日本学術振興会法
法令番号: 法律第123号
公布年月日: 昭和42年8月1日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

学術の急速な進歩と影響力の増大を背景に、国として学術振興に関する施策を積極的に講じる必要性が高まっている。特に共同研究を通じた研究の組織化や国際化の進展に対応するため、学術研究の助成や国際協力の促進などを行う体制整備が求められている。これまで財団法人日本学術振興会がこれらの事業を実施してきたが、国の施策との関連性を強化し、国際的信用を高めるため、特殊法人化することとした。新たな法人は、研究資金の支給、学界と産業界の連携促進、国際協力の実施、研究者の育成支援、学術情報の調査・普及などの業務を行う。役員は文部大臣が任命し、業務の公共性に鑑み文部大臣の監督を受けることとなる。

参照した発言:
第55回国会 衆議院 文教委員会 第5号

審議経過

第55回国会

参議院
(昭和42年5月9日)
衆議院
(昭和42年5月10日)
(昭和42年6月23日)
(昭和42年6月28日)
(昭和42年6月30日)
(昭和42年7月5日)
(昭和42年7月12日)
(昭和42年7月14日)
(昭和42年7月14日)
参議院
(昭和42年7月20日)
(昭和42年7月20日)
衆議院
(昭和42年7月21日)
日本学術振興会法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十二年八月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百二十三号
日本学術振興会法
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
役員及び職員(第八条―第十七条)
第三章
評議員会(第十八条・第十九条)
第四章
業務(第二十条・第二十一条)
第五章
財務及び会計(第二十二条―第三十一条)
第六章
監督等(第三十二条―第三十五条)
第七章
雑則(第三十六条・第三十七条)
第八章
罰則(第三十八条―第四十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 日本学術振興会は、学術研究の助成、研究者に対する援助、学術に関する国際協力の実施の促進その他学術の振興に関する事業を行ない、もつて学術の進展に寄与することを目的とする。
(法人格)
第二条 日本学術振興会(以下「振興会」という。)は、法人とする。
(事務所)
第三条 振興会は、事務所を東京都に置く。
(基本金)
第四条 振興会の基本金は、附則第九条第三項の規定により承継する財団法人日本学術振興会の基本財産に相当する金額とする。
(登記)
第五条 振興会は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第六条 振興会でない者は、日本学術振興会という名称を用いてはならない。
(民法の準用)
第七条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、振興会について準用する。
第二章 役員及び職員
(役員)
第八条 振興会に、役員として、会長一人、理事長一人、理事三人以内及び監事二人以内を置く。
(役員の職務及び権限)
第九条 会長は、振興会を代表し、その業務を総理する。
2 理事長は、振興会を代表し、会長の定めるところにより、会長を補佐して振興会の業務を掌理し、会長に事故があるときはその職務を代理し、会長が欠員のときはその職務を行なう。
3 理事は、会長の定めるところにより、会長及び理事長を補佐して振興会の業務を掌理し、会長及び理事長にともに事故があるときはその職務を代理し、会長及び理事長がともに欠員のときはその職務を行なう。
4 監事は、振興会の業務を監査する。
5 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、会長又は文部大臣に意見を提出することができる。
(役員の任命)
第十条 役員は、文部大臣が任命する。
(役員の任期)
第十一条 役員の任期は、二年とする。ただし、補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第十二条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。
(役員の解任)
第十三条 文部大臣は、役員が前条の規定に該当するに至つたときは、その役員を解任しなければならない。
2 文部大臣は、役員が次の各号の一に該当するとき、その他役員たるに適しないと認めるときは、その役員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の義務違反があるとき。
(役員の兼職禁止)
第十四条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、文部大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
(代表権の制限)
第十五条 振興会と会長又は理事長との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合には、監事が振興会を代表する。
(職員の任命)
第十六条 振興会の職員は、会長が任命する。
(役員及び職員の公務員たる性質)
第十七条 振興会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
第三章 評議員会
(評議員会)
第十八条 振興会に、評議員会を置く。
2 評議員会は、十五人以内の評議員で組織する。
