政に関する事務(他の行政機関の所掌に属するものを除く。)を行うこと。
七 行政制度一般に関する基本的事項を企画すること。
八 行政機関の機構、定員及び運営の総合調整を行うこと。
九 行政機関の機構、定員及び運営に関する調査、企画、立案及び勧告を行うこと
十 各行政機関の機構の新設、改正及び廃止並びに定員の設置、増減及び廃止に関する審査を行うこと。
十一 法律により直接に設立される法人又は特別の法律により特別の設立行為をもつて設立すべきものとされる法人の新設、目的の変更その他当該法律の定める制度の改正及び廃止に関する審査を行うこと。
十二 各行政機関の業務の実施状況を監察し、必要な勧告を行うこと。
十三 前号の監察に関連して、第十一号に規定する法人の業務及び国の委任又は補助に係る業務の実施状況に関し必要な調査を行うこと。
十四 各行政機関の業務及び前号に規定する業務に関する苦情の申出につき必要なあつせんを行うこと。
十五 行政相談委員法(昭和四十一年法律第九十九号)の施行に関する事務を行うこと。
十六 恩給制度に関し調査し、研究し、及び企画すること。
十七 恩給を受ける権利の裁定に関する事務を行うこと。
十八 恩給に関する不服申立てに対する決定又は裁決に関する事務を行うこと。
十九 恩給の支給及び負担に関する事務を行うこと。
二十 国会議員の互助年金及び互助一時金に関する事務を行うこと。
二十一 国家公務員等共済組合連合会の長期給付の決定に関する審理に関する事務を行うこと。
二十二 統計及び統計制度の改善発達に関する基本的事項を企画すること。
二十三 統計調査の審査、基準の設定及び総合調整を行うこと。
二十四 統計報告の徴集について調整を行うこと。
二十五 統計機関の機構、定員及び運営に関し、地方公共団体の長又は教育委員会に対し、連絡及び勧奨を行うこと。
二十六 統計職員の養成の企画及び検定を行うこと。
二十七 国際統計事務の統括に関する事務を行うこと。
二十八 アジア統計研修所の設立及び運営のための援助に関する日本国政府と国際連合開発計画との間の協定に基づき、アジア統計研修所において行われる研修の実施に関する協力を行うこと。
二十九 国勢調査その他国勢の基本に関する統計調査を実施すること。
三十 国の行政機関又は地方公共団体の委託を受けて各種の統計調査を実施すること。
三十一 国勢調査その他国勢の基本に関する統計調査の製表及び国の行政機関又は地方公共団体の委託を受けて実施した各種の統計調査の製表を行うこと。
三十二 国の行政機関又は地方公共団体の委託を受けて各種の統計調査の製表を行うこと。
三十三 政令で定める文教研修施設において統計に関する研修を行うこと。
三十四 統計技術の研究その他統計の改善発達に関する事務を行うこと。
三十五 統計に関する図書及び資料を収集し、整備し、編集し、及び刊行すること。
三十六 統計知識の普及及び宣伝に関する事務を行うこと。
三十七 各行政機関の陸上交通の安全に関する施策及び事務の総合調整を行うこと。
三十八 各行政機関の交通の安全に関する事務の連絡に関する事務を行うこと。
三十九 交通の安全に関する事務のうち他の行政機関の所掌に属しないものを調査し、企画し、及び立案すること。
四十 前三号に掲げるもののほか、交通安全対策基本法(昭和四十五年法律第百十号)に基づく内閣総理大臣の権限に属する事項について内閣総理大臣を補佐すること。
四十一 各行政機関の老人に関する施策及び事務の総合調整を行うこと。
四十二 各行政機関の老人に関する事務の連絡に関する事務を行うこと。
四十三 老人に関する事務のうち他の行政機関の所掌に属しないものを調査し、企画し、及び立案すること。
四十四 各行政機関の地域改善対策事業に関する施策及び事務の総合調整を行うこと。
四十五 各行政機関の地域改善対策事業に関する事務の連絡に関する事務を行うこと。
四十六 地域改善対策事業に関する事務のうち他の行政機関の所掌に属しないものを調査し、企画し、及び立案すること。
四十七 前三号に掲げるもののほか、地域改善対策特別措置法(昭和五十七年法律第十六号)の施行に関する事務(他の行政機関の所掌に属するものを除く。)を行うこと。
四十八 青少年の指導、育成、保護及び矯正に関する基本的かつ総合的な施策の樹立に関する事務を行うこと。
四十九 青少年の指導、育成、保護及び矯正に関する関係行政機関の施策及び事務の総合調整を行うこと。
五十 前二号に掲げるもののほか、青少年の指導、育成、保護及び矯正に関する事務のうち他の行政機関の所掌に属しないものを企画し、立案し、及び実施すること。
五十一 北方領土問題その他北方地域(政令で定める地域をいう。以下同じ。)に関する諸問題について、調査研究し、関係資料を収集分析し、及び国民世論の啓発を図ること。
五十二 北方地域に生活の本拠を有していた者に対する必要な援護措置の実施の推進を図り、及びその援護措置の実施に関し、関係行政機関の事務の総合調整を行うこと。
五十三 本土(北方地域以外の地域をいう。以下同じ。)と北方地域にわたる身分関係事項その他の事実について、公の証明に関する文書を作成すること。
五十四 本土と北方地域との間において解決を要する事項について、調査し、連絡し、あつせんし、及び処理すること。
五十五 第五十一号から前号までに掲げるもののほか、北方地域に関する事務(外務省の所掌に属するものを除く。)に関し、関係行政機関の事務の総合調整及び推進を図ること。
五十六 北方領土問題対策協会を監督すること。
五十七 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律(昭和五十七年法律第八十五号)に基づく内閣総理大臣の権限に属する事項(北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する部分を除く。)について内閣総理大臣を補佐すること。
五十八 所掌事務に関し、必要な資料の収集を行うこと。
五十九 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき総務庁に属させられた事務
(長官)
第五条 総務庁の長は、総務庁長官とし、国務大臣をもつて充てる。
2 総務庁長官(以下「長官」という。)は、所掌事務に関し、各行政機関の長に対し必要な資料の提出及び説明を求めることができる。
3 長官は、所掌事務に関し、随時、内閣総理大臣又は関係各行政機関の長に対し、意見を述べることができる。
4 長官は、監察を行うため必要な範囲において、各行政機関の業務について実地に調査することができる。
5 長官は、各行政機関の業務の監察に関連して、第四条第十三号に規定する業務について、書面により又は実地に調査することができる。この場合において、調査を受けるものは、その調査を拒んではならない。
6 長官は、監察上の必要により、公私の団体その他の関係者に対し、必要な資料の提出に関し、協力を求めることができる。
7 長官は、監察の結果第三項の規定により関係行政機関の長に対し勧告をしたときは、当該行政機関の長に対し、その勧告に基づいて執つた措置について報告を求めることができる。
8 長官は、監察の結果行政運営の改善を図るため必要と認めたときは、内閣総理大臣に対し、関係行政機関の長に所管事項の改善を指示するよう意見を具申することができる。
9 長官は、監察の結果綱紀を維持するため必要と認めたときは、関係行政機関の長に対し、これに関し意見を述べることができる。
(公務員制度審議会)
第六条 総務庁に、公務員制度審議会(以下この条において「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、内閣総理大臣の諮問に応じて、国家公務員、地方公務員及び公共企業体の職員の労働関係の基本に関する事項について調査審議し、及びこれらの事項に関し内閣総理大臣に建議する。
3 審議会は、学識経験のある者、国、地方公共団体及び公共企業体を代表する者並びに国、地方公共団体及び公共企業体の職員を代表する者のうちから、内閣総理大臣が任命する二十人以内の委員で組織する。