3 評議員会は、会長の諮問に応じ、振興会の業務の運営に関する重要事項を審議する。
4 評議員会は、振興会の業務の運営につき、会長に対して意見を述べることができる。
(評議員)
第十九条 評議員は、振興会の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、文部大臣が任命する。
2 第十一条及び第十三条第二項の規定は、評議員について準用する。
第四章 業務
(業務)
第二十条 振興会は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。
一 共同して行なわれる学術の研究に関し、研究者に研究活動を行なうために必要な資金を支給すること。
二 学界と産業界との協力による学術の応用に関する研究に関し、資金の支給その他必要な援助を行なうこと。
三 学術の国際協力に関し、海外への研究者の派遣、外国人研究者の受入れその他国際協力による研究に必要な援助を行なうこと。
四 優秀な学術の研究者の育成に関し、研究者に研究を奨励するための資金を支給すること。
五 学術に関する情報資料について調査を行ない、その結果を利用に供し、及び学術に関する研究成果を普及すること。
六 前各号に掲げる業務に附帯する業務を行なうこと。
2 振興会は、文部大臣の認可を受けて、前項各号に掲げる業務のほか、第一条の目的を達成するため必要な業務を行なうことができる。
(業務方法書)
第二十一条 振興会は、業務の開始の際、業務方法書を作成し、文部大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、文部省令で定める。
第五章 財務及び会計
(事業年度)
第二十二条 振興会の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。
(事業計画等の認可)
第二十三条 振興会は、毎事業年度、事業計画、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、文部大臣の認可を受けなければならない。これに重要な変更を加えようとするときも、同様とする。
(決算)
第二十四条 振興会は、毎事業年度の決算を翌年度の五月三十一日までに完結しなければならない。
(財務諸表)
第二十五条 振興会は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(次項において「財務諸表」という。)を作成し、これに予算の区分に従い作成した当該事業年度の決算報告書を添え、監事の意見をつけて、決算完結後一月以内に文部大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 振興会は、前項の文部大臣の承認を受けた財務諸表を事務所に備えておかなければならない。
(利益及び損失の処理)
第二十六条 振興会は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 振興会は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(短期借入金)
第二十七条 振興会は、文部大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、文部大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。
(余裕金の運用)
第二十八条 振興会は、次の方法による場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他文部大臣の指定する有価証券の取得
二 銀行への預金又は郵便貯金
三 信託業務を営む銀行又は信託会社への金銭信託
(財産の処分等の制限)
第二十九条 振興会は、文部省令で定める重要な財産を譲り受け、譲渡し、交換し、又は担保に供しようとするときは、文部大臣の認可を受けなければならない。
(給与及び退職手当の支給の基準)
第三十条 振興会は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、文部大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(文部省令への委任)
第三十一条 この法律に規定するもののほか、振興会の財務及び会計に関し必要な事項は、文部省令で定める。
第六章 監督等
(監督)
第三十二条 振興会は、文部大臣が監督する。
2 文部大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、振興会に対して、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第三十三条 文部大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、振興会に対してその業務に関し報告をさせ、又はその職員に振興会の事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(国の配慮)
第三十四条 国は、第一条の目的を達成するため、振興会について必要な配慮をするものとする。
(日本学術会議との連絡)
第三十五条 文部大臣は、振興会の組織及び業務の運営に関し、日本学術会議と緊密な連絡を図るものとする。
第七章 雑則
(解散)
第三十六条 振興会の解散については、別に法律で定める。
(大蔵大臣との協議)
第三十七条 文部大臣は、次の場合には、あらかじめ、大蔵大臣に協議しなければならない。
一 第二十一条第一項、第二十三条、第二十七条第一項若しくは第二項ただし書又は第二十九条の規定による認可をしようとするとき。