4 前二項に定めるもののほか、審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他審議会に関し必要な事項については、政令で定める。
(審議会等の委員等)
第七条 総務庁に政令の規定により置かれる審議会等の委員その他の職員で政令で定めるものは、内閣総理大臣が任命する。
(青少年対策本部)
第八条 総務庁に、特別の機関として、青少年対策本部を置く。
2 青少年対策本部は、第四条第四十八号から第五十号までに掲げる事務をつかさどる。
3 青少年対策本部の長は、青少年対策本部長とし、長官たる国務大臣をもつて充てる。
4 青少年対策本部長は、青少年対策本部の事務を統括する。
5 青少年対策本部に、青少年対策副本部長を置き、総務事務次官をもつて充てる。
6 青少年対策副本部長は、青少年対策本部長の職務を助ける。
7 青少年対策本部に、次長その他の職員を置く。
8 第三項から前項までに定めるもののほか、青少年対策本部の組織に関し必要な事項は、政令で定める。
(北方対策本部)
第九条 総務庁に、特別の機関として、北方対策本部を置く。
2 北方対策本部は、第四条第五十一号から第五十七号までに掲げる事務をつかさどる。
3 北方対策本部の長は、北方対策本部長とし、長官たる国務大臣をもつて充てる。
4 北方対策本部長は、北方対策本部の事務を統括する。
5 北方対策本部長は、北方対策本部の所掌事務を遂行するために必要がある場合には、関係行政機関の長に対して協力を求め、又は意見を述べることができる。
6 北方対策本部に、北方対策副本部長を置き、総務事務次官をもつて充てる。
7 北方対策副本部長は、北方対策本部長の職務を助ける。
8 北方対策本部に、所要の職員を置く。
9 第三項から前項までに定めるもののほか、北方対策本部の組織に関し必要な事項は、政令で定める。
(地方支分部局)
第十条 総務庁に、地方支分部局として、管区行政監察局を置く。
2 前項に定めるもののほか、当分の間、総務庁に、地方支分部局として、沖縄行政監察事務所を置く。
3 管区行政監察局及び沖縄行政監察事務所は、第四条第十二号から第十五号までに掲げる事務及びこれに関する同条第五十八号に掲げる事務を分掌する。
4 管区行政監察局及び沖縄行政監察事務所は、前項の事務のほか、環境庁の所掌事務のうち当該所掌事務に関する調査並びに資料の収集及び整理並びに環境庁の所管行政に関する相談に関する事務を分掌する。
5 長官は、前二項の事務のほか、管区行政監察局及び沖縄行政監察事務所に、第四条第九号に掲げる事務のうち行政機関の機構、定員及び運営に関する調査の事務並びに同条第五十八号に掲げる事務のうち同条第七号から第十一号まで、第二十二号から第二十八号まで、第三十四号及び第三十六号に掲げる事務(同条第三十四号に掲げる事務にあつては、統計技術の研究に関するものを除く。)に関するものを分掌させることができる。
6 第四項の事務については、環境庁長官が管区行政監察局及び沖縄行政監察事務所の長を指揮監督する。
7 管区行政監察局の名称、位置、管轄区域及び内部組織は、政令で定める。
8 沖縄行政監察事務所の位置及び管轄区域は、政令で定める。
9 沖縄行政監察事務所の内部組織は、総理府令で定める。
10 政令で定める管区行政監察局に、その事務の一部を分掌させるため、行政監察支局を置く。
11 行政監察支局の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。
12 行政監察支局の内部組織は、総理府令で定める。
13 政令で定める管区行政監察局及び行政監察支局に、その事務の一部を分掌させるため、地方行政監察局を置く。
14 地方行政監察局の名称、位置及び管轄区域は、政令で定める。
15 地方行政監察局の内部組織は、総理府令で定める。
附 則
1 この法律は、昭和五十九年七月一日から施行する。
2 昭和五十九年六月三十日において行政管理庁の四国行政監察支局として設置されている機関で総務庁の機関として存続するものは、昭和六十年三月三十一日までに廃止するものとする。
内閣総理大臣 中曽根康弘