二 第二十五条第一項又は第三十条の規定による承認をしようとするとき。
三 第二十一条第二項、第二十九条又は第三十一条の規定により文部省令を定めようとするとき。
四 第二十八条第一号の規定による指定をしようとするとき。
第八章 罰則
(罰則)
第三十八条 第三十三条第一項の規定による報告を求められて、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした振興会の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。
第三十九条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした振興会の役員は、三万円以下の過料に処する。
一 この法律により文部大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。
二 第五条第一項の政令の規定に違反して登記することを怠つたとき。
三 第二十条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。
四 第二十八条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。
五 第三十二条第二項の規定による文部大臣の命令に違反したとき。
第四十条 第六条の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(振興会の設立)
第二条 文部大臣は、振興会の会長、理事長、理事又は監事となるべき者を指名する。
2 前項の規定により指名された会長、理事長、理事又は監事となるべき者は、振興会の成立の時において、この法律の規定により、それぞれ会長、理事長、理事又は監事に任命されたものとする。
第三条 文部大臣は、設立委員を命じて、振興会の設立に関する事務を処理させる。
2 設立委員は、振興会の設立の準備を完了したときは、その事務を前条第一項の規定により指名された会長となるべき者に引き継がなければならない。
第四条 附則第二条第一項の規定により指名された会長となるべき者は、前条第二項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
第五条 振興会は、設立の登記をすることによつて成立する。
(経過規定)
第六条 この法律の施行の際現に日本学術振興会という名称を使用している者については、第六条の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。
第七条 振興会の最初の事業年度は、第二十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和四十三年三月三十一日に終わるものとする。
第八条 振興会の最初の事業年度の事業計画、予算及び資金計画については、第二十三条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「振興会の成立後遅滞なく」とする。
(財団法人日本学術振興会からの引継ぎ)
第九条 昭和七年十二月二十八日に設立された財団法人日本学術振興会は、寄附行為に定めるところにより、設立委員に対して、振興会においてその一切の権利及び義務を承継すべき旨を申し出ることができる。
2 設立委員は、前項の規定による申出があつたときは、遅滞なく、文部大臣の認可を申請しなければならない。
3 前項の認可があつたときは、財団法人日本学術振興会の一切の権利及び義務は、振興会の成立の時において振興会に承継されるものとし、財団法人日本学術振興会は、その時において解散するものとする。この場合においては、他の法令中法人の解散及び清算に関する規定は、適用しない。
4 附則第四条の規定により振興会の設立の登記がされたときは、登記官は、職権で財団法人日本学術振興会の解散の登記をし、その登記用紙を閉鎖しなければならない。
(地方税法の一部改正)
第十条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
第七十二条の五第一項第六号中「日本学校給食会」の下に「、日本学術振興会」を加える。
(地方財政再建促進特別措置法の一部改正)
第十一条 地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。
第二十四条第二項中「オリンピック記念青少年総合センター」の下に「、日本学術振興会」を加える。
(所得税法の一部改正)
第十二条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。
別表第一第一号の表中日本開発銀行の項の次に次のように加える。
日本学術振興会
日本学術振興会法(昭和四十二年法律第百二十三号)
(法人税法の一部改正)
第十三条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。
別表第二第一号の表中南方同胞援護会の項の次に次のように加える。
日本学術振興会
日本学術振興会法(昭和四十二年法律第百二十三号)
(印紙税法の一部改正)
第十四条 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。
別表第三の表中公害防止事業団法(昭和四十年法律第九十五号)第十八条第一号から第三号まで及び第五号(業務の範囲)の業務に関する文書の項の次に次のように加える。
日本学術振興会法(昭和四十二年法律第百二十三号)第二十条第一項第三号(業務の範囲)の業務に関する文書
日本学術振興会
大蔵大臣 水田三喜男
文部大臣 剱木亨弘
自治大臣 藤枝泉介
内閣総理大臣 佐藤栄作